2019年1月1日火曜日

今週の今昔館(144) あみ嶋風景 20190101

 新年あけましておめでとうございます。
本年も大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。
今昔館は1月3日から開館しています。


浪花百景「三大橋(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
手前から難波橋、天神橋、天満橋。
左奥に大坂城、生駒山から昇る朝日を描いています。


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円



〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。2月22日(金)までです。

休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。


新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(49)

 今回は、「あみ嶋風景」をご紹介します。

■あみ嶋風景(国員画)
 天満紙屋治兵衛と曽根崎新地紀伊国屋の遊女小春の悲恋を描く近松門左衛門の名作「心中天の網島」で知られる網島は、眼前の大川の清き流れを船が行き交い、東に信貴生駒の山並みを一望できる景勝地で、「摂津名所図会」では「難波最上の名境なるべし」と絶賛され、行楽の人々が繰り出しました。
 東の野田村の漁師が網を干す所だったことからついた地名で、かつては大川・寝屋川・平野川が合流し、たびたび水害を起こしていました。宝永元年(1704)に大和川が付け替えられると地勢が安定し、過書船監視のための番所も置かれました。
 かつては、大川と鯰江川に挟まれていましたが、いまでは鯰江川が埋められ、旧大阪市長公館や藤田美術館が建ちます。藤田美術館は明治の実業家、男爵藤田伝三郎の邸宅跡で、明治20年の戦災で邸宅が焼失した後、倉庫の一部を改造して美術館としたものです。

浪花百景「あみ嶋風景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 「あみ嶋風景」は、昨年ご紹介した「天満ばし風景」とつながる構図になっています。右側の「天満ばし風景」には、大坂城を背景にして、天満橋を与力町・同心町のある北方面へ向かう武士の姿が描かれ、左側の「あみ嶋風景」には、桜並木を背景にして釣竿を背負った町人の姿が描かれています。別々に見ていたときには気付かなかった橋の上での生活風景を、2枚を並べて見ることによって表現する巧みな手法が使われています。

浪花百景「あみ嶋風景」と「天満ばし風景」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブより合成)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「天満バシ」の右手(東側)に「野田村」があり、その北側に「大長寺」があります。このあたりが網島です。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「天満橋」の右手、「川崎ノ渡」と「野田村」の間に文字は小さいですが「大長寺」と「アミジマ丁」の文字が見えます。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、川崎ノ渡しの右上に大きな〇の中の文字で「網」「島」が記され、その左手には「藤田邸」が描かれています。江戸時代にはこのあたりに「大長寺」がありました。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 もう少し北側の桜ノ宮付近を見ると、泉布観から「よどがわばし」を渡り、東へ進んだところに「大長寺」が描かれています。大長寺は明治時代末にここへ移転しました。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、「川崎渡」の右手に「網島町」の文字が見えます。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 北側の桜ノ宮付近を見ると、「東野田四」の交差点に停留所があり、その北側に「大長寺」の文字があります。その東側は「帝大工學部」とあります。「工業大学」の文字を消して書き直されています。
 大阪大学は我が国第6番目の帝国大学として昭和6年(1931)に創設され、大阪工業大学は、昭和8年(1933)に大阪帝国大学工学部となりました。この地は、かつて関西鉄道の網島駅があったところです。


大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、片町駅の北側に「網嶋」の文字があります。このあたりは農地が拡がり、北方には「あみじま」駅があります。ここから関西鉄道の名古屋行直通列車が走っていました。
 右上の昭和4年では、南北に市電が走り網島駅の跡地に「工業大学」が建ち、周辺の市街化が進んでいます。「網島」の文字が残っています。

明治41年から昭和22年の地形図と現在の空中写真
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。「網島」の地名は残っています。
 右下は最近の空中写真です。かつて大長寺があった地は、藤田美術館や太閤園、藤田邸跡公園などの緑が拡がっています。

 網島駅付近を拡大して見てみます。左上の明治41年では地図の中央に網島駅があり、北側に大きな池が描かれています。鉄道を通すための盛土を作るために掘られた池と言われています。
 右上の昭和4年には、地図の下部中央付近の市電の停留所の北側にお寺の記号があります。明治45年に移転してきた大長寺です。

明治41年から昭和22年の地形図と現在の空中写真
(今昔マップ3より)

 大長寺は、もとは現藤田美術館のところにありました。その土地は明治45年、豪商藤田伝三郎の邸宅用地として買収されたため現在地に移転しました。当寺の山門は、もとの位置に残っています。
 当寺には近松「心中天網島(てんのあみじま)」の主人公、小春・治兵衛の比翼塚があります。享保(きょうほう)5年(1720)10月、曽根崎新地から人目を忍び手を取りあって抜け出た2人は、曽根崎川沿いに思い出の町を通り橋を渡り網島へたどりつき心中しました。この比翼塚も寺と共に現在地へ移りました。



藤田邸跡に残る大長寺の山門
現在の大長寺の門

 享保5年(1720)10月14日、天満の紙屋の主人治兵衛と曽根崎新地の遊女小春が大長寺で心中しました。近松門左衛門がさっそくこれを浄瑠璃にしたてたのが名作「心中天網島(てんのあみじま)」で、人々が2人をあわれんで建てたのがこの比翼塚です。大長寺は、もと網島(現在の藤田美術館敷地内)にありましたが、明治42年現在の場所に移転し、それとともに塚も移されました。

比翼塚

 比翼塚のとなりには鯉塚があります。寛文8年(1668)淀川で捕らえられた巴の紋のついた大きな鯉が、見世物にされた後に死んだところ、大長寺の住職の夢枕に、大坂夏の陣で討ち死にし成仏できない武士が現れたことから、「滝登鯉山居士」の法名を与えねんごろに弔ったものと伝えられています。
 左にある「誰が袖乙吉の墓」の乙吉は網島の漁夫で、後に任侠道で名を馳せ、行状有名となリ、浪曲・講談で語り継がれたといわれます。


鯉塚

 現在の網島付近には「あみじま」の地名はほとんど残っていません。写真は、地名を留める数少ない例のひとつで、かつて網島市場があったところが「コム・アミジマ」というスーパーマーケットになっています。

コム・アミジマ
コム・アミジマ
後方にグラウンドのネットが
コム・アミジマの周辺
後方のグラウンドは阪大工学部跡地に建つ東高校

 今回は、「浪花百景」の「あみ嶋風景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇今週のイベント・ワークショップ

1月3日(木)~5日(土)、7日(月)、9日(水)~12日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月6日(日)、13日(日)、14日(祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


1月5日(土)
イベント 今昔庵茶会

町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時


1月6日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時


1月6日(日)
町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう

13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿