2026年9月21日月曜日

今週の今昔館(508) 大大阪時代のまちづくり(19) 長期臨時休館中です 20260921

〇大阪くらしの今昔館を応援する一個人による非公式ブログです。


〇大大阪時代のまちづくり(19)

 第二次市域拡張直前である1924年(大正13年)発行の大阪市パノラマ地図と、その12年後1936年(昭和11年)発行の大大阪観光地図などの古地図を見比べながら、大大阪時代の大阪のまちづくりを振り返っています。今回は交通電気博覧会と市立美術館を取り上げます。

 「大礼奉祝交通電気博覧会」は昭和天皇の御即位を祝し、また大阪市電氣軌道20周年、電灯経営5周年を記念して、交通・電気の進歩発展に貢献する趣旨のもと、昭和3(1928)年10月1日から11月30日にかけて天王寺で開催されました。大阪市街のジオラマや電磁波による装置船の運航、照明による演出など電力によって発展していく未来を予想させる博覧会でした。大阪市の主催で、大大阪時代を築いた関一市長が会長を務め、入場者数1,000,872人を集客した大規模な博覧会でした。

交通電気博覧会鳥観図(大阪市立図書館蔵)

 会場は、
第1会場:天王寺公園勧業館(内国博の参考館跡地に大正2年に新築)
第2会場:大阪市民博物館(もと内国博の美術館)
第3会場:茶臼山住友邸跡
の3つに分かれ、3つの会場を「懸垂飛行鉄道」で結ぶというものでした。

会場配置図(牧慎一郎氏のホームページより)

 第1会場は勧業館が本館で、隣接して南側に1.650平方メートルの鉄骨建ての発電館、電力館を、西側に793平方メートルの近代式木造建ての世界一周館と電氣廉売館を新築しました。

 世界一周館には世界の風景のパノラマ11場面を配置し、水の交通館は噴水池の中央に本州、四国、九州の模型を作り、周囲に電磁波による装置船を運航させました。本館階下2.300平方メートルを陸の交通館に、1.500平方メートルを電熱館に充て、中庭に照明館を新設しました。陸の交通館には大大阪交通模型、大都市理想路面交通模型、奉祝花電車模型をはじめ陸軍省出品の自動車と、その関連する一般出品を陳列し、各郊外電鉄の出品も陳列しました。電熱館には理想的電化住宅、工場電化、家庭での電氣実演料理場などの展示をした。照明館には入口に五節舞姫人形を置き、両側に理想的照明街路灯を立て、その奧に水銀灯利用の大森林と、大大阪の夜景などを演出した場面を作りました。

第一会場全景(牧慎一郎氏のホームページより)

 第2会場の大阪市民博物館には、大礼参考館を中心に無線館、通信館、電氣衛生館を設けました。階上全体を大礼参考館とし、明治天皇聖蹟御物を陳列し、王冠威儀御物や大礼関係の絵画や写真を掲げました。電氣衛生館には交通・電氣にかかわる活動写真を上映しました。階下の廊下を利用して、魔のトンネル「ラジオの将来」をつくり、大阪中央放送局や日本電気などが出品しました。

第二会場全景(牧慎一郎氏のホームページより)

 住友家から美術館を建設する条件で寄付を受けた住友本邸跡(慶沢園を含む)を第3会場とし、農事電化関係の出品(電化牧場、電化養鶏場、農芸科学実演場)と菊花陳列場を設けました。美術館の建設工事中でしたが、住友邸跡を会場としたことは、この博覧会の興味深いところです。

第三会場慶沢園・住友邸跡(牧慎一郎氏のホームページより)

 この博覧会は会期半ばごろより入場者が増加し、11月10日の即位式前後には奉祝気分が盛り上がり、人気沸騰、会期延長の要望がありましたが、会場の制約があり2日間だけ延長。当初の目的を盛況のうちに達成しました。

交通電気博覧会ポスター(ジャパンアーカイブズ蔵)
交通電気博覧会絵はがき(大阪歴史博物館蔵)

 博覧会の目玉だったのが「懸垂飛行鉄道」(写真は「交通電気博覧会誌」より)。日本初のモノレールだそうで、公園内3つの会場に鉄塔を建てて会場間の地上30mの空中架線を車体に積んだエンジンで自走。写真では通天閣横の空中に第1会場勧業館と第3会場住友邸跡間を走るゴンドラが見えます。

懸垂飛行鉄道と鉄塔(牧慎一郎氏のホームページより)

 「懸垂飛行鉄道」は新聞の話題になっていましたが、難工事でまた当局承認に時間がかかって10月1日の博覧会開会に間に合わず、会期末の11月下旬にやっと完成し5日間だけ運行し、すぐに撤去された幻のモノレールでした。写真は「世界の鉄道」昭和37年版より。

懸垂飛行鉄道(牧慎一郎氏のホームページより)

 ここで、博覧会開催中に工事中だった大阪市立美術館建設の歴史についてまとめておきます。
 大阪市では、大正9年度から有識者による委員会を設置し、肝心の立地が決まらないまま検討が進められましたが、大正10年12月住友家から美術館建設を目的に日本庭園「慶沢園」とともに敷地を寄贈する申し出があり立地問題が解決しました。
 大正12年から有識者の意見を聞きつつ市の営繕課伊藤正文と海上静一により設計に着手。市の財政難で動きは鈍かったものの住友邸地の引き渡しを受ける大正15年が近づいてやっと進展。翌年(昭和2年)には土地の整備工事が始まり昭和3年1月には美術館の地鎮祭が行われました。世界恐慌の影響で工事が中断したこともあり、10年近くの歳月を費やして1936年(昭和11年)4月に完成しました。
 写真の右上に工事中の新美術館と慶沢園、左上には、博覧会で第2会場となった市民博物館が見えます。

天王寺公園の市民博物館と新美術館(大阪市立図書館蔵)
工事中の新美術館(牧慎一郎氏のホームページより)

 美術館完成の2年後昭和13年(1938)には、地下鉄が難波から天王寺まで延伸され、梅田から天王寺が地下鉄で直結されて、天王寺公園の交通利便性がさらに高まります。以降、様々な博覧会が天王寺公園を舞台に開催されることになります。
 梅田には省線(現:環状線・京都線・神戸線)、阪神、阪急が乗り入れ、天王寺には、省線(現:環状線・大和路線)、阪和(現:JR阪和線)、大鉄(現:近鉄南大阪線)、南海(天王寺支線:廃止)が乗り入れていることが、ポスターに示されています。

難波~天王寺間の開通を伝えるポスター
地下鉄天王寺駅と2両編成の車両

 交通電気博覧会会場付近の変遷を、開催前の大阪市パノラマ地図(大正13年発行)と開催後の大大阪観光地図(昭和11年発行)で見てみましょう。
 パノラマ地図の動物園前駅付近には、通天閣とルナパーク、国技館があり、公園南口の電停の北側には、勧業館と公会堂があります。内国勧業博の参考館の跡地に、勧業館が新築されました。交通電気博覧会の際には第一会場になります。公会堂は中之島の旧公会堂が移築されたものです。

大阪市パノラマ地図の動物園前付近

 大大阪観光地図を見ると、博覧会終了後、動物園が拡張され、新美術館が開館しています。昭和12年(1937)に制作された映画大大阪観光には、背景に通天閣が見える天王寺公園と動物園のチンパンジーの人気者リタ譲とロイド君が映っています。

大大阪観光地図の動物園前付近

 パノラマ地図の天王寺駅付近には、美術館の文字が見えます(黄色の丸)。内国博の美術館を改修して市民博物館として使用しているものです。交通電気博覧会では第二会場になります。赤色の丸の中には、住友邸の文字が見えます。大正10年に大阪市への寄贈が決定し、大正15年に引き渡されます。ここに、新美術館が建設されます。

大阪市パノラマ地図の天王寺付近

 大大阪観光地図を見ると、博覧会終了後、新美術館が完成しています。天王寺公園の整備も進んでいます。阪和電車(現:JR阪和線)が開通しています。

大大阪観光地図の天王寺付近


〇大大阪時代のまちづくり(バックナンバー)
 2025年が大阪市の第二次市域拡張から100周年に当たることから「大大阪時代のまちづくり」の連載を始めました。
(1) はじめに
(2) 大阪城天守閣
(3) 中央卸売市場
(4) 四ツ橋
(5) 拡張前後の大阪市域
(6) 大阪市パノラマ地図に見る拡張前夜の大阪市
(7) 大大阪観光地図に見る拡張後の大阪市
(8) 御堂筋の淀屋橋付近
(9) 御堂筋の本町付近
(10) 御堂筋の心斎橋付近
(11) 御堂筋の難波駅付近
(12) 御堂筋の梅田新道付近
(13) 大阪駅の高架化と貨物駅の建設
(14) 京阪電鉄の複々線高架化
(15) 中之島の東部
(16) 中之島の西部
(17) 大大阪記念博覧会
(18) 電気大博覧会と市立運動場


〇大阪くらしの今昔館は、長期臨時休館中です。
2026年9月1日(火)~2027年1月5日(火)は、エスカレーターおよびエレベーターの更新工事ならびに館内各所の設備改修工事を実施するため臨時休館となります。ご注意ください。

※開館は令和9年(2027年)1月6日(水曜日)からを予定しています。
 なお、工事の進捗状況等により、休館期間を変更する場合があります。ご利用の皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。



〇おかげさまで開館25周年!!
 大阪くらしの今昔館は2026年4月26日(日)に開館25周年を迎えました。これまで多くの皆さまにご来館いただき、心より感謝申し上げます。

 開館25周年の節目を迎えた大阪くらしの今昔館へ、皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo




〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



2026年9月16日水曜日

今週の今昔館(507) 大大阪時代のまちづくり(18) 長期臨時休館中です 20260916

〇大阪くらしの今昔館を応援する一個人による非公式ブログです。


〇大大阪時代のまちづくり(18)

 第二次市域拡張直前である1924年(大正13年)発行の大阪市パノラマ地図と、その12年後1936年(昭和11年)発行の大大阪観光地図などの古地図を見比べながら、大大阪時代の大阪のまちづくりを振り返っています。今回は電気大博覧会と市立運動場を取り上げます。

 電気大博覧会は、1926年(大正15年)3月20日から5月31日に大阪市で開催された電気に関する博覧会。社団法人日本電気協会関西支部が主催し、総裁に閑院宮載仁(ことひと)親王、副総裁に清浦奎吾、会長に田健治郎を迎えて行われ、来場者数は2,900,862人を数えました。
 港区築港の田中及び八幡屋を第一会場、天王寺公園を第2会場として開催されました。第一会場は、大阪市西部の開発を進めていた安治川土地(株)が、その土地発展策として市電築港線間の埋め立て20万平方メートル敷地を提供し、会場が市街地というのは当時としては珍しいことでした。

電気大博覧会会場図(国際日本文化研究センター蔵)
電気大博覧会内容一班
会場拡大図
本館付近拡大図
外国館付近拡大図
池付近拡大図

 第1会場は4地区に分け、南西部を本会地帯、西部を外国館地帯、東部を遊園地帯、東北部を余興地帯とし、全地帯を区切るように運河をめぐらせ、橋によって各地区を連結しました。

 第1会場本館前には、電氣を象徴するフランクリンの像が立つ大噴水と、本館、実験館、電力館、動力館、交通館、家庭電化館、保健衛生館など大小150余館が建てられました。
 建物は全て武田五一博士の設計のもとで、「東洋趣味を多分に加味せるスパニッシュ・ミッション方式」が日本で初めて採用されました。この方式は無用の修飾を避けるデザインで、工事費節減を図ったうえ、随所に照明設備が施されました。
 外国館地帯には殖民館、外国館とシンボルの水晶搭が屹立しました。

 また、第2会場の天王寺公園では既設の勧業館が本館に使用され、電気関係の展示即売を行いました。正門入り口に航空館が建てられました。

 電気大博覧会内容一班から、会場に建設されたパビリオンを見てみましょう。
【第一会場】
敷地5万坪、運河水面1万坪、附属競技場1万坪
本館(811坪) - 電気機械照明類。入り口前には電気を象徴するベンジャミン・フランクリン象のたった噴水があった。
交通館(200坪) - 電鉄沿線、パノラマ。
動力館(200坪) - 模型及び外国製品。
別館(240坪) - 船用及び無電気類。
参考館(300坪) - 統計及び官庁出品。
実験館(112坪) - 印刷及び電気実演。
第二別館(300坪) - 計器及び家庭器具。
農事電化園(2,000坪) - 農事電化機械。
家庭電化館(112坪) - 家庭電気応用機。
殖民館(120坪) - 殖民地特産物類。台湾館や朝鮮館、シンボルの精華水晶塔が建てられた。
外国館(312坪) - 外国製諸機械類。
水晶塔(9坪) - 高さ100尺、採水落下。夜間には電飾が見られた。
保険衛生館(62坪) - 電気医療器具類。
その他出品 - 水力電気模型、エレベーター高塔(200尺)、ラジオホール、電気温泉(400坪)、館外出品(川北電気、電業社、荏原製作所、日本エレベーターなど)
余興設備 - 演芸館(216坪)、第二演芸館(200坪)、野外余興場(25坪)、第一奏楽堂(14坪)、第二奏楽堂(18坪)、大海運動館、コドモ電車、世界一周、お伽園、シープレーン、電気温泉

【第二会場】
会館及び周辺地帯3,000坪
本館(勧業館) - 電気関係出品、各国特産品、ラジオ関係出品。即売も行われた。
朝日航空館
余興設備 - 公会堂が当てられた。

乃村工藝社博覧会資料COLLECTIONより
乃村工藝社博覧会資料COLLECTIONより
乃村工藝社博覧会資料COLLECTIONより

 最初にご紹介しました「電気大博覧会会場図」は、
・電気大博覧会会場全景図絵
・大大阪市街電鉄線路図
・三電力送電線路図
・郊外電鉄線路図
という長いタイトルの地図の裏面です。
 裏面の全体は、以下のように、地図の周りに広告が入っています。広告主を見てみると、住友電線、マツダ瓦斯入電球、サン瓦斯入電球、電光ステッキ、川北電機扇など、電気関係の広告が並んでいます。

電気大博覧会会場全景図絵の裏面:電気大博覧会会場全図(国際日本文化研究センター蔵)

 表面の方には、いろいろな情報が詰まっています。丁寧に見ていきましょう。タイトルの下のビオフェルミンの広告が目立ちますが、大口のスポンサーだったのでしょう。

電気大博覧会会場全景図絵他(国際日本文化研究センター蔵)

 まず、タイトルを拡大して確認します。手前に桜の花と建物群があり、後方に電柱や送電線が描かれています。

長いタイトル

 中央の大きな地図を拡大してみてみましょう。京阪間、阪神間、和歌山付近です。いろいろの色で線が描かれています。当時は鉄道は走っていましたが、高速道路はありません。国道かなとも思いますが、どうも違います。

京阪間拡大図
阪神間拡大図
和歌山付近拡大図

 答えは、こちらの凡例にあります。電気博覧会ですから、電力会社の送電線の経路が表示されているのです。当時は、宇治川電気、日本電力、大同電力の3つの電力会社があったので、色分けされています。
 3つの会社の概要も紹介されています。

凡例および電力会社一覧

 この表の上には、鉄道会社の一覧と、概要説明があります。大阪市電、南海鉄道、大阪鉄道(大鉄:現在の近鉄南大阪線)、大阪電気軌道(大軌:現在の近鉄奈良線、大阪線)、京阪電気鉄道、新京阪鉄道(現在の阪急京都線、千里線)、阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)、阪神電気鉄道が、掲載されています。

鉄道会社一覧

 紙面の右下に、ピンク色の路線地図があります。大大阪市街電鉄線路図です。大阪市内の市電と私鉄(郊外電車)、省線(国鉄:現在のJR)の路線が描かれています。電気大博覧会の第一会場、第二会場の位置も表示されています。

大大阪市街電鉄線路図

 この地図は、「大正広重」として知られる吉田初三郎氏によって描かれた鳥瞰図です。初三郎の地図には必ず富士山が描かれているといわれますが、この地図にも、ちゃんと富士山と東京が描かれています。

東京と富士山

 青森付近には、函館の後方に、カラフトの文字。

青森付近

 敦賀付近には、当時の航路が描かれ、後方には、ウラジオの文字が見えます。

敦賀付近

 九州付近には、「初三郎作」のサインがあり、下関から釜山への航路があります。後方には、朝鮮、台湾の文字が見えます。
初三郎作のサイン、九州・朝鮮・台湾

 このように、この地図には見どころが満載です。みなさんで、地図探偵をお楽しみください。この地図はこちらからご覧ください。
https://lapis.nichibun.ac.jp/chizu/map_detail.php?id=002239648

 電気大博覧会の会場に戻って、会場は港区のどのあたりにあったのか、探ってみます。
 博覧会開催後の昭和3年(1928)の空中写真を見てみましょう。長屋がびっしりと立て並んでいる中に、運河と運動場が目に付くと思います。

昭和3年空中写真

 上の写真と、会場図を見比べると、両方に描かれている運河と運動場の位置関係から、電気大博覧会は現在の八幡屋公園付近で開催されたことがわかります。

電気大博覧会会場図(国際日本文化研究センター蔵)

 大阪市立運動場は、大正12(1923)年から昭和39(1964)年頃まで大阪市港区にあった陸上競技場で、27,000席のスタンドを持ち、完成当初東洋一の規模とされる施設で、絵はがきにもなっています。1964年以降、長居公園陸上競技場に施設を集約したため、運動施設としては放棄されました。その後数回、国際見本市の会場となりました。
 1972年には「八幡屋交通公園」として整備され、1997年開催のなみはや国体に合わせて、1996年に敷地内に「大阪市中央体育館」と「大阪プール」が完成。八幡屋公園と呼ばれるようになりました。

大阪市立運動場(絵はがき:大阪市立図書館蔵)

 今昔マップを使って、会場周辺の変遷を見てみましょう。左上の明治42年には、明治36年に開通した市電の線路と夕凪橋、朝潮橋、千舟橋の停留所があります。周りは干拓による水田でした。右上の昭和7年には市街地化が進み、運動場が描かれています。左下の昭和42年では、地下鉄中央線が開通し、朝潮橋駅があります。安治川沿いには貨物線の線路が見えます。右下の平成7年では、阪神高速大阪港線が開通しています。

今昔マップで見る会場付近(M42、S7、S42、H7)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図と昭和11年発行の大大阪観光地図で、会場付近を見てみましょう。パノラマ地図では市立運動場と運河、市電の路線が確認できます。博覧会の開催前です。

大阪市パノラマ地図(1924・T13)の会場付近

 大大阪観光地図では、博覧会終了後、市立運動場以外は市街地に戻っています。千舟橋の傍に市電の築港車庫があります。

大大阪観光地図(1936・S11)の会場付近

 最後に、最新の国土地理院地図を掲載しておきます。

国土地理院地図の八幡屋公園付近



〇大大阪時代のまちづくり(バックナンバー)
 2025年が大阪市の第二次市域拡張から100周年に当たることから「大大阪時代のまちづくり」の連載を始めました。
(1) はじめに
(2) 大阪城天守閣
(3) 中央卸売市場
(4) 四ツ橋
(5) 拡張前後の大阪市域
(6) 大阪市パノラマ地図に見る拡張前夜の大阪市
(7) 大大阪観光地図に見る拡張後の大阪市
(8) 御堂筋の淀屋橋付近
(9) 御堂筋の本町付近
(10) 御堂筋の心斎橋付近
(11) 御堂筋の難波駅付近
(12) 御堂筋の梅田新道付近
(13) 大阪駅の高架化と貨物駅の建設
(14) 京阪電鉄の複々線高架化
(15) 中之島の東部
(16) 中之島の西部
(17) 大大阪記念博覧会


〇大阪くらしの今昔館は、長期臨時休館中です。
2026年9月1日(火)~2027年1月5日(火)は、エスカレーターおよびエレベーターの更新工事ならびに館内各所の設備改修工事を実施するため臨時休館となります。ご注意ください。

※開館は令和9年(2027年)1月6日(水曜日)からを予定しています。
 なお、工事の進捗状況等により、休館期間を変更する場合があります。ご利用の皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。


〇おかげさまで開館25周年!!
 大阪くらしの今昔館は2026年4月26日(日)に開館25周年を迎えました。これまで多くの皆さまにご来館いただき、心より感謝申し上げます。

 開館25周年の節目を迎えた大阪くらしの今昔館へ、皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo




〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html