2020年6月30日火曜日

今週の今昔館(222) 八軒家 20200630

〇淀川両岸一覧にみる江戸時代の大坂(2)

 「淀川両岸一覧」は、大坂から京都までの淀川沿いの名所旧跡を挿絵を添えて紹介した船旅の案内書で、文久元年(1861)に刊行されました。上り船の部2巻、下り船の部2巻の4巻から成り、上り船の部2巻は淀川左岸の景勝地を、下り船の部2巻は右岸の景勝地を紹介しています。暁晴翁の著述、松川半山の画図によるものです。

 今回から、淀川両岸一覧(上り船之部)に沿って、約160年前の江戸時代の大坂から京都までの淀川沿いの風景を訪ねます。船から見て右側が画かれていますので、淀川南岸(左岸)の網島、桜宮、毛馬、守口、枚方、樟葉、橋本、淀を順に訪ねていくことになります。今回は八軒家からスタートします。以下は、「淀川両岸一覧」の本文です。

■八軒家
 天神橋南詰の東にあり、京師上下の船着きにして船宿のきを連ね、昼夜ともに賑はし。古名を十日宿といふ、大坂古図に見えたり。
 京師への通船は浪花市中所々にありといへども、当舳岸(ふなつき)を第一とす。いはゆる三十石の昼船、夜船・今井船は東雲の頃に纜(ともづな)を解きて伏見に着岸の早きを誉とす。さるほどに夜舟の下り速きは夜の内に着き、今井船の一番は未明(あさまだき)に発し、それより二番昼舟夜舟の上り、終船(しまひふね)はおよそ亥の刻に及べり。また昼舟の下りの遅きも初更を過ぐることあれば、その閑静(しづか)なること僅かに二時(ふたとき)に過ぎず、すこぶる繁花の地なり。伝へて云う、この地は古歌に渡辺や大江の岸と詠ぜし名所なりとぞ(委しくは「摂津名所図会大成」に出だせばここに略す)。
 秋の夜ふね大江の岸もまだくらし 茶夕

淀川両岸一覧上船之巻「八軒屋」(大阪市立図書館蔵)

 「淀川両岸一覧」の八軒家の挿絵には、以下の書き込みがあります。

■大坂 八軒家
 いつもいつも大江の岸やけふの月 芙雀

 八軒家の畔(ほとり)、客、船に乗る/三大橋頭に薄暮の天/多少の行人、逢底の夢/一斉に輾(まろ)び被る、水輪の辺り 篠崎槩

 旅は大阪八軒家を出発し、京都へ向かう上りから始まります。八軒家は旧名「十日宿」といい、船宿が軒を連ね、京都、大阪間を上下する船の発着場がありました。

 挿絵には2艘の三十石船が描かれています。右側の船は伏見からの下り夜船の着船で、船を船着き場に止め、天井の苫を剥ぎ、川岸に積んであります。船中は天井が低く窮屈でトイレもありませんでした。半夜の船旅から開放された乗客は、同舟の別れを惜しみながらも、そそくさと川岸を上って行きます。

 一方、左側の船がこれからわれわれが乗る上りの昼船で、今まさに八軒家の岸を離れるところです。昼船といっても出発は早朝。船客は弁当を持って乗るのが心得で、乗客のマナーとしては、乗船の前にわらじを脱ぎます。そして狭い船内に腰を下ろし、落ち着いたところで船頭が頭上に注意を促しながら天井に苫を葺き、掛け声よろしく一気に棹を突き離岸。伏見までの1日がかりの船旅が始まります。


〇「浪華の賑ひ」にも「八軒家」があります。

 「八軒家」の図には解説文や詩歌はなく、手前に八軒家の浜の様子、後方に天神橋が描かれ、「天神橋」の文字があります。「淀川両岸一覧」は川側の上空から陸地を見るアングルですが、「浪華の賑ひ」では、陸地側から見て、離岸していく三十石船を描いています。手前には、着岸した下り船も画かれています。

浪華の賑ひ「八軒家」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 「浪華の賑ひ」の本文には「天神橋」として以下のように記載されています。
淀川すじの大川に架せり。川上より第二の大橋なり。長百二十二間三尺、高欄壮観なり。南詰は京橋六丁目、北詰は天満十丁目という。 当橋の南詰より東に至れば八軒家の船着にして、京師への通船朝夕に出入ありて、最(いと)賑わし。所謂三十石の夜船、昼船、今井船の朝船等なり。されば下りの客に支度進むる舟宿、上り客集める船頭、陸に下り荷着ける馬子。何か声高にののしるあれば、船には仕切りの狭きを口角(いさかう)乗衆(のりて)ありて、終日静かなる事なきは、繁昌の証というべし。古名を十日宿といひて、いにしえよりの舟着なり。天和開版の大阪の図にも十日宿八軒家とあり。


〇浪花百景にも「八軒屋夕景」がありますので、見てみましょう。

浪花百景「八軒屋夕景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 八軒屋は、天神橋と天満橋の中間南岸の地名。古来、寺社参詣のため淀川から熊野街道に入る旅の中継地で、八軒の宿が軒を並べていました。
 ここには京都へ行き来する様々な船の船着き場があり、船頭・馬子・旅宿の客を集める声や乗客たちの口論する罵声など、昼夜を問わず人々の喧騒に包まれ、まさに大川水運の一大拠点でした。
 ちなみに、「東海道中膝栗毛」の弥次さん喜多さんを乗せた三十石船と呼ばれる川船は、京都伏見から大坂までを半日で、大坂から伏見までは丸一日で航行しました。
 明治になると蒸気船に変わり、鉄道が開通すると船着き場の役割は低下し、衰えました。

〇八軒屋は、摂津名所図会にも描かれています。こちらでは、川の水位が上下しても船からの陸への人やモノの移動ができるように設置された階段状の「雁木」が描かれ、賑わっている浜の様子が詳細に表現されています。

摂津名所図会「八軒屋」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

〇歌川広重の浪花名所図会「八軒屋着船の図」は、摂津名所図会をもとにして画かれています。同じようなアングルで、さらに雁木にズームアップした構図になっています。摂津名所図会は1796年から1798年の刊行です。一方、広重が風景版画を描くようになったのは、天保元年(1830)以降と言われています。なお、広重の浪花名所図会は、江戸時代に板行されたものではなく、大正8年(1919)に広重会が広重の作品の中から浪花に関するもの十点を選んで復刻、一本にまとめて刊行したものです。広重は、かつては安藤広重の名で親しまれていましたが、現在では歌川広重と呼ばれています。安藤は姓、広重は号で、組み合わせて呼ぶことは不適切だそうです。

浪花名所図会「八軒屋着船の図」歌川広重(大阪府立図書館蔵)


 「浪華名所獨案内」の八軒屋付近を見てみましょう。
 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋と天神橋の間に「八ケン家」があり、「三十石舟ツキ 宿ヤ多シ」と書かれています。南には「ザマヲタビ(坐間神社御旅所)」「火ノ見ヤグラ」があります。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、天満橋の南詰に「▲京橋二丁メ」の文字があり、「▲四丁メ」の傍に「八軒屋」と書かれています。そこから南へ伸びる筋には「▲ヲハライスジ」の文字があります。八軒屋は熊野街道の起点となっていました。地図に書かれている▲の記号は、大坂三郷の「北組」を表しています。大川の対岸にある「〇」は「天満組」を表しています。
 天満橋は、谷町筋より一筋東に架かっていたことがわかります。天神橋の北詰には、「〇十丁メ」の文字があり、天神橋筋は東から数えて十本目の筋ということから「十丁目筋」と呼ばれていたことが分かります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正3年発行の大阪市内詳細図です。八軒家の文字はありませんが、八軒家の位置に水上警察署の印があります。

大阪市内詳細図(大正3年)(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、土佐堀通と谷町筋には市電が走り、天満橋と天神橋に停留所があります。その間に「八軒屋」の記載はありません。大川には川を上下する船が描かれています。

大阪市パノラマ地図(国際日本文化研究センター蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、パノラマ地図と同様土佐堀通と谷町筋に市電が走り、こちらでは、天満橋、八軒家、天神橋に停留所があります。八軒家停留所の前に「八軒家」の文字があり、寝屋川が付け替えられて將基島が埋め立てられています。対岸には「天満配給所」の文字があります。天満青物市場の跡地に当たります。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)


 現在の八軒家浜には、2008年に観光用の岸壁である船着き場が整備され、常夜鐙が復元されています。2009年には観光船案内所、情報発信スペース、レストランからなる川の駅「はちけんや」が開業しています。かつては渡辺の津とも呼ばれた八軒家は、熊野街道の起点でした。

現在の八軒屋浜
川の駅「はちけんや」
川の駅「はちけんや」
現在の八軒屋浜(常夜鐙)
熊野街道起点の碑
八軒家の解説板(浪花百景)
八軒家から見た天神橋
八軒家からの天神橋夜景
八軒家からの夜景


 今回は、「淀川両岸一覧」の「八軒家」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、八軒家付近の様子を確かめてください。


〇江戸時代の疫病退散-天神祭の宵宮飾り

 大阪くらしの今昔館の近世常設展示室(江戸時代のフロア)では200年前の天神祭の宵宮飾りと疫病退散にまつわる展示を行っています。

御迎人形「酒田公時(金太郎)」(大阪天満宮蔵)
疫病神(疱瘡神)は赤色を 嫌うと信じられていました
コレラ退治の虎
張子の虎が、店の表で 皆さんをお出迎え
流行り病に打ち勝つ! 鍾馗さんや神農さんの掛軸を飾る
呉服屋での展示の様子


〇大阪くらしの今昔館からのお知らせです。

 令和2年6月3日(水)から開館しています


 大阪市と協議を重ねた結果、6月3日(水)より再開の運びとなりました。ご来館を心待ちにしておられた皆さまには、長期の休館により多大なご迷惑をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。

 再開にあたっては、十分な予防対策に努めてまいります。これに伴い、ご来館のみなさまにも、体温検査やマスクの着用などの入館並びに観覧時にご協力いただくことがございます。たいへんご不便をおかけしますが、ご理解・ご協力のほど、お願い申し上げます。なお、詳しくは、こちらをご確認ください。


〇特別展「和紙の建築模型 建築起こし絵図―茶室と社寺と即位図と」開催中です

 令和2年6月3日(水)~7月12日(日)

 建築の魅力は空間デザインにあります。建築家は、スケッチやCG、あるいは模型などを制作して、建築のプレゼンをします。江戸時代の大工棟梁は、和紙で作った起こし絵図を組み立てて、建築空間の魅力を伝えました。建築起こし絵図は、平面図の上に立面図や内部の展開図を描いた和紙を張り合わせたもので、ふだんは折り畳んでおき、見るときには壁面を起こして模型のように組み立てました。いわば、和紙の建築模型です。重要文化財「大工頭中井家関係資料」には建築起こし絵図があります。その大半は茶室や数寄屋建築ですが、社寺建築や京都御所の儀式(即位図)についての起こし絵図も少数ながら含まれています。

 本展では、和紙で作った建築起こし絵図を一堂に展観し、平面図や立面図では分からない建築空間の魅力を楽しんでいただきます。併せて、茶室「蓑庵」(大徳寺玉林院・重要文化財)の原寸模型を展示し、実物大の建築空間も体験していただきます。

入館料:特別展のみ300円、常設展+特別展 一般800円(団体700円)、高・大生500円(団体400円)、団体は20名以上
※中学生以下、障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書提示)

【主な展示物】
茶室起こし絵図(中井家約20点+田中家20点)
客殿・書院起こし絵図(約6点)
大徳寺大仙院庭園渡廊起こし絵図
吉田神社大元宮起こし絵図
透廊起こし絵図
中門起こし絵図
即位図起こし絵図
茶室蓑庵実物大模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)
※なお、重要文化財「大工頭中井家関係資料」は中井正知氏・中井正純氏所蔵



〇大阪くらしの今昔館「全編」
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画は4編あります。今回は全4編を通しで見る「全編」をご紹介します。約14分の動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0


 全4編の目次はこちらからどうぞ。こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf


 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be


 また、今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編あります。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be

https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4


〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse


2020年6月23日火曜日

今週の今昔館(221) 淀川両岸一覧 20200623

〇淀川両岸一覧にみる江戸時代の大坂(1)

 琵琶湖から大阪湾へと流れる淀川は、人の流れ、物の流れを担う交通の大動脈として機能してきただけでなく、人々の暮らしと大きく関わり、政治・経済・文化にも大きな影響を与えてきました。

 「淀川両岸一覧」は、大坂から京都までの淀川沿いの名所旧跡を挿絵を添えて紹介した船旅の案内書で、文久元年(1861)に刊行されました。上り船の部2巻、下り船の部2巻の4巻から成り、上り船の部2巻は淀川左岸の景勝地を、下り船の部2巻は右岸の景勝地を紹介しています。暁晴翁の著述、松川半山の画図によるものです。

 今回から新しいシリーズとして、この本に沿って、約160年前の江戸時代の大坂から京都までの淀川沿いの風景を訪ねていきます。

 当時の淀川には、過書船と呼ばれる幕府の許可を得て運行する川船が航行し、中でも旅客輸送用の過書船は「三十石船」と呼ばれました。過書とは「関所の通行証」のことです。この船は大坂、伏見間を上下し、各船宿が1日2回昼と夜の定期便を出していました。全長27m、約30人乗りの三十石船は、曳き船が必要な上りには約12時問、川の流れに乗る下りには約6時間を要しました。曳き船とは、急流に逆らって上る時に、船頭らが川岸から綱で船を引き上げることをいいます。
 江戸時代の最盛期には、昼夜の上り下りで320雙が就航し、89,000人の乗客を運んだと言われています。

淀川両岸一覧上船之巻二冊・文久3年版(大阪市立図書館蔵)
淀川両岸一覧・まえがきの続き(大阪市立図書館蔵)

 余浪花に遊ぶごとに必ず船を買ひて澱川を下る。坐して江山の勝を欖(み)、いまだ沿江の諸区を探るに暇あらず。頃日、鶏鳴舎主人、この著を示され、たまたま、また浪華に遊ぶに携えて行く。舟中被閲の間、百里の長堤、邨落(そんらく)、祠観、名区、旧墟、目迎へてこれを送る。一々詳悉なり。長流のまさに尽きんとするを惜しむ。家に帰りて後、謝してこれを還す。今より後、澱水を下るの人々、必ず一本を携へば、けだし主人の賜(たまもの)多とするなり。よって慫慂してこれを刻す。もし、それ賈人・估客ならば、必ず夜航を便とし、迢々(ちょうちょう)たる江水、しばしば、嗟来(さらい)の食を売る声に夢を驚かす。もとより論ずるなかれ。
 安政丙辰三月 飄々老人題す
   需(もと)めに応じて南陽書す

淀川両岸一覧凡例(大阪市立図書館蔵)

 凡例
一 この書は、浪花より京師へ船にて登る淀川条の両岸の地名を初め、その傍なる寺社および名所古跡を著し、かつその風景絶勝なる所々の図を出だして、船客の慰となす者なり。
一 両岸を一図にうつさん事難(かた)きにあらずといへども、その委しきにいたらず。また、左に奇観ありて右に鄙(ひな)の賤(いや)しき地あり、右に美観ありて左に川添の堤のみなるもありて、その図風流ならざるがゆゑに、いづれも、船中より見わたせし右を図してその順に一覧せしむ。されば前の二巻は上船の右をうつし、のちの二巻は下船の右を画く。ゆゑに上船の巻は下船の左なり、下船の巻は上船の左と心得べし。文もまたこれに准ず。
一 船客これを閲(けみ)したまへば船長に問はずして両岸をくはしく知るべし。

 浪、長橋を浸す、二百弓/春陰いまだ霽(は)れず、これ何の虹ぞ/金城、雨を巻きて斜日を呑む/碧殿、雲を穿って大空に縋(すが)る/千店の閭閻(りょえん)、地を撲(う)って列なり/一条の周道(しゅうどう)京に至りて通ず/年々、眺望して思ひ尽くることなし/南国の魚塩、洛中を圧す 洞雲

淀川両岸一覧下船之巻二冊(大阪市立図書館蔵)

 日は洛城に上り端紅を発す/聖朝の徳沢、仰ぎて年(みの)り豊かなり/千門万戸の民、相(あひ)忘る/礼楽長(とこしなへ)に存す、三代の風 樗斎

 次回から、淀川両岸一覧(上り船之部)に沿って、難波橋、八軒家浜から淀川を遡ることにします。船から見て右側が画かれていますので、淀川南岸(左岸)の桜宮、毛馬、守口、枚方、樟葉、橋本、淀を順に訪ねていくことになります。
 挿絵の解説に際しては、「続おおさか漫歩」および「大阪 淀川探訪-絵図でよみとく文化と景観」を参考にさせていただきます。

 川の流れは曲がりくねっていることが多く、流れの向きは東西方向、南北方向に変化します。このため、岸を呼ぶときに「左岸」「右岸」という表現をします。この場合の右左は、上流から下流に向かって、左側が左岸、右側が右岸です。川の主役は水ですから、水の流れに沿って、水の立場に立って右左と覚えておくと、間違いません。


〇江戸時代の疫病退散-天神祭の宵宮飾り

 大阪くらしの今昔館の近世常設展示室(江戸時代のフロア)では200年前の天神祭の宵宮飾りと疫病退散にまつわる展示を行っています。

御迎人形「酒田公時(金太郎)」(大阪天満宮蔵)
疫病神(疱瘡神)は赤色を 嫌うと信じられていました
コレラ退治の虎
張子の虎が、店の表で 皆さんをお出迎え
流行り病に打ち勝つ! 鍾馗さんや神農さんの掛軸を飾る
呉服屋での展示の様子


〇大阪くらしの今昔館からのお知らせです。

 令和2年6月3日(水)から開館しています


 大阪市と協議を重ねた結果、6月3日(水)より再開の運びとなりました。ご来館を心待ちにしておられた皆さまには、長期の休館により多大なご迷惑をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。

 再開にあたっては、十分な予防対策に努めてまいります。これに伴い、ご来館のみなさまにも、体温検査やマスクの着用などの入館並びに観覧時にご協力いただくことがございます。たいへんご不便をおかけしますが、ご理解・ご協力のほど、お願い申し上げます。なお、詳しくは、こちらをご確認ください。


〇特別展「和紙の建築模型 建築起こし絵図―茶室と社寺と即位図と」開催中です

 令和2年6月3日(水)~7月12日(日)

 建築の魅力は空間デザインにあります。建築家は、スケッチやCG、あるいは模型などを制作して、建築のプレゼンをします。江戸時代の大工棟梁は、和紙で作った起こし絵図を組み立てて、建築空間の魅力を伝えました。建築起こし絵図は、平面図の上に立面図や内部の展開図を描いた和紙を張り合わせたもので、ふだんは折り畳んでおき、見るときには壁面を起こして模型のように組み立てました。いわば、和紙の建築模型です。重要文化財「大工頭中井家関係資料」には建築起こし絵図があります。その大半は茶室や数寄屋建築ですが、社寺建築や京都御所の儀式(即位図)についての起こし絵図も少数ながら含まれています。

 本展では、和紙で作った建築起こし絵図を一堂に展観し、平面図や立面図では分からない建築空間の魅力を楽しんでいただきます。併せて、茶室「蓑庵」(大徳寺玉林院・重要文化財)の原寸模型を展示し、実物大の建築空間も体験していただきます。

入館料:特別展のみ300円、常設展+特別展 一般800円(団体700円)、高・大生500円(団体400円)、団体は20名以上
※中学生以下、障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書提示)

【主な展示物】
茶室起こし絵図(中井家約20点+田中家20点)
客殿・書院起こし絵図(約6点)
大徳寺大仙院庭園渡廊起こし絵図
吉田神社大元宮起こし絵図
透廊起こし絵図
中門起こし絵図
即位図起こし絵図
茶室蓑庵実物大模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)
※なお、重要文化財「大工頭中井家関係資料」は中井正知氏・中井正純氏所蔵



〇大阪くらしの今昔館「全編」
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画は4編あります。今回は全4編を通しで見る「全編」をご紹介します。約14分の動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0


 全4編の目次はこちらからどうぞ。こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
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 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be


 また、今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編あります。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be

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2020年6月17日水曜日

今週の今昔館(220) 疫病退散にまつわる展示 20200617

〇江戸時代の疫病退散-天神祭の宵宮飾り

 大阪くらしの今昔館の近世常設展示室(江戸時代のフロア)では200年前の天神祭の宵宮飾りと疫病退散にまつわる展示を行っています。

コレラ退治の虎
張子の虎が、店の表で 皆さんをお出迎え
流行り病に打ち勝つ! 鍾馗さんや神農さんの掛軸を飾る
呉服屋での展示の様子
御迎人形「酒田公時(金太郎)」(大阪天満宮蔵)
疫病神(疱瘡神)は赤色を 嫌うと信じられていました


〇大阪くらしの今昔館からのお知らせです。

 令和2年6月3日(水)から開館しています


 大阪市と協議を重ねた結果、6月3日(水)より再開の運びとなりました。ご来館を心待ちにしておられた皆さまには、長期の休館により多大なご迷惑をおかけしましたことを深くおわび申し上げます。

 再開にあたっては、十分な予防対策に努めてまいります。これに伴い、ご来館のみなさまにも、体温検査やマスクの着用などの入館並びに観覧時にご協力いただくことがございます。たいへんご不便をおかけしますが、ご理解・ご協力のほど、お願い申し上げます。なお、詳しくは、こちらをご確認ください。


〇特別展「和紙の建築模型 建築起こし絵図―茶室と社寺と即位図と」開催中です

 令和2年6月3日(水)~7月12日(日)

 建築の魅力は空間デザインにあります。建築家は、スケッチやCG、あるいは模型などを制作して、建築のプレゼンをします。江戸時代の大工棟梁は、和紙で作った起こし絵図を組み立てて、建築空間の魅力を伝えました。建築起こし絵図は、平面図の上に立面図や内部の展開図を描いた和紙を張り合わせたもので、ふだんは折り畳んでおき、見るときには壁面を起こして模型のように組み立てました。いわば、和紙の建築模型です。重要文化財「大工頭中井家関係資料」には建築起こし絵図があります。その大半は茶室や数寄屋建築ですが、社寺建築や京都御所の儀式(即位図)についての起こし絵図も少数ながら含まれています。

 本展では、和紙で作った建築起こし絵図を一堂に展観し、平面図や立面図では分からない建築空間の魅力を楽しんでいただきます。併せて、茶室「蓑庵」(大徳寺玉林院・重要文化財)の原寸模型を展示し、実物大の建築空間も体験していただきます。

入館料:特別展のみ300円、常設展+特別展 一般800円(団体700円)、高・大生500円(団体400円)、団体は20名以上
※中学生以下、障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書提示)

【主な展示物】
茶室起こし絵図(中井家約20点+田中家20点)
客殿・書院起こし絵図(約6点)
大徳寺大仙院庭園渡廊起こし絵図
吉田神社大元宮起こし絵図
透廊起こし絵図
中門起こし絵図
即位図起こし絵図
茶室蓑庵実物大模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)
※なお、重要文化財「大工頭中井家関係資料」は中井正知氏・中井正純氏所蔵



〇大阪くらしの今昔館「全編」
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画は4編あります。今回は全4編を通しで見る「全編」をご紹介します。約14分の動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0


 全4編の目次はこちらからどうぞ。こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf


 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be


 また、今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編あります。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be

https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4


〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
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