2018年12月25日火曜日

今週の今昔館(143) 二軒茶や風景 20181225

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(48)

 今回は、「二軒茶や風景」をご紹介します。

■二軒茶や風景(国員画)
 この地は東へまっすぐ伸びる大坂から奈良に通じる奈良街道の起点にあたるため、伊勢神宮や大和巡りに向かう旅人や見送りの人々でいつも賑わっていました。黒門橋(石橋)西詰めに、街道の両側にあった「つる屋」「庄屋(のち、ます屋)」という二軒の茶屋は旅人の休憩所として、また、別れの酒宴の会場として多くの人に利用され、名所となるほどに繁盛しました。また道中用に深江名物の菅笠も販売していました。
 近世を通じてほぼ60年ごとに流行した伊勢神宮のお陰参りの時には、街道沿いは大いに賑わいました。ます屋は明治初年に廃業、つる屋は牛肉屋に転業して大正年間まで存続。現在長堀通(国道308号)南側に石碑が建っています。

浪花百景「二軒茶や風景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「玉造町家」の右下(南東)に「二ケン茶ヤ」の挿絵と文字があります。安堂寺町の通りには「ナライセ道」の文字が見えます。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「宰相山 真田山イナリ」の右手に「△平ノ口丁」の文字が見えます。その右手に川幅が拡がったところに橋が架かり、東へと道が続いています。このあたりが二軒茶屋、石橋でしょうか。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、現在の大阪環状線に当たる城東線(省線)の「玉造駅」から東は、当時の大阪市の市域に入っていなかったため、雲で隠されたような表示となっています。駅の近くには郵便局、交番、私設市場、劇場、玉造税務署があったことがわかります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、長堀通が城東線を越えて拡幅され東へ伸びています。猫間川に架かっていた橋が石橋だったのでしょうか。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、市街地は城東線の西側までで、東側では、街道に沿って町並みがありますが、周りには農地が残っています。
 右上の昭和4年では、長堀通と玉造筋が拡幅され市電が走っています。長堀通は城東線の東へも延びています。

明治41年から昭和42年の地形図(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。長堀通の市電が今里方面へ延びています。
 右下の昭和42年では、全域が市街地化し、市電はすべて廃止されています。

 JR大阪環状線玉造駅から長堀通を東へ進むと1枚目の写真の二軒茶屋跡の石碑があります。玉造名所石橋旧跡の碑も並んでいます。
二軒茶屋跡の碑

 暗峠奈良街道を東へ進み今里筋との交差点角に、暗峠奈良街道(ならみち)の碑があり、ビルの壁面に街道の解説板が並んでいます。 
暗峠奈良街道(ならみち)の碑
暗峠奈良街道
高井田菱江
追分尼ヶ辻
三絛通春日大宮


 街道をさらに東へ進み千日前通りに出るところに文化3年(1806)に建てられた「なら・いせ道」の古い道標があります。

ならいせ道の道標
移設され向きが変わったことを示す説明板



 今回は、「浪花百景」の「二軒茶や風景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
2019年2月22日(金)までです。

休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。


新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円


〇今週のイベント・ワークショップ

12月26日(水)~28日(金)、1月3日(木)~5日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月6日(日)、13日(日)、14日(祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


12月27日(木)
イベント 町家のもちつき

当日先着各回20名:※中学生以下対象、参加費無料
12時よりインフォメーションにて整理券を配布します。
①13時45分~ ②14時30分~

1月5日(土)
イベント 今昔庵茶会

町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時

1月6日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時

1月6日(日)
町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう

13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年12月20日木曜日

今週の今昔館(142) 佐奈田山三光宮 20181220

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(47)

 今回は、「佐奈田山三光宮」をご紹介します。

■佐奈田山三光宮(芳瀧画)
 上町台地東端の真田山は宰相山(旧姫山)とも称し、山麓の反正天皇創始を伝える三光宮は、姫山神社(真田山稲荷、宰相山稲荷とも)の境内末社で、陸奥国宮城郡青麻(あおそ)の三光社の分霊を勧進したものです。中風封じの霊効が庶民に信仰されて、生駒・金剛の連山の眺望とともに参詣者を集めました。明治41年(1908)姫山神社と三光宮が合祀され、現社号の三光神社に改めました。
 その境内地は、地名にあるようにかつて大坂冬の陣に際して、豊臣方の智将真田幸村が築いた真田出丸の故地と伝えられ、ここと城とを繋ぐ「真田の抜穴」と称される横穴が遺っています。豊臣家ゆかりの故地として、浪花の人の心寄せる場所であり、横穴の前には、昭和62年鹿角の兜をかぶり采配をふるう真田幸村の銅像が建てられました。

浪花百景「佐奈田山三光宮(芳瀧画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「玉造町家」から南へ藍色の線をたどると「イナリ」と「真田山」があります。「アジワラ池」「玉ノ井シミズ」につながる観光ルートとなっています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、山の絵が描かれた「真田山」と、その右側(東)に「宰相山 真田山イナリ」が並んで表示されています。現在の位置関係と合致しています。真田山は大坂冬の陣の後、徹底的に取り壊されたといわれていますが、江戸時代には山の面影が残っていたのでしょうか?

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、現在の大阪環状線に当たる城東線(省線)の「玉造駅」の西側に南北に市電が走っています。現在の玉造筋に当たります。「舟橋町」「水野町」に停留所があり、「玉造」で西に左折して「東雲町」を経て、長堀方面に向かいます。
 〇で囲まれた「玉」「造」の「造」の文字の傍に「三光社」の文字があり、鳥居が2つ描かれています。その西側には「真田山墓地」と「騎兵第四聯隊」があり、さらに西に「明星商業学校」があります。真田丸があったと推定されている場所です。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、長堀通と玉造筋を走る市電に囲まれた位置に、「宰相山町」があり、「三光神社」の文字も見えます。その南には「陸軍墓地」の字とお墓の印が多数あり、赤い文字で「真田山」と表示されています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、長堀通、玉造筋ともに拡幅前です。城東線の「たまつくり」駅の西側に「騎兵営」の文字と墓地の印があり、その右上に鳥居の印が見えるところが三光神社です。
 右上の昭和4年では、長堀通と玉造筋に市電が走り、拡幅されています。「騎兵営」は「騎四」の表示に替わっています。「騎兵第四聯隊」の略です。北側には陸軍墓地があり、右上に見にくいですが鳥居の印が見えます。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。鳥居の印が確認できます。
 右下の昭和42年では、市電はすべて廃止されています。天王寺区の「区」の文字の下に鳥居の印が見えます。西側には墓地の印、周辺には学校と寺の印が多く見えます。

 現在の三光神社を見てみましょう。1枚目の写真は北側から三光神社に向かう参道で、鳥居が見えます。鳥居は2枚目の写真にあるように戦災で倒壊し、脚の一部が保存され、傍に新しい鳥居が建てられています。

三光神社参道
戦災で倒壊した鳥居

 本殿への石段と三光神社の本殿です。

本殿への石段
三光神社本殿

 「真田の抜穴」と呼ばれている横穴と真田幸村公之像です。

「真田の抜穴」
真田幸村公之像

 三光神社の東側の石段です。浪花百景に描かれている石段は、この石段でしょうか?

浪花百景に描かれている石段?

 JR大阪環状線玉造駅前のガード下には、「真田幸村めぐルート」の案内板が設置されています。

真田幸村めぐルート(JR環状線ガード下)



 今回は、「浪花百景」の「佐奈田山三光宮」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」が始まりました

2018年12月17日(月)~2019年2月22日(金)
休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)

 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。


新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円

1月5日(土)イベント 今昔庵茶会
町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時

1月6日(日)イベント 筑前琵琶
和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時

1月6日(日)町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう
13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円


〇今週のイベント・ワークショップ

12月19日(水)~22日(土)、26日(水)~28日(金)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

12月23日(日)、24日(振替休日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


12月22日(土)
町家衆イベント ワークショップ『正月祝箸袋』

①13時30分~ ②14時30分~
当日先着各回10名、1人200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

12月23日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

12月24日(月・祝)
イベント ヘルマンハープ コンサート

バリアフリー楽器ヘルマンハープと共に・・・
演奏と歌と、ワークショップで演奏体験を!
14時~15時
出演:シュトラーセ

12月27日(木)
イベント 町家のもちつき

当日先着各回20名:※中学生以下対象、参加費無料
12時よりインフォメーションにて整理券を配布します。
①13時45分~ ②14時30分~


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年12月12日水曜日

今週の今昔館(141) 森の宮蓮如松 20181212

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(46)

 今回は、「森の宮蓮如松」をご紹介します。

■森の宮蓮如松(芳瀧画)
 森之宮神社は用明天皇が祭神。かつて蓮如が石山本願寺を築こうとした時、森之宮神社内のこの松の下に座して宗門の繁栄を祈り、また宗門とともにこの松が栄えることを当社の神に願ったと伝えられます。
 蓮如は隠居所として大坂に坊舎を建て、それが「摂津第一の名城」と称される石山本願寺のもととなりました。織田信長の激しい攻撃にも容易に屈しなかった石山本願寺は、現在の大阪城の地にあったと推定されています。
 蓮如松は明治18年の淀川大水害によって枯木となり、現在はありません。

浪花百景「森の宮蓮如松(芳瀧画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、大坂城「玉造口」の南東に「杉山」、その南東に「森ノ宮」の文字が見えます。現在大阪城公園の噴水のある辺りに、かつては「杉山」があったそうですが、削られて今は平坦になっています。噴水から西へ進むと急な階段があるのがその名残です。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「玉造口」の南に「算用曲輪 杉山ト云」の文字があり、その周りは「玉造口御定番下屋敷」「与力」「同心」と城の守備のための武家地となっています。
 「下屋敷」の南東、「子コマ川(猫間川)」の横に「元天王寺之地」の文字があり、その右手に「森宮 用明天王」とあります。道路を挟んで「カメ井」の文字も見えます。森之宮神社に係わる情報が古地図に残されています。のちほど、写真でご紹介します。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、現在の大阪環状線に当たる城東線(省線)には、森ノ宮駅はなく、砲兵工廠への分岐線があります。猫間川を挟んで東側は「練兵場」、西側は砲兵工廠があり、西南には「射撃場」の文字が見えます。城の中および周辺は、陸軍関係の施設が並んでいました。
 砲兵工廠の南に、「森ノ宮」と「玉造実業学校」の文字が見えます。猫間川に橋がいくつか架かっていますが、名前は記されていません。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、城東線に「もりの宮」駅ができ、駅のすぐそばに神社の印が見えます。「もりの宮」駅の右手に「鵲ハシ」「猫マハシ」の文字があります。のちほど写真でご紹介しますが、森之宮神社はかつては現在地よりも東にあって、傍を流れる猫間川に鵲橋が架かっていたという内容と符合しています。
 東西に市電が通り、「森ノ宮西町」「森ノ宮東町」の電停があります。玉造筋にはまだ市電が通っていません。大阪城公園の噴水の辺りには、「杉山町」の文字があります。大阪城の天守閣が大きく描かれているために、「玉造口」の「玉」の文字が隠れてしまっています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、大阪城の中は陸軍関係の施設で、城東線の東は練兵場となっています。城の南はびっしりと市街地になっていますが、城東線の東側は田畑が並んでいます。森ノ宮駅はまだありません。
 右上の昭和4年も、同様に陸軍関係の施設となっています。城の南に東西に市電が通っています。市電の終点の所に「もりのみや」の文字があり、その南に神社の印があります。玉造筋が拡幅されて、神社は現在の位置に移転しますが、その前の状態が記録されています。
 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、城の中および周辺は大きな被害を受けています。玉造筋にも市電が通り、城東線に「もりのみや」駅ができています。現在の神社の位置に黒い小さい四角が描かれていますが、本殿が残っていることを示すのでしょうか?
 右下の昭和42年では、「もりのみや」駅の西側、道路を挟んで西側に神社の印があります。本町通の南に中央大通りが開通し、中央大通りの南に「日生球場」の文字があります。市電は、東西、南北ともに廃止されています。大阪城公園の噴水の辺りが整備されています。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 森之宮神社は正式には「鵲森宮(かささぎもりのみや)」といい、聖徳太子創建の神社。祭神は、聖徳太子の両親の用明天皇と穴穂部間人皇后、後に聖徳太子も祭神とされました。
 聖徳太子は物部守屋との戦いの戦勝を祈願し、勝った暁には四天王を祀ることを誓う。戦勝後の589年、まず両親を現在地に祀って寺の鎮守とし、その森に四天王を祀る寺(元四天王寺)を創建しました。天保8年の地図の「元天王寺之地」にあったものと推定されます。
 四天王寺はその後現在の荒陵(あらはか)山に移転されましたが、当社はそのままとされました。かつては境内地は広く、本殿は現在のJR森ノ宮駅近くにあり、傍を流れる天野川(猫間川)に鵲の橋が架かっていました。大大阪観光地図の神社の記号の記載と符合しています。
 市電の建設による玉造筋の拡幅に伴い、本殿は昭和7年に現在地に移築されたとのことです。周辺は戦災により大きな被害がありましたが、本殿は焼失を免れ、修理されて現在に至っています。


森之宮の鳥居
昭和7年に移築され戦災を免れた本殿
聖徳太子ゆかりの玉造の亀の井
百人一首に選ばれた大伴家持の歌碑
「鵲の渡せる橋におく霜の・・・」
狛犬には戦災の爪痕が

 今回は、「浪花百景」の「森の宮蓮如松」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇次回の企画展
「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」

2018年12月17日(月)~2019年2月22日(金)
休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)

 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。

新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円

1月5日(土)イベント 今昔庵茶会
町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時

1月6日(日)イベント 筑前琵琶
和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時

1月6日(日)町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう
13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円


〇今週のイベント・ワークショップ

12月12日(水)~15日(土)、17日(月)、19日(水)~22日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

12月16日(日)、23日(日)、24日(振替休日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


12月15日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 他
14時~15時

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00

12月16日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

12月22日(土)
町家衆イベント ワークショップ『正月祝箸袋』

①13時30分~ ②14時30分~
当日先着各回10名、1人200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

12月23日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

12月24日(月・祝)
イベント ヘルマンハープ コンサート

バリアフリー楽器ヘルマンハープと共に・・・
演奏と歌と、ワークショップで演奏体験を!
14時~15時
出演:シュトラーセ


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 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
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