2019年1月15日火曜日

今週の今昔館(146) 川崎ノ渡シ月見景 20190115

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(51)

 今回は、「川崎ノ渡シ月見景」をご紹介します。

■川崎ノ渡シ月見景(芳雪画)
 こんにち造幣局のある一帯は、川崎村と呼ばれ、大坂三郷の一つ天満郷の東に隣接していました。大坂城に近い川崎村は、幕府の材木蔵や米蔵、城代屋敷、蔵屋敷が建ち並ぶ地域でした。
 この川崎村と大川対岸の備前島とを結ぶ渡しが川崎渡で、鯰江川に架かる備前島橋(御成橋)、寝屋川に架かる京橋を経て、その向こうに大坂城の雄姿を望むことができました。季節ごとの舟遊びの内でも、とくに大坂城を背景に京街道沿いの松林越しに臨む川崎の名月は、絶好の月見の拠点として有名でした。
 渡しは昭和20年6月の空襲で施設が破壊されて以降廃止され、かわって昭和53年に歩行者・自転車専用の川崎橋が架けられました。現在はその下をアクアライナーがくぐってゆきます。

浪花百景「川崎ノ渡シ月見景(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「野田村」と「御宮」の間に「ワタシ」の文字があります。ここが川崎の渡しがあったところです。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、備前島が天満橋の下まで伸びてきており、橋の右手(東側)に「川崎渡」の文字が見えます。「備前島橋」「京橋」を渡ると、「御城」の「京橋口」に至ります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3には掲載されていない明治18年の陸地測量部地図です。日文研さんからお借りしました。
 天満橋の右手(東側)に「川嵜橋」が描かれています。明治10年に建設された私設の木造橋でした。造幣局から、川嵜橋、備前島橋、京橋と3つの橋を渡ると、大阪城京橋口に至ります。川嵜橋は、明治18年の淀川大洪水によって流失し、その後は再建されませんでした。当時の大阪城とその周辺は陸軍の軍用地として利用されていました。図中の「M」は陸軍を示す記号です。


明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「天満橋」の「北詰」から東へ進むと桜並木の描かれている造幣局があります。その手前に「川崎ノ渡シ」の文字と舟の絵、航路の点線があります。渡った対岸を進むと「びぜんじまばし」さらに「きやうばし(京橋)」へと続きます。その先には大阪城があります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、「天満橋北詰」停留所の右側に「造幣局」が大きく描かれています。造幣局の手前から「川崎渡」で対岸の備前島に渡り、「備前島橋」「京橋」を渡ると、大阪城京橋口に至ります。寝屋川が付け替えられて川崎渡しのすぐ西側で大川に合流しています。京阪電車の天満橋駅の北側に「備前島」の地名が残っています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、「天満橋」の東側、「京橋」の北側に、文字はありませんが、渡し船の記号と航路の点線が見えます。明治43年に開通した京阪電車が記されています。
 右上の昭和4年では、「川崎渡」の文字が記されています。京阪電車と並んで市電が走っています。

明治41年から昭和42年の地形図と現在の空中写真
(今昔マップ3より)

 左下の昭和42年を見ると、川崎の渡しは廃止され、表示がなくなっています。京阪電車が天満橋の手前で地下に入っていく様子が描かれています。
 右下は最近の空中写真です。川崎の渡しがあったところに川崎橋が架けられています。大川沿いに桜之宮公園が整備され、緑が写っています。京橋の上空に歩行者専用橋の「大坂橋」があり、造幣局と大阪城を結ぶ歩行者ルートになっています。

 川崎の渡し跡の現状を写真で見てみましょう。最初の写真は天満橋から東方面を見たところです。
 左手が大川・川崎橋、右手は寝屋川で、京阪電車が走っています。正面はOBPのビル群、右奥には生駒山が見えます。


天満橋より川崎橋を見る
川崎橋、背景はOBP、
左手前に「川崎橋命名の由来」の碑
「川崎橋命名の由来」の碑
川崎橋と大阪城、屋形船、京阪電車
川崎橋、右奥に大阪城

 川崎橋は桜之宮公園の南の入り口に当たります。造幣局の櫻の通り抜けの季節には、造幣局と大阪城を結ぶルートとして大勢の人々でたいへん賑わいます。

桜之宮公園の案内図(右が北)

 今回は、「浪花百景」の「川崎ノ渡シ月見景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

1月16日(水)~19日(土)、21日(月)、23日(水)~26日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月20日(日)、27日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


1月20日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭伯枝、露の棗
14時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
14:30~中級者以上向け

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

1月26日(土)
町家衆イベント ワークショップ『鬼のお面作り』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

1月27日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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