2024年8月28日水曜日

今週の今昔館(438) 模型の現場を訪問しよう 古市中団地 20240828

〇常設展の展示替えによる臨時休館のお知らせ
 令和6年9月2日(月)~9月6日(金)の期間中は、常設展示室の展示替えのため臨時休館いたします。
 9月7日(土)から、9階常設展示は「商家の賑わい」の展示となります。
 なお、企画展示室では、引き続き9月7日(土)から10月14日(月・祝)まで、「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」を開催します。


〇模型の現場を訪問しよう 古市中団地

 大阪くらしの今昔館の近代のフロアには、模型やジオラマで、明治以降の近代大阪の住まいとまちづくりの歴史を展示しています。今回は、住まいの大阪六景のひとつ「古市中団地 -計画的団地の開発-」をご紹介し、模型のモデルとなった現場が、今どうなっているかを訪ねます。

古市中団地(住まいの大阪六景)

 戦災復興とこれに続く高度経済成長に伴う都市への人口集中に対応するため、数多くの公共住宅団地が建設されました。
 なかでも、昭和28(1953)年度から城東区古市の一角にある軍用地跡で建設が始まった市営古市中団地は、戦後の計画的団地開発のモデルとして全国的に大きな反響を呼びました。住戸・住棟計画・配置計画のみならず外構や色彩にも新しい試みが行われ、さらに学校や道路・公園なども含めた街全体を計画の対象とした計画の総合性が注目されました。


 設計者の久米権九郎氏がドイツ留学のおり、各地で街の美しさに大いに感銘を受け、古市中団地の設計にあたって変化に富んだ美しい街をつくることに主眼をおいたといわれます。土地区画整理事業に基づく格子道路や都市計画公園に大胆な変更を加え、通過交通の無い有機的な曲線を用いた道路パターンと街区構成が採用されました。住棟の階数は2階から5階まで変化を持たせ、アクセスも北入りと南入りを組み合わせています。給水塔も団地のシンボルとして造形上の配慮を行い、ジャングルジムなどの子どもの遊具にも意匠を凝らしています。水洗トイレやバルコニーなど近代的設備を備えた各住戸では新しいライフスタイルの暮らしが始まり、周囲からはあこがれの住宅として見られたといわれています。詳しくは、住まいのミュージアムができるまで「あこがれの鉄筋住宅ー 古市中住宅ー」をご覧ください。模型の制作に関わられた建築家の加藤恭子さん(故人)へのインタビュー記事となっています。あんじゅ19号(2004年夏号)に掲載されています。
https://www.osaka-angenet.jp/ange/ange19


 8階展示室の「くらしの道具の変遷」の展示のバックの壁面には「近代都市住宅年表」があります。近代都市住宅年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。古市中団地もあります。
 3階建ての住棟のバックには、年表に食い込むように給水塔も描かれています。後ろに描かれている日本住宅公団の西長堀アパートよりも高く、給水塔のスケール感がよくわかります。


 西長堀アパートは、初期の公団住宅で特に注目されるもので、東京の晴海アパートと対をなす都心部高層住宅の試みの一つです。昭和33年に完成した地上11階地下1階、単身者向け住宅50戸を含む263戸の店舗併存住宅で、約300坪の貸店舗と約150坪の貸倉庫が1階および地階に配置されていました。その巨大な姿から「マンモスアパート」の愛称で呼ばれていました。入居者には郊外団地とは異なる都市型の生活様式の持ち主が多かったと考えられ、作家の司馬遼太郎さんやデザイナーの鴨居羊子さん、森光子さんや野村克也さんなどの著名人も暮らしておられました。平成28年(2016)2月に、建物のリフレッシュ工事とともに新しい企画の住戸プランも登場し、58年目の再デビューをしています。

古市中団地(背景に給水塔と西長堀アパート)

 次の写真は、1948年(昭和23年)に米軍によって撮影された航空写真です。中央の城北川の東にあるドーム状の建物は1937年(昭和12年)3月に完成した大阪大国技館(大阪関目国技館)で、当時の両国国技館よりも大きい施設でした。現在その復元模型が城東区役所内に展示されています。
 しかし、オープン間もない1941年(昭和16年)には戦局の悪化から相撲興行が中断。結果的に4年で7回の準本場所を開催しただけで、戦時中は建物は倉庫に転用されました。戦後米軍に接収された後、その跡地は日本住宅公団(現UR都市機構)の団地になっています。大阪大国技館の東側の一帯が古市中団地の敷地で、軍用地の跡となっています。格子状に区画整理された道路となっていたことがわかります。


米軍撮影の航空写真(昭和23年・国土地理院)
大阪大国技館の復元模型
(城東区役所内に展示)

 次に、古市周辺の市街地の変遷を古地図で見てみましょう。城東区古市は大正13年発行の大阪市パノラマ地図のエリアには入っていないので、昭和11年発行の大大阪観光地図で見てみます。当時は城東区の発足前で、京阪関目駅の東方に位置する古市中団地の付近は旭区古市北通四丁目、古市中通四丁目であったことがわかります。区画整理事業に基づく東西南北の格子状の区画となっています。

大大阪観光地図(1936)の古市付近

 次に4つの時代の地形図を見比べることができる今昔マップ3で見てみましょう。左上は明治41年。一面が農地になっていて、水路が描かれています。右上は昭和22年。城北運河(城北川:昭和15年(1940)建設)が描かれ、川沿いには丸い建物があり、「旧国技館」の文字が見えます。農地だったところが区画整理によって街区ができてきています。左下は平成7年。古市二丁目の文字のところ(地図中+印で表示)が古市中団地で、そのほか、UR都市機構の団地や、城北川沿いの工場跡に建設されたマンション群も描かれています。右下は、最近の航空写真で、建て替え後の古市中団地が写っています。


明治41年・昭和22年・平成7年の地形図、
最近の航空写真の古市付近(今昔マップ3)

 続いて、古市中団地の配置図と空中写真を見てみましょう。1枚目は竣工時の古市中団地配置図、枠内は模型の部分です。2枚目は、1979年の国土地理院空中写真、市営住宅・公団住宅とも建て替え前です。3枚目4枚目は、現在の国土地理院地形図と空中写真、市営・公団とも建て替え後です。道路の形状や、公園・小学校の位置が変わっていないことがわかります。

竣工時の古市中団地配置図(枠内は模型の部分)
国土地理院空中写真(1979年)
国土地理院地形図
国土地理院空中写真

 では、現場を訪問することにしましょう。最寄り駅は京阪関目駅・大阪メトロ今里筋線関目成育駅です。関目商店街、杉山通商店会を右手に見て、道路を東へ向かい、北菫橋を渡ります。バス通りを右手(南)に曲がり、100mほど進むと古市団地です。平成5年(1993)から6年(1994)にかけて古市中住宅再生プロジェクト設計競技が行われ、その当選案に基づいて建て替えが実施されました。道路形状をそのまま残し、従来の雰囲気を継承する計画となっています。
 現在は古市東住宅となっています。住棟の外観、広場の様子をご覧ください。


京阪関目駅・大阪メトロ関目成育駅

関目商店街
杉山通商店会
北菫橋
城北川
バス道路沿いの古市東住宅
道路のカーブは以前のまま、左手は公園、
右手は、模型のエリアの現況
模型のエリアの広場と住棟
模型のエリアの住棟と自転車置き場
模型のエリアの南部分
模型のエリアの現況配置図

 古市中団地の建て替え跡地の一部は、民間分譲マンションとなりました。

ウィズパークス大阪ガーデンコート玄関
ウィズパークス大阪ガーデンコート外観
ウィズパークス大阪アクアコート玄関
ウィズパークス大阪アクアコート外観
手前:市営住宅、奥:民間分譲マンション(アクアコート)

 市営住宅の西側のUR団地も建て替えられ、一部は分譲住宅となりました。かつてここに大阪大国技館があったことを案内する説明があります。

リビエール関目(UR団地の建て替え)
団地案内図
大阪国技館跡と元相撲茶屋

 市営住宅の北側には、信愛女学院があります。

大阪信愛女学院聖堂
大阪信愛女学院聖堂の案内板

 今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「古市中団地 -計画的団地の開発-」の模型の現地を訪問しました。解説は、「まちに住まう-大阪都市住宅史」を参考にしました。


〇企画展「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」開催中です
 2024年7月13日(土)~2024年10月14日(月)

 明治から昭和にかけて、女性たちの暮らしは家庭内から外へより活動的に変化していきました。服装も着物から洋服へ、髪型は日本髪から束髪を経て断髪へと変容し、「モダンガール」と呼ばれる新しい女性像が展開しました。変化する生活に伴って特に女性用の化粧方法も変化し、多種多様に商品開発されました。パッケージには当時の女性に好まれたデザインを取り入れたため、時代の雰囲気をよく表しています。

 本展では近代の商業デザインの研究家である佐野宏明氏のコレクションを中心に、「レトロ・ロマン・モダン」と呼ばれる大正時代前後の化粧品や薬など生活雑貨のパッケージ、雑誌や商品広告などを展示し、当時の女性の暮らしとその中にある美意識を探ります。

主な展示物
パッケージや女性の身の回りの商品、女性が描かれた広告等を展示。
・化粧品(化粧水・クリーム・香水・パウダー)
・トイレタリ(石鹸・洗い粉・歯磨き)
・生活雑貨(薬、飲料、菓子、マッチ、繊維ラベル、絵葉書、雑誌、団扇)など

※ 企画展示室のガラスが取り換えられて、低反射高透過の見やすいガラスになっています。


【関連講演会】
「レトロ・ロマン・モダンを語る」
日程: 2024年8月31日(土)
時間:13:30~15:00
会場:住まい情報センタービル3階ホール(大阪くらしの今昔館同ビル内3階)
定員:150名
参加費:無料
申込み:7/1(月)より今昔館のホームページでお知らせ・受付を開始します。
(発表内容など詳細は7/1からの申込ページをご参照ください)
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/exhibition_special/260000934



〇6月1日よりミュージアムショップが再開しました

 今昔館が発行する刊行物(図録)や各種地図はもとより、和小物や大阪のお土産物など取り揃えております。どうぞご利用ください。


〇ワークショップ・イベントのご案内
 和文化体験のワークショップやパフォーマンスです。どうぞお楽しみください。
 *スケジュール表はこちら≫https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/event
 定員がある当日先着イベントは8階受付で12時から参加券を発行しています。


〇入場料のお知らせ
【常設展】一般 600円(団体500円)
     高校生・大学生 300円(団体200円)
【企画展】展覧会ごとに料金が異なります。
     ホームページをご覧ください。
     ※常設展と企画展のお得なセット券も販売しております。

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)

【現在開催中の企画展】
企画展のみ 500円
常設展+企画展
一般 1000円(団体900円)
高校生・大学生 700円(団体600円)
※要学生証原本提示
※中学生以下、障がい者手帳・ミライロID等持参者(介護者1名含む)、大阪市内在住65歳以上は無料(要学生証原本提示)

今昔館は、毎週火曜日が休館日となっています。
 https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/guide


〇風呂屋シアターもリフレッシュ
「桂米朝・米團治と行く 大坂むかしまち巡り」と題して、商家の賑わいを紹介しています。


〇着物体験サービス

感染症対策のため中止しておりました、着物体験サービスを再開しています。

着物(夏季は浴衣)に着替えて江戸時代の町並みを散策することができます。洋服の上からはおる簡単な着付けなので気軽にご利用いただけます。

●受付時間 10:00〜
●受付場所:9階着物コーナー(人形屋)
●料金:お1人につき1回1000円
●体験時間:30分(着替え時間を含まない)
●定員:先着100名様/日

※身長制限 110cm以上
※国内外に関わらず、小学校・中学校団体様の着物体験利用の受付は行っておりません。

【ご提供するサービスの内容】
・着物・草履のレンタル
・着付け ※服の上から着物を着ていただきます。
・上着、厚手の衣類(セーター、トレーナー等)は脱いでください。



〇反物着装パフォーマンス
約13メートルの長さの反物を2個のクリップと帯紐だけで、あたかも着物を着たかのように着装します。まるで手品のようです。
場 所:9階呉服屋
日 時:不定期(イベントスケジュールをご覧ください)
※町家衆のパフォーマンスをご覧ください。着装の体験はできません。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html