2019年2月26日火曜日

今週の今昔館(152) 堀川備前陣屋 0190226

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(57)

 今回は、「堀川備前陣屋」をご紹介します。

■堀川備前陣屋(芳雪画)
 天満地域を南北に貫いていた天満堀川は、北は扇町公園付近で行き詰まりになっていましたが、天保9年(1838)北東方向に延長されて大川につなげられました。
 そのころ扇町公園付近の天満堀川に沿った綿屋町に設けられたのが備前岡山藩の蔵屋敷で、錦絵画面の右奥には蔵屋敷に船を直接入れるための舟入の水門と、それをまたぐように設けられた舟入橋が見えます。堀端には桜が植林され、美しい景観をなしていました。
 明治の廃藩以降、蔵屋敷跡地は堀川監獄として利用され、後に扇町公園として生まれ変わり、市民の憩いの場となっています。堀川のほとんどは阪神高速道路守口線に転用されています。

浪花百景「堀川備前陣屋(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。大川から北へ「ホリ川」が延びています。東天満の北で東に折れ曲がり、天神橋筋を越えたところで行き止まりになっています。曲がり角の所に「ゴモク山ト云」という文字が見え、ごみの山の絵が描かれています。堀川が淀川とつながるのは天保9年ですので、完成前の途中まで掘り進められた状態が描かれています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖では、天満堀川は女夫池の西側で行き止まりになっています。女夫池が埋め立てられ堀川が淀川とつながる以前の様子が描かれています。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、地図の右下から北へ延びてきた天満堀川は扇橋の手前で直角に曲がり「めうとばし」を超えたあたりから北東へ延びています。監獄が堺へ移転したのち、公園として整備される前の姿が描かれています。天神橋筋の商店街の一筋西側に市電が通る大通りが整備され、扇橋に停留所があります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、梅田から東へ延びてくる大通りができて市電が通り、扇橋停留所で南北線と交差しています。扇町公園が整備され、周りには衛生試験所、工業研究所、電気局病院や学校が建設されています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、川崎村と北野村の間に堀で囲まれた備前岡山藩の蔵屋敷の跡地が陸軍の用地となっています。天神橋筋沿いには家屋が並んでいますが、そのほかはほとんどが農地だった様子が分かります。

明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の備前岡山藩蔵屋敷周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、蔵屋敷の跡地が堀川監獄として利用されています。監獄の北には農地が残っています。
 右上の昭和4年では、市街地化が進み、市電の通る大通りが東西、南北と斜め方向に通り、地図中央上部の天神橋筋六丁目でクロスしています。天神橋筋六丁目から西へ伸びている鉄道は阪神北大阪線です。監獄の跡地には公園が整備され、公共建築が建てられています。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、扇町公園より南側から大川を越えて東側にかけては戦災の被害を受けて建物が焼失しています。天神橋筋六丁目から中崎町にかけては戦災を免れています。
 右下は昭和42年ですが、市電の南北線が廃止され梅田から天六、都島へ伸びる東西線と、天六から西へ伸びる阪神北大阪線は残っています。扇町公園には大阪プールの建物が描かれています。


 写真中央の公園が扇町公園で、天満堀川が昭和43年(1968)に埋め立てられ、その跡地の上空を阪神高速道路の守口線が通っています。扇町公園の南東で直角に折れ曲がっていた堀川の形がそのまま高速道路となっています。

国土地理院の空中写真

 現在の扇町公園付近を写真で見てみましょう。最初の写真は公園の南西角から北東を見たもので、正面のガラス張りのビルは関西テレビ(カンテーレ)です。

現在の扇町公園
大阪プールのモニュメント
現在の扇町プール
扇町公園
扇町公園

 最寄り駅の大阪メトロ扇町駅構内には、カンテレとメトロのコラボレーションによる展示があります。

最寄り駅の大阪メトロ扇町駅構内


 今回は、「浪花百景」の「堀川備前陣屋」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「天満監獄址」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」終了しました。多くの皆様のご来場ありがとうございました。

〇次回の企画展は「モダン都市大阪の記憶」
 2019年3月2日(土)~4月7日(日)


 今も昔も、大阪は魅惑的なビジュアルに満ちています。美しくパッケージされた商品、目を引く広告パンフレット、凝ったディスプレイ、豪華な百貨店建築、橋や道路、地下鉄などの都市基盤も含め、それらは形態、形象、記号の宝庫であり、往時のグラフィックからは華やかな時代の息吹が感じられます。
 本展では、橋爪節也氏のコレクションから、明治~昭和期の絵画・チラシ・ポスター・雑誌などを紹介し、当時の写真とともに近代大阪を振り返ります。百貨店、劇場、花街、交通など、さまざまな見所を持つモダン大阪を、グラフィックをたよりにそぞろ歩いてみませんか。



〇今週のイベント・ワークショップ

2月27日(水)~3月2日(土)、4日(月)、6日(水)~9日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月3日(日)、10日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



3月3日(日)
イベント 今昔館のひな祭り

ひな祭りを祝おう
①13時②15時
中学生以下対象
参加費無料
※各回先着20名 当日、12時~8階受付にて、整理券を配布します


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜

時 間:13:00-16:00


3月9日(土)
ワークショップ 『木の継ぎ方を知ろう』

13時30分~15時
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費無料

3月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿