2022年4月27日水曜日

今週の今昔館(316) 住まいの大阪六景「大大阪新開地」 20220427

〇今昔館の近代展示室の見どころ(24)住まいの大阪六景「大大阪新開地」

 大阪くらしの今昔館は、天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)まで、9階常設展示室(江戸時代のフロア)および10階展望フロアが閉鎖されています。
 8階展示室(近代のフロア)にある「住まいの大阪六景」の3つ目は、「大大阪新開地 -市街地の拡大と近代長屋-」をご紹介します。

 大正14年(1925)の「大大阪」誕生とともに新しく市域に編入された新市街地は「大大阪新開地」と呼ばれました。新市域では、組合施行による土地区画整理事業によって土地会社が宅地を開発し、その上に長屋建ての貸家を建設して大家に売却し、大家が賃貸住宅経営を行っていました。長屋住宅の一部に大家が居住する場合もありました。
 『大大阪』という雑誌は、昭和7年(1932)から8年頃の土地区画整理地区の暮らしぶりについて、「大大阪新開地風景」と題したルポルタージュ記事を掲載しています。第1回目は旭区森小路付近を取り上げています。
 大区画整理地-今福、野江、清水、森小路に亘る大区画整理地の風景は、大大阪市としては異色あるものである。大都市の目貫とまでは行かなくても、その動脈の一つたる京阪沿線にこれほどの大きな野原があらうとは、誰もが想像しなかつたところであらう。(中略)既に道路は、幾何学の線をもつて、将来の街路を截然と規定してゐる。新開地の風景ではないかもしれない。しかし未開地、新開地の中間の風景ではある。
 土地区画整理で道路がつくられ、間もなく建物が建てられていく状況を、未開地と新開地の中間と見立てて描写しています。新しく市域に編入された地域に共通の風景であったのでしょう。 この模型は、昭和10年(1935)頃の大大阪新開地=近代長屋住宅地の風景です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区辺りにある長屋を一つのまちに再編成したものです。伝統的な和風長屋住宅に加えて、邸宅風の長屋住宅や、洋風のモダンな長屋住宅の町並みが50分の1で再現されています。大大阪新開地は既成市街地の外周部に新たに開発された住宅地で、当時のニュータウンにあたります。

大大阪新開地(住まいの大阪六景)
大大阪新開地(住まいの大阪六景)

■邸宅風の和風長屋
邸宅風の和風長屋


 まず、伝統的な和風の近代長屋を見てみましょう。写真は、前庭のある和風長屋で、表には高塀をめぐらし、それぞれ玄関があります。邸宅風になっています。長屋はそれぞれ間口2間の4戸建てと、間口が2間より大きく、瓦屋根が少し高い2戸の合計6戸からなり、いずれも本二階建てで、2階の表側はガラス戸と縁を設けています。右端の住戸だけ間口が少し広く、前庭に洋風の部屋が飛び出しています。ここは長屋の家主さんの住宅です。残りの5戸は貸家(借家)で、「助産婦」の看板もかかっています。このような邸宅風の和風長屋は、昭和初期に登場しました。

 右の写真は風呂屋(寿湯)です。長屋の中には内風呂がないものもあったので、地域に風呂屋が建てられました。
 入口や塀は洋風というか、中華風というか、不思議なデザインですね。8階の江戸時代の風呂屋さんの外観と比較してみると何か発見があるかもしれません。この模型はお正月なので、風呂屋の煙突に凧が引っかかっています。芸の細かいところもお見逃しなく。
風呂屋(寿湯)


 この模型の中に、建てかけの長屋があります。瓦屋根がきちんと葺かれているので、上棟式は終わったのでしょう。足場を組んで、左官工事や内装を行っている段階に見えます。職人の働きぶりをよく観察してください。当時、長屋の建設には、建売大工が活躍したそうです。建売大工は地主と交渉して土地を借り受け、その場所に長屋を建て、大工自らが買主(家主)を探して販売するというのが一般的であったそうです。
建設中の長屋


■洋風長屋
 風呂屋さんを挟んで建てかけの長屋の反対側に4戸建ての洋風の長屋が2棟あります。写真の左の1棟は外観の模型、右の1棟は内部を表した模型です。
 まず、外観の模型(写真の左側)を見てください。2階には洋風の出窓が付けられ、1階は陸屋根が少し張り出し、出入り口には洋風の玄関扉と門灯が付けられています。前庭は、低い塀が設けられています。和風長屋の高塀と比べると、ずいぶん開放的です。
 つぎに内部を見てみましょう。洋風長屋の模型の直上写真をご覧ください。右側2戸は1階、左側2戸は2階を表わしています。4戸長屋の間取りと住生活がよくわかります。1階に台所、茶の間、玄関の間、6畳の間(床の間付)、縁側、風呂、便所があり、茶の間と6畳の間の間には廊下がとられています。2階には8畳の間と6畳の間、3畳の書斎があり、バルコニーがついています。前庭、裏庭付きで、よく考えられた間取りです。しかも、この間取りがピタリとはまるように計画的に道路区画がなされ、背割には汲み取り通路が確保されています。当時の便所は水洗ではなかったので、部屋の中を通らずに裏から汲み取りができるように工夫されています。
 間口が2間半あることによって、8畳の間や床の間付きの6畳の間(もちろん奥行き半間の押し入れ付き)が確保できます。また1間幅の玄関と4畳半(1間半)の茶の間を並べることができます。間口2間幅の間取りと比べて平面プランのバリエーションが増え、お屋敷に近い雰囲気も出せたのではないでしょうか。おまけに戦前の畳は関西間(京間)で、メートル間に近い大きさですから、ゆとりがあります。
 2戸ペアになっているのは玄関側だけで、奥は反転させずに風呂と便所が1戸分ずつ裏庭に突き出すようになっています。自然換気を重視して両面開放にしたのでしょうか?
 この模型のもう一つの見どころは、長屋の暮らしぶりが再現されていることです。台所での炊事や茶の間での食事風景はもちろん、押入の中までのぞくことができます。

洋風長屋の間取り(右の2戸は1階、左の2戸は2階)


■住之江の洋風長屋
 洋風の長屋住宅の中に、間口2間半でバルコニー付きの洋風長屋があります。左端は2戸1の長屋。隣は4戸で1棟の長屋です。2戸ペアでデザインされていて、手摺り子をもつ低い塀、2階窓の建具の組子、妻面のハーフティンバー(half timbering)など、おしゃれです。現在の大阪市住之江区西住之江に現存している長屋です。
 ハーフティンバーを辞書で引くと、「木造住宅建築の一様式で、柱・梁・斜材などそそのまま外部に現し、その間の壁体を石材・土壁あるいは煉瓦で充塡したもの。イギリスでは1450~1650年ごろに盛んに行われた方式であるが、ドイツやフランスにも、その例が見られる。」(『建築大辞典』)とあります。
住之江の洋風長屋の外観写真


 「近代都市住宅年表」の下段には、各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。年表の中ほど折れ曲がりの辺りには、住之江の洋風長屋が描かれています。この模型の制作のベースとなった4戸で1棟の洋風長屋の立面図です。

住之江の洋風長屋の立面図(「近代都市住宅年表」)


 それでは、大阪市パノラマ地図ではどのように描かれているか見てみましょう。といきたいところですが、「大大阪新開地」はパノラマ地図には描かれていません。

大阪市パノラマ地図の右下部分(大阪くらしの今昔館蔵)
当時の大阪市域を描いているため、現在の阿倍野区、
住吉区等は描かれていない。
住吉神社のみが挿絵として描かれている。

 パノラマ地図は大正13年1月の発行で、当時の大阪市は東西南北の4区の時代です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区などは、翌年の大正14年(1925)に、第二次市域拡張によって大阪市域に含まれることとなります。それで、現在の阿倍野区、住吉区などは描かれず、住吉神社のみが挿絵として描かれています。

大阪市の第2次市域拡張
(大阪市史編纂所『新修大阪市史第7巻』)

 そこで、米軍が昭和23年(1948)に撮影した航空写真を、国土地理院が公開していますので、こちらで見てみることにします。1枚目は阿倍野区阪南町付近で、組合施行区画整理の第1号である阪南土地区画整理事業によって街区が整備され、長屋が整然と建てられている様子がわかります。このあたりは戦災を免れましたので、昭和戦前に建てられた住宅が、そのまま残っています。

米軍の撮影による航空写真の阪南町付近(昭和23年)
(国土地理院HPより)


 2枚目は、住之江区西住之江付近です。写真中央を南北に南海本線が走っています。その西側に長屋住宅地が形成されています。区画整理された街区の上に長屋が整然と建てられている様子がわかります。模型にある洋風長屋はこのあたりに建っています。南海本線と並行して東側には紀州街道が通っていますが、街道沿いの住宅と西側の新市街地とで住宅の大きさが違っていることもよくわかります。

米軍の撮影による航空写真の西住之江付近(昭和23年)
(国土地理院HPより)

 最後に、今昔マップ3を使って、阿倍野区阪南町付近の変遷を見てみましょう。
 左上は明治41年、股ケ池(桃ケ池)の西側一帯には田畑が拡がっています。右上は昭和7年、組合施行の阪南土地区画整理事業によって街区が形成され、一部では長屋の建設が始まっています。左下は昭和22年、戦災を免れた長屋住宅地が拡がっています。右下は、現在の国土地理院地図です。

明治41年・昭和7年・昭和22年の地形図、最近の国土地理院地図の
阪南町付近(今昔マップ3)

 今回は、「住まいの大阪六景」のひとつ、「大大阪新開地-市街地の拡大と近代長屋-」について紹介しました。『まちに住まう-大阪都市住宅史』(平凡社刊、1989年)を参照しました。


〇企画展「漆造形の旗手 栗本夏樹の世界」が始まりました

 2022年4月16日(土)〜2022年7月3日(日)

 天然の塗料である漆は、古くから日用品や調度、建築装飾などに多用され、その独特な美観でもって、日本の伝統的な住まいやくらしの中に彩りを添えてきました。大阪出身の造形作家である栗本夏樹は、日本人の生活文化と密接に関わってきた漆という素材を、新たな生命を吹き込む神聖な存在と捉え、現代の生活空間を飾る様々な作品へと昇華してきました。栗本が漆を塗る対象は流木や樹皮、石などの自然物をはじめ、使用されなくなった紙管や自動車のボンネットなどの人工物にも及びます。1994年には大阪南港にあるアジア太平洋トレードセンターで行われたモニュメント制作の指名コンペティションに参加。この時に選出された“アジアの中の私”は、1996年のおおさかパブリックアート賞を受賞し、これを機にその活躍の場は公的な空間に置かれる造形物にまで広がりました。

 本展では立体、平面、器物を中心とした栗本の過去から現在に至るまでの代表的な作品を一堂に集め、栗本が取り入れてきた表現の移り変わりを概観することができます。長い歴史の中で育まれてきた伝統的な美を継承しつつも、新たな発見に満ちた漆造形の世界をご覧ください。

◇ギャラリートーク◇
 4/23(土:終了しました)・5/28(土)・ 6/25(土)
 /8階企画展示室にて14時から約1時間(申込不要)
 ※入館チケットが必要です
 ※状況により人数制限をする場合があります




〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



2022年4月20日水曜日

今週の今昔館(315)浪花行事十二月 卯之花月 20220420

〇今昔館の館蔵品紹介「浪花行事十二月 卯之花月 ざこば魚じま」
 今回は、大坂の行事を12か月の月別に描いた二代長谷川貞信(はせがわさだのぶ)による画帖「浪花行事十二月」から「卯之花月 ざこば魚じま」をご紹介します。

 江戸時代の大坂には諸国の物産が集積し、商業によって富み栄えた商人たちは文化的にも豊かな生活を送るようになりました。年中行事や季節に応じた行楽、寺社への参拝と祭礼などを盛んに行いました。このような都市生活の様子は、名所絵や浮世絵として様々な画家によって残されています。ここでは今昔館が所蔵する資料の中から、大坂の行事を12か月の月別に描いた、二代長谷川貞信(にだいはせがわさだのぶ)による画帖「浪花行事十二月」を紹介します。

 作者の二代長谷川貞信は、嘉永元年(1848)に初代長谷川貞信の長男徳太郎として大坂に生まれました。慶応元年(1865)頃から小信の号で描き、明治8年 (1875)に父から貞信の名を譲り受け、二代長谷川貞信と称しました。
 父の初代貞信は役者絵や「浪花百景」などの風景版画の分野を得意として、幕末から明治初年にかけて上方浮世絵界で活躍しました。二代貞信もその伝統を受け継いで役者絵を主に描いています。その他に神戸名所、浪花名所、浪花十二景などの風景画、玩具絵、武者絵、美人画、『日々新聞』の挿絵や銅版画を手がけています。
 小信を名乗っている頃には、「播州神戸海岸繁栄之図」を初めとして神戸・大阪(川口)の居留地などを舞台に、鉄道、鉄橋、西洋館など明治初年の文明開化の風俗をよく描きました。また貞信を継いだ後は、錦絵新聞や西南戦争に題材を求めた錦絵を多く手がけました。銅版画や石版画が普及し、浮世絵の需要が衰えた明治10年(1877)以降には、商店の引き札や輸出茶の商標、芝居絵の番付なども描いています。昭和15年(1940)没。享年93。墓所は初代と同じ天鷲寺。法名は明徳院貞信遍照居士。

 「浪花行事十二月」は帙(ちつ)入りの折本(1帖)、絹本着色、法量は本紙縦14.5 x 横20.5cm(総寸 20.8 x 26.9cm)、目次を含めて13面の図で構成されています。目次には小信の落款が、各月の場面 には「九十二翁 貞信」の落款があります。本作品が描かれたのは貞信の最晩年である昭和14年 (1939)ですが、江戸時代の後期に生まれ、江戸時代の風景と風俗の面影を残す町で育った貞信は、江戸時代の大阪の様子を回顧するように描いています。

■浪花行事十二月 卯之花月 ざこば魚じま
 雑喉場の魚市は江戸堀・京町堀等の西にあり、魚問屋が軒を連ねていました。暁鐘成『摂津名所図会大成』の雑喉場魚市の項には「当市場は毎朝遠近の浦々より鱗(いろくず)をここに運送し、鯨鮪鰤の大魚より鰶(このしろ)鰯の小魚まで群をなして市を立ることを最も勇ましく又晝網(ひるあみ)の市とて未の剋後にあり是は其の晝漁りし鱗を直ちに早船にて漕ぎつけ市に立るなり故に生るがごとく別て鮮けし夏は六月朔日より夜市なれば矩火篝火を焼て賣買殊更諸社の神事月なれば頗る魚船多にして其光景目覚しくも夥(おびただ)し」とあります。本図にも明け方のまだ薄暗い中、一斉に魚を小船からおろし、問屋に運び込む活気のある様が描かれています。
(大阪くらしの今昔館研究紀要16号掲載の、学芸員服部麻衣さんの論文『資料紹介 二代長谷川貞信 「浪花行事十二月」』より)


浪花行事十二月 卯之花月 ざこば魚じま
(大阪くらしの今昔館蔵)


〇企画展「漆造形の旗手 栗本夏樹の世界」が始まりました

 2022年4月16日(土)〜2022年7月3日(日)

 天然の塗料である漆は、古くから日用品や調度、建築装飾などに多用され、その独特な美観でもって、日本の伝統的な住まいやくらしの中に彩りを添えてきました。大阪出身の造形作家である栗本夏樹は、日本人の生活文化と密接に関わってきた漆という素材を、新たな生命を吹き込む神聖な存在と捉え、現代の生活空間を飾る様々な作品へと昇華してきました。栗本が漆を塗る対象は流木や樹皮、石などの自然物をはじめ、使用されなくなった紙管や自動車のボンネットなどの人工物にも及びます。1994年には大阪南港にあるアジア太平洋トレードセンターで行われたモニュメント制作の指名コンペティションに参加。この時に選出された“アジアの中の私”は、1996年のおおさかパブリックアート賞を受賞し、これを機にその活躍の場は公的な空間に置かれる造形物にまで広がりました。

 本展では立体、平面、器物を中心とした栗本の過去から現在に至るまでの代表的な作品を一堂に集め、栗本が取り入れてきた表現の移り変わりを概観することができます。長い歴史の中で育まれてきた伝統的な美を継承しつつも、新たな発見に満ちた漆造形の世界をご覧ください。

◇ギャラリートーク◇
 4/23(土)・5/28(土)・ 6/25(土)
 /8階企画展示室にて14時から約1時間(申込不要)
 ※入館チケットが必要です
 ※状況により人数制限をする場合があります




〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



2022年4月13日水曜日

今週の今昔館(314) 浪花風景十二月 卯花月 20220413

〇企画展「浪花 なりわいづくし」は終了しました

 大阪くらしの今昔館は、2022年4月11日(月)〜4月15日(金)の間、展示替えのため休館です。


〇今昔館の館蔵品紹介「浪花風景十二月 卯花月 野田春日社紫香」
 今回は、大坂の風景を12ヶ月の月別に描いた二代長谷川貞信(はせがわさだのぶ)による画帖「浪花風景十二月」から「卯花月 野田春日社紫香」をご紹介します。

 12ヶ月の月ごとの行事や風俗を主題として描く「月次絵」は、古くから屏風や襖絵、巻子などいろいろな形式で描かれてきました。
 今回紹介する画帖「浪花風景十二月」も、画帳の形式で1枚に1月づつ、江戸時代の大坂を象徴する景色や名所を季節感を織り交ぜながら描いています。
 二代長谷川貞信(にだいはせがわさだのぶ)の肉筆で、二代貞信は江戸時代から昭和初期の変化に富んだ時代の様子を書き残した浮世絵師として知られています。

 今昔館には同じく二代貞信が描き、本画帖と同じ寸法かつ類似の表装で仕立てられた「浪花風俗十二月」も所蔵されており、2つの画帖は「対」もしくは「シリーズ」として製作されたことがうかがえます。

 本作品が描かれたのは貞信の最晩年の昭和14年(1939)ですが、描かれている様子は江戸時代の風景のため、本作は実像を見ながら描いているのではなく回顧して描いている点に留意する必要があります。しかし江戸時代の後期の大坂に生まれ、古くからの行事や風景に親しんで育った二代貞信の描写は、大阪のかつての風景を探る上で一定の信頼性があると考えられます。

■浪花風景十二月 卯花月 野田春日社紫香
 藤の花は古事記や万葉集にも登場し、日本では古くから広く親しまれている花です。野田春日社の紫藤は、『蘆分船』 元禄7年(1694)刊によると吉野の櫻や高尾(京都の高雄)の紅葉と並んで唄われるほど、古来より名所として知られ、林中の藤の花がさざめく様子が波や雲に例えられたといいます。室町幕府の二代将軍足利義詮が住吉詣の途中訪れ、藤を和歌に詠み、豊臣秀吉も藤の花見に訪れ茶会を開いたとも伝えられています。藤の花の盛りには遠近から人々が訪れ、茶店や料理屋もところどころに出店し、賑わいました。
(大阪くらしの今昔館研究紀要17号掲載の、学芸員服部麻衣さんの論文『資料紹介 二代長谷川貞信 「浪花風景十二月」』より)


浪花風景十二月 卯花月 野田春日社紫香
(大阪くらしの今昔館蔵)


〇次回の企画展は「漆造形の旗手 栗本夏樹の世界」

 2022年4月16日(土)〜2022年7月3日(日)

 天然の塗料である漆は、古くから日用品や調度、建築装飾などに多用され、その独特な美観でもって、日本の伝統的な住まいやくらしの中に彩りを添えてきました。大阪出身の造形作家である栗本夏樹は、日本人の生活文化と密接に関わってきた漆という素材を、新たな生命を吹き込む神聖な存在と捉え、現代の生活空間を飾る様々な作品へと昇華してきました。栗本が漆を塗る対象は流木や樹皮、石などの自然物をはじめ、使用されなくなった紙管や自動車のボンネットなどの人工物にも及びます。1994年には大阪南港にあるアジア太平洋トレードセンターで行われたモニュメント制作の指名コンペティションに参加。この時に選出された“アジアの中の私”は、1996年のおおさかパブリックアート賞を受賞し、これを機にその活躍の場は公的な空間に置かれる造形物にまで広がりました。

 本展では立体、平面、器物を中心とした栗本の過去から現在に至るまでの代表的な作品を一堂に集め、栗本が取り入れてきた表現の移り変わりを概観することができます。長い歴史の中で育まれてきた伝統的な美を継承しつつも、新たな発見に満ちた漆造形の世界をご覧ください。

◇ギャラリートーク◇
 4/23(土)・5/28(土)・ 6/25(土)
 /8階企画展示室にて14時から約1時間(申込不要)
 ※入館チケットが必要です
 ※状況により人数制限をする場合があります




〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html