2019年12月3日火曜日

今週の今昔館(192) 浮瀬(うかむせ) 20191204

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(26)

 今回は「浪華の賑ひ」の「浮瀬(うかむせ)」をご紹介します。

■浮瀬(うかむせ)
 この遊宴の楼は新清水の坂の下にありて、風流の席なり。遙かに西南を見渡せば、海原(わたのはら)ゆきかふ百船(ももふね)の白帆、淡路島山に落ちかかる三日の月、雪のけしきは言うもさらなり。
 庭中には花紅葉の木々、春秋の草々を植ゑて、四時ともに眺めに飽かざる遊観の勝地なり。名にしおふ浮瀬・幾瀬の貝觴(かひさかづき)をはじめ、種々の珍觴(ちんじょう)、また七人猩々(しょうじょう)の大さかずき等を秘蔵す。浪花において、貨食家(りょうりや)の魁たるものなり。
 きのう笠けふ傘の雪見かな 柳亭


浪華の賑ひ「浮瀬」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 浪花百景には、「増井浮瀬夜の雪」があります。

■増井浮瀬夜の雪(芳瀧画)
 浮瀬(うかむせ)は新清水北坂下にあり、門前の松林に囲まれた二階建てを二棟もつ代表的な料亭。秘蔵する貝杯「浮瀬」に因み店の名としました。大きな鮑で作られた浮瀬は鮑の11の穴を塞いだ奇杯で、長曽我部元親の陣羽織で作った服紗に包み込まれ、七合半の酒を盛ることができ、これを飲み干せば名簿に名を留める名誉を得たといわれます。他にも鳴門、幾瀬の銘を付けた貝の名杯があり、浮瀬の大杯は歌舞伎・浄瑠璃のも登場、かの芭蕉翁も死の直前の元禄7年(1694)9月に句会を開いた名店。雪見の酒は風趣の極みであったでしょう。明治20年(1887)頃売却され、まもなく姿を消しました。

浪花百景「増井浮瀬夜の雪」(大阪市立図書館蔵)


 天保年間発行の「浪華名所獨案内」には、「清水」の左(北)に「ウカムセ」の文字が見えます。この地図は東が上に描かれています。

浪華名所獨案内(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」には、安井天神、清水寺の文字があります。浮瀬は、清水寺と大江神社の間に位置していましたが、明治20年ごろに売却され姿を消したとのことで、この地図には描かれていません。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)


 浮瀬があった場所の現在の様子を写真で見てみましょう。

清水寺舞台より北を見る
(テニスコートの辺りが浮瀬のあった場所)
清水坂を下から(左手石垣の上が浮瀬のあった場所)
愛染坂を下から(右手が星光学院)
愛染坂を下から(右手に「浮瀬亭」跡の案内板)
愛染坂を上から(左手に「浮瀬亭」跡の案内板)
料亭「浮瀬亭」跡の案内板
星光学院正門脇の浮瀬の碑


 今回は、「浪華の賑ひ」の「浮瀬」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。


〇次回の企画展は「ちょっといい 昔の暮らし」
2019年12月16日(月)~2020年2月14日(金)

みどころ
・大坂の屋敷の台所を模して特注で制作された特大のミニチュア台所
・当時の家庭雑誌「暮しの手帖」を生活道具とともに紹介
・ダイヤル式電話機など、触って昔の道具を体験できるコーナー

旧八代敏所蔵雛飾り台所ミニチュア(部分)
吸物椀
暮しの手帖
電話(さわってみよう)


〇今週のイベント・ワークショップ

今昔館は毎週火曜日が休館日です。カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201912



12月4日(水)~7日(土)、9日(月)、11日(水)~14日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

12月8日(日)、15日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

12月8日(日)
イベント 狂言

洗練された笑いの芸術をお楽しみください
14時~14時40分
出演:増田浩紀 島田洋海

町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

町家衆イベント ワークショップ『はたきを作ろう』
①13時30分~ ②14時30分~
各回先着10名、参加費300円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します

12月14日(土)
町家衆イベント ワークショップ『はたきを作ろう』

①13時30分~ ②14時30分~
各回先着10名、参加費300円
*当日12時より8階インフォメーションで参加券を販売します


12月15日(日)
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”

江戸時代の町家で聴く、素人落語会です
14時~15時15分
出演:らくてん会

町家衆イベント 紙芝居
昔ながらの紙しばいを町家衆が上演します。
子どもから大人まで楽しんでいただけます。
11時~12時

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


〇貸しギャラリーについて
 大阪くらしの今昔館の企画展示室は、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の貸会場(ギャラリー)として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。今年は9月14日から12月8日まで、書道展・絵画展など様々な作品展が開催されます。
 催し物のご案内はこちらからどうぞ。



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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