今回は、あんじゅ96号に掲載されている、大阪くらしの今昔館 増井正哉館長が執筆された「悦子さんたちの化粧直し「住まい劇場」の人形修復」をご紹介します。
8階近代フロアでは、「住まい劇場」が30分おきに上演されています。「空堀通」で理髪店を営んでいた一家が、戦災と戦後の混乱で住む場所を失い、仮住まいの「バス住宅」を経て、新しく「古市中団地」で暮らすようになるまでを、長女悦子(声・八千草薫さん)が語る「住み替え」物語です。1/5模型が昇降装置を使って町並み模型の上に降りてきて、それぞれの住まいの物語の舞台となり、その様子に驚く来館者もおられます。
「浪花軒」(修復前) |
開館から20年を経て、この劇場も劣化が見られるようになりました。これまでも管理用の窓から定期的に清掃してきましたが、手が届かない箇所には汚れが蓄積していると予想されました。また、開館時の写真と比較すると、人形本体と着衣の退色が分かりました。照明の影響と経年の汚れの付着が原因と思われました。このため、昨年4月に人形を取り外し、開館時の状態に戻すことを目標に修復を行うことになりました。劇場を台座ごとガラスケースから取り出し、ボルト止めされていた人形・26体を全部取り外しました。修復の工程は、着衣の脱衣・調査・数段階の洗濯・再縫製・再着装が基本になり、併行して人形の補修・補色を行います。
1930年・空堀通の理髪店「浪花軒」(人形の取り外し) |
まず、状態確認と埃・汚れの除去の後、着衣を脱がせていきます。着衣のほとんどが縫い付けで着せられており、糸をほどいて脱がすことができました。スケールに合わせた模様の生地選びが適切であったことも改めて確認できました。
脱衣の工程では身に着けている小物の精巧さにも驚かされました。着衣の細部も丁寧で、帯や割烹着のひもの結び方、和服の襟の扱い、前身頃・後身頃の調整、頭の手ぬぐいの巻き方など、諸処に細かい工夫を見ることができました。
着衣は照明光による退色は予想よりも少なく、多くは埃の除去と洗濯で対応できました。洗濯では生地を傷めないように、湯の温度を変えながら2度~3度洗いとしています。縮み対策として事前に型紙をとって洗濯前後を比較しましたが、幸いに縮んだものはありませんでした。経年による退色があるもの、汚れ・黄ばみが残るものは、代替の生地で同じ縫製で作成しました。そして、きれいになった着衣は、併行作業の補修・補色が終わった人形に、小物とともにまた同じ方法で着せていきました。
開館時の状態にもどった人形は、昨年9月第1週の展示替え休館期間に劇場に戻され、9月9日に再び皆さんの前に姿を現しました。
洗濯後の着衣整理 |
悦子の婚約者・春山 修復前 |
悦子の婚約者・春山 修復後 |
悦子のお母さん 脱衣・帯周り |
洗濯後の衣装一覧 |
人形メーク 修復前 |
人形メーク 修復後 |
※実際の人形修復を担当した北原須美子さんから提供いただいた報告に基づいています。
※現代の価値観に合わせるため、着衣を変更した人形もあります。
増井 正哉(大阪くらしの今昔館館長)
〇企画展「春夏秋冬 花鳥風月に遊ぶ」開催中です
2024年4月20日(土)〜2024年6月23日(日)
大阪くらしの今昔館では、近世から近代にかけて大阪で活動した絵師(大阪画壇)の作品を収集しています。彼らの作品の多くは、四季折々のまちの景観や年中行事を画題としています。 経済都市として繁栄した大坂の市中は商家が密集して建ち、自然の風物に触れられる場所は限られていました。都市に暮らす人々は絵画によって、四季の移ろいや自然の風情を感じ取っていました。
本展では月岡雪鼎(つきおか せってい)、佐藤魚大(さとう ぎょだい)、西山完瑛(にしやま かんえい)、菅楯彦(すが たてひこ)、五井金水(ごい きんすい)など、近世から近代にかけての大阪画壇の作品を展示します。大阪の人々が愛好した春夏秋冬・花鳥風月の世界をお楽しみください。
以下2点の展示は終了しました。
・「桜下美人図」佐藤魚大
・「源氏物語図屏風」個人蔵
入館料
企画展:500円
常設展+企画展:一般1,000円(団体900円)、高・大生700円(団体600円)(要学生証原本提示)
※団体は20名以上
※中学生以下、障がい者手帳・ミライロID等提示者(介護者1名を含む)、
大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書原本提示)
「源氏物語図屏風 右隻」個人蔵 |
「源氏物語図屏風 左隻」個人蔵 |
「四季花鳥図」 |
「定家詠十二ヵ月押絵貼屏風」月岡雪鼎 |
「桜下美人図」佐藤魚大 |
「大川夕涼図」西山完瑛 |
「春風小午 野崎参り」菅楯彦 |
〇ワークショップ・イベントのご案内
和文化体験のワークショップやパフォーマンスです。どうぞお楽しみください。
*スケジュール表はこちら≫https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/event
定員がある当日先着イベントは8階受付で12時から参加券を発行しています。
〇入場料のお知らせ
【常設展】一般600円(団体500円)
高校生・大学生300円(団体200円)
【企画展】展覧会ごとに料金が異なります。
ホームページをご覧ください。
※常設展と企画展のお得なセット券も販売しております。
(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)
今昔館は、毎週火曜日が休館日となっています。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/guide
〇風呂屋シアターもリフレッシュ
「桂米朝・米團治と行く 大坂むかしまち巡り」と題して、商家の賑わいを紹介しています。
〇着物体験サービス
感染症対策のため中止しておりました、着物体験サービスを再開しています。
着物(夏季は浴衣)に着替えて江戸時代の町並みを散策することができます。洋服の上からはおる簡単な着付けなので気軽にご利用いただけます。
●受付時間 10:00〜
●受付場所:9階着物コーナー(人形屋)
●料金:お1人につき1回1000円
●体験時間:30分(着替え時間を含まない)
●定員:先着100名様/日
※身長制限 110cm以上
※国内外に関わらず、小学校・中学校団体様の着物体験利用の受付は行っておりません。
【ご提供するサービスの内容】
・着物・草履のレンタル
・着付け ※服の上から着物を着ていただきます。
・上着、厚手の衣類(セーター、トレーナー等)は脱いでください。
〇反物着装パフォーマンス
約13メートルの長さの反物を2個のクリップと帯紐だけで、あたかも着物を着たかのように着装します。まるで手品のようです。
場 所:9階呉服屋
日 時:不定期(イベントスケジュールをご覧ください)
※町家衆のパフォーマンスをご覧ください。着装の体験はできません。
〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?
「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。
住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。
前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
こちらからどうぞ。
⇒ https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo
〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
こちらからどうぞ。
⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム
〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
今昔館の展示関連の動画を集めました。
⇒https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o
英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys
今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be
⇒https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4
〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw
〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
こちらからご覧ください。
⇒https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be
〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました
「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」
コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))
■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!
※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください
■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!
※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/
「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
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