大阪くらしの今昔館は、天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されています。前回に引き続き近代のフロアの見どころをご紹介します。
今回は、大阪市パノラマ地図から、ちょっとマニアックな場所をご紹介します。鳥瞰図ですので左上が北になっています。
下の地図は大阪市パノラマ地図の岩崎橋付近を拡大したものです。地図の中心の赤丸印の場所には当時瓦斯会社のガスタンクがありました。さて、クイズです。
A 現在、この場所はどうなっているでしょうか?
B 江戸時代の天保年間には何があったでしょうか?
C タンクの左の川は現在どうなっているでしょうか?
解答と解説
A 京セラドーム大阪、ドームシティおよびドームシティーガスビル。大阪ドームは1997(平成9)年3月1日にオープンし、2006年7月1日からネーミングライツにより「京セラドーム大阪」になりました。
B 九条村に属する寺嶋田地、岩崎新田。江戸時代の干拓によって新田となった地域です。
C タンクの左手、発電所との間の川は尻無川で、現在は埋め立てられ、その上に京セラドーム大阪が建っています。
ここは、大阪ガスの発祥の地で、ここから大阪市内(3200戸余)へガス供給を開始したのは、1905年(明治38年)のことでした。
浪華名所獨案内の九条付近(上が東) |
天保新改攝州大阪全圖の九条付近(上が北) |
明治42年、昭和30年、昭和42年地形図と地理院地図に見る千代崎付近(今昔マップ3) |
大阪ガスのHPによると、設立は、明治30(1897)年4月10日、資本金35万円をもって大阪市西区に設立。明治38(1905)年10月19日、ガスの供給を開始。お客さま数は3,351戸。
創業の地・大阪市西区には記念碑が建立されており、また京セラドーム大阪のそばにドームシティーガスビルが建設されています。
大阪市西区千代崎3丁目の地下鉄長堀鶴見緑地線・ドーム前千代崎駅の南100m、大阪ドームのメインエントランスに通じる通路の角に自然石に「大阪ガス発祥の地」と刻まれた記念碑が建っています。ここは 都市ガスを大阪市内に初めて供給した大阪ガス発祥の地で、1997(平成9)年にオープンした“大阪ドーム”は, 都市ガスの天然ガス化の流れの中で, 余剰となったガス工場(岩崎町工場)の土地を転用して造られました。
大阪ガス発祥の地石碑とガス灯 |
大阪ガス発祥の地石碑 |
大阪ガス発祥の地石碑碑文 |
碑文には、「大阪ガス発祥の地 明治38年(1905年)10月19日 この地に建設された「岩崎町工場」から大阪市内の3200戸余のお客さまに初めてガスの供給が開始された。この当社発祥の地が今や大阪の文化 情報の発信拠点として大きく生まれ変わることを記念しこの石碑を建立する。平成9年3月 大阪ガス株式会社」 とあります。
ドームの周辺を北から時計回りに見ていくと、イオンモール(ここはかつてアミューズメント施設Padou(パドゥー)があった場所)、ハグ・ミュージアム、ドームシティガスビル、ガスタンク、Osaka Metro本社ビル、九条変電所、大阪市消防局などがあります。前半にガス関係、後半に電気関係の施設が多いことにお気づきの方も多いと思います。なお、大阪市消防局庁舎は、交通局の前身である大阪市電気局庁舎の跡に建設されました。電気局の事業は、Osaka Metroと、関西電力に引き継がれています。
もう一度、大阪市パノラマ地図を見ると、中央を南北に尻無川が流れており、右に「瓦斯會社」、左に「発電所」と「九条車庫」の文字が見えます。手前には左右(東西)に境川運河が通じています。この付近は水運の便がいい場所で、尻無川を挟んで東に瓦斯、西に電気(市電・電燈用電気)の発祥の地があります。ここは大阪の近代産業のルーツと呼べるのではないでしょうか。
昔の地図を見ながらのまち歩き、古地図を片手に、スマホをお持ちの方はスマホに古地図を取り込んで、いろんな所へちょっと出かけてみませんか?
スマートフォン(iPhone、アンドロイド)をご利用の方は、「こちずぶらり」というアプリを利用すると、GPS機能によって地図上に現在位置を表示させることができます。まち歩きの際などにその場所に昔は何があったかを現地で確認することができて便利です。
大阪くらしの今昔館8階の近代のフロアの中央に、大阪市パノラマ地図を拡大して床面に展示しています。パノラマ地図を見ながら、「昔は何があったのかな?」「今はどうなっているのかな?」と昔と今を比較して考えを廻らしてみるのも興味深いと思います。
大阪市パノラマ地図については、こちらに詳しい解説があります。
≫ http://konkon2001.blogspot.jp/2017/10/blog-post_10.html
≫ http://sumai-osaka.blogspot.jp/2015/08/blog-post_29.html
今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be
⇒https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4
〇企画展「商都慕情Ⅱ‐水のまち大阪を巡る -」開催中です
会期は今度の日曜日11月14日まで、残りわずかとなりました。
江戸時代、淀川は京都と大坂をつなぐ動脈として、人や物資が往来し、絵画にもよく描かれました。とくに、円山応挙が京都伏見から大坂天満橋までの両岸の光景を描いた絵巻がよく知られています(※)。この絵巻から昭和初期に大阪の絵師が6つの場面を模写していました。それが庭山耕園とその門人らによる「淀川両岸帖」です。当館はこの作品を2020年に新収蔵しました。収蔵後、本展が初公開となります。
大坂の市中には堀川が網目のように張り巡らされ、八百八橋と称されました。橋上や舟の上は町民にとって夕涼みや花火見物を楽しむ憩いの場でした。天神祭の船渡御の舞台も大川です。その熱気は江戸の浮世絵師歌川貞秀の錦絵にも描かれています。また、道頓堀の芝居をかける際に、役者が船に乗って市中を巡る「船乗込」も川筋で華やかに行われました。商いの流通や暮らし、そして文化が水とともにあった大坂。本展では大阪くらしの今昔館所蔵の絵画や錦絵を用いて、水都とよばれた大坂の情景を想起します。
※「淀川両岸図巻」公益財団法人アルカンシエール美術財団蔵(本展の出品はございません)
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日 :火曜日
会 場:大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)企画展示室
入館料 :(8階常設展示室の入場料を含む)
一般400円(団体300円)
高校生・大学生300円(団体200円)(要学生証提示)
(注)団体は20名以上
大阪周遊パスでもご入場いただけます。
中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料です。(要証明書提示)
【町家と茶室の展示】
企画展示室内には、江戸時代における大坂の商家座敷の再現や、重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵」の構造模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)など実物大の模型を設置し、2種の建築から住まいと暮らしの様相をお見せします。
淀川両岸帖(部分)庭山耕園他 |
よど川のすずみ船 菅 楯彦 |
浪速天満祭 歌川貞秀 |
『滑稽浪花名所』のうち ざこば魚市 芳豊 |
〇次回の企画展は「大工頭中井家伝来 茶室起こし絵図展」
会期:2021年11月19日(金)〜2022年1月16日(日)
わびの造形を極限にまでつきつめた草庵風茶室、それを書院にもちこみ洗練させた数寄屋風書院。いずれも現在の和室の原点とされています。本展覧会は、そうした茶室と数寄屋を、江戸時代の大工の手になる紙の建築模型「起こし絵図」によって紹介します。出品作品は、徳川幕府の京都大工頭として活躍した中井家に伝来したもので、国の重要文化財に指定されています(中井正知氏・中井正純氏蔵)。日本を代表する茶室、妙喜庵「待庵」、大徳寺龍光院「密庵」、大徳寺孤篷庵「忘筌」、大徳寺真珠庵「庭玉軒」や、現在は失われてしまった幻の茶室の「起こし絵図」も含まれています。同時に展示する茶室「蓑庵」(大徳寺玉林院・重要文化財)の実物大模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)と併せて、茶室と数寄屋の魅力をご堪能ください。
入館料 :(8階常設展示室の入場料を含む)
一般4 0 0円(団体3 0 0円)
高校生・大学生3 0 0円(団体2 0 0円)(要学生証提示)
(注)団体は2 0名以上
大阪周遊パスでもご入場いただけます。
中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の6 5歳以上の方は無料です。(要証明書提示)
【特別展関連講演会のご案内】
※何れの講演会も令和3年10月1日より募集を開始します。
講演会①
開催日:令和3年11月23日(火・祝)
◆中井家本「茶室起こし絵図」の建築史的価値(谷直樹氏/大阪くらしの今昔館前館長・大阪市立大学名誉教授)
◆「茶室起こし絵図」の保存修理(坂田さとこ氏/㊑坂田墨珠堂代表取締役)
詳しくはこちら
https://www.osaka-angenet.jp/event/145
講演会②
開催日: 令和3年12月25日(土)
◆数寄大名小堀遠州と大工頭中井大和守(谷直樹氏/前出)
◆大徳寺塔頭玉林院の茶室「蓑庵」と牌堂「南明庵」の建築にみる大工の技ー数寄屋大工と堂宮大工の協働ー(日向進氏/京都工芸繊維大学名誉教授)
詳しくはこちら
https://www.osaka-angenet.jp/event/146
〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ
大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
天井改修工事の実施に伴い、9月18日より令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。
・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し、茶室の実物大構造模型とともに展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。
・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
一般 400円 団体(20名以上)300円
高・大生 300円 団体(20名以上)200円 *要学生証提示
【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。
【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。
〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。今年で開館20周年を迎えました。
前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
こちらからどうぞ。
⇒ https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo
ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。
〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。
イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。
開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。
〇大阪くらしの今昔館を紹介する動画作成プロジェクトが「2021年度都市住宅学会賞・業績賞」を受賞しました
受賞対象は「歴史博物館から発信する大阪の町家と住文化の魅力-子ども・若者・外国人に町家と住文化を理解してもらうための動画制作プロジェクト-」です。
この動画制作プロジェクトは、2018年度に申請者らからなる博物館住まい学習研究会が「建築技術教育普及センター」の助成を受け、大阪くらしの今昔館の9階常設展示「商家の賑わい」で撮影・編集し、2019年3月に完成しました。ドイツ人留学生のザビ-ネさんがナビゲートし、今昔館ボランティア「町家衆」の皆さんが江戸時代の住民に扮して出演しています。その後、2019年7月からYouTubeで配信しました。
大阪くらしの今昔館を紹介する学習ビデオは、「なにわの町並み」、「町家の商い」、「町家のくらしとおもてなし」、「裏長屋のくらし」の4編(それぞれ日本語字幕版と英語字幕版)で構成されています。
〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
⇒http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf
このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be
〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw
〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
こちらからご覧ください。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be
〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
こちらからどうぞ。
⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/
「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
0 件のコメント:
コメントを投稿