2024年9月4日水曜日

今週の今昔館(439) 模型の現場を訪問しよう 城北バス住宅 20240904

〇常設展の展示替えによる臨時休館のお知らせ
 令和6年9月2日(月)~9月6日(金)の期間中は、常設展示室の展示替えのため臨時休館いたします。
 9月7日(土)から、9階常設展示は「商家の賑わい」の展示となります。
 なお、企画展示室では、引き続き9月7日(土)から10月14日(月・祝)まで、「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」を開催します。


〇模型の現場を訪問しよう 城北バス住宅

 大阪くらしの今昔館の近代のフロアには、模型やジオラマで、明治以降の近代大阪の住まいとまちづくりの歴史を展示しています。今回は、住まいの大阪六景のひとつ「城北バス住宅-転用住宅と戦災復興-」をご紹介し、模型のモデルとなった現場が、今どうなっているかを訪ねます。

城北バス住宅-転用住宅と戦災復興-
(住まいの大阪六景)

 終戦後、迫り来る冬を前にして、住む家が無い戦災者や引揚者への緊急措置として、仮設住宅が建設されるとともに、旧兵舎や寮・学校、バスなども一時しのぎの住宅に転用されました。バス住宅は、木炭バスの廃車体を焼け跡や空き地に置き並べたもので、狭くて劣悪な点では壕舎住宅やバラックと同様でしたが、バス住宅などの転用住宅は大阪市の経営する市営住宅の一つであり、自然発生的に個人が応急的に作ったバラック類とは、性格を異にするものでした。住まいの大阪六景のひとつとして展示されている「城北バス住宅-転用住宅と戦災復興-」は、史実に基づいて制作された模型です。
 詳しくは、住まいのミュージアムができるまで「戦災復興の大阪~バス住宅~」をご覧ください。模型の制作に関わられた建築家の加藤恭子さん(故人)へのインタビュー記事となっています。あんじゅ17号(2003年冬号)に掲載されています。
https://www.osaka-angenet.jp/ange/ange17


城北バス住宅平面図・配置図
(まちに住まうー大阪都市住宅史)

 くらしの道具の変遷の展示のバックの壁面には「近代都市住宅年表」があります。明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。
 この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。その中に「城北バス住宅」もあります。


城北バス住宅(近代都市住宅年表)

 終戦後、昭和23年に米軍によって撮影された写真です。時計の文字盤のようにバスが並べられている様子が写っています。円盤の中央に建つ共同の炊事場・便所の小屋もよくわかります。

昭和23年米軍撮影の航空写真(国土地理院)

 なぜこの場所に応急仮設のバス住宅が建設されたのでしょうか?ヒントはもう一枚の地図です。国土地理院地図に「明治時代の低湿地」と呼ばれる地図があり、明治20年頃の水路や湿地の様子がわかります。水色は水面、黄色は水田を示しています。

 水色の部分が明治43年に完成した淀川大改修工事以前の淀川の流れです。現在の城北公園内にある池や菖蒲園も、旧淀川の川筋であったことが確認できます。
 地図中の+印がバス住宅で、その位置は以前は川の中にあったことがわかります。バス住宅のあたりの住所は、大正14年(1925)に大阪市に編入された以降、旭区に編入される以前は、「東淀川区豊里町」でした。豊里は淀川北岸に現在も残る地名ですが、その一部が淀川大改修によって、新しい川の南岸(左岸)に飛び地として残されましたが、地名は以前の地名が残されていたことがわかります。昭和18年(1943)の区域再編で旭区に編入された以降も、昭和46年(1971)に住居表示の変更により「豊里町」と「橋寺町」が「太子橋1~3丁目」となるまでの間は、豊里の地名が残っていました。
 また、現在埋め立てられて阪神高速道路が通っている江野川は、水田に水を届けるための農業用水路として、洪水の際に淀川の堤防が決壊することを防ぐために淀川の上流・枚方付近から水を引き、淀川に沿って下流まで水を運ぶ「樋管統一水路」として建設されたものです。


水色が改修前の淀川
(地理院地図・明治時代の低湿地)

 次に、城北周辺の市街地の変遷を古地図で見てみましょう。旭区は大正13年発行の大阪市パノラマ地図のエリアには入っていないので、昭和11年発行の大大阪観光地図で見てみます。図中、黄緑色の境界線は、大阪市と守口市、および、旭区と東淀川区の境界線です。改修前の旧淀川の北側(右岸)にあった「豊里町」と「橋寺町」は、西成郡に属していましたが、市域に編入されたのちも、東淀川区に属していました。「関西工学校」とあるのは現在の大阪工業大学で、城北バス住宅は学校の南側に位置していました。
 現在の城北公園通に大阪市電(路面電車)が走っていました。

大大阪観光地図(1936)の城北付近

 さらに、今昔マップ3を使って、明治41年の地形図を見ると、現在の旭区と守口市の境界は、付け替え前の旧淀川の川筋によって決まっていることがわかります。この境界線は、かつては河内の国と摂津の国の国境でした。
 また、昭和22年の地形図を見ると、バス住宅の建っている位置は、当時空地であったこともわかります。


明治41年・昭和22年・平成7年の地形図、
最近の航空写真の城北付近(今昔マップ3)

 では、現場を訪問することにしましょう。最寄り駅は大阪メトロ谷町線太子橋今市駅です。城北バス住宅跡地へのわかりやすいルートは、駅から豊里大橋に向かう大阪内環状線(国道479号)に沿って北へ歩き、阪神高速道路下で左折して、江野川筋遊歩道を西へ歩きます。
 江野川筋遊歩道を500mほど進むと、左手に思斉支援学校があり、その西隣に高層の市営住宅、さらに西隣に常翔学園歴史館があります。歴史館の西隣が城北バス住宅があった敷地で、現在は大阪市営城北住宅となっています。


常翔学園歴史館
常翔学園歴史館玄関
市営城北住宅1号館・2号館
城北住宅1号館玄関
城北住宅2号館玄関

 市営城北住宅の北側には、高速道路を挟んで大阪工業大学があります。正門は「片岡安メモリアルゲート」と呼ばれ、学園創設時の著名な建築家で、初代校長・理事長の片岡安博士が実施設計した「大阪市中央公会堂」をモチーフにしており、大阪工業大学の英知とパイオニア精神を象徴しているそうです。食堂などが入っている8号館は、江野川が埋め立てられた跡に建っており、建物前には、かつてここに架かっていた大和橋の親柱が残され、江野川(樋管統一水路)の説明版があります。

片岡安メモリアルゲート
江野川跡に建つ大阪工業大学8号館
大和橋の親柱
やまとばしの親柱、後方は片岡安メモリアルゲート
江野川(樋管統一水路)の説明版

 帰りは、江野川筋遊歩道を南へ歩き、豊臣秀吉像が発見された大宮神社、千林大宮商店街を経由して、大阪メトロ千林大宮駅に向かいます。

大阪工業大学と阪神高速道路守口線
豊臣秀吉像が発見された大宮神社(高良社)
千林大宮商店街

 今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「城北バス住宅-転用住宅と戦災復興-」の模型の現地を訪問しました。解説は、「まちに住まう-大阪都市住宅史」を参考にしました。


〇企画展「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」
 後期:2024年9月7日(土)~2024年10月14日(月)

 明治から昭和にかけて、女性たちの暮らしは家庭内から外へより活動的に変化していきました。服装も着物から洋服へ、髪型は日本髪から束髪を経て断髪へと変容し、「モダンガール」と呼ばれる新しい女性像が展開しました。変化する生活に伴って特に女性用の化粧方法も変化し、多種多様に商品開発されました。パッケージには当時の女性に好まれたデザインを取り入れたため、時代の雰囲気をよく表しています。

 本展では近代の商業デザインの研究家である佐野宏明氏のコレクションを中心に、「レトロ・ロマン・モダン」と呼ばれる大正時代前後の化粧品や薬など生活雑貨のパッケージ、雑誌や商品広告などを展示し、当時の女性の暮らしとその中にある美意識を探ります。

主な展示物
パッケージや女性の身の回りの商品、女性が描かれた広告等を展示。
・化粧品(化粧水・クリーム・香水・パウダー)
・トイレタリ(石鹸・洗い粉・歯磨き)
・生活雑貨(薬、飲料、菓子、マッチ、繊維ラベル、絵葉書、雑誌、団扇)など

※ 企画展示室のガラスが取り換えられて、低反射高透過の見やすいガラスになっています。


【関連講演会】
「レトロ・ロマン・モダンを語る」
日程: 2024年8月31日(土)
時間:13:30~15:00
会場:住まい情報センタービル3階ホール(大阪くらしの今昔館同ビル内3階)
定員:150名
参加費:無料
申込み:7/1(月)より今昔館のホームページでお知らせ・受付を開始します。
(発表内容など詳細は7/1からの申込ページをご参照ください)
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/exhibition_special/260000934



〇6月1日よりミュージアムショップが再開しました

 今昔館が発行する刊行物(図録)や各種地図はもとより、和小物や大阪のお土産物など取り揃えております。どうぞご利用ください。


〇ワークショップ・イベントのご案内
 和文化体験のワークショップやパフォーマンスです。どうぞお楽しみください。
 *スケジュール表はこちら≫https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/event
 定員がある当日先着イベントは8階受付で12時から参加券を発行しています。


〇入場料のお知らせ
【常設展】一般 600円(団体500円)
     高校生・大学生 300円(団体200円)
【企画展】展覧会ごとに料金が異なります。
     ホームページをご覧ください。
     ※常設展と企画展のお得なセット券も販売しております。

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)

【現在開催中の企画展】
企画展のみ 500円
常設展+企画展
一般 1000円(団体900円)
高校生・大学生 700円(団体600円)
※要学生証原本提示
※中学生以下、障がい者手帳・ミライロID等持参者(介護者1名含む)、大阪市内在住65歳以上は無料(要学生証原本提示)

今昔館は、毎週火曜日が休館日となっています。
 https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/guide


〇風呂屋シアターもリフレッシュ
「桂米朝・米團治と行く 大坂むかしまち巡り」と題して、商家の賑わいを紹介しています。


〇着物体験サービス

感染症対策のため中止しておりました、着物体験サービスを再開しています。

着物(夏季は浴衣)に着替えて江戸時代の町並みを散策することができます。洋服の上からはおる簡単な着付けなので気軽にご利用いただけます。

●受付時間 10:00〜
●受付場所:9階着物コーナー(人形屋)
●料金:お1人につき1回1000円
●体験時間:30分(着替え時間を含まない)
●定員:先着100名様/日

※身長制限 110cm以上
※国内外に関わらず、小学校・中学校団体様の着物体験利用の受付は行っておりません。

【ご提供するサービスの内容】
・着物・草履のレンタル
・着付け ※服の上から着物を着ていただきます。
・上着、厚手の衣類(セーター、トレーナー等)は脱いでください。



〇反物着装パフォーマンス
約13メートルの長さの反物を2個のクリップと帯紐だけで、あたかも着物を着たかのように着装します。まるで手品のようです。
場 所:9階呉服屋
日 時:不定期(イベントスケジュールをご覧ください)
※町家衆のパフォーマンスをご覧ください。着装の体験はできません。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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