2017年10月10日火曜日

今週の今昔館(80) 大阪市パノラマ地図 20171010

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(14) 「大阪市パノラマ地図」

 前回までで近代展示室の外周にある「近代都市住宅年表」のご紹介が終了しました。今回は、展示室中央の床面に展示している「大阪市パノラマ地図」をご紹介します。

大阪くらしの今昔館近代のフロアの「大阪市パノラマ地図」

 「大阪市パノラマ地図」は、大正時代終わり頃の大阪市街地を描いた鳥瞰図で、大正13年(1924)1月に発行されました。大阪市の南西、大阪湾の上空から北東方向を眺めた図柄で、図の左上が北になっています。

大阪市パノラマ地図(大正13年(1924)発行)

 地図の中央には、大阪の船場、島之内、天満など、大坂三郷と呼ばれた江戸時代以来の市街地が描かれ、東西南北に規則正しく区画された町割であったことが分かります。とくに、図の左半分には大川(淀川)が蛇行して流れ、市街地には東横堀と西横堀、長堀、道頓堀などの堀川が縦横に流れる姿は、「水の都」にふさわしい風景です。地図の中心には、西横堀と長堀が十字にクロスするところに四ツ橋が描かれています。

地図の中心に描かれている四ツ橋

 図の作者は美濃部政治郎、発行者は日下伊兵衛(大阪、日下わらじ屋)で、大正12年12月に印刷、大正13年1月に発行されました。
詳細にみると、公共施設や寺社はもちろんのこと、市電の停留所や学校、郵便局、交番や風呂屋まで書き込まれていて、図の中に入り込んで楽しめるパノラマ地図となっています。

 図の左上には「大阪梅田停車場(現在のJR大阪駅)」、右上に「大阪城」、右下に「新世界」「天王寺公園」「四天王寺」、左下に「築港」「大桟橋」が、それぞれ描かれています。

大阪梅田停車場
(現在の「うめきた」は当時は大阪駅構築予定地です。)
大阪城
(天守閣はまだありません。昭和6年の再建です。)
新世界・天王寺公園・四天王寺
(初代通天閣と木造の五重塔)
築港・大桟橋
(欄外には発行者などの文字があります。)

 当時の大阪市は東西南北の4区で、市域はほぼこの地図に描かれている範囲でした。翌年の大正14年(1925)4月1日、周辺の町を合併(第二次市域拡張)して、面積181平方キロメートル、人口211万人となり、東京市を上回る日本一の大都市となりました。当時は世界でも6番目に人口の多い都市でした。いわゆる「大大阪」の時代です。

 大阪は、「天下の台所」と称された江戸時代以来の経済地盤を活かして、商業・紡績・鉄鋼などの産業が栄え、近代建築が建ち並び、華やかで活気にあふれた、近代大阪の黄金時代を迎えました。

 「大大阪」の象徴的なできごととしては、大阪城天守閣の再建(1931年)や大阪市営地下鉄1号線(御堂筋線)の建設(1933年に梅田から心斎橋間が開通)、御堂筋の拡幅(1937年)、中央卸売市場の開設などがありますが、この「大阪市パノラマ地図」が制作された大正時代末にはいずれもなく、地図には表現されていません。大正末からの10年間で大阪は大きく変貌しました。この地図には、いわば大大阪前夜の大阪が描かれているといえます。

拡幅前の御堂筋
(市電は大阪駅から梅田新道を経て淀屋橋南詰を東へ左折して北浜2丁目へ。
そこで右折して堺筋を南進して日本橋・天王寺へ向かう。
当時は堺筋がメインストリートでした。)
御堂筋拡幅前の心斎橋付近
(大丸、十合(そごう)は心斎橋筋に顔を向けています。
御堂筋の位置には長堀、道頓堀に橋がありません。)

 この地図は、大阪くらしの今昔館8階の近代のフロアで、じっくりと見ていただくことができます。原本の寸法は、タテ78.5センチ、ヨコ108.6センチとコンパクトなサイズですが、今昔館では、6つの模型(住まいの六景)の間の床面にタテ4.8m、ヨコ6.6mと約6倍に拡大して光床として展示しています。ほのかに光る床面に文字や図がぼやけることなく鮮明に読み取ることができます。90年前の制作としては、相当に精密な出来栄えであったことがわかります。


大阪市パノラマ地図の解説板・QRコード

 原本は90年前の発行ということもあり入手はなかなか困難ですが、大阪市立中央図書館、府立中之島図書館などで閲覧することができます。復刻版は大阪くらしの今昔館のミュージアムショップなどで手に入れることができます。
 パソコンをご利用の方は、国際日本文化研究センターのHPから閲覧することができます。画像はとても鮮明で拡大も自由にできます。
 スマホをご利用の方は、「こちずぶらり」というアプリを利用すると、GPS機能によって地図上に現在位置を表示させることができます。まち歩きの際などに現地で以前に何があったかを確認することができて便利です。
 古地図を見ながらのまち歩き、ブラタモリの気分で楽しんでみませんか。


〇特別イベント  民家をたのしむ!民家をつたえる!

★Part1 シンポジウム「英国くらしの博物館 VS 大阪くらしの今昔館」
◇日  時:平成29年11月26日(日)10:00~12:30 (受付開始:9:40~)
◇「大阪くらしの今昔館の町家建築物語」谷 直樹(大阪くらしの今昔館館長)
「体験することはわかること―Weald and Downland Living Museumの民家建築と伝統的なくらしの学びを生き生きとしたものにするために―」通訳あり
Martin Purslow CEO of the Weald and Downland Living Museum
◇場  所:大阪市立住まい情報センター 3階 ホール
◇定  員:150名(事前申込、先着順)
定員になり次第、締め切ります。
◇参 加 費:無料

Weald and Downland Living Museum(ウィ-ルド・アンド・ダウンランドくらしの博物館)は、1972年に開園した英国イングランド南部にある民家博物館です。広大な敷地に、600年の時代を通じた52棟の民家が学術的な修復を受けて移築され、当時のくらしを再現しています。
同館では、民家の建築的保全とくらしの技術の保存の両面から学習プログラムを提供しています。現代に暮らす人たちに民家の保全への意識を持ってもらうこと、また伝統的な生活の技やものづくりに関心を持ってもらうことが目的です。おとなのための学習プログラムやヨ-ク大学大学院と連携した民家の保存技術の専門的プログラムにも力を入れています。
シンポジウムでは、英国くらしの博物館と江戸時代の町家を再現した大阪くらしの今昔館の事例から、民家を楽しみ、伝統的な建築技術を伝える方法を考えます。

●司会:碓田智子(博物館住まい学習研究会代表、大阪教育大学教授)
●通訳:和田美貴((一財)日本国際協力センター)


★Part2 イベント 「大工体験! 匠の技」
①江戸時代の町並みで実演 手道具を使った大工の匠の技
棟梁による、手道具を使った大工の伝統の技をご覧いただきます。
◇日  時:平成29年11月26日(日)14:00~16:00
(予約不要、自由見学)
◇場  所:大阪くらしの今昔館 9階常設展示室
◇参 加 費:無料(ただし常設展示室への入館料が必要)

②町家の二階の特別見学-町家の構造を見よう-
通常は非公開の町家(薬屋)の2階に上がって、町家建築の構造をご覧いただきます。
◇日  時:平成29年11月26日(日)14:00~16:00
(要予約 シンポジウム申込者を優先)
◇参 加 費:無料(ただし常設展示室への入館料が必要)

☆匠の技を体験しよう!
「ミニ削ろう会in今昔館」の大工さんから大工の技を教えてもらいます。
鉋削りの体験や削り花でつくる「かんなフラワー」も楽しめます。お子さんも体験できます。
◇日  時:平成29年11月26日(日)14:00~16:30
◇場  所:大阪市立住まい情報センター 3階 ホール
◇参 加 費:無料

民家をたのしむ!民家をつたえる!
Let’s Learn from Historic Houses in the Museum
主 催:博物館住まい学習研究会、大阪くらしの今昔館
協 力:「ミニ削ろう会in今昔館」の大工棟梁のみなさん



申込はこちらからどうぞ。

https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/32955


〇「大阪ぶら歩き【第6回】大阪の長屋を堪能する」を開催します。

大阪くらしの今昔館で館長から大阪長屋について学び、その後、オープンナガヤ大阪開催中の豊崎長屋を見学します。

●と き:平成29年11月12日(日) 13:30~16:30

●ところ:大阪くらしの今昔館~豊崎長屋
※詳細については参加証にてお知らせします

●案内人:谷 直樹(大阪くらしの今昔館館長)

●定 員:20名(申込先着順)

●参加費:1,000円(保険代、資料代)
※移動にかかる交通費は各自でご負担ください。
※別途、大阪くらしの今昔館の常設展入館料がかかります。

●主 催:大阪市立住まい情報センター、大阪くらしの今昔館

●申込方法:こちらからどうぞ。
https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/32910


〇今週のイベント・ワークショップ

10月11日(水)~14日(土)、16日(月)、18日(水)~21日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

10月15日(日)、22日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

10月14日(土)
ワークショップ 『和風マグネットを作ろう』

⓵13時30分 ⓶14時30分
各回先着10名、参加費:300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

10月15日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階ミュージアムショップでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時

10月21日(土)
イベント 狂言

上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
14時~14時40分

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30~15:00

10月22日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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