2018年10月30日火曜日

今週の今昔館(135) 三井呉服店 20181030

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(40)

 今回は、高麗橋通りに店を構えていた「三井呉服店」をご紹介します。

■三井呉服店(国員画)
 江戸と京都で延宝元年(1673)に三井高利が営業を開始した三井越後屋呉服店(三越の前身)は、元禄4年(1691)に大坂に出店。高麗橋通と堺筋が交差する角に両替商を併営して店を構えました。
 薄利多売・現金取引・掛け値なしの商法で客をつかみ、布の切り売りなどの新商法を次々と展開し、間口半町(55メートル)にも及ぶ広い店先は呉服を求める人々でにぎわいました。
 店の向かい側に糸店、紅白粉店、べっこう店、塗り道具店、鏡店などの支店を設け、ここで嫁入り支度の一切を整えられるようにしたのもこの店の工夫でした。このことから日本初の百貨店と称されています。

浪花百景「三井呉服店(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 三井呉服店は「摂津名所図会」にも描かれています。江戸時代高麗橋には道路元標があり、京街道(東海道五十七次)、暗峠奈良街道などの街道の起点となっていました。橋の西詰には通りを挟んで南北に矢倉屋敷が建ち、高麗橋通りには三井呉服店、岩城呉服店などの大店が軒を連ねていました。
 三井は、東海道五十七次の両端である江戸の日本橋と大坂の高麗橋に店を構えたといわれています。


摂津名所図会「三井呉服店」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
摂津名所図会「高麗橋矢倉屋敷」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、高麗橋通りには、「秤座」があり、「スルガヤ」「玉露堂」「岩城呉服店」「三井呉服店」「三井両替店」が軒を並べています。一方、今橋通りには「平五(平野屋五兵衛)」「天五(天王寺屋五兵衛)」「鴻池」などの両替店が並んでいました。平五と天五の間の筋は「十兵衛横町」と呼ばれ、突き当りには「金相場」がありました。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、東横堀川には葭屋バシの南に、橋の名前は省略されていますが今橋と高麗橋が架かり、さらに南に平野橋があります。高麗橋の西詰には「▲高麗バシ一丁目」の文字が見えます。大坂城に近い東側から1丁目、2丁目となっていたことがわかります。▲は大坂三郷のひとつである北組を示しています。
 地図の上部には3つの橋が見えますが、右から天神橋、難波橋、栴檀木橋です。難波橋は現在の堺筋ではなく「ナニハバシスジ」に架かっていました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、土佐堀通には市電が走り、東横堀川に架かる「よしやばし」が拡幅されています。その南に「いまばし」「こうらいばし」「ひらのばし」が見えます。今橋通りには「ホテル」が、高麗橋通りには「三越」の建物が描かれています。
 堺筋には市電が走り、「北濱二」「高麗橋」「平野町」「瓦町」に電停がありました。「なにはばし」は市電敷設の際に堺筋に架け替えられました。天神橋は、トラスの鉄橋に架け替えられています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、北浜二丁目の角に「株式取引所」の建物が描かれ、その南に「三越」の絵があります。堺筋と土佐堀通りに市電が走り、御堂筋が拡幅されて地下鉄が走っています。難波橋は市電の建設に合わせて、元の位置から一筋東の堺筋に架け替えられ、大きく描かれています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、土佐堀通り、堺筋も拡幅前の姿で、今橋通り、高麗橋通り、平野町通りがやや広く描かれており、「高麗橋通」「平野町」の文字が見えます。
 右上の昭和4年を見ると、土佐堀通りと堺筋に市電が走り拡幅されています。三休橋筋も少し拡幅されています。「株式取引所」、「本町電話局」、「道修町」の文字が見えます。
 左下の昭和42年を見ると、堺筋の市電が廃止されています。堂島川から東横堀川の上空には阪神高速道路が走っています。地下鉄道の表示はありません。
 右下の地理院地図では、阪神高速道路の守口線が開通し、地下鉄道の路線が茶色の点線で表示されています。御堂筋線、堺筋線、京阪本線のほか、京阪中之島線が描かれています。

明治42年から最近の地形図
(今昔マップ3より)
大大阪名所・堺筋三越付近の建築物
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
三越百貨店
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
現在の北浜プラザ(三越の跡地)
北浜プラザタワーマンション
現在の三井住友銀行北浜支店(もと三井銀行)
高麗橋通りを挟んで北側

 今回は、「浪花百景」の「三井呉服店」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月31日(水)~11月2日(金)、5日(月)、7日(水)~10日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)


11月3日(祝)、4日(日)、11日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



11月4日(日)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能。
磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

11月10日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、
落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、桂文昇
14時~15時

ワークショップ 『ふくろうストラップを作ろう』
各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
①13時30分 ②14時30分

11月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇11月17日(土)18日(日)は関西文化の日
 11/17・18は今昔館の入館料(常設展)が無料です!


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年10月23日火曜日

今週の今昔館(134) 大江ばしより鍋しま風景 20181023

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(39)

 今回は、「大江ばしより鍋しま風景」をご紹介します。

■大江ばしより鍋しま風景(国員画)
 元禄期は大坂市街地の拡張整備が進んだ時期で、堂島川が改修され、造成地と中之島との間に新しく5本の橋が架けられました。
 中之島と堂島を結ぶ大江橋は、17世紀末に堂島新地が開かれた際に架けられました。
 淀屋橋から大江橋北詰に米市場が移ると、一気にメインストリートとなり、のち淀屋橋とつながって御堂筋を形成することになります。
 米市場に近いため、近辺には諸藩の蔵屋敷が建ち並んでいましたが、画中の大江橋を渡る相場附を腰に掛けた米仲買人の足元から覗く白壁の佐賀鍋島藩蔵屋敷は周辺の蔵屋敷群の中でも規模が大きく、立派な舟入橋も設けられていました。
 蔵屋敷というと、外観を描いている絵や写真が多いため、どうしても「蔵」のイメージが強く「屋敷」を忘れてしまいがちですが、蔵屋敷にも江戸の大名屋敷と同様の御殿があり、西日本の諸藩の大名は参勤交代の際には大坂の蔵屋敷に立ち寄ったといわれています。米を直接搬入できるように「舟入」を持っている蔵屋敷もありました。佐賀藩蔵屋敷はその代表格ともいえるものです。
 明治の廃藩に伴い、跡地は裁判所となり、現在は大阪高等裁判所となっています。

浪花百景「大江ばしより鍋しま風景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
佐賀藩大坂蔵屋敷(「大阪・都市住宅史」より)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、当時は中之島は難波橋の手前までしかなく、難波橋は大川に架かり船場と西天満を結んでいました。難波橋の北詰には「蔵屋敷多シ」の文字があります。佐賀藩蔵屋敷は、地図の赤丸印のあたり、蜆川の東側にありました。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、蜆川(曽根崎川)に架かる「大江小バシ」から東に行ったところに「鍋島」の文字があります。ここが佐賀藩蔵屋敷の場所です。他の藩の蔵屋敷に比べて敷地規模も大きかったことが分かります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、蜆川(曽根崎川)は明治42年の北の大火の後、瓦礫によって埋め立てられています。堂島川の北岸、御堂筋に面して東側に白いビルが描かれていますが、これが堂島ビルです。このビルの東側から北側にかけてが、かつての蜆川の跡です。
 蜆川跡の東側には、白い3階建てのビルと赤レンガの「控訴院」が描かれています。蔵屋敷の跡は、裁判所をはじめ、警察、日本銀行、市庁舎、図書館、公会堂などの公共用地として利用されています。堂島ビルも松山藩の蔵屋敷の跡地に建っています。


大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、中之島には市役所、豊国神社、図書館、公会堂が並び、対岸の西天満には「控訴院」の文字があります。区裁判所、地方裁判所の文字も見えます。難波橋は市電の建設に合わせて、元の位置から一筋東の堺筋に架け替えられています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、控訴院の文字はありませんが、建物の形が描かれています。
 右上の昭和7年を見ると、控訴院の文字があり、東隣にはバツ印の警察署があります。難波橋と大江橋の間に鉾流橋が架けられています。御堂筋には市電が走っています。中之島には、市役所、豊国神社、図書館、公会堂が並んでいます。
 左下の昭和42年を見ると、控訴院の名称が高等裁判所に変わっています。御堂筋は拡幅され、市電は廃止されています。堂島川の上空に阪神高速道路が走っています。
 右下の平成8年では、高等裁判所が敷地の北側に建て替えられています。御堂筋から北東に分岐する新御堂筋が開通しています。地下鉄の路線が茶色の点線で描かれています。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)
堂島川に架かる大江橋(重要文化財)
大江橋のたもとの中之島の碑
大江橋より水晶橋を望む
佐賀藩蔵屋敷跡には大阪高等裁判所

 今回は、「浪花百景」の「大江ばしより鍋しま風景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月24日(水)~27日(土)、29日(月)、31日(水)~11月2日(金)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)


10月28日(日)、11月3日(祝)、4日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


10月27日(土)
ワークショップ『バランスとんぼを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
各回先着10名、参加費:200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

10月28日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


11月4日(日)
イベント 乙女文楽

上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  10月23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



2018年10月16日火曜日

今週の今昔館(133) 北瓢亭 20181016

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(38)

 今回は、曽根崎新地にあった「北瓢亭」をご紹介します。

■北瓢亭(国員画)
 河村瑞賢らによって堂島川が改修されると、新興の堂島新地には茶屋などの遊所が開かれ、すぐに繁華街となりました。堂島に米市場が移転してくると、さらに、曽根崎川(蜆川)より北へ移動し、北ノ新地として定着しました。
 瓢亭は曽根崎新地にあった料亭。広大な敷地のなかに数種類の座敷や茶店があり、庭には滝や池、鳥居、百度石なども配置されていました。曽根崎新地は宝永5年(1708)に成立し、米商人などの遊興場所として繁栄しました。現在も「北の新地」としてサラリーマンその他で賑わう歓楽街です。

浪花百景「北瓢亭(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、地図の中央部、堂島と北側の曽根崎新地の間に川が描かれ「俗ニ蜆川ト云」の文字があり、「シジミバシ」と「サクラバシ」の文字があります。桜橋は、大阪駅前第一ビルの南西角の交差点の名前として残っています。北瓢亭は曽根崎新地の文字のある辺りにありました。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、曽根崎川にいくつかの橋が描かれていますが、「大江小バシ」以外には名前が書かれていません。川の北側には「曽根崎村」の文字があります。渡辺橋から北に進んだところの曽根崎川に架かる橋が桜橋で、橋の北詰に「芝居」の文字が見えます。北瓢亭は、「芝居」の東側、曽根崎新地二丁目にありました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、曽根崎川はありません。明治42年の北の大火の後、瓦礫によって埋め立てられました。埋め立てられた跡は現在の新地本通りになっています。
 梅田新道から桜橋を走る市電が描かれている通りは、現在の国道2号線です。北瓢亭は2号線の一筋南の通り(曽根崎永楽町)に面して建っていました。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、堂島には「毎日新聞社」が大きく描かれています。市電の「曽根崎上四」停留所の南、毎日新聞社の「毎」の字の右辺りが北瓢亭のあった場所で、「曽根崎永楽町」の文字も見えます。天保8年の地図に「芝居」のあったところには、「曽根崎演舞場」の文字が見えます。市電の停留所の名前として「桜橋」や「蜆橋」の橋の名前、「曽根崎」「堂島」「梅田新道」などの地名が残っている点は興味深いです。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、堂島川から北側一帯が白くなっており、北の大火によって焼失した地域であったことが分かります。地図の右側は、明治41年のものですので、焼失前の様子が描かれています。
 右上の昭和7年を見ると、地域一帯は復興が進み市街地が広がっています。堂島の北側にあった蜆川(曽根崎川)は埋め立てられ、川の跡地は堂島の敷地に取り込まれています。国道2号線と御堂筋、四つ橋筋に市電が通っています。2つの筋の中間あたりに「米穀取引所」の文字があります。「米」の字の右側辺りが北瓢亭があった場所です。
 左下の昭和42年を見ると、国道1号線・2号線が(1)(2)と表記され、御堂筋には(25)の表記があります。市電は国道2号線以外は廃止されています。
 右下の平成8年では、地図の右端に新御堂筋が開通しています。地下鉄の路線が茶色の点線で描かれています。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)
北瓢亭があった辺りの現状
近くには「曽根崎川跡の碑」
曽根崎川跡(平成十四年作成)
曽根崎川跡(昭和51年春 大阪市)
隣には蜆橋跡の碑
実際に蜆橋があった場所はここではありません
蜆橋のあった場所には滋賀銀行のビルが
御堂筋に面して建っています
近寄ってみると「しじみはし」の親柱を模しています
側面には「史跡 蜆川跡」の文字があります

 今回は、「浪花百景」の「北瓢亭」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月17日(水)~20日(土)、22日(月)、24日(水)~27日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

10月21日(日)、28日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



10月20日(土)
イベント 狂言

上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
14時~14時40分頃

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00

10月21日(日)
イベント 町家でお茶会

町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時


町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

10月27日(土)
ワークショップ『バランスとんぼを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
各回先着10名、参加費:200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

10月28日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  10月9日・16日・23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
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 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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2018年10月9日火曜日

今週の今昔館(132) 堂じま米市 20181009

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(37)

 今回は、堂島にあった「堂じま米市」をご紹介します。

■堂じま米市(国員画)
 米取引はもと米商人淀屋の自主運営で行われていました。
 諸国米市場の中心的存在であった堂島米市場は、元禄10年(1697)に開発されたばかりの堂島新地に中之島の米市場が移転して成立しました。堂島米相場会所は公的機関として認可され、ここで立てられた相場は全国の基準となり、いつしか「堂島」といえば米相場を意味するようになりました。
 諸国の蔵屋敷に運び込まれた蔵米は、実際には米切手の入札によって仲買に払い下げられる先物取引。早朝火縄に火が点され、夕方水を撒いて消されるまで、仲買のすさまじい雑踏と熱気の中で立会いを行いました。相場を混乱させないようにとの配慮から、米相場の立会い中は役人も市場を通行できず、犯罪人が逃げ込んでも逮捕できませんでした。大阪経済隆盛の主役は米市場にありました。現在、米市場跡の記念碑が立っています。
 錦絵は、仲買人の足元とその様子を眺める人物だけが描かれた面白い図柄となっています。米市場は米切手を取引する市場ですので、現場には実物の米俵はありません。

浪花百景「堂じま米市」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、地図の中央部、堂島と中之島の間に架かる「大江バシ」と「ワタナベバシ」の中間あたり、北岸の堂島に米市場がありました。地図にも大きな文字で記載されています。「八木」に見えますが、「米」です。堂島は、堂島川と蜆川(曽根崎川)に囲まれた文字通り「島」でした。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、堂島川に「大江バシ」と「渡辺橋」が架かり、2つの橋の中間あたり堂島川の北岸に米市場がありました。地図には表示はありません。堂島や中之島には多くの藩の蔵屋敷が林立していました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、堂島と中之島の間に「大江橋」と「渡辺橋」が架かり、その中間の北岸に「米穀取引所」が描かれています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、堂島には「毎日新聞社」が大きく描かれています。その南側に「米穀取引所」の文字が見えます。対岸の中之島には、日本銀行、中央郵便局があります。これらの敷地はもとは各藩の蔵屋敷でした。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、堂島川から北側一帯が白くなっており、北の大火によって焼失した地域であったことが分かります。地図の右側は、明治41年のものですので、焼失前の様子が描かれています。中之島には東西に市電が走っていますが、右側はまだ通っていません。
 右上の昭和7年を見ると、地域一帯は復興が進み市街地が広がっています。堂島の北側にあった蜆川(曽根崎川)は埋め立てられ、川の跡地は堂島の敷地に取り込まれています。2つの橋の中間あたりに「米穀取引所」の文字があります。御堂筋と四つ橋筋、中之島通りに市電が走っています。
 左下の昭和42年を見ると、堂島川の上を阪神高速道路が通っています。市電はすべて廃止されています。
 右下の平成8年では、大江橋と渡辺橋の間に「中之島ガーデンブリッジ」が架かっています。この橋の北詰が米市場のあった場所で、記念碑が建っています。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)
堂島米市場跡記念碑
最近行ってみると
新しいモニュメントの設置工事中
以前あった記念碑は橋の西側に移設
堂島川に架かる「中之島ガーデンブリッジ」
平成2年に架けられた新しい橋です
ガーデンブリッジは歩行者専用です
正面はANAホテル
ガーデンブリッジの北詰
ANAホテルの所に米市場がありました
写真右下に米市場跡の記念碑

 今回は、「浪花百景」の「堂じま米市」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月10日(水)~13日(土)、15日(月)、17日(水)~20日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

10月14日(日)、21日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


10月13日(土)
ワークショップ 『和風マグネットを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
各回先着10名、参加費:300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します


10月14日(日)
町家衆イベント おじゃみ

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

10月20日(土)
イベント 狂言

上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
14時~14時40分頃

町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00

10月21日(日)
イベント 町家でお茶会

町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時


町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  10月9日・16日・23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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