2019年1月29日火曜日

今週の今昔館(148) 源八渡し口 20190129

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(53)

 今回は、「源八渡し口」をご紹介します。

■源八渡し口(国員画)
 源八渡は天満源八町と対岸の中野村を結ぶ渡しです。
 大川右岸の源八町は大坂町奉行所の与力同心の官舎が建ち並び、樋之口から源八橋付近一帯は木村堤と称されて下流から桜並木が続き桜の名所として著名でした。左岸の中野村は農村で、梅林の名所として知られていました。渡し口からは名高い中野村の梅林を眺めることができ、毛馬出身の与謝蕪村は「源八をわたりて梅のあるじかな」という一句を遺しています。
 両岸を結ぶ渡しは、早春から梅、桜、菜の花と花に誘われる行楽の船としても広く利用されました。
 錦絵は中野村側から源八町方面を眺めたもので、堤上には多くの桜樹が見られます。この辺りは天満橋詰から始まる曳き舟の最初の区間で、堤の上を水主(かこ)たちが一里ほどにわたって三十石船を引き続けます。
 昭和11年に源八橋が架橋されるとともに源八渡は廃止となりました。

浪花百景「源八渡し口(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「天神バシ」の北詰から「天満宮」「御宮」「川崎御蔵」を経て「源八ワタシ」で淀川を渡り、「櫻ノ宮」「大長寺」「野田村」を経て、「野田橋」と「京バシ」を渡って大坂城に至るルートが観光モデルコースとなっています。源八ワタシも観光ルートに組み込まれていました。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、川崎には「伊勢津(藩)」の蔵屋敷があり、付近には天満寺町や与力・同心の屋敷がありました。淀川沿いには「木村ツツミト云」の文字も見えます。木村堤を北へ進むと、「源八渡」の文字が見えます。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図には、城東線の鉄橋が描かれ、淀川東岸に「櫻ノ宮駅」があります。城東線の南側に「げんぱちの渡」の文字と舟の絵が見えます。淀川の西側、寺町の北側には工場の煙突が目に付きます。一方東側を見ると、駅の南側には市街地が広がり、北側の一角には木造の市営住宅が描かれています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、北同心町と中野町の間に「源八橋」が架けられ、「源八渡」は廃止されています。かつて水源地があったところは「淀川貨物駅」となり、入堀も描かれています。水運と陸運の結節点でした。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)


 地形図でも確認してみましょう。まずは、明治18年の陸地測量部地図です。川崎村と中野村を結ぶ渡し船の記号が描かれていますが、名前はありません。中野村側は渡し舟の船着き場近く以外はほとんどが田畑です。川崎村側は寺町の北側に与力・同心の屋敷が並んでいます。淀川と堀川を細い水路がつないでいます。
明治18年陸地測量部地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の源八渡し周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、城東線の南側に渡し船の記号が見えます。「さくらのみや」駅の北側は水源地となっています。
 右上の昭和4年では、淀川の堤防内が整備されワンドができています。渡し船はワンドの入り口までとなり、水路が短くなりました。水源地の跡が貨物駅になっています。

明治41年から最近の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、名前の表示はありませんが、源八橋が架けられています。まだ渡し船も残っています。
 右下は最近の国土地理院地図です。源八橋の名前が表記されています。天満堀川が埋め立てられて阪神高速道路(地図の緑色の表示)が通っています。

 現在の源八橋付近を写真で見てみましょう。最初の写真は源八橋の東詰から橋と対岸を見たものです。かつては、中央の中州から向こう岸までの間を源八渡しが結んでいました。対岸(西詰)の河川敷に源八渡しの跡の碑があります。


中野側から見る源八橋と対岸の眺め
中野側から見る源八橋(南面)
源八渡し跡の碑

 源八渡し跡の碑の南隣には、「日羅公之碑」があります。
 大阪市のホームページによると、「伝日羅(にちら)墳跡」として、≪『日本書紀』敏達(びだつ)天皇12年の条によると、日羅は肥後の人、長らく百済(くだら)に滞在してその地に精通していた。当時わが国は、朝鮮半島の新羅に帰属していた任那(みまな)の復興をはかっており、日羅を帰国させ献策させた。それが百済に不利なものと思った随行の百済人が、彼を暗殺した。この付近は日羅初葬の地と伝えられるところで、碑はここより西約200mの民家前にあった。≫とあります。


隣には日羅公之碑

 この辺りは江戸時代から「木村堤」として桜の名所でした。それは現在にもつながっています。以前に源八橋の上から撮った写真をご紹介します。
源八橋から見た大川右岸の桜
大川右岸の桜(源八橋より)


 今回は、「浪花百景」の「源八渡し口」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

1月30日(水)~2月2日(土)、4日(月)、6日(水)~9日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

2月3日(日)、10日(日)、11日(祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


2月2日(土)
イベント 日本の伝統文化『香道』

①13:00 ②15:00
日本の文化を体験しませんか
講師:香道「はなの会」主宰  神垣裕子
会場:今昔館9階展示室 薬屋 座敷(正座椅子等の持ち込可能)
対象:中学生以上、各回20名(申込み多数の場合抽選)
参加費:500円(別途、大阪くらしの今昔館の入館料が必要です)

2月3日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

2月9日(土)
ワークショップ 『版木はがき』

13時30分~15時
参加費:200円

2月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

2月11日(月・祝)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出 演:旭堂南左衛門、他
時 間:14時~15時

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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