2019年3月5日火曜日

今週の今昔館(153) 北之太融寺 20190305

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(58)

 今回は、「北之大融寺」をご紹介します。

■北之大融寺(国員画)
 天満には西寺町、東寺町が東西に連なり、西寺町の北側には北野の太融寺として親しまれている真言宗寺院があります。弘仁12年(821)嵯峨天皇勅願、弘法大師創建と伝える当地屈指の古刹として朝廷や武家の崇敬を集めました。
 太融寺の名は、当地を訪れ八町四方を画し、七堂伽藍を建立した嵯峨天皇皇子の左大臣源融(822~895)にちなむといわれます。現在の扇町公園が寺の庭園であったというほど広大な寺域を誇りましたが、大坂夏の陣において焼亡しました。
 復興後は毎月の大師巡りの第一番札所としても知られ、観音巡り、縁日などのたびに多くの参詣者が訪れ、寺社の再建資金などを集めるための一種の宝くじである富くじ興行が行われる寺としても有名でした。現在境内には淀殿の供養塔や芭蕉の句碑などがあります。

浪花百景「北之大融寺(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見てみましょう。西寺町の北側に「大ユウ寺」があります。赤色の線はお勧め観光ルートです。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖では、お寺の並ぶ寺町通の北に他のお寺より一回り大きく「太融寺」が描かれています。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、刑務所が移転したのち整備途中の扇町公園の西側に「太融寺」が描かれています。「北」の文字は「北野」の北です。寺町通にお寺が並んでいますが、名称は記載されていません。「満」の文字は「天満」の満です。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、梅田から東へ延びてくる大通りができて市電が通り、「太融寺町」に停留所があります。通りの南側に「太融寺」の文字があります。「太融寺町」「兎我野町」の地名も見えます。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、北野村の市街地の中に、広い境内にお寺の記号があります。ここが太融寺です。その南にお寺が横一列に並んでいる通りは天満寺町です。当時は、北野村の周囲はほとんどが農地だった様子が分かります。

明治18年陸地測量部地図
(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の太融寺周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、堀川監獄の西側に太融寺の文字があり、境内にお寺の記号が見えます。
 右上の昭和4年では、市街地化が進み、市電の通る大通りが梅田から東と北東方向に延び、市電が走っています。監獄の跡地には公園が整備され、学校や公共建築が建てられています。市電の停留所の南、「北野」の「北」の字の右側にあるお寺が太融寺です。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、扇町公園の南側と北西側は戦災の被害を受けて建物が焼失しています。太融寺周辺も大きな被害を受けています。市電の東西線は廃止されています。
 右下は昭和42年ですが、兎我野町の文字の北側に太融寺のお寺の記号があります。市電の南北線も廃止されましたが、梅田から天六方面へ伸びる東西線は残っています。戦災の被害の大きかった地域は戦災復興区画整理によって幹線道路と区画道路が整備されています。扇町公園には大阪プールの建物が描かれています。


 太融寺の現況を写真で見てみましょう。

太融寺本堂
太融寺大師堂
太融寺宝塔
太融寺北西角
太融寺西門
太融寺南門
太融寺境内案内
太融寺境内
淀殿の墓
淀殿の墓石碑
淀殿の墓石碑
芭蕉の句碑
「しら菊の目に立て見る塵もなし」

 今回は、「浪花百景」の「北之大融寺」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「太融寺」や「堀川監獄址」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「モダン都市大阪の記憶」開催中です
 2019年3月2日(土)~4月7日(日)


 今も昔も、大阪は魅惑的なビジュアルに満ちています。美しくパッケージされた商品、目を引く広告パンフレット、凝ったディスプレイ、豪華な百貨店建築、橋や道路、地下鉄などの都市基盤も含め、それらは形態、形象、記号の宝庫であり、往時のグラフィックからは華やかな時代の息吹が感じられます。
 本展では、橋爪節也氏のコレクションから、明治~昭和期の絵画・チラシ・ポスター・雑誌などを紹介し、当時の写真とともに近代大阪を振り返ります。百貨店、劇場、花街、交通など、さまざまな見所を持つモダン大阪を、グラフィックをたよりにそぞろ歩いてみませんか。


《口紅》北野恒富 (大正6~7年)
「だいまる」 (昭和2年3月号)
「TOURIST MAP OF OSAKA」(昭和11年)
「⼤阪遊覧乗合⾃動⾞」(昭和初期)

〇今週のイベント・ワークショップ

3月6日(水)~9日(土)、11日(月)、13日(水)~16日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月10日(日)、17日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


3月9日(土)
ワークショップ 『木の継ぎ方を知ろう』

13時30分~15時
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費無料

3月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


3月17日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
    14:30~中級者以上向け


イベント 町家でお茶会
     町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。
     協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円
     ※当日12時より8階受付でお茶券を販売します
13時~15時





そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。
 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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