2019年3月12日火曜日

今週の今昔館(154) 浜村鬼子母神 20190312

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(59)

 今回は、「浜村鬼子母神」をご紹介します。

■浜村鬼子母神(国員画)
 浜村鬼子母神は、淀川左岸に位置する南浜村の内、現在豊崎2丁目にある源光寺の南側にあり、正式名称は日蓮宗慶住院。ここに安置された鬼子母神像は子宝・安産・夫婦和合・子どもの守護神として、近隣だけでなく遠方からも多数の参詣者が訪れ、付近に茶店や料理屋ができるほどであったといわれます。周辺には大坂七墓の一つ「浜の墓地」があり、寺院の集まる地域でもありました。
 現在慶住院は摂津丘陵の山間部、高槻市摂津峡に移転しましたが、江戸時代に奉納された灯籠なども移されており、当時の賑わいぶりを偲ぶことができます。しかし、元の場所には地名すら残っていません。

浪花百景「浜村鬼子母神(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」では、北野、太融寺あたりまでが地図の範囲に入っていますが、浜村の記載はありません。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖でも、「太融寺」や「北ノ天神」は描かれていますが、浜村は範囲に入っていません。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 文化3年発行の増修改正摂州大阪地図を見てみましょう。太融寺と中津川の間に濱村が描かれています。

増修改正摂州大阪地図(ラムゼイコレクションより)

 もう少し拡大して見てみましょう。濱村の南に源光寺があり、東に延びる道の先に濱墓所が描かれています。源光寺の南に、妙楽寺と祐泉寺というお寺が描かれています。名前は異なりますが、このあたりには、お寺が集まっていたことが確認できます。

増修改正摂州大阪地図(ラムゼイコレクションより)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、国鉄の上を阪神北大阪線が跨いでいます。南濱に停留所があり、その西北に源光寺が描かれています。源光寺から南濱墓地へ向かう道路が国鉄を踏切で渡っています。阪神を挟んで南側に描かれている寺が慶住院です。源光寺の西には、梅花女学校が描かれています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、国鉄線が高架になりその下を阪神北大阪線が走っています。南浜停留所の北西に「源光寺」、南西に「鬼子母神」の文字が見えます。その南にある境界線は北区と東淀川区の区境界です。地図の左端には阪急電車の高架線と平面の北野線が描かれています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 地形図でも確認してみましょう。明治18年の陸地測量部地図を見ると、国鉄線の西に南濱村があり、南北に2つの寺が並んでいます。北が源光寺、南が慶住院です。源光寺から東に鉄道を渡る道路があり、その先に南濱墓地があります。周りは中国街道が通っているほかはほとんどが田畑です。

明治18年陸地測量部地図
(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、その後の南濱周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、南濱村と街道沿いに家屋がありますが、田畑が多くあります。梅花女学校、北野中学校の文字が見えます。阪急電鉄の前身の箕面有馬電気軌道の線路が見えます。
 右上の昭和7年では、市街地化が進み、東西に阪神北大阪線、天神橋筋六丁目から南西方向と南北に市電が走っています。国鉄の線路と、阪急の高架線と平面の北野線が見えます。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、地図の白い部分は戦災の被害を受けて建物が焼失しています。阪神北大阪線より南側は戦災を免れています。
 右下は昭和42年ですが、南北に新御堂筋が通り、国鉄との間に阪神北大阪線を挟んで、北側に源光寺、南側に慶住院があります。南浜町、中崎町などの地名が見えます。

 慶住院の移転先を地図で確認してみます。赤い丸印が慶住院の移転先、緑の丸印はJR高槻駅です。その間を東西に横切っている幅の広い道路は名神高速道路です。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)

 赤丸の部分を拡大したものです。三好山の東側、川が蛇行している所にある寺が慶住院です。昭和51年に移転していますので、左下の昭和54年以降の地図に描かれています。摂津峡のハイキングコース沿いにあります。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)

 現在の慶住院の様子を、ホームページで見てみました。

現在の慶住院
現在の慶住院
慶住院の移転を記す石碑

 慶住院があった元の位置付近の現況を写真で見てみましょう。1枚目は現在の源光寺です。阪神北大阪線が走っていた道路を現在は阪神バスが走っています。南濱バス停のすぐ北側に源光寺があります。

現在の源光寺
源光寺の山門
東が正面になっています。
源光寺から南濱墓地に通じる道路。
JRの高架下を通り抜けています。
阪神バス南濱バス停
慶住院があった場所は南濱バス停の南側になります。
現在はマンションが建っています。

 今回は、「浪花百景」の「浜村鬼子母神」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、「慶住院」や「源光寺」を確かめてください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「モダン都市大阪の記憶」開催中です
 2019年3月2日(土)~4月7日(日)


 今も昔も、大阪は魅惑的なビジュアルに満ちています。美しくパッケージされた商品、目を引く広告パンフレット、凝ったディスプレイ、豪華な百貨店建築、橋や道路、地下鉄などの都市基盤も含め、それらは形態、形象、記号の宝庫であり、往時のグラフィックからは華やかな時代の息吹が感じられます。
 本展では、橋爪節也氏のコレクションから、明治~昭和期の絵画・チラシ・ポスター・雑誌などを紹介し、当時の写真とともに近代大阪を振り返ります。百貨店、劇場、花街、交通など、さまざまな見所を持つモダン大阪を、グラフィックをたよりにそぞろ歩いてみませんか。


《口紅》北野恒富 (大正6~7年)
「だいまる」 (昭和2年3月号)
「TOURIST MAP OF OSAKA」(昭和11年)
「⼤阪遊覧乗合⾃動⾞」(昭和初期)

〇今週のイベント・ワークショップ

3月13日(水)~16日(土)、18日(月)、20日(水)、22日(金)、23日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

3月17日(日)、21日(木・祝)、24日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


3月17日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
    14:30~中級者以上向け


イベント 町家でお茶会
町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。
協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階受付でお茶券を販売します
13時~15時


3月21日(木・祝)
ワークショップ 『千代紙ろうそくを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
参加費200円

3月23日(土)、24日(日)
イベント 彼岸の屋台

「のぞきからくり」や「宝引き」など・・
お祭りは大人も子どもも楽しめます
13時~16時 8階・9階大通り



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。
 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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