〇今昔館の近代展示室を愉しむ(5) 大大阪新開地-市街地の拡大と近代長屋-
シリーズ5回目は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「大大阪新開地 -市街地の拡大と近代長屋-」を取り上げます。
大正14(1925)年の「大大阪」誕生とともに新しく市域に編入された新市街地は「大大阪新開地」と呼ばれました。新市域では、組合施行による土地区画整理事業によって土地会社が宅地を開発し、その上に長屋建ての貸家を建設して大家に売却し、大家が賃貸住宅経営を行っていました。長屋の一部に大家が居住する場合もありました。
この模型は、昭和10(1935)年頃の大大阪新開地=長屋住宅地の風景です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区辺りにある長屋を一つのまちに再編成したものです。伝統的な和風長屋に加えて、邸宅風の長屋や、洋風のモダンな長屋の町並みが50分の1で再現されています。大大阪新開地は既成市街地の外周部に新たに開発された住宅地で、当時のニュータウンにあたります。
その中に、間口2間半でバルコニー付きの洋風長屋があります。
3枚目の写真は洋風長屋の外観です。左端は2戸1の長屋。隣は4戸で1棟の長屋です。2戸ペアでデザインされていて、小さいものを大きく見せる効果もあって、おしゃれです。現在の大阪市住之江区西住之江に現存している長屋です。
「近代都市住宅年表」の下段には、各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。年表の中ほど折れ曲がりの辺りには、住之江の洋風長屋が描かれています。この模型の制作のベースとなった4戸で1棟の洋風長屋の立面図です。
次の写真は、間取り(平面図)です。右側2戸は1階、左側2戸は2階を表わしています。先の写真の4戸長屋の間取りになります。
1階に台所、茶の間、玄関の間、6畳の間(床の間付)、縁側、風呂、便所があり、茶の間と6畳の間の間には廊下がとられています。2階には8畳の間と6畳の間、3畳の書斎があり、バルコニーがついています。前庭、裏庭付きで、よく考えられた間取りです。しかも、この間取りがピタリとはまるように計画的に道路区画がなされ、背割には汲み取り通路が確保されています。当時は便所は水洗ではありませんでしたから、部屋の中を通らずに裏から汲み取りができるように工夫がされています。
間口が2間半あることによって、8畳の間や床の間付きの6畳の間(もちろん奥行き半間の押し入れ付き)が確保できます。また1間幅の玄関と4畳半の茶の間を並べることができます。間口2間と比べて平面プランのバリエーションが増えて、お屋敷に近い雰囲気も出せたのではないでしょうか。おまけに戦前の畳は関西間(京間)で、メートル間に近い大きさですから、ゆとりがあります。
2戸ペアになっているのは玄関側だけで、奥は反転させずに風呂と便所が1戸分ずつ裏庭に突き出すようになっています。自然換気を重視して両面開放にしたのでしょうか?
シリーズ5回目は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「大大阪新開地 -市街地の拡大と近代長屋-」を取り上げます。
大正14(1925)年の「大大阪」誕生とともに新しく市域に編入された新市街地は「大大阪新開地」と呼ばれました。新市域では、組合施行による土地区画整理事業によって土地会社が宅地を開発し、その上に長屋建ての貸家を建設して大家に売却し、大家が賃貸住宅経営を行っていました。長屋の一部に大家が居住する場合もありました。
この模型は、昭和10(1935)年頃の大大阪新開地=長屋住宅地の風景です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区辺りにある長屋を一つのまちに再編成したものです。伝統的な和風長屋に加えて、邸宅風の長屋や、洋風のモダンな長屋の町並みが50分の1で再現されています。大大阪新開地は既成市街地の外周部に新たに開発された住宅地で、当時のニュータウンにあたります。
大大阪新開地(住まいの大阪六景) |
大大阪新開地(住まいの大阪六景) |
その中に、間口2間半でバルコニー付きの洋風長屋があります。
3枚目の写真は洋風長屋の外観です。左端は2戸1の長屋。隣は4戸で1棟の長屋です。2戸ペアでデザインされていて、小さいものを大きく見せる効果もあって、おしゃれです。現在の大阪市住之江区西住之江に現存している長屋です。
大大阪新開地の洋風長屋外観 |
「近代都市住宅年表」の下段には、各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。年表の中ほど折れ曲がりの辺りには、住之江の洋風長屋が描かれています。この模型の制作のベースとなった4戸で1棟の洋風長屋の立面図です。
「住之江の洋風長屋」立面図(「近代都市住宅年表」) |
次の写真は、間取り(平面図)です。右側2戸は1階、左側2戸は2階を表わしています。先の写真の4戸長屋の間取りになります。
1階に台所、茶の間、玄関の間、6畳の間(床の間付)、縁側、風呂、便所があり、茶の間と6畳の間の間には廊下がとられています。2階には8畳の間と6畳の間、3畳の書斎があり、バルコニーがついています。前庭、裏庭付きで、よく考えられた間取りです。しかも、この間取りがピタリとはまるように計画的に道路区画がなされ、背割には汲み取り通路が確保されています。当時は便所は水洗ではありませんでしたから、部屋の中を通らずに裏から汲み取りができるように工夫がされています。
間口が2間半あることによって、8畳の間や床の間付きの6畳の間(もちろん奥行き半間の押し入れ付き)が確保できます。また1間幅の玄関と4畳半の茶の間を並べることができます。間口2間と比べて平面プランのバリエーションが増えて、お屋敷に近い雰囲気も出せたのではないでしょうか。おまけに戦前の畳は関西間(京間)で、メートル間に近い大きさですから、ゆとりがあります。
2戸ペアになっているのは玄関側だけで、奥は反転させずに風呂と便所が1戸分ずつ裏庭に突き出すようになっています。自然換気を重視して両面開放にしたのでしょうか?
洋風長屋の平面図(右の2戸は1階、左の2戸は2階) |
それでは、大阪市パノラマ地図ではどのように描かれているか見てみましょう。といきたいところですが、「大大阪新開地」はパノラマ地図には描かれていません。
大阪市パノラマ地図の右下部分(大阪くらしの今昔館蔵)
当時の大阪市域を描いているため、現在の阿倍野区、住吉区等は描かれていない。
住吉神社のみが挿絵として描かれている。
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パノラマ地図は大正13年1月の発行で、当時の大阪市は東西南北の4区の時代です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区などは、翌年の大正14年(1925)に、第二次市域拡張によって大阪市域に含まれることとなります。
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そこで、米軍が昭和23年(1948)に撮影した航空写真を、国土地理院が公開していますので、こちらで見てみることにします。
1枚目は阿倍野区阪南町付近で、組合施行区画整理の第1号である阪南土地区画整理事業によって街区が整備され、長屋が整然と建てられている様子がわかります。このあたりは戦災を免れましたので、昭和戦前に建てられた住宅が、そのまま残っています。
米軍の撮影による航空写真の阪南町付近(昭和23年) (国土地理院HPより) |
2枚目は、住之江区西住之江付近です。写真中央を南北に南海本線が走っています。その西側に長屋住宅地が形成されています。区画整理された街区の上に長屋が整然と建てられている様子がわかります。模型にある洋風長屋はこのあたりに建っています。現在もお住まいの住宅もあります。南海本線と並行して東側には紀州街道が通っていますが、街道沿いの住宅と西側の新市街地とで住宅の大きさが違っていることもよくわかります。
米軍の撮影による航空写真の西住之江付近(昭和23年) (国土地理院HPより) |
最後に、今昔マップ3を使って、阿倍野区阪南町付近の変遷を見てみましょう。
左上は明治41年、股ケ池(桃ケ池)の西側一帯には田畑が拡がっています。右上は昭和7年、組合施行の阪南土地区画整理事業によって街区が形成され、一部では長屋の建設が始まっています。左下は昭和22年、戦災を免れた長屋住宅地が拡がっています。右下は、現在の国土地理院地図です。
左上は明治41年、股ケ池(桃ケ池)の西側一帯には田畑が拡がっています。右上は昭和7年、組合施行の阪南土地区画整理事業によって街区が形成され、一部では長屋の建設が始まっています。左下は昭和22年、戦災を免れた長屋住宅地が拡がっています。右下は、現在の国土地理院地図です。
明治41年・昭和7年・昭和22年の地形図、最近の国土地理院地図の 阪南町付近(今昔マップ3) |
今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「大大阪新開地-市街地の拡大と近代長屋-」についてご紹介しました。
〇第12回子ども落語大会を開催します
開催日時 平成29年9月10日(日) 午後12時~17時(予定)
開催場所 : 大阪くらしの今昔館 9階常設展示場 薬屋座敷
参 加 費 : 無料(参加者の御家族1名は無料です)
対 象 : 中学生以下
内 容 : 落語・小噺・おもしろい話など、なんでもOK!
持ち時間 : 一人10分以内(時間厳守のこと)
申込方法 : 往復はがきに住所、氏名、年齢(学年)、電話番号
演目、ありましたら舞台名、見台の要否、「出場に際してひとこと!」を明記の上、
下記申込先へ往復はがきでお申し込みください
申込者が多い場合は抽選となります
申込締切 : 平成29年8月25日(金)まで
< 申込・問合せ先 >
〒530-0041
大阪市北区天神橋6丁目4-20
大阪くらしの今昔館「子ども落語大会」係
TEL 06-6242-1170
備 考 : 本大会の入賞者は、10月8日(日)午前10時から、天満天神繁昌亭の
舞台に出演していただきます
〇企画展示「夏休みだよ!家電採集 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」~開催中です~
平成29年7月29日(土)~8月31日(木)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
大阪くらしの今昔館ではおなじみとなった昭和レトロ家電の展覧会が、今年は夏の開催となりました。本展では、増田健一氏が20年以上にわたり収集してきた昭和レトロ家電コレクションから、昭和30年代の懐かしい家電やアイデアあふれる珍しい家電をよりすぐり、約150点を公開します。また今回は家電のほかに、ハミガキ、洗剤など当時の生活雑貨やそのポスター等も展示します。夏の一日、昭和レトロ家電の世界をどうぞお楽しみください。
詳しくはこちらからどうぞ。
≫ http://konjyakukan.com/kikakutenji.html
〇今週のイベント・ワークショップ
8月9日(水)、10日(木)、12日(土)、14日(月)、16日(水)~19日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30
8月11日(祝)、13日(日)、20日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
8月11日(金・祝)
ワークショップ 『うちわを作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
8月12日(土)、13日(日)
イベント 今昔館で夏祭り ― 楽市町家 ―
町家の店先に町家衆手作りのかわいい商品が並びます
13時~16時
8月13日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00
8月17日(木)
イベント 夏休み まちなみ探偵団
江戸時代の大坂の住まいやくらしのヒミツを極秘調査して、
今昔館を訪れている外国の人に見つけたヒミツを伝えてみよう!
10時~16時30分
対象:小学5・6年生(安全のため、保護者の送迎をお願いします。)
定員:20名(申し込み多数の場合は抽選)
お申し込みについては「住まい・まちづくり・ネット」をご覧ください。
※いただいた個人情報は今回のイベント以外の目的には一切使用いたしません。
※参加者決定後、お申し込み時にご記入いただきましたご住所に、参加証及び詳細をお送りします。
※昼食・飲み物は、各自ご用意ください。
8月19日(土)
町家衆イベント ワークショップ 折り紙(有料) 季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30~15:00
8月20日(日)
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00
町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00
イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時
ワークショップ 『かわり屏風を作ろう』
①13時~ ②14時~
当日先着各回10名、参加費400円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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