2019年2月26日火曜日

今週の今昔館(152) 堀川備前陣屋 0190226

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(57)

 今回は、「堀川備前陣屋」をご紹介します。

■堀川備前陣屋(芳雪画)
 天満地域を南北に貫いていた天満堀川は、北は扇町公園付近で行き詰まりになっていましたが、天保9年(1838)北東方向に延長されて大川につなげられました。
 そのころ扇町公園付近の天満堀川に沿った綿屋町に設けられたのが備前岡山藩の蔵屋敷で、錦絵画面の右奥には蔵屋敷に船を直接入れるための舟入の水門と、それをまたぐように設けられた舟入橋が見えます。堀端には桜が植林され、美しい景観をなしていました。
 明治の廃藩以降、蔵屋敷跡地は堀川監獄として利用され、後に扇町公園として生まれ変わり、市民の憩いの場となっています。堀川のほとんどは阪神高速道路守口線に転用されています。

浪花百景「堀川備前陣屋(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。大川から北へ「ホリ川」が延びています。東天満の北で東に折れ曲がり、天神橋筋を越えたところで行き止まりになっています。曲がり角の所に「ゴモク山ト云」という文字が見え、ごみの山の絵が描かれています。堀川が淀川とつながるのは天保9年ですので、完成前の途中まで掘り進められた状態が描かれています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖では、天満堀川は女夫池の西側で行き止まりになっています。女夫池が埋め立てられ堀川が淀川とつながる以前の様子が描かれています。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、地図の右下から北へ延びてきた天満堀川は扇橋の手前で直角に曲がり「めうとばし」を超えたあたりから北東へ延びています。監獄が堺へ移転したのち、公園として整備される前の姿が描かれています。天神橋筋の商店街の一筋西側に市電が通る大通りが整備され、扇橋に停留所があります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、梅田から東へ延びてくる大通りができて市電が通り、扇橋停留所で南北線と交差しています。扇町公園が整備され、周りには衛生試験所、工業研究所、電気局病院や学校が建設されています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、川崎村と北野村の間に堀で囲まれた備前岡山藩の蔵屋敷の跡地が陸軍の用地となっています。天神橋筋沿いには家屋が並んでいますが、そのほかはほとんどが農地だった様子が分かります。

明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の備前岡山藩蔵屋敷周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、蔵屋敷の跡地が堀川監獄として利用されています。監獄の北には農地が残っています。
 右上の昭和4年では、市街地化が進み、市電の通る大通りが東西、南北と斜め方向に通り、地図中央上部の天神橋筋六丁目でクロスしています。天神橋筋六丁目から西へ伸びている鉄道は阪神北大阪線です。監獄の跡地には公園が整備され、公共建築が建てられています。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、扇町公園より南側から大川を越えて東側にかけては戦災の被害を受けて建物が焼失しています。天神橋筋六丁目から中崎町にかけては戦災を免れています。
 右下は昭和42年ですが、市電の南北線が廃止され梅田から天六、都島へ伸びる東西線と、天六から西へ伸びる阪神北大阪線は残っています。扇町公園には大阪プールの建物が描かれています。


 写真中央の公園が扇町公園で、天満堀川が昭和43年(1968)に埋め立てられ、その跡地の上空を阪神高速道路の守口線が通っています。扇町公園の南東で直角に折れ曲がっていた堀川の形がそのまま高速道路となっています。

国土地理院の空中写真

 現在の扇町公園付近を写真で見てみましょう。最初の写真は公園の南西角から北東を見たもので、正面のガラス張りのビルは関西テレビ(カンテーレ)です。

現在の扇町公園
大阪プールのモニュメント
現在の扇町プール
扇町公園
扇町公園

 最寄り駅の大阪メトロ扇町駅構内には、カンテレとメトロのコラボレーションによる展示があります。

最寄り駅の大阪メトロ扇町駅構内


 今回は、「浪花百景」の「堀川備前陣屋」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「天満監獄址」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」終了しました。多くの皆様のご来場ありがとうございました。

〇次回の企画展は「モダン都市大阪の記憶」
 2019年3月2日(土)~4月7日(日)


 今も昔も、大阪は魅惑的なビジュアルに満ちています。美しくパッケージされた商品、目を引く広告パンフレット、凝ったディスプレイ、豪華な百貨店建築、橋や道路、地下鉄などの都市基盤も含め、それらは形態、形象、記号の宝庫であり、往時のグラフィックからは華やかな時代の息吹が感じられます。
 本展では、橋爪節也氏のコレクションから、明治~昭和期の絵画・チラシ・ポスター・雑誌などを紹介し、当時の写真とともに近代大阪を振り返ります。百貨店、劇場、花街、交通など、さまざまな見所を持つモダン大阪を、グラフィックをたよりにそぞろ歩いてみませんか。



〇今週のイベント・ワークショップ

2月27日(水)~3月2日(土)、4日(月)、6日(水)~9日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月3日(日)、10日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



3月3日(日)
イベント 今昔館のひな祭り

ひな祭りを祝おう
①13時②15時
中学生以下対象
参加費無料
※各回先着20名 当日、12時~8階受付にて、整理券を配布します


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜

時 間:13:00-16:00


3月9日(土)
ワークショップ 『木の継ぎ方を知ろう』

13時30分~15時
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費無料

3月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2019年2月19日火曜日

今週の今昔館(151) 北妙見堤 20190219

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(56)

 今回は、「北妙けん堤」をご紹介します。

■北妙けん堤(国員画)
 天満地域には南北に延びる天満堀川が天満宮の西側にあり、南は堂島川につながり北は扇町公園付近で行き詰まりになっていました。この堀は天保9年(1838)東北方向に延長されて大川につなげられ、大小2つの池、女夫池が埋め立てられました。大塩平八郎の乱後の窮民救済を兼ねた事業であったといわれます。
 妙見堤はその間の堤で、そこに能勢候の天満屋敷が造られ、邸内に能勢妙見の本尊を勧請し妙見堂を建立しました。午の日には妙見参りの人が大勢訪れ、縁日、夜店も立って、大層な賑わいでした。「浪華の賑ひ」にも「堀川」として描かれています。
 新しい堤は妙見堂にちなんで妙見堤と呼ばれました。ここには桜が植えられ、春には花見客で賑わいましたが、現在堀は埋め立てられて道路となり、上には高速道路が通っています。堤も桜も姿を消しましたが、妙見堂は現在も高速道路を背に残っています。

浪花百景「北妙けん堤(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

浪華の賑ひ「堀川」(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。大川から北へ「ホリ川」が延びています。東天満の北で東に折れ曲がり、天神橋筋を越えたところで行き止まりになっています。曲がり角の所に「ゴモク山ト云」という文字が見え、山の絵が描かれています。堀川が淀川とつながるのは天保9年ですので、完成前の途中まで掘り進められた状態が描かれています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖の範囲は、中野村、源八渡あたりまでですが、堀川の北端から淀川に向かって細い水路が東に延びています。水路の先には源八渡があります。その中間に「女夫池」が描かれています。女夫池が埋め立てられ堀川が淀川とつながる以前の様子が描かれています。この地図の赤丸辺りを北東から南西に向かって堀川が掘られました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)
 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、淀川から分かれている天満堀川が描かれ、堀川には「ひのくちばし」「ながえばし」「ほくたつばし」「めうとばし」が架かっています。「扇橋」には市電の停留所がありました。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、「樋之口町」の「町」のところで淀川から分岐した堀川が、「扇橋」に向かって流れています。この間の堤が、「妙見堤」と呼ばれていました。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、国分寺村と川崎村の間を流れている水路が天満堀川です。天神橋筋、天満橋筋沿いに家屋が並んでいますが、そのほかはほとんどが農地だった様子が分かります。

明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の樋ノ口周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、天満堀川の両岸には紡績会社などの工場が建ち並んでいます。
 右上の昭和4年では、堀川周辺には工場がさらに増えてびっしりと建っています。刑務所が堺に移転し、跡地が公共施設や公園になっています。

明治41年から最近の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、淀川右岸の北区天満駅周辺は戦災を免れています。
 右下は最近の国土地理院地図です。天満堀川が埋め立てられ、その上空を阪神高速道路12号守口線が通っています。紡績会社の跡地がマンションや戸建て住宅地になっています。


 天満堀川は昭和43年(1968)に埋め立てられ、その跡地の上空を阪神高速道路の守口線が通っています。写真の右上から左下にかけてです。淀川から離れる赤丸の辺りが樋ノ口のあったところで、そこから左下部分が堀川の跡地です。写真左中央の公園は扇町公園です。

国土地理院の空中写真

 現在の堀川跡地付近を写真で見てみましょう。最初の3枚の写真は「妙見堤」の命名のもととなった「妙見堂」の現在の姿です。高速道路を背にして建っています。

現在の妙見堂
現在の妙見堂
現在の妙見堂

 堀川は埋め立てられ、その上空を阪神高速道路守口線が通っています。

堀川跡の上空には阪神高速道路
堀川跡の上空には高速道路

 天神橋筋商店街が天満堀川を跨ぐ地点に夫婦橋が架かっていました。夫婦橋から南へ向かうと、天三、天二、天一、天神橋です。天神橋筋一丁目を省略して「天一」といいます。大阪では、大阪城に近い方から1丁目、2丁目・・・と呼ばれます。大阪城より北の地域では、南から1丁目、2丁目となります。

夫婦橋跡から南を見る

 夫婦橋から北へ向かうと、天四、天五、天六、天六には大阪くらしの今昔館があります。都島通りを越えて、天七、天八です。

夫婦橋跡から北を見る

 夫婦橋の北詰、南詰には、夫婦橋跡の碑があります。

夫婦橋跡の碑(北詰)
夫婦橋跡の碑(南詰)
碑の隣にはかわいい石像が


 今回は、「浪花百景」の「北妙けん堤」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「天満堀川」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。残りわずかとなりました。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

2月20日(水)~23日(土)、25日(月)、27日(水)~3月2日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

2月24日(日)、3月3日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


2月23日(土)
ワークショップ 『ミニ雛人形を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人400円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

2月24日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 、他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00



3月3日(日)
イベント 今昔館のひな祭り

ひな祭りを祝おう
①13時②15時
中学生以下対象
参加費無料
※各回先着20名 当日、12時~8階受付にて、整理券を配布します

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2019年2月12日火曜日

今週の今昔館(150) 天満樋の口 20190212

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(55)

 今回は、「天満樋の口」をご紹介します。

■天満樋の口(芳雪画)
 天満堀川は慶長3年(1598)に開削されてから長らく綿屋町付近で堀留となっており、その北端部に塵芥がうず高く積もり「ごもく山」と呼ばれるまでになっていました。天保9年(1838)堀川を東へ延伸し大川に通じさせ、合流地点には樋門(樋の口)が設けられました。水は澄み、屋形船が通ずるようになり、堤に新しく桜が植えられると、川崎の木村堤まで桜並木が連なり、対岸の桜ノ宮とをあわせ絶好の花見の名所となりました。
 とくに堀川が大川に通じる地点の「樋の口」の堤は一面の芝が広がり、菜の花、名月、雪と四時の景を備え、行楽客の人気も高く、「浪華の賑ひ」は、「げにその始めを知るものはそこにあらざるやと疑うばかりの景地となれり」と評しています。

浪花百景「天満樋の口(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

浪華の賑ひ「堀川」(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。大川から北へ「ホリ川」が延びています。東天満の北で東に折れ曲がり、天神橋筋を越えたところで行き止まりになっています。曲がり角の所に「ゴモク山ト云」という文字が見え、山の絵が描かれています。堀川が淀川とつながるのは天保9年ですので、完成前の途中まで掘り進められた状態が描かれています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖の範囲は、中野村、源八渡あたりまでですが、堀川の北端から淀川に向かって細い水路が東に延びています。水路の先には源八渡があります。その中間に「女夫池」が描かれています。女夫池が埋め立てられ堀川が淀川とつながる以前の様子が描かれています。この地図の赤丸辺りが淀川との分岐点となる樋ノ口です。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、地図の北の端に市電が通る都島通りが描かれています。都島橋の下流で西に分かれている水路が天満堀川です。分岐点は「樋ノ口」と呼ばれ、堀川には「ひのくちばし」「ながえばし」「ほくたつばし」「めうとばし」が架かっています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、市電の「淀川」停留所のところに「天満橋筋六丁目」の文字があり、その右手には「樋之口町」があります。「町」の文字の所で淀川から天満堀川が分岐しています。ここが「樋ノ口」です。樋ノ口は町の名前や橋の名前にもなっていました。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、国分寺村と川崎村の間を流れている水路が天満堀川で、淀川との分岐点の堤防の傍に水門が描かれています。これが樋ノ口です。天神橋筋、天満橋筋沿いに家屋が並んでいますが、そのほかはほとんどが農地だった様子が分かります。

明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の樋ノ口周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、天満堀川の両岸には紡績会社などの工場が建ち並んでいます。淀川左岸には大阪市の水道発祥の地である水源地があります。
 右上の昭和4年では、堀川周辺には工場がさらに増えてびっしりと建っています。水源地の跡が淀川駅(貨物駅)となっていて、入堀が描かれています。水陸の交通の結節点でした。

明治41年から最近の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、淀川左岸の都島区側は戦災によって焼失していますが、右岸の北区天満駅周辺は戦災を免れています。
 右下は最近の国土地理院地図です。天満堀川が埋め立てられ、その上空を阪神高速道路12号守口線が通っています。紡績会社の跡地にマンションが建っています。


 現在の樋ノ口付近を写真で見てみましょう。最初の写真は都島橋から南側(下流側)を眺めたところです。阪神高速道路が川から離れていくところ、高速道路左手のマンションと右手の「おおきに」の看板のあるビルの間あたりが樋ノ口のあったところになります。 

都島橋より天満樋ノ口を望む

 地上からの写真だけではわかりにくいので、国土地理院の空中写真を見てみましょう。写真の右上から左下に向かって阪神高速道路の守口線が通っています。守口線は天満堀川が埋め立てられた跡の上空を通っています。淀川から離れる赤丸の辺りが樋ノ口のあったところです。

国土地理院の空中写真

 今回は、「浪花百景」の「天満樋の口」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「ひのくちばし」や「天満堀川」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。残り少なくなってきました。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

2月13日(水)~16日(土)、18日(月)、20日(水)~23日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

2月17日(日)、24日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


2月16日(土)
ワークショップ 『上方舞体験会』

14時~15時
参加費:2000円
本格的な上方舞の体験会です。
申込方法
・インターネット
「住まい・まちづくり・ネット」よりお申込ください

・はがき又はFAXに以下の必要事項をご記入の上、大阪くらしの今昔館までお申込みください
郵便番号、住所、氏名(ふりがな)、電話番号、年齢
申込期間:1/6~2/6
※いただいた個人情報は目的以外に使用いたしません。

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00


2月17日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


イベント 町家でお茶会
     町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。
協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
13時~15時


2月23日(土)
ワークショップ 『ミニ雛人形を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人400円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

2月24日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 、他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00




そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
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 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
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 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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初めての方はこちらからどうぞ。
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