今日は平成最後の日。昨年1月から連載してまいりました浪花百景のシリーズも今回が最終回となります。最後の1枚は、「三嶋江」をご紹介します。高槻市の淀川沿いにあり、100枚の中で最北端、最東端になります。
■三嶋江(国員画)
三嶋江は古来万葉集にも「淀の玉江」として歌枕に詠まれた著名な当地は、淀川中流の要港として、対岸の枚方との渡しにより北摂と北河内をも結ぶ交通の結節点でした。江戸時代にはここで酒や寒天などの高槻城下の特産品が積み出され、富田、芥川、茨木などと結んで物資を揚げ降ろしする過書船が多く出入りしました。
また能勢妙見山や神峰山寺への参詣者も三十石船などを利用して乗り入れたので、岸には荷船問屋や酒飯を提供する茶屋などが軒を連ねて賑わいました。
現在は陸上交通の発達と護岸により昔日の面影を留めませんが、享和元年(1801)建立の石標と明和2年(1765)奉納の妙見灯籠は今も現地に残っています。
浪花百景「三嶋江(国員画)」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
三島江の鴨神社は、摂津名所図会にも描かれています。
摂津名所図会「三嶌鴨神社」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
まず、地形図で三島江付近の様子をみてみましょう。明治41年陸地測量部地図を見ると、淀川の右岸(高槻市側)には、川沿いから内陸に向けて三島江、西面、目垣の集落が並び、「三箇牧村」の地名が見えます。対岸の左岸枚方市側には出口、中村、中振の集落があります。集落の周辺には水田が拡がっています。
明治42年陸地測量部地図 (今昔マップ3より) |
国土地理院地図に「明治時代の低湿地」という図があり、明治20年ころの河川や池、水田などの様子がわかります。このあたりは淀川の川筋はほとんど変わっていません。図の中央「+印」が三島江の位置です。現在では西側を新幹線が通過しているほかには、鉄道や幹線道路もなく、とても便利とは言えない立地ですが、江戸時代、鉄道のなかった時代には、淀川の水運と、摂津と北河内を結ぶ拠点として恵まれた立地にありました。
国土地理院地図(明治時代の低湿地) |
錦絵の解説にある、高槻、富田、茨木と三島江の位置関係を、明治41年陸地測量部地図で見てみましょう。芥川は西国街道の高槻最寄りの宿場町です。当時の物流は水運だったことを考えると、三島江が集積地であったことが肯けます。
三島江の位置(明治41年・今昔マップより) |
今昔マップ3を利用して、明治41年以降の三島江付近の変遷を見てみます。
左上の明治41年、右上の昭和4年では、いくつかの集落以外はほとんどが水田でした。
明治41年から最近の地形図 (今昔マップ3より) |
左下の昭和42年を見ると、三島江の西を新幹線が通過しています。対岸の枚方市側と比べると市街地化が進んでいません。
右下は最新の地理院地図ですが、三島江の南の柱本には住宅団地が建設されていますが、三島江では一部に工場の建設が見られますが、水田も多く残っています。
このシリーズでよくご紹介してまいりました、江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」、文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」、天保8年(1837)発行の「天保新改攝州大坂全圖」、大正13年(1924)発行の「大阪市パノラマ地図」、昭和12年(1937)発行の「大大阪観光地図」では、高槻市にある三島江付近は地図の範囲に入っていません。
現在の三島江付近の状況を写真で見てみましょう。
式内三島鴨神社 |
拝殿 |
三島鴨神社は伊予、伊豆の三島と共に 「三三島」と称せられた |
今回は、「浪花百景」の「三嶋江(国員画)」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。
今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、大大阪時代に入る頃の大阪の姿をご覧ください。
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。現地の写真は三島鴨神社のホームページからお借りしました。
「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の第1回は、こちらからご覧ください。
http://konkon2001.blogspot.com/2018/01/blog-post.html
〇企画展「おかげさまで第6回 吉例 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」開催中
2019年4月20日(土)~5月26日(日)
大阪くらしの今昔館で好評を博してきました昭和レトロ家電の展覧会が、今年も開催となりました。
本展では、家電コレクターである増田健一氏が20年以上にわたって収集したコレクションの中から、魅力あふれるレトロ家電を選りすぐり、販売当時の懐かしいポスターやチラシ等と共に展示します。どうぞお楽しみに。
(松下)大阪万博記念トランジスタラジオ 「パナペット70」 昭和45年 |
(三洋)アート・ドア冷蔵庫「金馬車」 昭和44年 |
〇今週のイベント・ワークショップ
※本日4月30日は、火曜日ですが開館しています。
5月8日(水)~5月11日(土)、13日(月)、15日(水)~18日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
4月30日(火・休)~5月6日(月・休)、12日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
5月2日(木・休)
イベント 和楽器の調べ
和楽器の響きをお楽しみください
14時~15時
出演:菊聖公一、他
5月3日(金・祝)
イベント 町家寄席-講談
江戸時代にタイムスリップ!
大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南左衛門、他
14時~15時
5月4日(土・祝)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”
大坂の町家で開催される、アマチュア落語の会です
14時~15時30分頃
出演:らくてん会
5月5日(日・祝)
イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!
大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭学光
14時~15時
町家衆イベント ワークショップ『兜を作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名(中学生以下対象)、参加費100円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00
5月11日(土)
町家衆イベント ワークショップ『組みひもストラップを作ろう』
①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆
5月12日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/index.html
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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