2022年12月8日木曜日

今週の今昔館(348) 浪花風景十二月 臘月 雪中の松の鼻 20221208

〇今昔館の館蔵品紹介「浪花風景十二月 臘月 雪中の松の鼻」
 今回は、大坂の風景を12ヶ月の月別に描いた二代長谷川貞信(はせがわさだのぶ)による画帖「浪花風景十二月」から「臘月 雪中の松の鼻」をご紹介します。

 12ヶ月の月ごとの行事や風俗を主題として描く「月次絵」は、古くから屏風や襖絵、巻子などいろいろな形式で描かれてきました。
 今回紹介する画帖「浪花風景十二月」も、画帳の形式で1枚に1月づつ、江戸時代の大坂を象徴する景色や名所を季節感を織り交ぜながら描いています。
 二代長谷川貞信(にだいはせがわさだのぶ)の肉筆で、二代貞信は江戸時代から昭和初期の変化に富んだ時代の様子を書き残した浮世絵師として知られています。

 今昔館には同じく二代貞信が描き、本画帖と同じ寸法かつ類似の表装で仕立てられた「浪花行事十二月」も所蔵されており、2つの画帖は「対」もしくは「シリーズ」として製作されたことがうかがえます。

 本作品が描かれたのは貞信の最晩年の昭和14年(1939)ですが、描かれている様子は江戸時代の風景のため、本作は実像を見ながら描いているのではなく回顧して描いている点に留意する必要があります。しかし江戸時代の後期の大坂に生まれ、古くからの行事や風景に親しんで育った二代貞信の描写は、大阪のかつての風景を探る上で一定の信頼性があると考えられます。

■浪花風景十二月 臘月 雪中の松の鼻
 木津川と尻無川の間にあった九条寺島。その北端にある、水上に垂れた松の木が見事であることから「松の鼻」「松ケ鼻」と呼ばれました。松が生えている場所は恵比須祠の側です。樹齢300年におよぶ松を見物するために舟で遊客がよく訪れました。本図では雪の光景ですが、夏には水上で酒宴を行い、花火をあげて楽しんだといいます。寺島には舟大工が多く、造船が盛んでした。右奥には繋留され、雪が積もっている小舟、奥には大きな帆柱が描かれています。

(大阪くらしの今昔館研究紀要17号掲載の、学芸員服部麻衣さんの論文『資料紹介 二代長谷川貞信 「浪花風景十二月」』より)

※臘月(ろうげつ)は、陰暦十二月の異称です。「臘」とは「繋ぎ合わせる」という意味で、新年と旧年の境目となる旧暦12月を「臘月」ともいうそうです。

浪花風景十二月 臘月 雪中の松の鼻
(大阪くらしの今昔館蔵)


〇今昔館は10月29日から全面開館しています

 天井改修工事にともない閉鎖していた9階常設展室及び10階展望フロアが令和4年10月29日(土)から再開されています。

●入場料変更のお知らせ

令和4年10月29日(土)から通常料金になります

【一 般】600円(団体500円)
【高校生・大学生】300円(団体200円)

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)


〇企画展「なにわを語る 明治・大正・昭和の絵葉書」開催中です

 12月18日(日)まで。残り少なくなりました。

 日本の郵便制度は明治4年(1871)に始まり、明治6年(1873)には国内初となる官製葉書が発行されました。その後、明治33年(1900)に私製絵葉書の使用が認められると、風景や美人を題材にした絵葉書が人気を博し、各地で絵葉書専門店が登場するなど、人々の間に新たな大衆文化の1つとして浸透してゆきました。

 国内における絵葉書文化が花開くのと時を同じくして、大阪では明治36年(1903)の第五回内国勧業博覧会をはじめ、都市の近代化や大大阪時代の到来を象徴する絵葉書が次々に発行されたほか、作家たちによる「なにわ」の風俗を扱った芸術性の高い絵葉書なども登場し、大流行しました。

 本展では明治から大正、昭和にかけて発行された大阪ゆかりの絵葉書にスポットをあて、時代とともに移り変わる街の風景や建築、人々の暮らしや文化の醸成、趣味人たちの交流などを幅広く紹介します。絵葉書ならではの多様なジャンル、ユニークなデザイン、巧みな技法によって表現された魅力あふれる大阪の姿をお楽しみください。

 なお、本展は今年で創立20周年を迎える日本絵葉書会との共同開催展です。





〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画はこちらからどうぞ。
 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/@user-hm7hq2uu4o/videos
 https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



0 件のコメント:

コメントを投稿