2017年7月25日火曜日

今週の今昔館(69) 川口居留地 20170725

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(3) 川口居留地 -文明開化と西洋館-

 前回は、天神祭の開催時期に合わせて、天神祭の模型をご紹介しました。今回からは、住まいの大阪六景を順番に取り上げていきましょう。
 今回は、8階展示室に入って左手前にある「川口居留地 -文明開化と西洋館-」についてみていきましょう。

川口居留地-文明開化と西洋館-(住まいの大阪六景)

■川口居留地の開設
 大阪は慶応3年12月7日(1868年1月1日)に開市、翌4年7月15日(1868年9月1日)に開港となり、外国人が大阪に住めるようになりましたが、その場所は、居留地とそれに接続する雑居地(外国人が日本人の家屋を借りて住むことが認められた地域)に限られていました。
 川口居留地は、慶応4年(1868)の大阪開港に伴い、安治川と木津川に挟まれた弾丸型の土地に作られました。26区画、7746.5坪が競売され、5日前の神戸居留地を上回る高値で、イギリス人、アメリカ人、ドイツ人、フランス人、オランダ人が永代借地権を得ました。しかし、貿易の窓口としての川口居留地の繁栄は短く、貿易の中心はしだいに神戸に移りました。貿易商人に代わって居留地に入ってきたのは宣教師たちでした。川口はキリスト教伝道の拠点として再出発したのでした。
 道路には歩道、街路樹、街灯が整備されて、西洋館が立ち並び、西洋式の生活様式に求められる施設が周辺に数多く生まれ、文明開化そのものであり、大阪における西洋文化の窓口でした。川口居留地は、英国との間で不平等条約が改正され、国内の居留地が撤廃されることになる明治32年7月まで存続していました。この模型は、聖三一教会(3番館・右手前)を中心に明治10年(1877)頃の川口居留地を1/50のスケールで再現しています。

■近代都市住宅年表の立面図
 8階の壁面に展示している「近代都市住宅年表」は、明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。
 17年前の開館当時からずっと展示されている年表ですが、手前に並んでいる冷蔵庫やアイロン、ガスコンロなどのくらしの道具の変遷の方に気をとられて、バックの壁面が年表になっていることに気が付かない方が多いようです。

8階近代のフロアの「近代都市住宅年表」のコーナー

 この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。その中には川口居留地4番館が描かれています。
「近代都市住宅年表」の川口居留地4番館

 模型の手前の左から2つ目の建物が川口居留地4番館で、プール学院の前身と言われています。川口からは、このほか、桃山学院、梅花学園、大阪女学院、平安女学院、信愛女学校などの多くの学校や聖バルナバ病院などが誕生しています。
住まいの大阪六景の川口居留地4番館

■居留地の区画割
 「大阪外国人居留地の図」を見ると、戎島の北端部、弾丸型の部分が居留地として整地され、1番から26番までに区画割されています。4番、5番、14番はそれぞれ甲乙に分割されています。居留地の南側には、イギリス領事館、オランダ領事館、外国人雑居所があります。さらに南には、梅本町天神社境内があります。
「大阪外国人居留地の図」(「大阪川口居留地の研究」より)

■居留地ができる前の川口
 つぎに、居留地ができる以前の川口付近の様子を江戸時代の古地図で見てみましょう。
 「浪華名所獨案内」では、中之島の南西、雑魚場魚市場の対岸の島に、御番所、天神ヲタビ、南安治川、戎島、エノコジマ、九條、竹林寺といった文字があります。
「浪華名所獨案内」の川口付近(「津の清」蔵)
(上が東になっています)

 「天保新改摂州大坂全図」では、川や道路が詳しく描かれ、江之子島や戎島、大仏島などが描かれています。戎島には、御番所、御舟蔵、御舟手ヤシキ、与力、同心があり、幕府の重要拠点であったことがわかります。
「天保新改摂州大坂全図」の川口付近(日文研蔵)

 前回、天満宮の御旅所について、「かつては川口の近くにあったが、戎島付近が外国人居留地になったこともあって、明治5年の船渡御の復興の際には、従来の戎島から御旅所が松島に移転された」ことをご紹介しました。改めて、地図で確認すると、「浪華名所獨案内」では御番所の南に天神ヲタビがあり、「摂州大坂全図」では、御番所、御舟蔵、御舟手ヤシキの南、御三郷蔵地の東に天神御旅所が描かれています。「大阪外国人居留地の図」では、居留地の南に、オランダ領事館、人家をはさんで、梅本町天神社境内とあります。
 このように、天満宮の御旅所は居留地に近い梅本町にありましたが、明治5年2月に松島花園町に移転しました。移転の理由は、祭礼などの場合に外国人に対して不測の事態があってはならないという届けになっているようですが、天満宮の関係者にとっては、牛は天満天神の使いとされ、御旅所の近くで牛の肉が曝されたり、食事に供されることに抵抗があり、環境が悪化したとの判断があったためともいわれているそうです。

■居留地撤廃後の川口
 最後に、居留地が撤廃された以降の川口の様子を「大阪市パノラマ地図」で見てみましょう。
 中之島から渡ってきた市電が川口を南北に貫いています。本町通りから江之子島を経て川口に入ってくる東西線と合流するところに「川口町」の停留所があります。川口の街並みは、周辺の住宅地と比べると敷地が大きく緑が豊富に描かれています。居留地の名残が残っています。対岸の江之子島には、府庁、警察本部があり官庁街となっています。
 
「大阪市パノラマ地図」の川口付近
(大正13年、大阪くらしの今昔館蔵)

 川口と江之子島との間を流れる木津川の下流のほうを見ていくと、木津川と尻無川に囲まれた松島があります。
「大阪市パノラマ地図」の川口~松島付近
(大正13年、大阪くらしの今昔館蔵)

 松島を拡大して見ると、南北に桜並木が描かれています。松島遊郭です。その南に、桜の木がある神社が描かれています。これが天満宮の御旅所です。東側には市電の「身禊橋」停留所もあります。
 御旅所は現在もこの地にあり、毎年7月24日にここで行宮祭(神事)が催されています。天神祭総合情報サイトによると、「24日11:00~11:30、昭和24年まで渡御の目的地であった行宮(御旅所)にて行宮祭が行われる。寛永年間、京町堀川流末の地(後の雑喉場)に大阪天満宮の行宮が設定された。その後、行宮(御旅所)は寛文年間には雑喉場から戎島(西区本田)、さらには明治4年、松島(西区千代崎)へ移転。この行宮が設定されたことにより天神祭の船渡御は毎年行宮に向かうことになった。しかし、戦後、船渡御が復活した昭和28年以降は地盤沈下が原因で御旅所への渡御が取りやめとなり、大川上流へ遡るルートに変わって以降、毎年行宮祭が行われている。」とあります。
「大阪市パノラマ地図」の松島付近
(大正13年、大阪くらしの今昔館蔵)

■現在の川口
 現在の川口には、残念なことに、居留地の面影はほとんど残っていません。本田小学校の角に、川口居留地跡の石碑と、ライオンズクラブによって建てられた記念碑があります。記念碑には、居留地の主な施設図が刻まれていて、この地から誕生した学校などがわかります。
 また、居留地の撤廃後に建て替えられたものではありますが、川口教会が当時の面影を微かに伝えてくれています。
川口居留地跡の石碑と記念碑
記念碑に刻まれている居留地の主な施設図
川口教会の全景
川口教会の玄関


 今回は、住まいの大阪六景のひとつ「川口居留地」をご紹介しました。解説は、「大阪川口居留地の研究」(堀田暁生・西口忠共共著)を参考にさせていただきました。


〇次回の企画展示「夏休みだよ!家電採集 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」~29日からです~
 平成29年7月29日(土)~8月31日(木)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

 大阪くらしの今昔館ではおなじみとなった昭和レトロ家電の展覧会が、今年は夏の開催となりました。本展では、増田健一氏が20年以上にわたり収集してきた昭和レトロ家電コレクションから、昭和30年代の懐かしい家電やアイデアあふれる珍しい家電をよりすぐり、約150点を公開します。また今回は家電のほかに、ハミガキ、洗剤など当時の生活雑貨やそのポスター等も展示します。夏の一日、昭和レトロ家電の世界をどうぞお楽しみください。
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/korekara.html


〇今週のイベント・ワークショップ
7月26日(水)~29日(土)、31日(月)、8月2日(水)~5日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

7月30日(日)、8月6日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

8月5日(土)、6日(日)
ワークショップ 大阪欄間を彫ろう

伝統的な手づくりの味「大阪欄間」。
大阪欄間の説明、伝統工芸士によるミニ欄間作りの指導を行います。
時 間 ①12時30分~14時 ②15時~16時30分
対 象 18歳以上、各回15名
材料費 A800円、B1500円、C2000円の3コースから選択
(B・Cは難易度高、数量限定。別途入館料必要。)
申 込 往復はがきに(FAXも可)、住所・氏名・年齢・電話番号・希望日時・希望コースをご記入の上、
〒566-0052
大阪府摂津市鳥飼本町1-4-26 サンハイツ西本101号
大阪欄間工芸協同組合宛
(FAXの場合、072-646-8471)
締 切 7月21日(金)必着(多数申込の場合は抽選)
問合せ 072-646-8470(大阪欄間工芸協同組合)

8月11日(金・祝)
ワークショップ 『うちわを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

8月12日(土)、13日(日)
イベント 今昔館で夏祭り ― 楽市町家 ―

町家の店先に町家衆手作りのかわいい商品が並びます
13時~16時

8月13日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse


2017年7月18日火曜日

今週の今昔館(68) 天神祭 20170718

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(2)

 近代展示室の愉しみ方を連載で紹介していきます。第2回目は、今月25日に本宮をむかえる天神祭についてご紹介します。
 7月に入って天神橋筋商店街もすでにお祭りモードに入っています。大阪くらしの今昔館も夏祭りの飾りの展示になっています。


大阪くらしの今昔館の「夏祭りの飾り」
(公式ガイドブック「逍遥指南書」より)

 いよいよ来週7月25日(火)は天神祭の本宮です。かつては、旧暦6月25日に開催されていましたが、新暦になって、毎年7月25日に開催されるようになりました。そこで、近代展示室を愉しむシリーズの2回目は、天神祭の模型を取り上げることとします。

 天神祭は大阪で最大の都市祭礼です。祭りは、最終日に大川、堂島川で繰り広げられる船渡御をもってクライマックスを迎えます。大勢の見物人、川沿いの篝火と夜店、そして打ち上げ花火が、大阪の夏の夜を華やかに彩ります。模型は大正10年(1921)に描かれた絵巻「夏祭船渡御図」(大阪天満宮蔵)をもとに再現したもので、かんかん帽に洋服を着た船上の人、蒸気船、川べりに建つ近代建築に当時の雰囲気があふれています。

「夏祭船渡御図」(大正10年、大阪天満宮蔵)


大阪くらしの今昔館8階の天神祭の模型


 船渡御の舞台は、現在では天神橋から上流の毛馬橋にかけての大川ですが、当時は鉾流橋から下流にあたる松島の御旅所に向けて堂島川を中心に行われていました。フロアの中央にある「大阪市パノラマ地図」で、当時の様子を見てみましょう。中之島には西側から日本銀行、市庁舎、豊国神社、図書館、公会堂、大阪ホテルが並んでいて、公会堂の北側には鉾流橋が架かっています。対岸には天満警察があり、その前に鳥居が描かれています。毎年7月24日の朝、ここで天神祭の幕開け行事である鉾流神事が催されます。天満警察の左手(西側)には赤レンガの控訴院(現在の高等裁判所)があります。8階フロアの天神祭の模型にも背景に控訴院が描かれています。模型の中の御迎船は控訴院の前を左手、下流に向かって進んでいる様子が再現されています。

「大阪市パノラマ地図」の堂島川付近
(大正13年、大阪くらしの今昔館蔵)

大正時代の天神祭船渡御(大阪くらしの今昔館)



 天神祭本番を迎える前に、天神祭の歴史と、祭りに欠くことのできない御迎人形について、天神祭総合情報サイトから引用させていただき、ご紹介します。

〇天神祭の歴史
 大阪天満宮が創祀されたのは平安時代後期の天暦3年(949)のことです。その当時、都では落雷や疫病の流行などの天変地異が度重なり、人々はこれを配所で非業の死を遂げられた道真公の怨霊によるものと考え、その霊を鎮めるために「天満大自在天神」としてお祀りしました。いわゆる「天神信仰」の成立です。

(天神祭の始まり)
 大阪天満宮が創祀された翌々年の天暦5年(951)に鉾流神事が始まりました。鉾流神事とは、社頭の浜から大川に神鉾を流し、漂着した場所にその年の御旅所を設ける神事で、御旅所とは御神霊がご休憩される場所のことです。この御旅所の準備ができると御神霊は陸路で川岸まで出御、乗船して大川を下り御旅所へ向かうルートを辿りました。 この航行が船渡御で、天神祭の起源とされています。
 当時は旧暦6月に鉾流神事が行われ、6月25日に船渡御が行われたといいます。室町時代の宝徳元年(1499)の公家、中原康富の「康富日記」には7月7日に天神祭が行われたとの記録も残っており、また、戦国時代の公家、山科言経の日記「言経卿記」では、天正十四年(1586)6月25日に天神祭が記録されています。菅原道真の生誕の日に因んで旧暦の6月25日に変更されたといわれます。(明治11年、太陽暦の採用で7月25日に変更されました。)
 なお、江戸初期の御旅所の常設にともない鉾流神事は中止されましたが、昭和5年(1930)に古式にのって復活しました。現在では7月24日の朝に旧若松町浜(天満警察署前)で斎行される鉾流神事は当初と同じく、天神祭の幕開け行事となっています。

(江戸時代の船渡御)
 大坂の陣の戦火で一時吹田に避難した大阪天満宮でしたが、江戸初期に再び天満へ還座された後、天神祭の再開にあたっては鉾流神事で御旅所の地を決めるのをやめて、雑喉場町(西区)に常設の御旅所がおかれました。これによって船渡御のコースは固定化され、祭礼の一部始終を事前に計画できるようになりました。天満宮周辺の氏子・崇敬者が境内から川辺の乗船場まで徒歩で行列を組み(陸渡御)、乗船場からは船列を仕立てて下流の御旅所へ向かっていましたが(船渡御)、御旅所の常設後は天満宮周辺の氏子・崇敬者も御迎船を仕立てて川を遡行し、神霊奉安船と合流後に反転して、御旅所まで一緒に下航するようになったのです。

御迎船と御迎人形(大阪くらしの今昔館)


 江戸時代の町の様子を、幕末に刊行された「浪華名所獨案内」(「津の清」蔵、9階にパネル展示しています。)で見てみましょう。地図の右手に天満宮があり、大川沿いには青物市場と市ノ側が描かれています。西天満と中之島には「蔵屋敷多シ」、堂島には「米市場」の文字があります。中之島は難波橋の手前までしかなく、大川はここで堂島川と土佐堀川に分かれます。当時の船渡御は堂島川を下流へと進み、雑魚場(後には戎島)にあった御旅所に向かいました。

大阪くらしの今昔館9階にパネル展示している「浪華名所獨案内」
(「津の清」蔵、この地図は東が上になっています。)

「浪華名所獨案内」の天満・堂島付近(「津の清」蔵)


 天保8年(1637)刊行の「天保新改攝州大坂全圖」(国際日本文化研究センター蔵)を見ると、道路の様子も詳しく描かれ、西天満、中之島には各藩の蔵屋敷が詳細に描かれています。控訴院の場所には、佐賀・鍋島藩の蔵屋敷があったことがわかります。

「天保新改攝州大坂全圖」の天満・堂島付近
(天保8年、日文研蔵)


(幕末・維新期)
 14代将軍徳川家茂が長州再征のために来阪した時期、世情不安を理由に天神祭の渡御列は中止となり、慶応元年(1865)から明治4年(1871)までの7年間、本殿での祭儀のみが斎行されていました。戎島付近が外国人居留地になったという理由もあり、明治5年の船渡御の復興の際には、従来の戎島の御旅所ではなく松島に移転されました。しかし、明治6年以降、再び船渡御は中止されます。維新以来、大阪の経済は沈滞したことが最大の理由で、再び土砂の堆積をとって船渡御が復興されたのは明治14年のことでした。天神祭は昔も今も大阪経済とともに歩んできたといえるのです。

大正時代の天神祭船渡御(大阪くらしの今昔館)


「大阪市パノラマ地図」の天満・堂島付近
(大正13年、大阪くらしの今昔館蔵)


(現在の天神祭の形に)
 昭和5年(1930)には江戸時代初期から途絶えていた鉾流神事が300余年ぶりに復活されました。そして、第二次世界大戦後まもない昭和24年に、昭和13年以来中止されていた船渡御が再開されました。ところが長年にわたる大阪一帯の地盤沈下のために大川の水位があがり、川に架かる橋の下を神輿が通れず、下流の松島にある御旅所への航行が不可能になったため、翌年(昭和25年)にはまたもや中止となりました。
 歴史ある船渡御を継続させるため、昭和28年(1953)に大川を上流に遡って航行するという、今までとは全く逆の新しいコースの船渡御が復活しました。このコースが現在の船渡御のコースです。 これによって、御旅所で行っていた神事を御鳳輦奉安船で行うようになり、両岸の大群衆が見守る中で「船上祭」を斎行するようになりました。それ以来、コースを少しずつ伸ばしながら天神祭を代表する船渡御は続いています。

(新たな試みへ)
 平成6年(1994)5月、関西国際空港の開港を記念して、大阪天満宮の神職および氏子・崇敬者ら約1000名がオーストラリアに渡り、ブリスベン市で天神祭を斎行しました。創祀以来、初めて異国で斎行された「天神フェスティバル」はその厳粛な祭儀と、豪壮華麗な渡御列によって、人々を魅了し大きな感動を与えました。
 現在では天神祭は毎年7月25日に開催されていますが、かつて、天神祭が7月7日に行われていたこともあり、七夕の祭り、星辰信仰との関係が深いこと、大阪天満宮の境内にある「星合池」がそのなごりを留めていることを踏まえて、平成7年(1995)に天満天神七夕祭りが復興しました。星愛七夕まつり、平成OSAKA天の川伝説が開催されていることにもつながっているそうです。

〇御迎人形
 江戸時代、大坂の淀川沿いには諸藩の蔵屋敷が立ち並び、堂島の米市場、天満の青物市場、雑喉場の魚市場と三大市場の繁栄とともに、天神祭は盛大化していきました。
その江戸時代前期、町人文化(元禄文化)が花咲く元禄期に、御旅所は常設されました。この御旅所周辺の町々では、天神祭の様々な趣向を凝らした風流人形をこしらえました。これが、御迎船人形(御迎人形)の始まりです。
 当時、船渡御を迎えるため、御旅所周辺の町々が祭礼に先立ち各町で飾り付け、祭り当日に船に乗せて御旅所から堂島川を上り、船渡御の一行を御旅所まで導く役割を担っていました。この頃に登場した御迎人形は、7尺8寸(2.4m)ほどの大きさで、船上に立てた棒の先に高く飾られていましたが、享保期(1716〜36)頃から約1丈5尺(4.5m)の大型人形も作られたといいます。
 御迎船に飾られた御迎人形の様子は、8階フロアの模型を見るとよくわかります。

御迎船と御迎人形(大阪くらしの今昔館)


 御迎人形の多くが、浄瑠璃や歌舞伎の登場人物を題材としていました。これらの人形は船上に設けられた舞台に人形をセットし、物語性が演出されるように工夫されました。文楽人形の細工人たちが作った御迎人形には頭や手足を動かすカラクリがほどこされていました。歌舞伎の見栄を切る人形もあれば恵比寿のように鯛を釣り上げる人形もありました。また、御迎人形が必ず赤(緋)色を身につけているのは「疫病(疱瘡)祓い」という意味があります。
 多いときには延べ数は50体を超えたといわれる御迎人形ですが、現在は16体しか残っていません。幕末・維新期の天神祭の中止や大戦の影響などにより人形数は減少してしまいました。人形たちを支えた町はその姿を変え、戦後は人形が船に乗せられることもなくなったのです。

(現存する御迎人形)
 三番叟・雀踊・安倍保名・与勘平・酒田公時・関羽・胡蝶舞・鬼若丸・八幡太郎義家・羽柴秀吉・猩々・素盞嗚尊・鎮西八郎・佐々木高綱・木津勘助・豆蔵・恵比寿(頭のみ)

 昭和48年に、このうち14体が大阪府の有形民俗文化財に指定され、平成23年には残る2体も追加指定され16体が文化財に指定されています。現在、毎年、天神祭の時期に天満宮境内と帝国ホテルのロビーなどに数体ずつ飾られています。
 また、今昔館の9階江戸時代のフロアにおいても、夏祭りの飾りの展示期間中、御迎人形を町会所に展示しています。今年(2017年)は「雀踊」です。昨年は「酒田公時」を展示していました。

雀踊の御迎人形(大阪くらしの今昔館で展示中)


酒田公時の御迎人形(昨年展示)


 今昔館の展示を見てから天神祭の陸渡御、船渡御に行っていただくと、一層実りの多い天神祭見物になることでしょう。



〇企画展示 浮田光治コレクション手拭万華鏡-名もなき職人たちの手仕事-7月23日までです
 平成29年6月24日(土)~7月23日(日)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
 会期中の休館日:6月27日(火)、7月4日(火)、11日(火)、18日(火)
 本展では手拭収集家 浮田光治氏のコレクションのなかから、稲垣稔次郎(人間国宝)や徳力富吉郎など高名な作家の作品を含め、京都の舞妓手拭や大阪城をはじめとする百名城、写楽や広重などの浮世絵手拭のほか、特に秀逸な200点を厳選して展示します。明治・大正・昭和の名も無き職人たちの手仕事 ― 一幅の手拭に込められた技術と芸術と遊びごころ ― その魅力を伝えます。

詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/kikakutenji.html



〇次回の企画展示「夏休みだよ!家電採集 昭和レトロ家電 ―マスダコレクション展―」
 平成29年7月29日(土)~8月31日(木)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

 大阪くらしの今昔館ではおなじみとなった昭和レトロ家電の展覧会が、今年は夏の開催となりました。本展では、増田健一氏が20年以上にわたり収集してきた昭和レトロ家電コレクションから、昭和30年代の懐かしい家電やアイデアあふれる珍しい家電をよりすぐり、約150点を公開します。また今回は家電のほかに、ハミガキ、洗剤など当時の生活雑貨やそのポスター等も展示します。夏の一日、昭和レトロ家電の世界をどうぞお楽しみください。
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/korekara.html




〇今週のイベント・ワークショップ
7月19日(水)~22日(土)、24日(月)、26日(水)~29日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

7月23日(日)、30日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

7月22日(土)
町家衆イベント ワークショップ『風鈴を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

7月23日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演・演目:桂出丸、他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00

8月5日(土)、6日(日)
ワークショップ 大阪欄間を彫ろう

伝統的な手づくりの味「大阪欄間」。
大阪欄間の説明、伝統工芸士によるミニ欄間作りの指導を行います。
時 間 ①12時30分~14時 ②15時~16時30分
対 象 18歳以上、各回15名
材料費 A800円、B1500円、C2000円の3コースから選択
(B・Cは難易度高、数量限定。別途入館料必要。)
申 込 往復はがきに(FAXも可)、住所・氏名・年齢・電話番号・希望日時・希望コースをご記入の上、
〒566-0052
大阪府摂津市鳥飼本町1-4-26 サンハイツ西本101号
大阪欄間工芸協同組合宛
(FAXの場合、072-646-8471)
締 切 7月21日(金)必着(多数申込の場合は抽選)
問合せ 072-646-8470(大阪欄間工芸協同組合)


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2017年7月11日火曜日

今週の今昔館(67) 近代展示室 20170711

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(1)

 大阪くらしの今昔館といえば、9階の江戸時代の再現展示に注目される方が多いのではないでしょうか。
 しかし、近代の大阪を紹介した8階「モダン大阪パノラマ遊覧」のコーナーにも見どころがたくさんあります。
 そこで、近代展示室の愉しみ方を少しずつ紹介していきたいと思います。

 「大阪くらしの今昔館」(住まいのミュージアム)は「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての専門ミュージアムです。9階「なにわ町家の歳時記」は江戸時代のフロアで、天保初年(1830年代前半)の大坂の街並みを実物大で再現しています。8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は明治・大正・昭和のフロアで、近代大阪の代表的な住まいと暮らしを模型や資料で再現し、展示しています。
 今回から、8階近代展示室「モダン大阪パノラマ遊覧」の見どころを、連載で紹介します。
第1回目では、近代のフロアの全体構成をご紹介します。

フロア中央の床面は、4.8m×6.6mの大きな地図になっています。大正13年(1924)に発行された「大阪市パノラマ地図」を縦横約6倍に拡大し、光床にして展示したものです。


地図の周りには、6つの精巧な模型「住まいの大阪六景」があります。左手前から時計回りに、①川口居留地、②北船場、③大大阪新開地、④空堀通、⑤城北バス住宅、⑥古市中団地です。建物はもちろんのこと、暮らしぶりや風俗まで細かく再現されています。

④⑤⑥の3つの模型は、1時間に2回場面転換し、住まい劇場「ある家族の住み替え物語」が上演されます。空堀商店街で生まれ育ち、戦後をバス住宅で仮住まいし、高度成長期には古市中団地に引っ越した、悦子さんの住み替え物語で、八千草薫さんによる語りと映像、模型でお楽しみいただけます。

フロアの外周部は、左手前から時計回りに、からくり錦絵(造幣寮、心斎橋、梅田ステン所)、天神祭、心斎橋筋商店街、通天閣とルナパーク、近代都市住宅年表、暮らしの道具が展示されていて、暮らしの変遷をたどることができます。

見学方法は自由自在。外周の暮らしの変遷から始めて一回りし、それから内側へと入って行ってもいいし、逆に、真ん中のパノラマ地図からスタートして、住まいの六景へと進んでも構いません。
但し、ご注意いただきたいのは、隠された展示の「住まい劇場」。1時間に2回(毎時0分、30分開始)しかありませんから、お見逃しのないように。


〇企画展示 浮田光治コレクション手拭万華鏡-名もなき職人たちの手仕事-開催中です
 平成29年6月24日(土)~7月23日(日)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
 会期中の休館日:6月27日(火)、7月4日(火)、11日(火)、18日(火)
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/kikakutenji.html



〇今週のイベント・ワークショップ
7月12日(水)~15日(土)、17日(月)、19日(水)~22日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

7月16日(日)、23日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

7月16日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時

7月22日(土)
町家衆イベント ワークショップ『風鈴を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着10名、参加費300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

7月23日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演・演目:桂出丸、他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2017年7月4日火曜日

今週の今昔館(66) 20170704

〇住まいのミュージアムができるまで(10)

今回は、8階モダン大阪パノラマ遊覧の「古市中住宅」の模型ができるまでを、担当された建築家の加藤恭子さん(故人)にお伺いしたお話です。あんじゅ2004年夏号からの引用です。



〇企画展示 浮田光治コレクション手拭万華鏡-名もなき職人たちの手仕事-開催中です
 平成29年6月24日(土)~7月23日(日)
 開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
 会期中の休館日:6月27日(火)、7月4日(火)、11日(火)、18日(火)
詳しくはこちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/kikakutenji.html



〇今週のイベント・ワークショップ
7月5日(水)~8日(土)、10日(月)、12日(水)~15日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

7月9日(日)、16日(日)、17日(祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

7月8日(土)
町家衆イベント ワークショップ『ミニすだれを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

7月9日(日)
町家衆イベント おじゃみ

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

7月16日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse