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〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(20)
今回は「浪華の賑ひ」の「戎橋」をご紹介します。
■戎橋
この橋すぢは今宮の戎に参詣の正当(しょうとう)なるがゆゑにかくは名づけしものなるべし。南詰を九郎右衛門町といひ、南に続きて難波新地、北は島の内心斎橋通りにして、魚類の貸食屋(りょうりや)・精進の茶漬屋・蕎麦屋・鮓(すし)店・煎売店(にうりみせ)・油浴(あぶらあげ)・麩の焼き・菓子・饅頭・日用の雑具(ぞうぐ)・小間物類何くれとなく商(あきなひ)店軒をつらね、夜は軒前に出店ありて、種々を商ふ。これを夜店といふ。
船場順慶町の通りよりして、心斎ばしすぢ及びこの戎ばしに至るまで、左右の出しみせ透間(すきま)なく賑はへる事、あたかも鼎(かなへ)の煮ゆるがごとし。なかんづく、食物の店多きは、諺にいはゆる大坂の一癖(いつべき)なるべし。
浪華の賑ひ「戎橋」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
浪花百景に描かれている道頓堀は、前回ご紹介した2枚ですが、戎橋から心斎橋筋を北へ進み、左手にある「松屋呉服店」(現在の大丸百貨店の前身)が描かれています。
■松屋呉服店(芳瀧画)
松屋呉服店は大丸の前身。大丸は享保2年(1717)に下村彦右衛門が京都伏見において開いた大文字屋呉服店が発祥です。心斎橋の大坂店は9年後の同11年(1726)に開設されました。西陣のものを主力として南の芸人衆や遊郭筋を目当てに商いをし、老舗呉服屋の松屋を吸収するまでになりました。明治末まで屋号は「松屋」と「大丸」を併用していましたが、商標は大文字屋の称号にゆかりの深い「〇に大」を用い、人々は「大丸」と呼びならわしました。
暖簾を見ると江戸や名古屋にも支店を持っていたことがわかります。心斎橋筋には小大丸や十合(そごう)など同業が大店を出し、商都大坂の一端を担っていました。豪商であったにもかかわらず、救民義捐に尽くす義商として知られていたため、大塩平八郎の乱の際にも襲撃をまぬがれたといわれます。
浪花百景「松屋呉服店」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、道頓堀の南に「竹田」「若太夫」「角」「中」「チクゴ」の五座が描かれ、道頓堀川沿いはモデルルートになっています。
道頓堀川には、上流側の東から「下大和バシ」「日本バシ」「太左エ門バシ」「戎バシ」「大コクバシ」が架かっています。
道頓堀川を挟んで北側の島之内には、「大丸呉服店」「シキブ」「ヲグラヤ」などの名店が記されています。戎橋の北西方面には「三津寺」「三ツ八マン」が描かれています。
浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、道頓堀には「相合バシ」も架かっています。島之内には南北方向に町の名前が書かれています。
天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵) |
大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」では、千日前通と堺筋に市電が走り、道路が拡幅されています。戎橋の南は戎橋筋で、今宮戎神社への参道となります。北は心斎橋筋で、大丸・十合(そごう)が描かれています。
大阪市パノラマ地図(国際日本文化研究センター蔵) |
昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、御堂筋が拡幅されて地下鉄が開通しています。
丸囲みの文字で示された観光地として「道頓堀」「心斎橋筋」のほかに「大丸」「高島屋」「文楽座」「歌舞伎座」などの文字が見えます。
大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵) |
今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
左上の明治42年では、町割りは江戸時代の面影が残っています。
右上の昭和7年を見ると、堺筋と千日前通が拡幅されて市電が走っています。御堂筋はまだ拡幅されていません。
明治41年から最近の地形図(今昔マップ3より) |
左下の昭和42年を見ると、全域が戦災から復興して市街地化しています。拡幅された御堂筋が描かれ、千日前通の市電はまだ健在ですが、堺筋の市電は廃止されています。
右下の最新の地理院地図では、御堂筋・堺筋・四つ橋筋・千日前通に地下鉄が通り、高速道路網もできています。
現在の様子を写真で見てみましょう。
戎橋付近には、名所や旧跡が多くあります。代表例として、松竹座、かに道楽、中座くいだおれビル、道頓堀安井、浮世小路、㐂川(きがわ)、法善寺などをご紹介します。
戎橋 |
道頓堀通 |
松竹座 |
道頓堀通 |
かに道楽の前に2025EXPO |
インバウンドに人気のたこ焼き |
中座くいだおれビル |
うどんの「道頓堀安井本店」 |
浮世小路 |
法善寺横丁「㐂川(きがわ)」 |
花月発祥の地の碑 |
織田作之助の碑 |
法善寺 |
水掛不動尊 |
今回は、「浪華の賑ひ」の「戎橋」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。
〇今週のイベント・ワークショップ
10月23日(水)~26日(土)、28日(月)、30日(水)~11月2日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
10月22日(祝)、27日(日)、11月3日(日)、4日(月・振替休日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
10月26日(土)
ワークショップ『バランスとんぼ』
①13時30分 ②14時30分
各回先着10名、参加費:200円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します
10月27日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00
11月3日(日・祝)
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00
イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時
〇貸しギャラリーについて
大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
催し物のご案内はこちらからどうぞ。
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/index.html
「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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