2024年6月19日水曜日

今週の今昔館(428) 館蔵品のご紹介「浪花大地震見聞記」 20240619

〇館蔵品「浪花大地震見聞記」

 今回は、あんじゅ84号に掲載されている、大阪くらしの今昔館前館長の谷直樹先生が執筆された「江戸時代の大坂の災害ー火事・地震・津波ー 2」を紹介します。

 淀川下流に位置し大阪湾に面する大坂は、風水害や津波の被害も大きかった。嘉永七年(一八五四)には大地震と大津波が大坂を襲った(同年十一月二十七日に改元されたため安政の大地震・大津波と呼ばれる)。

図2「浪花大地震見聞記」(初篇)(大阪くらしの今昔館蔵)

 「浪花大地震見聞記」(大阪くらしの今昔館蔵)によると十一月四日朝に地震があり、坐摩社では鳥居が崩れ、石灯籠、絵馬堂、井戸屋形などが損傷している。町家も「市中家居崩れ、あるひハゆがみ、住居ならざる分数多あり」といった被害であった(図2)。

図3「浪花大地震見聞記」(二篇)(大阪くらしの今昔館蔵)

 地震は翌五日にも続き、「ごうごうと音しけれバ市中の人々雷ならんと言居るうち津浪来るとて大さわぎなし、をのをの上町の高見のかたへ逃走る」といった混雑の中で、木津川口や安治川まで高潮が押し寄せ、大船・小船が川に侵入し、道頓堀川では川筋の五ヶ所の橋を突き落とし、大黒橋周辺では「大舩帆柱を立しまゝにていやが上に押来り、舩の上に舩を突かけ、川ばたの家居を打ちくづし、小舩ハ多く下敷になり、死人怪我人数しらず」という状況であった(図3)。

 哀れを誘うのは、地震の後で船に避難した人が津波にさらわれて被害が拡大したことである。「見聞記」には、「老人・小児・婦女子・足弱の人は屋形船・荷ぶね等に取乗り安心し居たる處に、おもひがけなく此大変(津波)に出合、舩を打返され死するもの数多」とある。

図4「攝津大津波次第」(大阪くらしの今昔館蔵)

 安政の大津波に関しては多くの摺物が発行されているが、「攝津大津波次第」(図4。大阪くらしの今昔館蔵)には津波の被害状況が地図上に示されている。先の「見聞記」に記されたように、木津川に停泊していた大小の船舶が堀川を遡り、橋を崩し、道頓堀川と西横堀の分岐路に架けられた大黒橋にまで達した様子が描かれている。

 ところで、大阪市浪速区幸町には「大地震両川口津浪記石碑」が立っている。これは安政の大地震と大津波によって犠牲となった人々の慰霊と、後世への戒めを語り継ぐことを目的として建立された石碑である。碑文には、地震の後で船に避難した人が津波によって大きな被害を受けたこと、一四八年前の宝永地震でも同じことがあったのに、その教訓を生かすことができなかったことが書かれている。

図5「大地震両川口津浪記石碑拓本」(大阪くらしの今昔館蔵)

 そして、年月がたてば伝え聞く人は稀となり、忘れ去られてしまうが、今後はこのようなことがないよう、災害を後世に語り継いで欲しいと結んでいる。地元では、毎年地蔵盆にあわせて石碑を洗い、刻まれた文字に墨を入れるのが年中行事となっており、建碑の精神が現代に受け継がれている稀有な例として、平成十八年度に「大阪市指定文化財」に指定された。その石碑の拓本が、市民から大阪くらしの今昔館に寄贈された。これは掛軸に装丁されているので、床の間に飾られ、津波の被害を後世に伝える役割を果たしてきたのであろう(図5)。

 今回紹介した資料は、今昔館が所蔵しているので、江戸時代の大火・地震・津波の被害状況と、被災ごとに蓄積されてきた大坂市民の防災の知恵に触れていただければ幸いである。(参考『まちに住まう』一九八九年刊。火事・地震・津波の被害は資料によって数字が異なる。ここでは紹介した資料の記載に従った)

                 大阪くらしの今昔館館長(当時) 谷 直樹


〇企画展「春夏秋冬 花鳥風月に遊ぶ」残りわずかです

 6月23日(日)までです

 大阪くらしの今昔館では、近世から近代にかけて大阪で活動した絵師(大阪画壇)の作品を収集しています。彼らの作品の多くは、四季折々のまちの景観や年中行事を画題としています。 経済都市として繁栄した大坂の市中は商家が密集して建ち、自然の風物に触れられる場所は限られていました。都市に暮らす人々は絵画によって、四季の移ろいや自然の風情を感じ取っていました。

 本展では月岡雪鼎(つきおか せってい)、佐藤魚大(さとう ぎょだい)、西山完瑛(にしやま かんえい)、菅楯彦(すが たてひこ)、五井金水(ごい きんすい)など、近世から近代にかけての大阪画壇の作品を展示します。大阪の人々が愛好した春夏秋冬・花鳥風月の世界をお楽しみください。

以下2点の展示は終了しました。
・「桜下美人図」佐藤魚大
・「源氏物語図屏風」個人蔵

入館料
企画展:500円
常設展+企画展:一般1,000円(団体900円)、高・大生700円(団体600円)(要学生証原本提示)

※団体は20名以上
※中学生以下、障がい者手帳・ミライロID等提示者(介護者1名を含む)、
 大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書原本提示)

「源氏物語図屏風 右隻」個人蔵
「源氏物語図屏風 左隻」個人蔵
「四季花鳥図」
「定家詠十二ヵ月押絵貼屏風」月岡雪鼎
「桜下美人図」佐藤魚大
「大川夕涼図」西山完瑛
「春風小午 野崎参り」菅楯彦


〇6月1日よりミュージアムショップが再開しました

 今昔館が発行する刊行物(図録)や各種地図はもとより、和小物や大阪のお土産物など取り揃えております。どうぞご利用ください。


〇ワークショップ・イベントのご案内
 和文化体験のワークショップやパフォーマンスです。どうぞお楽しみください。
 *スケジュール表はこちら≫https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/event
 定員がある当日先着イベントは8階受付で12時から参加券を発行しています。


〇入場料のお知らせ
【常設展】一般600円(団体500円)
     高校生・大学生300円(団体200円)
【企画展】展覧会ごとに料金が異なります。
     ホームページをご覧ください。
     ※常設展と企画展のお得なセット券も販売しております。

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)

今昔館は、毎週火曜日が休館日となっています。
 https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/guide


〇風呂屋シアターもリフレッシュ
「桂米朝・米團治と行く 大坂むかしまち巡り」と題して、商家の賑わいを紹介しています。


〇着物体験サービス

感染症対策のため中止しておりました、着物体験サービスを再開しています。

着物(夏季は浴衣)に着替えて江戸時代の町並みを散策することができます。洋服の上からはおる簡単な着付けなので気軽にご利用いただけます。

●受付時間 10:00〜
●受付場所:9階着物コーナー(人形屋)
●料金:お1人につき1回1000円
●体験時間:30分(着替え時間を含まない)
●定員:先着100名様/日

※身長制限 110cm以上
※国内外に関わらず、小学校・中学校団体様の着物体験利用の受付は行っておりません。

【ご提供するサービスの内容】
・着物・草履のレンタル
・着付け ※服の上から着物を着ていただきます。
・上着、厚手の衣類(セーター、トレーナー等)は脱いでください。



〇反物着装パフォーマンス
約13メートルの長さの反物を2個のクリップと帯紐だけで、あたかも着物を着たかのように着装します。まるで手品のようです。
場 所:9階呉服屋
日 時:不定期(イベントスケジュールをご覧ください)
※町家衆のパフォーマンスをご覧ください。着装の体験はできません。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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