2018年1月30日火曜日

今週の今昔館(96) 四天王寺 20180130

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(5)

 今回は、「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の5回目、四天王寺をご紹介します。

■四天王寺(芳雪画)
 聖徳太子ゆかりの四天王寺は仏教受容の象徴として、古来、平安貴族から庶民に至るまで、太子信仰や法華信仰、浄土信仰をあわせ崇敬を集めた最古の官寺です。
西門の石造大鳥居(重要文化財)は永仁2年(1294)時の別当忍性の建立で、わが国最古とされます。扁額には「釈迦如来 転法輪処 当極楽土 東門中心」とあります。

 当時は西門前まで大阪湾が入り込み、四天王寺西門はその西方の海の彼方にあると信じられた極楽浄土の東門であると信仰され、ここから海に沈む夕陽に向かって念仏を唱え、彼方の西方極楽浄土を観ずる「日想観」の修行が広く行われました。

浪花百景「四天王寺」(大阪市立図書館蔵)

■四天王寺伽藍(国員画)
 四天王寺は、蘇我氏対物部氏の崇仏戦争を蘇我方の勝利に導いた四天王像を安置すべく聖徳太子が推古元年(593)に創建したと伝えられます。寺院建築の最も早い時期に属する四天王寺は、南大門・中門・五重塔・金堂・講堂が一直線上に並び、中門と講堂を結ぶ回廊が周囲を囲む伽藍配置は四天王寺様式と称されます。

 度々災禍を被るたびに同じ場所に再建され、創建当時の様式を今に伝えています。文化9年(1812)再興の堂塔は昭和9年の室戸台風で倒壊・大破し、その後修理・再建されましたが、昭和20年米軍の空襲により焼失しました。現在の伽藍は昭和38年に復興されたものです。

 五重塔の上階からは境内、市中が一望できます。太子信仰は庶民に至るまで広がり、聖霊院の巡拝、法会、舞楽が行われ、今日も太子の霊験を求める人々で寺運盛んです。

浪花百景「四天王寺伽藍」(大阪市立図書館蔵)
空中写真(国土地理院)
中門と五重塔

■四天王寺合法辻(芳雪画)
 四天王寺西門から西に下る逢坂と、逢坂から南に天下茶屋方面に向かう街道との交差点が合法辻。合法とは、聖徳太子が物部守屋と仏法の論争をしたことに因みます。もとは大伽藍でしたが、兵火を受け辻堂のみとなって閻魔像を安置、辻の守りとして町内により守られてきました。石造の威容と相まって、頭痛などに霊験があるとして信仰されました。

 辻の東南角にあった閻魔堂は、陰謀から継子俊徳丸の身を守るため、わざと偽りの恋を仕掛け、父合邦に刺されて死んでいく娘お辻が自分の生き血を俊徳丸に飲ませて業病を平癒させる物語、浄瑠璃「摂州合邦辻」の舞台ともなりました。閻魔堂は明治10年(1877)の明治天皇住吉行幸の際、道路拡張工事のため西方寺境内に移されました。

浪花百景「四天王寺合法辻」(大阪市立図書館蔵)

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」の四天王寺付近を見てみましょう。四天王寺の周辺には、庚申堂、茶臼山、一心寺、安井天神、キヨミズ、アイゼン、ウカムセ、壽法寺などの名所が描かれています。一心寺の西には、合ホウガ辻、エンマドウも描かれています。「日本橋通長町ト云」は現在の堺筋、その南に「スミヨシカイドウ」と書かれている道は紀州街道です。

浪華名所獨案内の四天王寺付近(「津の清」蔵)

 「天保新改攝州大阪全圖」の四天王寺付近です。四天王寺の回廊伽藍の東に太子堂があります。四天王寺の北西は寺町で、びっしりとお寺が並んでいます。毘沙門池、茶臼山、一心寺、合邦辻も描かれています。

天保新改攝州大阪全圖の四天王寺付近(日文研蔵)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」の四天王寺付近です。大きく描かれている五重塔は、文化9年(1812)再興の塔で、この後、昭和9年の室戸台風で倒壊・大破することとなります。上町筋を南下してきた市電は、四天王寺を迂回して「天王寺西門」「茶臼山」停留所を経て、天王寺に通じています。

大阪市パノラマ地図の四天王寺付近
(大阪くらしの今昔館蔵)

 次に、今昔マップ3を利用して、明治42年から最近までの地形図で、四天王寺周辺の変遷を見てみましょう。
 左上は明治41年、四天王寺の東側には農地など空地が目立ちます。南西の茶臼山周辺には第五回内国博覧会の跡地が軍用地となっています。右上は昭和7年、環状線内側は市街地化が進み、市電が通っています。軍用地には、新世界と天王寺公園が整備されています。左下は昭和22年、白い部分は戦災によって焼失した地域で、四天王寺の伽藍も焼失しました。右下は平成7年で、四天王寺の伽藍が復興され、谷町筋が開通して地下鉄が通っています。

明治41年、昭和7年、昭和22年、平成7年地形図の
四天王寺付近(今昔マップ3より)

 明治以後の四天王寺は、まず、明治維新の神仏分離令により、それまで四天王寺に所属していた神社が離され、厳しい状況に置かれましたが、人々からは依然として庶民信仰の寺・お太子さまの寺として深い信仰を受け、諸行事は従来どおり行われました。

 昭和9年(1934年)9月21日、近畿一円を襲った室戸台風によって五重塔が倒壊、金堂は傾斜破損、仁王門(中門)も壊滅するなど、境内全域が相当な被害を被りました。昭和15年(1940年)、努力のすえに五重塔が再建されましたが、それも束の間、昭和20年(1945年)の大阪大空襲により、六時堂や五智光院、本坊方丈など伽藍の北の一部の建物を残し、境内のほぼ全域が灰燼に帰してしまいました。

 しかしこの時も、各方面の人々の協力を得て復興への努力がなされ、昭和38年(1963年)には伽藍が、昭和54年(1979)には聖霊院奥殿・絵堂・経堂が再建、その他の建物も次々に再興され現在ではほぼ旧観に復しています。さらに、戦後間もなく太子創建の寺であることから天台宗から独立し、和宗を創立。四天王寺はその総本山として、仏法興隆と太子精神の高揚を本願とする寺として再生いたしました。

 聖徳太子が四天王寺を建てられるにあたって、「四箇院の制」をとられたことが『四天王寺縁起』に示されています。四箇院とは、敬田院(きょうでんいん)、施薬院(せやくいん)、療病院(りょうびょういん)、悲田院(ひでんいん)の4つのことで、敬田院は寺院そのものであり、施薬院と療病院は薬局・病院にあたり、悲田院は病者や身寄りのない老人などのための社会福祉施設にあたります。

 たび重なる戦火や災害に見舞われ、多くが焼失しましたが、現在の建物は創建当時(飛鳥時代)の様式を忠実に再現しており、古代の建築様式が今に残るのは貴重といえます。

 総面積3万3千坪(約11万平方メートル)。甲子園球場の三倍の広さを有する境内には四天王寺式伽藍のほか、聖徳太子の御霊を崇る聖霊院(太子殿)があり、創建当時の品々など500点あまりの国宝・重要文化財を所蔵する宝物館もあります。日本庭園の「極楽浄土の庭」にたたずむと、都会にありながら喧騒とは無縁の世界が広がります。新西国三十三観音霊場第一番など多くの札所にもなっています。

 お太子さまをしのんで毎年4月22日に催される聖霊会舞楽大法要では、重要無形民俗文化財の天王寺舞楽が披露されます。毎月21日の大師会と22日の太子会は四天王寺の縁日で、露店も多く並び庶民の太子信仰の寺としての姿勢を貫いています。(以上、四天王寺ホームページ より)


 今回は、「浪花百景」の四天王寺と合法辻をご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」2月10日まで開催中

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」(終了しました)

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土・終了しました)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。


〇次回の企画展「浪花の大ひな祭り」

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)

 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/korekara.html


〇今週のイベント・ワークショップ

1月31日(水)~2月3日(土)、5日(月)、7日(水)~10日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

2月4日(日)、11日(日)、12日(月・祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

2月4日(日)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)、8階ロトンダにて開催

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

2月10日(土)
ワークショップ 『版木はがき』

13時30分~15時
参加費:200円

2月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

2月12日(月)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!
大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南鷹、旭堂南舟、旭堂さくら
14時~15時


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse

2018年1月23日火曜日

今週の今昔館(95) 住吉高灯籠 20180123

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(4)

 今回は、新シリーズ「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の4回目で、住吉大社の続きになります。住吉大社に向かう道筋の名所をご紹介します。

■住吉高灯籠(国員画)
 まず初めは、瀬戸内海から船で大阪に入ってくる場合に目に入ってくる高灯籠です。
 高灯籠は住吉大社境内前の出見の浜にあった高さ約16mの常夜灯で、住吉の代表的名所として知られていました。鎌倉時代末期、漁民により建立されたもので、灯台としての役割と住吉大社への献灯を兼ねるほか、展望台としても利用され、ここからの眺望は絶景でした。

 船場の町家の住吉詣は船で渡り、高灯籠の下の船着き場から社に入りました。灯籠の最上部は東は生駒山から紀泉山地、西は六甲山まで望める展望台。眼前に広がる出見の浜は、3月には遠浅の海が干潟となり、潮干狩りの季節となります。貝や魚釣りまで楽しめ、浜には蛤汁を出す茶店も出て大層な人出で賑わいました。

 昭和25年のジェーン台風で木造部分が破壊され、石組みの台のみが残っていましたが、昭和47年に道路拡張のため撤去されることになり、昭和49年に場所を約200m東の国道26号線沿いの現在地に移して再建されました。現在、海は埋め立てられ、高灯籠からはかなりの距離があります。

浪花百景「住吉高灯籠」(大阪市立図書館蔵)

■住吉岸の姫松(芳瀧画)
 大坂と堺を結ぶ紀州街道は住吉大社の社頭を通過、海岸線近くを並行して走る風光明媚な街道で、古くは「岸の辺の道」とも称されました。
 ことに住吉から今の帝塚山に至るこの辺りは紀州街道の東側まで波の押し寄せる岸で、岸の姫松と呼ばれる背の低い松原が続く景勝地で、古今和歌集にも「我見ても久しくなりぬ住江の岸の姫松幾世経ぬらむ」とあります。

 今は大和川の付け替えや新田開発により海岸線が西へ移動し、景観は失われました。現在住之江区東加賀屋4丁目に「姫松橋」のバス停があり、昭和48年までは西成区玉出にも「姫松通」という岸の姫松に由来する町名が残っていました。阪堺電車上町線にも「姫松」の停留所がありますが、かつての岸からは東に入った位置になります。

浪花百景「住吉岸の姫松」(大阪市立図書館蔵)

■住吉大和橋(芳瀧画)
 かつて淀川と合流して市中に流れ込んでいた大和川は、たびたび洪水を引き起こしていました。大和川は宝永元年(1704)現在の位置に付け替えられ、それに伴い大和橋が新設され、9月26日に完成しました。紀州街道が大和川を渡るところに架けられており、熊野詣や和歌山へ至る輸送路として、また貿易港堺を通る重要な軍用道路として整備され、公儀橋に指定されました。

 旧暦6月末日に行われた住吉大社の夏越大祓神事に続き、この橋を渡って神輿の渡御が行われました。堺の宿院(頓宮)に移された神輿が夜住吉に還幸する際、神輿をおくる堺の人々と神輿を迎える住吉の人々のかざす数百の松明が大和橋の上であかあかと燃え、北は明石、南は泉州海岸からも見ることができたといわれます。

浪花百景「住吉大和橋」(大阪市立図書館蔵)

 次に、住吉大社の頓宮である宿院のある堺の地図を見てみましょう。国際日本文化研究センター蔵の明治5年発行の「和泉堺市図」です。大和川の付け替え以降は、大和川が摂津と和泉の国境となりましたが、それ以前は堺市街地の中央部を通る「大小路」が国境でした。そのことから、「堺」の地名が生まれたといわれています。地図では、堺の市街地の中央部で左右で色の変わっているタテに通る道が大小路です。宿院は、大小路の南、和泉の国に入ってすぐのところに赤で示されています。
 この地図の右端には住吉大社が描かれています。
和泉堺市図(明治5年・1872・北西が上)
(日文研蔵)

 地図の右端部分を拡大し、上下反転した図です。
 左下の住吉浦の傍には「住吉高灯籠」が描かれ、松原を抜けると住吉鳥居前に出ます。鳥居をくぐり、反橋を渡ると、「住吉四社明神」があります。その左に「神宮寺」さらに「大海神」があり、奥には「奥天神」が描かれています。鳥居前の左には「住吉新家」があります。位置関係はともかく、当時から、堺の人々にとって、住吉大社は大事な存在であったことが分かります。
 神宮寺は廃仏毀釈によってなくなりますが、その他は、現存している住吉大社、大海神社、生根神社に相当します。
 鳥居前から右に街道をたどると「安立丁」があり、大和川には「大和橋」がかかり、「並松丁」を経て環濠を渡ると堺のまちに入ります。
 大阪の地図には詳しく描かれていなかった住吉大社や安立の町が、堺市の地図に描かれていることは、住吉大社と堺との縁の深さが伺えます。

和泉堺市図(部分)(明治5年・1872・南東が上)
(日文研蔵)

 次に、今昔マップ3を利用して、明治42年から最近までの地形図で、住吉大社から堺にかけての地域の変遷を見てみましょう。
 左上は明治42年、住吉大社と堺以外には、小さい旧集落と、紀州街道・熊野街道があります。大和川の付け替えによる土砂の堆積と、干拓によって、埋め立てが始まっています。右上は昭和7年、区画整理によって市街地整備が始まっています。左下は昭和22年、戦災によって紀州街道沿いの地域などが焼失しています。右下は最近の地理院地図です。

明治42年、昭和7年、昭和22年、最近の地形図
(今昔マップ3より)

 明治42年の地図を拡大して、詳しく見てみましょう。
 十三間堀川よりも西側は、干拓によって埋め立てが進んでいますが、旧住吉の津にあたる細井川の河口部は埋め立てられずに水面が残っています。
 大和川が付け替えられたことによって、川に運ばれてきた土砂によって、堆積が進んでいます。市街地化が進んでいない状況の中で、紀州街道と熊野街道(地図では「阿部野街道」)の道筋がよくわかります。

明治42年陸地測量部地図(拡大・今昔マップ3)

 最後に、堺市指定有形文化財の「住吉祭礼図屏風」を見てみましょう。
 住吉祭で住吉大社の神輿(みこし)が、堺の宿院頓宮(とんぐう)へ渡ってこられる様子を描いた屏風です。元々は「夏越祓(なごしのはらえ)」として旧暦の6月晦日(みそか)に行われていましたが、現在は8月1日に行なわれています。

 左隻(させき)は神輿の出発する住吉社頭の賑わいを描き、右隻(うせき)はイエズス会の宣教師たちの報告により「日本のベニス」とヨーロッパにまで知られた、安土桃山から江戸時代初期にかけての堺のまちを描いています。堺を描いた、現在のところ最古の絵画資料としてばかりでなく、堺のまちの有様を具体的に伝えてくれる歴史資料としても重要な作品です。

 左隻は住吉大社側で、左上が社殿で、太鼓橋を渡り神輿行列が堺へと向かいます。

住吉祭礼図屏風(左隻・住吉大社側)

 右隻は堺のまち側で、行列は町人たちが仮装などをした風流行列が堺の浜通から右上の頓宮へと向かいます。頓宮では神事相撲なども行なわれています。現在の大道筋(紀州街道)にあたる通りの入口には、中世より堺の特色とされる濠と木戸が設けられています。

住吉祭礼図屏風(右隻・堺のまち側)

 以上、写真と解説を堺市役所のホームページから引用させていただきました。

 「住吉祭礼図屏風」は江戸時代初期の作とされています。住吉大社と堺のまちは大和川が付け替えられるまでは地続きであり、当時から両者は大変深い関係にあったことが分かります。

 今回は、「浪花百景」の住吉大社に向かう道筋の名所3枚を取り上げました。また、住吉大社と堺との関係についてもご紹介しました。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」開催中です

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
≫ https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土・終了しました)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。


〇次回の企画展「浪花の大ひな祭り」

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/korekara.html


〇今週のイベント・ワークショップ

1月24日(水)~27日(土)、29日(月)、31日(水)~2月3日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

1月28日(日)、2月4日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

1月27日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『鬼のお面作り』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します。

1月28日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください。
出演:竹本旭将 他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00

2月4日(日)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)、8階ロトンダにて開催

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年1月16日火曜日

今週の今昔館(94) 住吉反橋 20180116

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(3)

 今回は、新シリーズ「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の3回目になります。1月ということで、毎年初詣で賑わう摂津の国の一之宮「住吉大社」をご紹介することにします。

■住吉反橋(芳瀧画)
 住吉大社と言えば反橋(太鼓橋)が有名ですが、浪花百景にも反橋の錦絵があります。
 住吉大社を象徴する反橋は急こう配の美しい反りを持ち、別に太鼓橋とも呼ばれます。擬宝珠のある見事な石柱木造橋で、淀君の寄進を受け、豊臣秀頼が片桐且元に命じて再興したと伝えられます。
 たびたびの修復作業は船大工の奉仕で行われていたといわれますが、石造りの橋柱や梁は別として木製の床板や桁の維持管理は難しかったようで、享和元年(1801)に修復される以前は歳久しく朽ちて石杭のみ残り、橋とは名ばかりの状態になっていたといわれます。
 以前は渡りやすくするための横木がなく、渡橋は困難でしたが、「反橋を渡るだけでお祓いになる」ということから、懸命に上り下りする参詣者も多かったといわれます。その後も時おり修復が加えられ、現在に至っています。

浪花百景「住吉反橋」(大阪市立図書館蔵)

■住吉本社(国員画)
 2枚目は本殿です。絵図のタイトルは「住吉本社」となっています。住吉三神と、神功皇后を祀る摂津一之宮で、4つの神殿を持ち、祭神は、一の神殿は底筒男命、二の神殿は中筒男命、三の神殿は表男筒命、四の神殿は神功皇后。住吉大社のホームページでは、「第一本宮」~「第四本宮」となっています。古来より国家鎮護、船舶守護、祈雨、和歌神、武道神としての信仰が厚く、庶民に至るまで住吉詣は四天王寺詣とともに最も親しまれた参詣でした。
 「住吉造(すみよしづくり)」の4棟の本殿が海に向かって西面し、15世紀までは20年ごとに遷宮していたようですが、現本殿は文化7年(1810)建立です。「住吉造」は神社建築史上最古の様式の一つといわれ、4棟いずれも国宝建造物に指定されています。市内で唯一の国宝建造物です。
 本殿を囲むように、摂社、末社、名所旧跡が多く、大小の祭祀は年に75回に及び、その中でも特に2月の祈念穀祭、6月の御田植神事、7月の夏越大祓神事、10月の宝の市、11月の新嘗祭は著名で多くの参詣者で賑わいをみせています。

浪花百景「住吉本社」(大阪市立図書館蔵)

■住吉五大力(芳瀧画)
 3枚目は「住吉五大力」。住吉大社には20を超える摂社・末社が集まります。そのうち神仏習合の思想から建立された神宮寺は平安時代から文献にも表れ、江戸時代には仏堂・僧堂を備えていました。
 宝蔵には住吉明神自らが描いたと伝えられる五大力菩薩の画像五幅を安置していたと伝えられ、宝蔵前には百度石となっている五大力碑があり、厄除けほか願掛けなどの民間信仰に支えられていました。「五」「大」「力」の文字の書かれた石を3つ集めるとお守りになるといわれています。
 神宮寺は天平2年(730)あるいは天平宝字2年(758)の創建といわれ、藤原純友の乱平定の祈祷もここで行われるなど長い歴史を持っていましたが、明治に入り神仏分離・廃仏毀釈の波の中で姿を消しました。現在はその跡地に石碑が建っています。

浪花百景「住吉五大力」(大阪市立図書館蔵)

■浅澤の弁財天(芳瀧画)
 4枚目は「浅澤の弁才天」。住吉大社から東南に2丁ほどのところにある場外末社で市杵島姫命ほかを祀る浅澤神社。姫命が弁才天に結び付けられて女性守護の神として信仰を集めました。池中には弁才天の小祠が祀られています。錦絵に描かれた石碑と柳が現在も残っていて貴重です。
 細江川が流れ込む浅沢小野と呼ばれる一帯は、池沼の多い低湿地で、古来、杜若の名勝。和歌の名所として知られ歌枕にもなっており、万葉集に「住吉の浅沢小野の杜若衣にすりつけ着む日知らずも」と詠まれていますが、すでに江戸時代には途絶えていました。宝暦13年(1763)地元の人々が新たに杜若を植え直して往時を再現したといわれます。現在、杜若は住吉区の花に指定されています。

浪花百景「浅澤の弁財天」(大阪市立図書館蔵)

 次に、古地図で住吉大社あたりの変遷を見てみましょう。江戸時代天保年間の「浪華名所獨案内」では、地図の右端(南端)に「住吉」が押し込まれていて、本殿と松並木、高灯籠が描かれています。大坂三郷からは距離は離れていますが名所としては欠くことができなかったのでしょう。

「浪華名所獨案内」(「津の清」蔵・上が東です)

 文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」とグーグル空中写真を合成した下の図を見ると、地図の範囲は茶臼山付近までで、住吉大社は含まれていません。

「増修改正摂州大阪地図」とグーグル空中写真の合成
(ラムゼイコレクションより)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」では、当時の大阪市域が対象エリアとなっていますが、その外にある住吉神社は、今宮の南側に唯一の挿絵として挿入され描かれています。4つの本殿と反橋が位置関係も含めて正確に描かれています。また阪堺電車の住吉鳥居前停留所、南海本線住吉駅も描かれています。パノラマ地図の精度の高さが伺えます。

「大阪市パノラマ地図」(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年の「大大阪観光地図」では、住吉大社は大阪市域に編入された以降で、「住吉神社」と「住吉公園」が名所として挿絵が入っています。阪堺電車、南海本線のほか、南海高野線も描かれています。

「大大阪観光地図」(日文研蔵)

 最後に、最新のグーグルの空中写真とマップを見てみましょう。住吉大社、大海神社、生根神社の境内の樹々と、住吉公園の緑やグラウンド、細井川の流れもよくわかります。

グーグル空中写真
グーグルマップ

 今回は、「浪花百景」の住吉大社とその付近の計4枚をご紹介し、江戸時代から最近までのまちの変遷を見てきました。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」開催中です

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
≫ https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。



〇今週のイベント・ワークショップ

1月17日(水)~20日(土)、22日(月)、24日(水)~27日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

1月21日(日)、28日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

1月20日(土)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)
8階ロトンダにて開催

1月21日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します。
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

1月27日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『鬼のお面作り』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します。

1月28日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください。
出演:竹本旭将 他
14時~15時

町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30~15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年1月9日火曜日

今週の今昔館(93) 天満橋風景 20180109

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(2)

 今回は、新シリーズ「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の2回目になります。引き続き地元の天満を取り上げ、前回ご紹介した三大橋を一つずつ描いた錦絵をご紹介します。

■天満橋風景(国員画)
 三大橋のなかで、最も上流部に位置する「天満橋」。江戸時代、谷町筋より一つ東に架けられていました。架橋年代は明確ではありませんが、大坂冬の陣の配陣図に「てん満橋」の書入れがあることや、ルイス・フロイスの『日本史』によると、天正14年(1586)以前に豊臣秀吉によって大坂城下建設の一環として天満橋の前身が架橋されたと推定されます。そして江戸時代に天満橋、天神橋、難波橋の三大橋はそろって架けられ、いずれも「公儀橋」に指定され幕府の直轄管理となりました。

 当時橋の南側には東西の町奉行所や様々な役所、北側には、大川沿いには町与力の屋敷、空心町にかけては同心などの官舎や営繕関係の役所・倉庫が建ち並び、天満橋はこれら役人が行き交う橋でもありました。その後度重なる流失を経て、明治21年(1888)天神橋と共にトラス構造の鉄橋となりました。現在は上部に高架橋ができ二層の橋となっています。

浪花百景「天満橋風景」(大阪市立図書館蔵)

■天神祭り夕景(国員画)
 2枚目は天神橋。天神橋は天満宮への参詣にあたる道に架けられた橋であるところから名付けられました。三大橋のなかで最も長い橋で、17世紀中ごろは、大川には淀川と大和川の水が入り川幅が広く、最長時には百三十七間(約250m)あったといわれます。
 また、天保8年(1837)の大塩平八郎の乱の折りには、天満橋とともに幕府の手で一部が撤去されています。町にとってのこの橋の重要性が見てとれます。明治18年(1885)に流失後、明治21年(1888)にトラス構造の鉄橋となりました。現存の橋は昭和9年(1934)に改築されたアーチ式の鉄橋です。

 天神祭は大阪の夏を彩る大祭。天暦5年(951)に神鉾を流して、流れ着いたところを斎場とし心霊を禊したのが始まりといわれる天神祭。船渡御は著名で、神輿が難波橋から船に乗り楽を奏して戎島の御旅所まで往復しました。地盤沈下の影響で昭和28年(1953)からは大川を遡行することになりました。

浪花百景「天神祭の夕景」(大阪市立図書館蔵)

■浪花橋夕景(国員画)
 現在、堺筋を土佐堀川と堂島川に架かる「難波橋」は、大正4年(1915)市電が走る橋として掛け替えられるまで一つ西の難波橋筋に架かっていました。当時は中之島は難波橋の西までしかなく、大川に架かる長い橋でした。架橋年代については豊臣時代に架橋されたのではないかといわれていますが、『元亨釈書』に天平17年(745)僧行基が摂州に難波橋を架けたという記事もあり、正確なところは定かではありません。

 江戸期には浪華三大橋として公儀橋に指定され、界隈には諸藩の蔵屋敷が建ち並びそれを取り巻くように問屋街が形成され、大変な賑いをみせていました。また納涼や花火見物、花見、月見にも絶好で舟遊びや避暑を楽しむ行楽地でもありました。現在は堂島川、中之島公園、土佐堀川にまたがって架かり、ライオン像を有することで知られています。堺筋にありますが、名前は難波橋を引き継いでいます。

浪花百景「浪花橋夕景」(大阪市立図書館蔵)

 三大橋や天満天神、天満市場あたりの町の様子を江戸時代の古地図で見てみましょう。まず初めに、天保年間発行の「浪華名所獨案内」。江戸時代の観光マップです。東が上になっています。淀川に上から順に天満バシ、天神バシ、ナニハバシが架かり、左側の北岸には青物市場と市ノ側、その北には天満宮があり、南岸には八ケン家があります。中之島はナニハバシの手前までしかありません。

 赤い線は観光のモデルコースを示しています。当時から名所であった場所が、浪花百景に描かれていることが確認できます。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です)

 次は、ラムゼイコレクションで公開されている文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」。三大橋には長さと幅が表示されています。幅はいずれも3間で、長さは天神橋は122間、天満橋は115間、難波橋は114間となっており、いずれも百間を超える大橋でした。

 大川北岸の天満橋と天神橋の間には、「青モノ市バ」の文字があります。白い△の印は天満組(大坂三郷のひとつ)を示しています。左下に見える黒丸(●)は、北組です。

文化3年(1806)発行の「増修改正摂州大阪地図」
(ラムゼイコレクションより)

 3枚目は、時代が下って大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」。明治21年(1888)に架け替えられてトラス構造の鉄橋となった天満橋と天神橋が描かれています。北岸にびっしりと並ぶ町家は青物市場です。

 天満橋と難波橋には市電が通っている様子が描かれています。中之島が現在と同じく天神橋まで伸びています。
 4枚目と5枚目はそれを拡大したもの。橋の姿や青物市場の様子がよくわかります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)


 次は、昭和12年の「大大阪観光地図」。観光名所に挿絵が入り、名前を丸で囲んだ赤字で示しています。天満天神、造幣局、難波橋、天神橋、中之島公園に加えて、「天満配給所」があります。青物市場が中央卸売市場に統合された跡地がそう呼ばれていたのでしょうか。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 明治時代以降のまちの変遷を、今昔マップを使って辿ってみましょう。

 1枚目は、明治41年(左)と昭和4年(右)。左の地図では、城東線(現在の大阪環状線)は通っていますが、道路や掘割には江戸時代の町割りのなごりが残っています。図の左上には堀川監獄があります。東西の寺町もよくわかります。難波橋は堀川から西に2本目の筋(難波橋筋)に架かっていた旧難波橋です。

 右の地図では、市電の開通と合わせて幹線道路の拡幅と橋の架け替えが行われています。難波橋は堀川から1本西の堺筋に移設されています。中之島は現在と同じ天神橋の東まで伸びてきています。天満橋をよく見ると、市電が橋の東側を通っています。パノラマ地図で確認すると市電はトラスの外側を走っており、正確に描かれていることがわかります。監獄が堺へ移転した跡地は扇町公園になっています。
明治41年と昭和4年の地形図(今昔マップ)

 2枚目は、左が終戦後の昭和22年、右は最近の地形図です。左の地図の白い部分は戦災で焼失した地域です。東天満の多くは焼失しましたが、西天満の老松町付近は焼失を免れました。天神橋北詰から市電の通る西天神橋筋までが拡幅され現在の姿になっています。

 右の地図は現在の国土地理院地図で、市電が廃止されて地下鉄谷町線と堺筋線が通り、国道1号線にはJR東西線も地下鉄と並行して走っています。天満堀川が埋め立てられて阪神高速道路が通っています。

昭和22年と最近の地形図(今昔マップ)

 最後に、グーグルマップを利用して空中写真と最新の地図を見てみましょう。文化3年(1806)の古地図と重ねて見ることもできます。古地図は正確な測量に基づくものではないため、多少のズレはありますが、大まかな位置関係を確認できて便利です。

グーグルの空中写真
古地図と空中写真の合成

 次は最新のグーグルマップです。地下鉄の駅や路線の位置もよくわかります。

グーグルマップ

 古地図とグーグルマップを重ねると、天神橋はほぼ正しく重なり、新難波橋は一筋東に、新天満橋は一筋西に架かっています。堀川と高速道路もほぼ重なっています。古地図の東西方向の位置関係はほぼ正確であることが分かります。

 一方、地下鉄とJR東西線が通る国道1号線は、天満天神を一部切り取り、星合池よりも南側を通っていますが、これは、古地図の方が南北方向に伸びた形で描かれていることが原因と推定されます。こうしたズレには注意が必要ですが、まち歩きの際に付近に昔は何があったのかを確認できて便利です。

古地図とグーグルマップの合成

 今回は、「浪花百景」の天満橋、天神橋、難波橋をご紹介し、江戸時代から最近までの天満のまちの変遷を見てきました。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」開催中です

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
≫ https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。



〇今週のイベント・ワークショップ

1月10日(水)~13日(土)、15日(月)、17日(水)~20日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

1月14日(日)、21日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

1月13日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『石臼体験』

13時30分~15時
時間内、参加人数制限なし、無料

1月14日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、笑福亭達瓶
14時~15時

町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

1月20日(土)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)
8階ロトンダにて開催

1月21日(日)
イベント 座敷舞

山村流の立ち方が華やかな舞を披露します
出演:山村若女 ほか
14時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:14:00~15:30

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse