2019年8月20日火曜日

今週の今昔館(177) 寳樹寺 20190820

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(14)

 今回は「浪華の賑ひ」の「寳樹寺」をご紹介します。

 「浪華の賑ひ」の本文には「寳樹寺」の説明文はなく、挿絵のみが掲載されています。
 大阪新四十八願所阿弥陀巡礼の公式ホームページによると、第15番「寶樹寺」として、
所在地
・大阪市天王寺区城南寺町7番10号
■寺院・諸堂来歴
・開山の謂われ、年月日などは不詳だが、江戸初期の創建と推測される。古書から少なくとも明暦3年(1659)には現在地に存立していたことがうかがえる。
・安政2年(1855)刊の『浪華の賑ひ』は往時、庭園を含む広大な寺域を有し、人々の憩いの場でもあったことを記している。
・昭和20年(1945)大阪大空襲でほとんどの堂宇を焼失した。
・昭和20年代後半、第二十六世の眞定和尚が復興を遂げる。外観、内外陣ともに奈良仏教の様式を備えた、優美かつ荘厳な姿を今日に残している。
■本尊
・本尊阿弥陀如来座像。作者不明。制作年代は奈良時代と伝う。
■宝物・墓石・行事など
・もとの大坂四十八箇寺阿弥陀巡礼の碑が本堂横に今日も残る。
・三代目竹本大隅太夫之墓等あり。
・年中行事として修正会(しゅしょうえ)・春秋彼岸会・盂蘭盆施餓鬼会などをいとなむ。

とあります。地図で調べると、大阪府立高津高校の西側に位置しています。では、「浪華の賑ひ」の「寳樹寺」を見てみましょう。


■寳樹寺
 当寺は梅やしきの北にして、東高津にあり。本堂の後の方僧房の庭先に楓の大樹数株あり。紅葉の頃は詩歌の雅客競ひ来って遊楽す。なほ、林泉の風景よく、ひとしほの眺望(ながめ)なり。


浪華の賑ひ「寳樹寺」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 浪花百景には、この周辺では、「野中観音桃華盛り」の他に「梅やしき」と「産湯味原池」がありますが、「寳樹寺」は描かれていません。

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。
 前回の「野中クワンヲン」の左下(北西)に「法寿寺」の文字があり、脇に「モミヂの名所」と記されています。漢字は異なりますが、「寳樹寺」はここにあったものと推察できます。この地図は、東が上に書かれています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、地図の中央、「東高津」の南に「宝樹寺」の文字が見えます。
 文化3年(1806)発行の増修改正摂州大阪地図にも、文字はかすれていますが、「宝樹寺」の文字が見えます。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)
増修改正摂州大阪地図(ラムゼイコレクションより)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、高津中学校(現在の高津高校)の西側には、びっしりと寺院が並ぶ寺町となっています。寺の名前は入っていませんが、このなかに「寳樹寺」があったものと思われます。

大阪市パノラマ地図(国際日本文化研究センター蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、高津中学の一筋西は「八丁目東寺町」、その西は「八丁目中寺町」、上町筋となっています。「寳樹寺」は「八丁目東寺町」にありました。味原池は埋め立てられて、味原町となっています。「産湯」の赤い文字も見えます。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、味原池の北から西にかけて多くの寺が描かれています。
 右上の昭和4年では、味原池が埋め立てられ、「中学校」の文字が見えます。高津中学が開校しています。その西側一帯は寺町になっています。

明治41年から最近の地形図(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、寺町一帯は全焼となり大きな被害を受けています。
 右下の最新の地理院地図を見ると、高校の西側には「城南寺町」の文字があり、寺院の記号が多く見られます。戦災の後も、寺町として復興している様子が見られます。


 現在の様子を写真で見てみましょう。

 1枚目の写真は、大阪府立高津高校。2枚目は高校前の通りから一筋西の通りで、城南寺町の寺町、その中に寳樹寺があります。

大阪府立高津高校
城南寺町の寺町
寳樹寺
寳樹寺
寳樹寺
阿弥陀四十八願所巡礼の碑


 今回は、「浪華の賑ひ」の「寳樹寺」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。



〇企画展「大大阪時代に咲いたレトロモダンな着物たち~北前船(きたまえぶね)船主・大家(おおいえ)家のファッション図鑑~」開催中。9月1日(日)までです。

 江戸時代後期から昭和戦前期まで、北前船の船主として(明治中期以降は汽船会社を経営)繁栄した大家七兵衛家には祖母・母・娘へと3代にわたって引き継がれた大正・昭和期の着物が数多く残されています。この貴重な着物類が、大阪くらしの今昔館に寄贈されたのを機に、展示公開する運びとなりました。

 これらは船主ならではのイベント、進水式で着用された振袖をはじめ、留袖や訪問着などの礼装、小紋のおしゃれ着、銘仙の普段着のほか、お宮詣りや七五三、十三詣りの子供用の晴れ着など多岐にわたっています。華やかで大胆な柄、洗練された幾何学模様、斬新な色使いに、大正ロマン・昭和モダンの時代の雰囲気を感じることができます。



〇今日は「どっぷり」今昔館!
 8月25日(日)ミュージアムボランティア町家衆が、大阪くらしの今昔館を半日間たっぷりとご案内します。
 集合時間:8月25日(日)12:45(17時解散予定)
 集合場所:大阪くらしの今昔館8階エントランス前
 参加費:無料(今昔館の入館料(600円)が必要)
 詳細と申し込みはこちらからどうぞ
 ⇒https://www.facebook.com/events/1956748447760599/


〇今週のイベント・ワークショップ

8月21日(水)~24日(土)、26日(月)、28日(水)~31日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

8月25日(日)、9月1日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


8月22日(木)
夏休み小学生イベント まちなみ探偵団

江戸時代の大坂の住まいやくらしのヒミツを極秘調査して、
今昔館を訪れている外国の人に見つけたヒミツを伝えてみよう!
10時15分~16時30分
対象:小学4~6年生(安全のため、保護者の送迎をお願いします。)
参加費無料
定員:20名(申し込み多数の場合は抽選)
申込方法:「住まい・まちづくり・ネット」またはハガキ、FAXにてお申し込みください。
ハガキまたはFAXの場合は、参加者・保護者の氏名(フリガナ)、学校名、年齢(学年)、住所、電話番号を記入のうえ、大阪くらしの今昔館「まちなみ探偵団」係まで
申込締切:令和元年8月10日(土)必着(終了しました)
※いただいた個人情報は今回のイベント以外の目的には一切使用いたしません。
※参加者決定後、お申し込み時にご記入いただきましたご住所に、参加証及び詳細をお送りします。
※昼食・飲み物は、各自ご用意ください。

8月23日(金)
町家衆イベント ワークショップ『かんたん万華鏡作り』

13時30分~15時00分
当日先着20名、参加費200円
*当日12時より8階インフォメーションで参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

8月24日(土)
町家衆イベント ワークショップ『千代紙ろうそくを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より8階インフォメーションで参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆


8月25日(日)
イベント 第14回子ども落語大会

開催日時: 令和元年8月25日(日) 午後12時~17時(予定)
開催場所: 大阪くらしの今昔館 9階常設展示室 薬屋座敷
参 加 費: 無料(参加者の御家族1名は無料です)
対  象: 中学生以下
内  容: 落語・小噺・おもしろい話なら、なんでもOK!
持ち時間: 一人10分以内(時間厳守)
申込方法: 往復はがきに住所、氏名、年齢(学年)、電話番号
      演目、ありましたら舞台名、見台の要否、「出場に際してひと言」を明記の上、
      下記申込先へお申し込みください
      応募多数の場合は抽選を行います
申込締切: 令和元年8月12日(月)まで(終了しました)
     <申し込み・問い合わせ先>
     〒530-0041
     大阪市北区天神橋6丁目4-20
     大阪くらしの今昔館「子ども落語大会」係
     TEL 06-6242-1170
備 考  : 本大会の入賞者は、10月6日(日)午前、天満天神繁昌亭の舞台に出演していただきます


町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


9月1日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

9月8日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00




そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
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