2019年1月22日火曜日

今週の今昔館(147) 川崎御宮 20190122

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(52)

 今回は、「川崎御宮」をご紹介します。

■川崎御宮(国員画)
 大坂夏の陣で豊臣家を滅ぼした徳川家康は、翌元和2年(1616)4月17日にこの世を去りました。遺体は即日久能山に葬られ、翌年4月17日に日光に移されました。この日光改葬と同じ日に、夏の陣後の大坂復興に当たっていた家康の外孫松平忠明が、家康ゆかりの織田有楽斎別邸跡地に社殿を建て、分祀したのが川崎東照宮です。
 当地は名水が湧く所で、築山・林泉を整え、観音堂・薬師堂を配した美しい景勝地と伝え、毎年4月と9月の17日には権現祭りが執行され、「浪花随一の紋日」とうたわれる程大層な賑わいを見せたといわれます。明治6年(1873)廃社となりましたが、忠明献納の石灯籠は天満宮境内に移されました。

浪花百景「川崎御宮(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「天満宮」の東「川崎御蔵」と並んで「御宮」の文字があります。ここが川崎東照宮のあったところです。朱色の線の観光ルートにもなっており、天満宮と並んで観光名所であったことがわかります。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、もう少し詳細な様子が分かります。大川に面して「御蔵」と「御材木蔵」があり、その東に「町与力」があり、その東に「御宮」があります。天満橋は現在よりも一筋東に架かっており、天満橋北詰から北へ進んだところに川崎東照宮があったことがわかります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「造幣局」の西側、「川崎」の「崎」の文字の左に学校の印があります。ここが現在の滝川小学校にあたります。学校の北から東にかけて緑の樹木が描かれていますが、かつての川崎東照宮の名残を示しているようです。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、「造幣局」と「空心町」の文字に隠れて「文」の印が見えます。ここが現在の滝川小学校で、このあたりに川崎東照宮がありました。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 
 地形図でも確認してみましょう。まずは、明治18年の陸地測量部地図です。大川沿いの造幣局の建物の西側に樹木が植わっているような表示がありますが、このあたりが川崎東照宮のあったところです。明治維新になり徳川幕府関連の施設は廃止され名前の表示はありません。
明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、「造幣局」の西側に「文」の記号が見えます。この一角が川崎東照宮があった場所です。
 右上の昭和4年では、同様に「文」の記号が見えます。区角割が多少変わっていますが、この辺りの土地が造幣局の関連施設として利用されていたことが伺えます。

明治41年から昭和42年の地形図と現在の空中写真
(今昔マップ3より)

 左下の昭和42年を見ると、造幣局のすぐ西には官舎と思われる建物が並び、その西側が学校の敷地となっています。現在の滝川小学校です。
 右下は最近の空中写真です。造幣局の西側に学校のグラウンドと校舎、体育館が見えます。

 川崎御宮の跡の現状を写真で見てみましょう。最初の写真は造幣局の西に位置する滝川小学校を北西側から見たものです。こちらから見ると、特に変わったものは見えません。2枚目は、反対側、南西からみたものです。正門の手前に石碑と顕彰版があります。ここが川崎東照宮があった場所です。

滝川小学校
滝川小学校、正門右に川崎東照宮跡の碑
滝川小学校正門
川崎東照宮跡の碑
川崎東照宮跡の碑
川崎東照宮跡の顕彰版
滝川小学校正面入り口

 川崎橋は桜之宮公園の南の入り口に当たります。造幣局の櫻の通り抜けの季節には、造幣局と大阪城を結ぶルートとして大勢の人々でたいへん賑わいます。


 今回は、「浪花百景」の「川崎御宮」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

1月23日(水)~26日(土)、28日(月)、30日(水)~2月2日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月27日(日)、2月3日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


1月26日(土)
町家衆イベント ワークショップ『鬼のお面作り』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

1月27日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

2月2日(土)
イベント 日本の伝統文化『香道』

①13:00 ②15:00
日本の文化を体験しませんか
講師:香道「はなの会」主宰  神垣裕子
会場:今昔館9階展示室 薬屋 座敷(正座椅子等の持ち込可能)
対象:中学生以上、各回20名(申込み多数の場合抽選)
参加費:500円(別途、大阪くらしの今昔館の入館料が必要です)

2月3日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿