2019年11月28日木曜日

今週の今昔館(191) 新清水 20191128

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(25)

 今回は「浪華の賑ひ」の「新清水」をご紹介します。

■新清水
 当寺は天王寺の西にあり。堂前の舞台より遙かに西南の遠山蒼海の光景真妙なり。
 かつ、この一両年以来(このかた)、境内の巽の方に水条(みづすぢ)を通じ、新たに滝を作り、岩をつみ、樹木を植ゑて、まさしく往古(いにしへ)よりあるがごとし。
 堂の傍なる石階(いしだん)の辺には、楓の木を多く植ゑて紅葉坂と号す。既に音羽の滝成就なれば、やがて桜をも植ゑならべて地主の花見も出来るなるべし。
 暮かかる空に色もつ紅葉かな 今朝庵醒花

浪華の賑ひ「新清水」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 浪花百景には、「新清水紅葉坂瀧」があります。

■新清水紅葉坂瀧(芳雪画)
 四天王寺の支院清光院は、寛永17年(1640)京都清水寺から聖徳太子作と伝える千手観音を譲り受けて本尊としたため、一般に新清水と通称されます。本堂前には清水寺を模した優美な舞台が設けられ、遠く淡路島や播磨の国が眺望できたといわれます。本堂脇から下る石段には楓の木がたくさん植えられて紅葉坂と名付けられ、境内を覆い尽くす紅葉の頃はいっそう美しく、参拝者を集めました。南側の崖にはこれも清水寺の音羽の滝を模して作られた「玉出の滝」を設けて市内唯一の水の行場としました。今日も三条の水を落としています。

浪花百景「新清水紅葉坂瀧」(大阪市立図書館蔵)

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、「一心寺」の左(北)に「福屋」と「安井天神」、その北に「清水」の文字が見えます。この地図は東が上に描かれています。大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」にも、安井天神、清水寺の文字があります。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)


 現在の清水寺周辺の様子を写真で見てみましょう。

清水寺玉出の滝
清水寺玉出の滝
清水寺舞台より西を望む
清水寺舞台より南を望む
清水寺への「たき道」
清水寺東門より境内を見る


 今回は、「浪華の賑ひ」の「新清水」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。


〇今週のイベント・ワークショップ

今昔館は毎週火曜日が休館日です。カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201912



11月27日(水)~30日(土)、12月2日(月)、4日(水)~7日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

12月1日(日)、8日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月30日(土)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能
女性ひとりで一体の人形を操る人形浄瑠璃です
磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

12月8日(日)
イベント 狂言

洗練された笑いの芸術をお楽しみください
14時~14時40分
出演:増田浩紀 島田洋海

町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


町家衆イベント ワークショップ『はたきを作ろう』
①13時30分~ ②14時30分~
各回先着10名、参加費300円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します


〇貸しギャラリーについて
 大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
 催し物のご案内はこちらからどうぞ。



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2019年11月20日水曜日

今週の今昔館(190) 家隆塚 20191120

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(24)

 今回は「浪華の賑ひ」の「家隆塚」をご紹介します。

■家隆塚
 この地は天王寺勝曼院の後にあたれり。地名を夕陽山(ゆふひやま)といふ。塚の上に古松の大樹ありて、旧棲の松といふ。
 従二位家隆卿の古墳にて、傍に碑あり。文は、安井道恕(どうじょ)僧正なり。
 また、このほとりに夕陽庵といふあり。彼の卿の住みたまひし遺蹟なりとぞ。この所より西をはるかに見わたせば、風景最も美観なり。

浪華の賑ひ「家隆塚」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 家隆塚の左手に描かれている多宝塔は、勝曼院愛染堂のものです。塚の向こうには寺院や町家の屋根が、その向こうに大阪湾、さらに先には淡路島が描かれています。家隆塚は浪花百景には描かれていません。

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、生玉宮の右手(南側)に「西セウアン」、その右に「カリウヅカ」の文字が見えます。この地図は東が上に描かれています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。文字が一部消えていて見にくいですが、勝曼院や毘沙門との位置関係からみると、赤丸のところが「家隆塚」と思われます。西側に一列に並ぶ寺院は下寺町で、崖の下に位置していますので、眺めのいい位置にあったと考えられます。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 現在の地図で位置を確認してみましょう。大阪メトロの四天王寺前夕陽丘駅の西側、夕陽丘町の文字の下(南)に「家隆塚」の文字が見えます。

現在の地図(地図マピオンより)

 現在の家隆塚周辺の様子を写真で見てみましょう。

家隆塚全景
家隆塚
家隆塚
家隆塚(西側より)
家隆塚の案内板
家隆塚の説明板
夕陽丘命名の地の碑
藤原家隆卿の塚への案内板


 今回は、「浪華の賑ひ」の「家隆塚」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。


〇今週のイベント・ワークショップ

今昔館は毎週火曜日が休館日です。カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201911



11月20日(水)~22日(金)、25日(月)、27日(水)~30日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

11月23日(土・祝)、24日(日)、12月1日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月23日(土・祝)
町家衆イベント ワークショップ『削り花を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

11月24日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

11月30日(土)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能
女性ひとりで一体の人形を操る人形浄瑠璃です
磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時


〇貸しギャラリーについて
 大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
 催し物のご案内はこちらからどうぞ。



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2019年11月13日水曜日

今週の今昔館(189) 西照庵 20191113

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(23)

 今回は「浪華の賑ひ」の「西照庵」をご紹介します。

■西照庵
 ここは月江寺の裏門の西にありて、浪花に名高き貨食家(りようりや)なり。座敷より向ふを眺望(のぞめ)ば浪花の市町(まちまち)より西海まで見えわたりて絶景なり。されば、夕陽殊さら美観なれば、西照の名を蒙らするなるべし。庭中林泉、席上の普請、風流にしていはゆる京師の円山に彷彿たり。

浪華の賑ひ「西照庵」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 浪花百景には西照庵月見景があります。

■西照庵月見景(芳雪画)
 生玉寺町を南に突き当たったところの尼寺・月江寺の裏門の西に、浮瀬と同様に有名な料亭、西照庵がありました。上町台地の豊かな木々に囲まれ、京都・円山を模したといわれる庭には泉が湧き、桜や萩、菊など季節の花見が楽しめ、紅葉の名所にも数えられていました。座敷からは市中はもとより海までも見渡せ絶景でした。西照庵の名前にふさわしく、紅葉の頃には沈む夕陽に照らされて、美しさは格別であったといわれます。明治初期には姿を消しました。

浪花百景「西照庵月見景」(大阪市立図書館蔵)


 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、生玉宮の右手(南側)に「西セウアン」の文字が見えます。この地図は東が上に描かれています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。図の上部の黄色が生玉宮、右下の緑が月江寺です。月江寺の西の赤丸の位置に「西照アン」の文字が見えます。浪華の賑ひの説明にある「ここは月江寺の裏門の西にありて」と一致しています。当時の月江寺は、境内の東側、現在の谷町筋側に正門があり、西側に裏門があったようです。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 現在の地図で位置を確認してみましょう。現在の月江寺は南側に正門があり、江戸時代当時よりも境内が狭くなっているようです。西照庵は、「生玉寺町」の文字のある辺りから「大阪夕陽丘学園高・短大」にかけての辺りにあったものと思われます。

現在の地図(地図マピオンより)

 現在の月江寺周辺の様子を写真で見てみましょう。

月江寺の正門
月江寺の庭
月江寺の正門
月江寺の正門前より西を見る
西側の突き当りには夕陽丘学園がある


 今回は、「浪華の賑ひ」の「西照庵」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。


〇今週のイベント・ワークショップ

〇今昔館は毎週火曜日が休館日です。カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201911



11月13日(水)~16日(土)、18日(月)、20日(水)~22日(金)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

11月17日(日)、23日(土・祝)、24日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月13日(水)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、他
14時~15時


11月16日(土)
町家衆イベント 楽市町家

町家の店先で、手作りの玩具や、かわいい和風雑貨を販売します
13時~16時


11月17日(日)
町家衆イベント 楽市町家

町家の店先で、手作りの玩具や、かわいい和風雑貨を販売します
13時~16時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
    14:30~中級者以上向け


町家衆イベント 紙芝居
昔ながらの紙しばいを町家衆が上演します。
子どもから大人まで楽しんでいただけます。
11時~12時


11月23日(土・祝)
町家衆イベント ワークショップ『削り花を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

11月24日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00



〇貸しギャラリーについて
 大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
 催し物のご案内はこちらからどうぞ。



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
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2019年11月5日火曜日

今週の今昔館(188) 隆専寺 20191105

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(22)

 今回は「浪華の賑ひ」の「隆専寺」をご紹介します。

■隆専寺
 この寺は下寺町源聖寺(げんしょうじ)坂の上、生玉寺町の角にあり。境内に糸桜の大樹多く、花の盛りには雅俗打ち混じて幽艶を賞す。またこの向ふ菩提寺といへるにも糸桜あり。すべてこの辺りの寺々には多少ともに桜あり。散りぎはの潔きを愛づるや、檀家の老若を慰めの為にや、寺に桜を植ゆること流行なり。
 幹までは余程の間や糸ざくら 花屋庵

浪華の賑ひ「隆専寺」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 浪花百景には隆専寺は描かれていませんが、幕末から明治初年の大阪を初代長谷川貞信が描いた「浪花百景之内」に「りうせんじ糸桜」があります。

■りうせんじ糸桜(貞信画)
 隆専寺は南中寺町にありて、この境内糸桜多く、弥生の頃の満開には、諸方の遊人ここにつどひて花を賞じ、詩をふし、歌を詠じて茶店に興をもやうすも、また多かりき。

浪花百景之内「りうせんじ糸桜」
(神戸市立博物館蔵)


 大阪城天守閣の特別展「初代長谷川貞信が描いた幕末・明治の大阪」の図録の解説によると、
 豊臣秀吉の大坂築城とともに、大坂城下に寺町の建設が始まり、江戸時代には、天満東寺町、西寺町、八丁目寺町、生玉寺町をはじめ、11もの寺町が配置されました。隆専寺は、それらの内、生玉筋中寺町の浄土宗寺院で、境内に糸桜の大樹が多くあり、ちょうど春のお彼岸の頃に満開となるので、四天王寺に参詣する人々が鑑賞に訪れ、大いに賑わったと伝えられます。大正11年(1922)刊行の「大阪府全志」には、既にその時点で、これらの糸桜の樹が枯死していたことが記されています。
 とあります。

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、四天王寺の左上(北東)に「りうせんじ」の文字が見えます。位置は正確ではないようです。この地図は東が上に描かれています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、浪華の賑ひの説明にある「この寺は下寺町源聖寺(げんしょうじ)坂の上、生玉寺町の角にあり。」のとおりの位置に、「隆専寺」の文字があります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 現在の地図で位置を確認してみましょう。下寺町源聖寺坂を上がったところの角に、現在も隆専寺があります。

現在の地図(地図マピオンより)

 現在の隆専寺と源聖寺坂の様子を写真で見てみましょう。

隆専寺の門
隆専寺の門と鐘楼
隆専寺(南東角)
隆専寺(北東角)
隆専寺の門から境内を見る
松屋町筋から見た源聖寺坂
源聖寺
源聖寺坂
カーブのある源聖寺坂
源聖寺坂、この坂を上がりきった奥の左手に隆専寺がある


 今回は、「浪華の賑ひ」の「隆専寺」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。


〇今週のイベント・ワークショップ

〇今昔館は毎週火曜日が休館日です。カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201911



11月6日(水)~9日(土)、11日(月)、13日(水)~16日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

11月10日(日)、17日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月9日(土)
ワークショップ『ふくろうのストラップを作ろう』

各回先着10名、1人300円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します
①13時30分 ②14時30分

11月10日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00



11月13日(水)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、他
14時~15時


11月16日(土)
町家衆イベント 楽市町家

町家の店先で、手作りの玩具や、かわいい和風雑貨を販売します
13時~16時


11月17日(日)
町家衆イベント 楽市町家

町家の店先で、手作りの玩具や、かわいい和風雑貨を販売します
13時~16時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


町家衆イベント 連鶴(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00


町家衆イベント 紙芝居
昔ながらの紙しばいを町家衆が上演します。
子どもから大人まで楽しんでいただけます。
11時~12時




〇貸しギャラリーについて
 大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
 催し物のご案内はこちらからどうぞ。



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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初めての方はこちらからどうぞ。
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