2019年4月8日月曜日

今週の今昔館(158) 宗禅寺場々 20190408

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(63)

 今回は、「宗禅寺場々」をご紹介します。現在では「崇」の字を使用することが多いですが錦絵では「宗」の字を用いています。場々は馬場のことです。

■宗禅寺場々(国員画)
 宗禅寺は聖徳太子創建と伝えるが、古くは観音堂のみであったといわれます。室町時代、嘉吉の変(1441)で赤松満祐に謀殺された将軍足利義教の首級が当地に埋めらました。将軍義勝は父の菩提を弔うために管領細川持賢(もちかた)に命じ、広大な寺地に伽藍を建立しました。西門から総社神社の間には松の巨樹が生い茂り、乗馬の訓練の最適地で宗禅寺馬場といわれ、近郊の行楽地としても賑わいました。明治の摂津県庁舎設置に伴い乱伐され、今は姿を留めません。
 正徳5年(1715)ここを舞台に敵討ち事件が起こり、後にこれを題材とした浄瑠璃「敵討宗禅寺馬場」が好評を博して以来ゆかりの地として有名になりました。現在馬場付近は宅地化し、錦絵に描かれた鳥居も場所が変えられています。

浪花百景「宗禅寺場々(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 まず、地形図で崇禅寺周辺の様子をみてみましょう。明治42年陸地測量部地図を見ると、淀川から北は全体に農地が拡がっている中にいくつかの集落があります。図の中央辺り「東宮原」の右下淡路庄の中に「崇禅寺」があります。その左には「中島総社」が見えます。崇禅寺の右手を走る鉄道は、現在は阪急京都線ですが、当時はここを国営鉄道の東海道線が走っていました。

明治42年陸地測量部地図
(今昔マップ3より)

 現在の地形図に、明治20年代の川筋を重ねた地図です。濃い水色が旧淀川、薄い水色が新淀川です。うすい黄色は当時の水田を、濃い緑色は荒地を示しています。淀川の川筋が大きく変わっています。崇禅寺の辺りの黄色がかかっていないところは家屋が並んでいた集落と畑です。

国土地理院地図(明治時代の低湿地)

 今昔マップ3を利用して、明治41年以降の柴島周辺の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、崇禅寺の周辺には東宮原の集落があるほかはほとんどが農地です。集落の中を中島大水路が通っています。
 右上の昭和4年では、国営鉄道が地図の左上の方へ移設され、その線路を利用して新京阪線(現在の阪急京都線)が通り、「そうぜんじ」の駅ができています。浄水場を挟んで南側には新京阪線(現在の阪急千里線)が見えます。

明治41年から最近の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、浄水場の北側は戦災によって大きな被害を受けています。
 右下は最近の国土地理院地図ですが、崇禅寺と中島総社のまわりは市街地化が進んでいます。


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」、天保8年(1837)発行の「天保新改攝州大坂全圖」文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」、大正13年(1924)発行の「大阪市パノラマ地図」では、淀川と中津川の分岐点よりも北に位置する崇禅寺は地図の範囲に入っていません。


 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、崇禅寺と水源地は丸囲みの文字で示されており、観光名所となっていたことがわかります。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)


 現在の崇禅寺付近の状況を写真で見てみましょう。市街地の中にあって広大な敷地に本堂の他いくつかのお堂と、墓地があります。

崇禅寺東門
崇禅寺本堂
崇禅寺本堂(右)

 本堂の隣に八角堂があり、傍には聖徳太子像と開運福布袋尊があります。

八角堂
聖徳太子像
開運福布袋尊

 阪急崇禅寺駅から崇禅寺へ向かう道は歴史の散歩道になっていて、案内標識が建っています。

歴史の散歩道の案内標識、
後ろに「右 崇禅寺東門」の石碑

 崇禅寺の南門。「葷酒山門に入るを許さず」の戒壇石があります。「葷」はねぎ類の植物のことで、酒と同様に仏教の出家修行者には禁じられています。その隣には、ここが摂津県・豊崎県の県庁所在地であったことを示す石碑があります。明治2年1月に大阪府の一部を割いて摂津県がおかれ、住吉・東成・西成・島上・島下・豊島・能勢・川辺の八郡を管轄しました。その仮庁舎として崇禅寺の建物があてられました。その後明治2年5月には豊崎県に改名され、その後も区域の変更が繰り返されました。

崇禅寺南門
県庁所在地跡の碑(左)

 崇禅寺の西門。ここには「崇禅寺馬場」の石碑があります。

崇禅寺西門
崇禅寺馬場の碑

 崇禅寺の西150mのところに中島総社があります。

中島総社
中島総社拝殿

 阪急電車の崇禅寺駅。駅周辺では、現在連続立体交差化工事が進められています。駅の南は柴島浄水場で、外周は桜並木になっています。第二次世界大戦の空襲による弾痕が残る壁の一部が保存されています。

阪急崇禅寺駅
連続立体交差化工事中の阪急崇禅寺駅
連続立体交差事業の説明板
柴島浄水場の桜
第2次世界大戦の空襲による弾痕

 JR新大阪駅構内の駅周辺案内図です。崇禅寺は新大阪駅から500m圏内、柴島は1km圏内にあります。

新大阪駅構内の駅周辺案内図

 今回は、「浪花百景」の「宗禅寺場々(国員画)」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、大大阪時代に入る頃の大阪の姿をご覧ください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇大阪くらしの今昔館は、4月8日から12日まで展示替えのため休館となります。ご注意ください。

〇4月13日(土)からは、9階江戸時代のフロアの常設展示は「夏祭りの飾り」の展示となります。



展示替えによって、
幔幕(まんまく)と高張り提灯
造り物
お迎え人形
天神丸
などが加わります。


光と音の演出にも、祭囃子や花火が入り、にぎやかさが演出されます。


〇企画展「モダン都市大阪の記憶」終了しました
 多くのみなさまのご来場ありがとうございました。



〇次回の企画展は「おかげさまで第6回 吉例 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」
2019年4月20日(土)~5月26日(日)


 大阪くらしの今昔館で好評を博してきました昭和レトロ家電の展覧会が、今年も開催となりました。

 本展では、家電コレクターである増田健一氏が20年以上にわたって収集したコレクションの中から、魅力あふれるレトロ家電を選りすぐり、販売当時の懐かしいポスターやチラシ等と共に展示します。どうぞお楽しみに。

(松下)大阪万博記念トランジスタラジオ
「パナペット70」
昭和45年
(三洋)アート・ドア冷蔵庫「金馬車」
昭和44年


〇今週のイベント・ワークショップ

4月8日(月)から12日(金)まで、展示替えのため休館となりますので、ご注意ください。

4月13日(土)、15日(月)、17日(水)~20日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

4月14日(日)、21日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



4月13日(土)
町家衆イベント ワークショップ『つまみ細工を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

4月14日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

4月20日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演・演目:桂出丸、他
14時~15時

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00

4月21日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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