2021年11月3日水曜日

今週の今昔館(291) 近代展示室の見どころ(9) 大阪駅 20211103

〇今昔館の近代展示室の見どころ(9)「大阪市パノラマ地図」

 大阪くらしの今昔館は、天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されています。そこで前回に引き続き近代のフロアの見どころをご紹介します。今回は、大阪市パノラマ地図の左上に描かれている「大阪駅」をご紹介します。鳥瞰図ですので左上が北になっています。

 下の地図は大阪市パノラマ地図の大阪駅周辺です。地図の中心の赤丸印の場所が当時の大阪梅田停車場の駅舎でした。さて、クイズです。
A 現在はどうなっているでしょうか?
B 江戸時代の天保年間には何があったでしょうか?
C 地図の駅舎は何代目の大阪駅でしょうか?


解答と解説
A サウスゲートビルディング(四代目大阪駅「アクティ大阪」に増築)
B 曽根崎村の田圃、菜の花畑か低湿地帯、すぐ西は梅田墓
C 地図に描かれている駅舎は二代目駅舎。明治34(1901)年から昭和10(1935)年まで利用された。


浪華名所獨案内の梅田付近(上が北)
天保新改攝州大阪全圖の梅田付近(上が北)

 大阪駅は、1874年(明治7年)に大阪~神戸間の鉄道開業とともに開業しました。当時の駅舎はゴシック風の赤煉瓦造り2階建てで、現在の場所より西の大阪中央郵便局があった付近にあり、周辺は民家がわずかにあるだけで田圃が広がっていました。駅のある場所は1889年(明治22年)の市制施行時における大阪市域にも含まれず、1897年(明治30年)まで西成郡曽根崎村に属していました。

明治18年新版大阪細見全図の梅田ステーシヨン

 当初の計画では市街地に近い堂島付近に頭端(ターミナル)式で建設される予定でしたが、曽根崎村の梅田に変更されました。その理由は、将来東へ線路が延伸された際に京都~神戸間の直通運転に都合が良いよう、ターミナル駅のような頭端式を採らず、通過式の駅構造にするためだといわれています。蒸気機関車が走ることから市街地近くでは反対もあったといわれています。
 開業当初、大阪駅は「梅田駅」「梅田ステーション」「梅田すてんしょ」などと呼ばれていましたが、阪神・阪急や貨物駅の梅田駅が開業すると、次第に大阪駅のことを「梅田駅」と呼ぶことはなくなりました。


明治28年大阪市明細図の梅田停車場

 当初は貨物輸送の比重が大きく、水運の便を図るため堂島川から駅の南西まで梅田入堀川(堂島堀割川)が開削されました。しかし、旅客輸送が次第に増大すると入堀のある狭小な駅前では手狭となり、大阪市電の乗り入れ計画に合わせて十分な駅前広場を確保すべく1901(明治34)年7月にゴシック風石造りの二代目駅舎が完成し、最初の駅舎の位置から東の現在地に移転されました。これが、パノラマ地図に描かれている駅舎になります。
 また、パノラマ地図では大阪駅の北側に広い空き地があり「大阪驛構築豫定地」と記されています。このエリアは、大正時代初めまで、中学(現北野高校)、工業学校(現大阪市立大学工学部)、女学(現大手前高校)、金蘭女学などの学校が立地する文教地域でしたが、学校等の移転跡地に1928年(昭和3年)12月1日に梅田駅(貨物駅)が新設され、貨物の取扱いが全面移管されました。梅田入堀川も線路をくぐって北東へ延伸されました。昭和10年の地図には「船溜」と表記されています。

明治44年大阪市街全図の大阪駅周辺
大阪市パノラマ地図の大阪駅北側(大正13年)
最新大大阪市街地図(昭和10年)の大阪駅周辺

 1935年(昭和10年)に二代目駅舎が解体され、仮駅舎が建設されました。1940年(昭和15年)6月に三代目駅舎が2階まで完成し供用が開始されました。当初の予定では5階建てのビルで、中央に5階分の高さの吹き抜けを設け、上層階は1940年東京オリンピックに合わせて鉄道ホテルとして供用される予定でした。1943年(昭和18年)に三代目駅舎(3階建てコンクリート造り)が完成しました。中央の吹き抜け部分を除き、4・5階部分の鉄骨は切断し軍に供出されました。

 その後1983年(昭和58年)4月27日に四代目駅舎となる大阪ターミナルビル「アクティ大阪」が開業しました。さらに、2011年(平成23年)5月4日に五代目駅舎と大阪ステーションシティ(サウスゲートビル、ノースゲートビル)が開業しました。
 大阪駅北側の梅田貨物駅跡地は再開発されて、うめきた1期が完成し、2期工事が進められています。

うめきた2期 完成予想図

 大阪市パノラマ地図はちずぶらりさんから、浪華名所獨案内は二つ井戸津の清さんから、その他の地図は国際日本文化研究センターさんからお借りしました。


 昔の地図を見ながらのまち歩き、古地図を片手に、スマホをお持ちの方はスマホに古地図を取り込んで、いろんな所へちょっと出かけてみませんか?

 スマートフォン(iPhone、アンドロイド)をご利用の方は、「こちずぶらり」というアプリを利用すると、GPS機能によって地図上に現在位置を表示させることができます。まち歩きの際などにその場所に昔は何があったかを現地で確認することができて便利です。

 大阪くらしの今昔館8階の近代のフロアの中央に、大阪市パノラマ地図を拡大して床面に展示しています。パノラマ地図を見ながら、ガリバーになった気分で、「昔は何があったのかな?」「今はどうなっているのかな?」と昔と今を比較して考えを廻らしてみるのも興味深いと思います。
 大阪市パノラマ地図については、こちらに詳しい解説があります。
http://konkon2001.blogspot.jp/2017/10/blog-post_10.html
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2015/08/blog-post_29.html


 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇企画展「商都慕情Ⅱ‐水のまち大阪を巡る -」開催中です。

 11月14日(日)まで、残り少なくなってきました。

 江戸時代、淀川は京都と大坂をつなぐ動脈として、人や物資が往来し、絵画にもよく描かれました。とくに、円山応挙が京都伏見から大坂天満橋までの両岸の光景を描いた絵巻がよく知られています(※)。この絵巻から昭和初期に大阪の絵師が6つの場面を模写していました。それが庭山耕園とその門人らによる「淀川両岸帖」です。当館はこの作品を2020年に新収蔵しました。収蔵後、本展が初公開となります。
 大坂の市中には堀川が網目のように張り巡らされ、八百八橋と称されました。橋上や舟の上は町民にとって夕涼みや花火見物を楽しむ憩いの場でした。天神祭の船渡御の舞台も大川です。その熱気は江戸の浮世絵師歌川貞秀の錦絵にも描かれています。また、道頓堀の芝居をかける際に、役者が船に乗って市中を巡る「船乗込」も川筋で華やかに行われました。商いの流通や暮らし、そして文化が水とともにあった大坂。本展では大阪くらしの今昔館所蔵の絵画や錦絵を用いて、水都とよばれた大坂の情景を想起します。
※「淀川両岸図巻」公益財団法人アルカンシエール美術財団蔵(本展の出品はございません)

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日 :火曜日

会  場:大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)企画展示室
入館料 :(8階常設展示室の入場料を含む)
     一般400円(団体300円)
     高校生・大学生300円(団体200円)(要学生証提示)
     (注)団体は20名以上
     大阪周遊パスでもご入場いただけます。
     中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料です。(要証明書提示)

【町家と茶室の展示】
 企画展示室内には、江戸時代における大坂の商家座敷の再現や、重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵」の構造模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)など実物大の模型を設置し、2種の建築から住まいと暮らしの様相をお見せします。

淀川両岸帖(部分)庭山耕園他
よど川のすずみ船 菅 楯彦
浪速天満祭 歌川貞秀
『滑稽浪花名所』のうち ざこば魚市 芳豊


〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、9月18日より令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し、茶室の実物大構造模型とともに展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。今年で開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館を紹介する動画作成プロジェクトが「2021年度都市住宅学会賞・業績賞」を受賞しました

 受賞対象は「歴史博物館から発信する大阪の町家と住文化の魅力-子ども・若者・外国人に町家と住文化を理解してもらうための動画制作プロジェクト-」です。
 この動画制作プロジェクトは、2018年度に申請者らからなる博物館住まい学習研究会が「建築技術教育普及センター」の助成を受け、大阪くらしの今昔館の9階常設展示「商家の賑わい」で撮影・編集し、2019年3月に完成しました。ドイツ人留学生のザビ-ネさんがナビゲートし、今昔館ボランティア「町家衆」の皆さんが江戸時代の住民に扮して出演しています。その後、2019年7月からYouTubeで配信しました。

 大阪くらしの今昔館を紹介する学習ビデオは、「なにわの町並み」、「町家の商い」、「町家のくらしとおもてなし」、「裏長屋のくらし」の4編(それぞれ日本語字幕版と英語字幕版)で構成されています。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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