2021年12月1日水曜日

今週の今昔館(295) 近代展示室の見どころ(13) 市民館 20211201

〇今昔館の近代展示室の見どころ(13)「大阪市パノラマ地図」

 大阪くらしの今昔館は、天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されています。前回に引き続き近代のフロアの見どころをご紹介します。

 今回は、大阪市パノラマ地図の市民館をご紹介します。鳥瞰図ですので左上が北になっています。地図の上部の「豊」は、豊崎町の「豊」です。

 下の地図は大阪市パノラマ地図の左上の端の方に描かれている市民館周辺を拡大したものです。さて、クイズです。
A 市民館は現在はどうなっているでしょうか?
B 江戸時代の天保年間には何があったでしょうか?
C 交差点から左へ伸びている鉄道は何?
D 市電廃止の後にできた地下鉄は何線と何線?



解答と解説
A 住まい情報センタービル(大阪市立住まい情報センター、大阪くらしの今昔館、三井住友銀行天六支店等)
B 天神橋筋の北のはずれの農地等
C 阪神電車の北大阪線。福島区の野田まで伸びていました。
D 地下鉄谷町線と堺筋線。堺筋線には阪急千里線が乗り入れているので、交通の便のいい場所です。

浪華名所獨案内の天神橋筋付近(上が北)
天保新改攝州大阪全圖の天神橋筋付近(上が北)
實地踏測大阪市街圖(大正14年)の天神橋筋六丁目付近
明治41年・昭和4年・平成7年の地形図、最近の航空写真の天六付近
(今昔マップ3)

 天神橋筋六丁目付近を地図で見ると、江戸時代は天神橋から天神橋筋を北へ進むと寺町があり、その北側には与力・同心の住まいがありました。市街地はこの辺りまでで、これより北は亀岡街道が通る農村でした。明治時代になって市街地が北へ広がり、明治41年の地図では天神橋筋七丁目付近まで、昭和4年の地図では、長柄墓地を除いてびっしりと市街地化しています。市電網や新京阪電車、阪神電車の北大阪線も通っています。

 大正10年(1921年)に天六の交差点の南東に大阪市立市民館(のちに北市民館)が建設されました。北市民館はツタで覆われていました。このツタは、初代の志賀館長が淀川善燐館の館長S・F・モランから贈られたツタで「愛のツタ」と呼ばれていました。昭和57年(1982年)12月に閉館を迎えるまで62年間にわたって、大阪ばかりでなく全国の社会福祉界に歴史的シンボルとして存在しました。

 平成11年(1999年)に北市民館、北保育所、三井住友銀行天六支店の敷地を一体に利用して住まい情報センタービルが竣工しました。民間と公共の合築のビルで、地下1階で地下鉄・阪急電車の天神橋筋六丁目駅と直結しています。11月6日には住まい情報センター(住情報プラザ)がオープンしました。

 その後、ミュージアム内の町家の建設や展示の工事が進められ、平成13年(2001年)4月26日に大阪市立住まいのミュージアムが開館しました。翌年、愛称として「大阪くらしの今昔館」が使用されるようになりました。今昔館は今年(2021年)4月に開館20周年を迎えました。

北市民館
蔦に覆われた北市民館

 新京阪鉄道が完成させた天神橋駅(現天神橋筋六丁目駅)の駅舎(後の「天六阪急ビル」:2010年に解体)はアメリカのパシフィック電鉄などのインターアーバンのターミナルに範を取った、プラットホームを2階に設ける電鉄駅内蔵型高層ビルの日本における嚆矢となる、当時としては破格の高層建築物でした。このビルと、ここから新淀川橋梁直前まで続く鉄筋コンクリート造の高架橋のコンセプトや基本設計は、以後日本で開業することになる第2世代の都市間高速電車群の路線計画に多大な影響を与えました。

 また、京都側では地下線によって市内に乗り入れる予定でしたが、工事には時間と多大な費用を要すること、そして昭和天皇即位大典が京都御所で催されることになっていたことから、暫定的に市の外れ、当時葛野郡西院村(1931年に京都市右京区へ編入)に駅を設置し、ここから京都市電・市バスなどで市街地へアクセスさせることにしました。

 1925年(大正14年)10月15日 天神橋~淡路間を開業させ、1928年(昭和3年)に、天神橋~西院間を開業させましたが、ほどなく1930年(昭和5年)には京阪に吸収合併されました。(以上ウィキペディアより)

 大正14年発行の實地踏測大阪市街圖には新京阪の天神橋駅や線路が書かれていますが、大正13年1月発行の大阪市パノラマ地図には、工事はすでに始まっていたと思われますが、わずかの時間差のため描かれていません。

新京阪鉄道天神橋ビル


 昔の地図を見ながらのまち歩き、古地図を片手に、スマホをお持ちの方はスマホに古地図を取り込んで、いろんな所へちょっと出かけてみませんか?

 スマートフォン(iPhone、アンドロイド)をご利用の方は、「こちずぶらり」というアプリを利用すると、GPS機能によって地図上に現在位置を表示させることができます。まち歩きの際などにその場所に昔は何があったかを現地で確認することができて便利です。
 大阪くらしの今昔館8階の近代のフロアの中央に、大阪市パノラマ地図を拡大して床面に展示しています。パノラマ地図を見ながら、「昔は何があったのかな?」「今はどうなっているのかな?」と昔と今を比較して考えを廻らしてみるのも興味深いと思います。

 大阪市パノラマ地図については、こちらに詳しい解説があります。
http://konkon2001.blogspot.jp/2017/10/blog-post_10.html
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2015/08/blog-post_29.html


 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇企画展「大工頭中井家伝来 茶室起こし絵図展」開催中です

 2021年11月19日(金)〜2022年1月16日(日)

 わびの造形を極限にまでつきつめた草庵風茶室、それを書院にもちこみ洗練させた数寄屋風書院。いずれも現在の和室の原点とされています。本展覧会は、そうした茶室と数寄屋を、江戸時代の大工の手になる紙の建築模型「起こし絵図」によって紹介します。出品作品は、徳川幕府の京都大工頭として活躍した中井家に伝来したもので、国の重要文化財に指定されています(中井正知氏・中井正純氏蔵)。日本を代表する茶室、妙喜庵「待庵」、大徳寺龍光院「密庵」、大徳寺孤篷庵「忘筌」、大徳寺真珠庵「庭玉軒」や、現在は失われてしまった幻の茶室の「起こし絵図」も含まれています。同時に展示する茶室「蓑庵」(大徳寺玉林院・重要文化財)の実物大模型(公益財団法人 竹中大工道具館蔵)と併せて、茶室と数寄屋の魅力をご堪能ください。

入館料 :(8階常設展示室の入場料を含む)
     一般4 0 0円(団体3 0 0円)
     高校生・大学生3 0 0円(団体2 0 0円)(要学生証提示)
     (注)団体は2 0名以上
     大阪周遊パスでもご入場いただけます。
     中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内在住の6 5歳以上の方は無料です。(要証明書提示)

【特別展関連講演会のご案内】
※何れの講演会も令和3年10月1日より募集を開始します。

講演会①(終了しました)
開催日:令和3年11月23日(火・祝)
◆中井家本「茶室起こし絵図」の建築史的価値(谷直樹氏/大阪くらしの今昔館前館長・大阪市立大学名誉教授)
◆「茶室起こし絵図」の保存修理(坂田さとこ氏/㊑坂田墨珠堂代表取締役)

詳しくはこちら
https://www.osaka-angenet.jp/event/145

講演会②
開催日: 令和3年12月25日(土)
◆数寄大名小堀遠州と大工頭中井大和守(谷直樹氏/前出)
◆大徳寺塔頭玉林院の茶室「蓑庵」と牌堂「南明庵」の建築にみる大工の技ー数寄屋大工と堂宮大工の協働ー(日向進氏/京都工芸繊維大学名誉教授)

詳しくはこちら
https://www.osaka-angenet.jp/event/146

大徳寺真珠庵茶室「庭玉軒」(起こし絵図)
重要文化財/中井正知氏・中井正純氏蔵
茶室「蓑庵」実物大模型
(公財)竹中大工道具館蔵
小堀遠州自筆書状(中井大和守宛)
重要文化財/中井正知氏・中井正純氏蔵
千利休画像(土佐光芳筆)
大阪城天守閣蔵


〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、9月18日より令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し、茶室の実物大構造模型とともに展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。今年で開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は開館していますが、イベント・ワークショップ等の開催は中止しています。

 イベント・ワークショップおよびボランティアによる展示解説(町家衆による町家ツアー)等は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、当面の間 開催を中止いたします。

 開催を楽しみにしてくださった皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご理解をいただきますようお願いいたします。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf





 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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