2019年1月8日火曜日

今週の今昔館(145) さくらの宮景 20190108

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(50)

 今回は、「さくらの宮景」をご紹介します。

■さくらの宮景(国員画)
 桜宮の創建については不詳ですが、たびたびの淀川の洪水を受けて社殿が流出、そのたびに移転したようです。当地への遷座は宝暦6年(1756)とされ、桜野という地名にあやかって努めて桜を植え、境内から大川堤まで続く桜の景勝を整えました。
 花の季節には雲か雪かと見間違う程見事な景色だったと伝えられ、境内の前から対岸の川崎・木村堤へ渡しが出され、桜の渡しと呼ばれました。また川を埋めるほどの屋形船が仕立てられて、様々に爛漫の春を楽しみました。川風に運ばれて辺り一帯に馥郁たる香りが広がり、「摂津名所図会大成」は、「浪花において花見随一の勝地といふべし」と記しています。浪花随一の花見の名所は今も変わりません。
 また堤の下に青湾と称される小湾があり、ここの水は大変きれいだったため、茶の湯に最も適すると雅人に愛用されました。

浪花百景「さくらの宮景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 桜宮は、浪花百景のほか多くの文献に取り挙げられています。『摂津名所図会大成』には「当社其初ハ野田の小橋故大和川の堤の字(あざな)を桜野といふ所にありしを後世こゝに迁(まわ)すゆへに旧地の名を以て桜野宮と号せしがいつしか境内のほとりに数百株の桜を植しより今ハ桜の宮と称して花ゆへなづけし如くなる」「浪花において花見第一の勝地なり」とあり、『摂津名所図会』には「この社頭に神木とて桜多し。弥生の盛りには、浪花の騒人ここに来つて幽艶を賞す。淀川の渚なれば、きよらなる花の色、水の面にうつるけしき、塵埃を避けて神慮をすずしめ奉るなり」「咲くからに見るからに花の散るからに」と賞され、文人に愛される桜の名所でした。

摂津名所図会「櫻宮」
大阪市立図書館デジタルアーカイブ

 「浪華の賑ひ」は暁鐘成(あかつきのかねなり)編、松川半山画。幕末期大坂の名所旧跡や、繁華街の風情を記しています。暁鐘成(1793-1860)は、『淀川両岸一覧』や『摂津名所図会大成』をはじめ多くの名所図会を著しています。本書は、『摂津名所図会大成』と内容が重なるところが多いですが、色鮮やかな挿図とともに簡明な説明で大坂の様子が紹介されており、携帯に便利な懐本として刊行されたと思われます。この「櫻宮」の図では、「弥生の盛りには雲と見、雪と疑う光景~実に浪花に於て花見の勝地といふべし」と、花の季節の見事な景色が記されています。

浪華の賑ひ「櫻宮」
大阪市立図書館デジタルアーカイブ


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「天満バシ」の右手(東側)に「野田村」があり、その北側に「大長寺」、さらに北に「櫻ノ宮」があります。対岸の川崎御蔵との間を「源八ワタシ」が結んでいます。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「野田村」と「中野村」の間に「櫻ノ宮」があります。脇を水路が流れていました。対岸には「木村ツツミト云」の文字が見えます。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「泉布観」「三菱精錬所」の対岸に「櫻ノ宮」が描かれています。桜之宮橋の架橋前で、木製の「よどかわばし」が架かっています。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、「桜ノ宮公園」の北側に「桜ノ宮」の文字が見えます。東野田町、中野町の地名も見えます。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、「淀川橋」の北側に「桜宮」の文字が見えます。東野田、中野の地名も見え、農地が拡がるなかに「あみじま」駅があります。ここから関西鉄道の名古屋行直通列車が走っていました。「さくらのみや」駅の北には水源地が描かれています。大阪市の水道発祥の地です。
 右上の昭和4年では、南北に市電が走り網島駅の跡地に「工業大学」が建ち、周辺の市街化が進んでいます。水源地の跡が淀川貨物駅になっています。

明治41年から昭和22年の地形図と現在の空中写真
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。「櫻ノ宮」の文字は見えます。
 右下は最近の空中写真です。大川沿いに河川公園が整備され、その脇に桜宮の緑も写っています。

 現在の櫻宮の状況です。大川の自然堤防上に鳥居、本殿が並び、境内には、江戸時代献納の灯籠や、往来安全の石碑、伊勢神宮の遥拝石などが残っています。
現在の櫻宮の鳥居
櫻宮の本殿
寛政元年献納の灯籠
「往来安全」の石碑
伊勢神宮の遥拝石

 大川河川敷の桜之宮公園に「青湾」の碑があります。文久2年(1862)に建てられたものと伝えられています。

桜之宮公園にある「青湾」の碑
「青湾」の史跡案内板
桜之宮公園の案内図(右が北)

 今回は、「浪花百景」の「さくらの宮景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
 2月22日(金)まで。毎週火曜日は休館日です。


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。

 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。





新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今週のイベント・ワークショップ

1月9日(水)~12日(土)、16日(水)~19日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月13日(日)、14日(祝)、20日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


1月12日(土)
町家衆イベント ワークショップ 水引で小物を作ろう

①13時30分②14時30分
     当日先着 各回10名 材料費200円
※当日12時より8階受付で参加整理券を販売します

1月13日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

1月20日(日)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:笑福亭伯枝、露の棗
14時~15時

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
14:30~中級者以上向け

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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