2021年9月22日水曜日

今週の今昔館(285) 近代展示室の見どころ(3) 難波 20210922

〇今昔館の近代展示室の見どころ(3) 「大阪市パノラマ地図」

 大阪くらしの今昔館は、展示替えのための臨時休館が終わり、9月18日から開館していますが、天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されています。そこで今回は前回に引き続き近代のフロアの「大阪市パノラマ地図」の見どころをご紹介します。

 さて、早速ですがクイズです。
  下の地図は大阪市パノラマ地図の南海鉄道なんば駅の南側です。地図の中心の赤丸印の場所には、「煙草専売局」の文字が見えます。大正時代にはここに煙草工場がありました。
 A 現在はどうなっているでしょうか?
 B 江戸時代の天保年間には何があったでしょうか?
 C 昭和30年頃には何があったでしょうか?
 D 手前の川は現在どうなっているでしょうか?



 答えは、
A なんばパークス
B 難波御蔵(江戸幕府直轄の米蔵)
C 大阪スタヂアム(大阪球場)。昭和25(1950)年に完成し、プロ野球の南海ホークスが本拠地としていました。
D 手前(西側)の川は難波入堀川(難波新川)で、昭和33(1958)年に埋め立てられました。現在は上部を阪神高速道路が高架で走っています。
 また、東側を走っている鉄道は南海鉄道(現在の南海電気鉄道)です。明治44年に難波~和歌山市間は電化されましたが、大正時代当時は蒸気機関車が牽く客車も走っていたことがわかります。


浪華名所獨案内の難波付近(上が東)
天保8年発行天保新改攝州大阪全圖の難波付近(上が北)

 上の図は天保年間発行の浪華名所獨案内と、天保8年発行の天保新改攝州大阪全圖の難波付近です。
 江戸時代の大坂は、大半が町人地で武家地が少ないまちでした。武家屋敷の多い江戸とは大きく異なっていました。
 大坂は幕府の直轄地であり、大坂城の城主は徳川将軍、大坂には城代が常駐しました。
 いわば大名(藩主)が不在の城下町で、小西来山の俳句「お奉行の 名さへおぼえず とし暮れぬ」でも知られるように、幕府の権威を恐れない自由な気風のまちでした。
 大坂は武士の少ない町で、武家地は奉行所、城代屋敷、蔵、与力・同心の住まいなどに限られていました。

 そのうち、難波御蔵は、享保の大飢饉を機に享保17(1732)年に新たに設置され、翌年に道頓堀川と難波御蔵を結ぶ難波入堀川が開削されました。入堀で汚濁が激しく不衛生だったため、明治に入って鼬川(いたちがわ)まで延長開削されましたが、昭和33(1958)年に埋め立てられました。

 難波御蔵の跡地は、明治37(1904)年にたばこ製造が専売となったことに伴い、煙草専売局工場が建設されました。パノラマ地図に描かれている赤レンガの工場です。

 戦災により壊滅した後に昭和25(1950)年に大阪球場(大阪スタヂアム)が建設され、南海ホークスのホームグラウンドとして利用されました。福岡ダイエーホークスとなった1988年以降は住宅展示場などとして利用され、1998年に解体されました。現在は、再開発されて「なんばパークス」となっています。

 まとまった大きな敷地の少ない大阪の町で、江戸時代の武家地が、様々に用途転用され利用されてきた典型例と言えます。

 第3回大阪検定(2011年度)の1級第21問に以下の問題が出題されました。

問 1950年(昭和25年)、大阪市内で初めての本格的なプロ野球場である大阪球場がミナミに誕生しました。大阪球場が建設された場所は、戦争中、空襲により焼失するまで、何があったでしょう?

 ①軍需工場 ②鉄道工場 ③たばこ工場 ④ビール工場

※答えは③、正答率は63%でした。

 このように、大阪市パノラマ地図を見ながら、「昔は何があったのかな?」「今はどうなっているのかな?」と考えを廻らしてみるのも面白いと思います。


大阪くらしの今昔館近代のフロアの「大阪市パノラマ地図」


 また、今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇企画展「商都慕情Ⅱ‐水のまち大阪を巡る -」が始まりました

 令和3年9月18日(土)~11月14日(日)

 江戸時代、淀川は京都と大坂をつなぐ動脈として、人や物資が往来し、絵画にもよく描かれました。とくに、円山応挙が京都伏見から大坂天満橋までの両岸の光景を描いた絵巻がよく知られています※。この絵巻から昭和初期に大阪の絵師が6つの場面を模写していました。それが庭山耕園とその門人らによる「淀川両岸帖」です。当館はこの作品を2020年に新収蔵しました。収蔵後、本展が初公開となります。
 大坂の市中には堀川が網目のように張り巡らされ、八百八橋と称されました。橋上や舟の上は町民にとって夕涼みや花火見物を楽しむ憩いの場でした。天神祭の船渡御の舞台も大川です。その熱気は江戸の浮世絵師歌川貞秀の錦絵にも描かれています。また、道頓堀の芝居をかける際に、役者が船に乗って市中を巡る「船乗込」も川筋で華やかに行われました。商いの流通や暮らし、そして文化が水とともにあった大坂。本展では大阪くらしの今昔館所蔵の絵画や錦絵を用いて、水都とよばれた大坂の情景を想起します。
※「淀川両岸図巻」公益財団法人アルカンシエール美術財団蔵(本展の出品はございません)

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日 :火曜日

会  場:大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)企画展示室
入館料 :(8階常設展示室の入場料を含む)
     一般400円(団体300円)
     高校生・大学生300円(団体200円)(要学生証提示)
     (注)団体は20名以上
     大阪周遊パスでもご入場いただけます。
     中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料です。(要証明書提示)

【町家と茶室の展示】
 企画展示室内には、江戸時代における大坂の商家座敷の再現や、重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵」の構造模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)など実物大の模型を設置し、2種の建築から住まいと暮らしの様相をお見せします。

淀川両岸帖(部分)庭山耕園他
よど川のすずみ船 菅 楯彦
浪速天満祭 歌川貞秀
『滑稽浪花名所』のうち ざこば魚市 芳豊


〇【住まいのミュージアム20周年記念事業】
 「大阪くらしの今昔館」のバトンを繋ぐ


 「大阪市立住まいのミュージアム」は、大阪の住まいや暮らしの歴史を再現・発信する体験型ミュージアムとして2001年4月に開館し、本年4月に20周年を迎え、これまで延べ540万人を超える方々にご来館いただきました。
 このたびの20周年を記念し、開館から本年3月まで館長を務めた谷直樹先生と、本年4月に館長に就任した増井正哉館長による新旧館長の講演と対談が開催されます。

■日 時:令和3年10月23日(土)13:00~15:20(開場12:30~)
■場 所:大阪市立住まい情報センター3階ホール
■定 員:150名(定員を超えた場合は抽選)
 ※今後の新型コロナウィルス感染症の状況により定員の変更やシンポジウムを中止する場合があります。
■参加費:無料
■主 催:大阪市/大阪市立住まい情報センター

詳しくは、こちらから。
https://www.osaka-angenet.jp/event/117

申し込みは、こちらから。
https://www.osaka-angenet.jp/event/117/entry




〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、9月18日より令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し、茶室の実物大構造模型とともに展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。

・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。今年で開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館を紹介する動画作成プロジェクトが「2021年度都市住宅学会賞・業績賞」を受賞しました

 受賞対象は「歴史博物館から発信する大阪の町家と住文化の魅力-子ども・若者・外国人に町家と住文化を理解してもらうための動画制作プロジェクト-」です。
 この動画制作プロジェクトは、2018年度に申請者らからなる博物館住まい学習研究会が「建築技術教育普及センター」の助成を受け、大阪くらしの今昔館の9階常設展示「商家の賑わい」で撮影・編集し、2019年3月に完成しました。ドイツ人留学生のザビ-ネさんがナビゲートし、今昔館ボランティア「町家衆」の皆さんが江戸時代の住民に扮して出演しています。その後、2019年7月からYouTubeで配信しました。

 大阪くらしの今昔館を紹介する学習ビデオは、「なにわの町並み」、「町家の商い」、「町家のくらしとおもてなし」、「裏長屋のくらし」の4編(それぞれ日本語字幕版と英語字幕版)で構成されています。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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