2022年11月30日水曜日

今週の今昔館(347) 浪花行事十二月 霜月 番船 20221130

〇今昔館の館蔵品紹介「浪花行事十二月 霜月 番船」
 今回は、大坂の行事を12か月の月別に描いた二代長谷川貞信(はせがわさだのぶ)による画帖「浪花行事十二月」から「霜月 番船」をご紹介します。

 江戸時代の大坂には諸国の物産が集積し、商業によって富み栄えた商人たちは文化的にも豊かな生活を送るようになりました。年中行事や季節に応じた行楽、寺社への参拝と祭礼などを盛んに行いました。このような都市生活の様子は、名所絵や浮世絵として様々な画家によって残されています。ここでは今昔館が所蔵する資料の中から、大坂の行事を12か月の月別に描いた、二代長谷川貞信(にだいはせがわさだのぶ)による画帖「浪花行事十二月」を紹介します。

 作者の二代長谷川貞信は、嘉永元年(1848)に初代長谷川貞信の長男徳太郎として大坂に生まれました。慶応元年(1865)頃から小信の号で描き、明治8年 (1875)に父から貞信の名を譲り受け、二代長谷川貞信と称しました。
 父の初代貞信は役者絵や「浪花百景」などの風景版画の分野を得意として、幕末から明治初年にかけて上方浮世絵界で活躍しました。二代貞信もその伝統を受け継いで役者絵を主に描いています。その他に神戸名所、浪花名所、浪花十二景などの風景画、玩具絵、武者絵、美人画、『日々新聞』の挿絵や銅版画を手がけています。
 小信を名乗っている頃には、「播州神戸海岸繁栄之図」を初めとして神戸・大阪(川口)の居留地などを舞台に、鉄道、鉄橋、西洋館など明治初年の文明開化の風俗をよく描きました。また貞信を継いだ後は、錦絵新聞や西南戦争に題材を求めた錦絵を多く手がけました。銅版画や石版画が普及し、浮世絵の需要が衰えた明治10年(1877)以降には、商店の引き札や輸出茶の商標、芝居絵の番付なども描いています。昭和15年(1940)没。享年93。墓所は初代と同じ天鷲寺。法名は明徳院貞信遍照居士。

 「浪花行事十二月」は帙(ちつ)入りの折本(1帖)、絹本着色、法量は本紙縦14.5 x 横20.5cm(総寸 20.8 x 26.9cm)、目次を含めて13面の図で構成されています。目次には小信の落款が、各月の場面 には「九十二翁 貞信」の落款があります。本作品が描かれたのは貞信の最晩年である昭和14年 (1939)ですが、江戸時代の後期に生まれ、江戸時代の風景と風俗の面影を残す町で育った貞信は、江戸時代の大阪の様子を回顧するように描いています。

■浪花行事十二月 霜月 番船
 江戸で大量に消費される物資を供給するために、大坂から江戸へ輸送する海運業が発達しました。中でも新綿や新酒を積んだ番船は、大坂から江戸へ到着する早さを競った廻船のレースであり、その年の相場にも関わるため重視されました。本図は安治川岸の切手場に切手(参加証)を受取りに来た船頭の乗る上荷船と、それを見物する多数の屋形船や住吉講など群衆の祭騒ぎの様子を描いた場面です。
(大阪くらしの今昔館研究紀要16号掲載の、学芸員服部麻衣さんの論文『資料紹介 二代長谷川貞信 「浪花行事十二月」』より)

浪花行事十二月 霜月 番船
(大阪くらしの今昔館蔵)
(参考)菱垣新綿番船川口出帆之図
大阪市立中央図書館所蔵


〇今昔館は10月29日から全面開館しています

 天井改修工事にともない閉鎖していた9階常設展室及び10階展望フロアが令和4年10月29日(土)から再開されています。

●入場料変更のお知らせ

令和4年10月29日(土)から通常料金になります

【一 般】600円(団体500円)
【高校生・大学生】300円(団体200円)

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)


〇企画展「なにわを語る 明治・大正・昭和の絵葉書」開催中です

 2022年10月29日(土)〜2022年12月18日(日)

 日本の郵便制度は明治4年(1871)に始まり、明治6年(1873)には国内初となる官製葉書が発行されました。その後、明治33年(1900)に私製絵葉書の使用が認められると、風景や美人を題材にした絵葉書が人気を博し、各地で絵葉書専門店が登場するなど、人々の間に新たな大衆文化の1つとして浸透してゆきました。

 国内における絵葉書文化が花開くのと時を同じくして、大阪では明治36年(1903)の第五回内国勧業博覧会をはじめ、都市の近代化や大大阪時代の到来を象徴する絵葉書が次々に発行されたほか、作家たちによる「なにわ」の風俗を扱った芸術性の高い絵葉書なども登場し、大流行しました。

 本展では明治から大正、昭和にかけて発行された大阪ゆかりの絵葉書にスポットをあて、時代とともに移り変わる街の風景や建築、人々の暮らしや文化の醸成、趣味人たちの交流などを幅広く紹介します。絵葉書ならではの多様なジャンル、ユニークなデザイン、巧みな技法によって表現された魅力あふれる大阪の姿をお楽しみください。

 なお、本展は今年で創立20周年を迎える日本絵葉書会との共同開催展です。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画はこちらからどうぞ。
 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/@user-hm7hq2uu4o/videos
 https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys


 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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