2022年6月29日水曜日

今週の今昔館(325) 浪花風景十二月 水無月 名物天神まつり 20220629

〇今昔館の館蔵品紹介「浪花風景十二月 水無月 名物天神まつり」
 今回は、大坂の風景を12ヶ月の月別に描いた二代長谷川貞信(はせがわさだのぶ)による画帖「浪花風景十二月」から「水無月 名物天神まつり」をご紹介します。

 12ヶ月の月ごとの行事や風俗を主題として描く「月次絵」は、古くから屏風や襖絵、巻子などいろいろな形式で描かれてきました。
 今回紹介する画帖「浪花風景十二月」も、画帳の形式で1枚に1月づつ、江戸時代の大坂を象徴する景色や名所を季節感を織り交ぜながら描いています。
 二代長谷川貞信(にだいはせがわさだのぶ)の肉筆で、二代貞信は江戸時代から昭和初期の変化に富んだ時代の様子を書き残した浮世絵師として知られています。

 今昔館には同じく二代貞信が描き、本画帖と同じ寸法かつ類似の表装で仕立てられた「浪花風俗十二月」も所蔵されており、2つの画帖は「対」もしくは「シリーズ」として製作されたことがうかがえます。

 本作品が描かれたのは貞信の最晩年の昭和14年(1939)ですが、描かれている様子は江戸時代の風景のため、本作は実像を見ながら描いているのではなく回顧して描いている点に留意する必要があります。しかし江戸時代の後期の大坂に生まれ、古くからの行事や風景に親しんで育った二代貞信の描写は、大阪のかつての風景を探る上で一定の信頼性があると考えられます。

■浪花風景十二月 水無月 名物天神まつり
 天神祭は大阪天満宮の夏祭りである。年に一度、7月25日(旧暦6月25日)に御鳳輦が氏地を巡行するのを祝し、「講」が行列を仕立てて「陸渡御」を行う。のちに御鳳輦を奉安した船を中心に供奉船が伴って、難波橋から戎島の御旅所へと往復する「船渡御」が続く。御旅所周辺の氏子が仕立て、大きな人形を飾った「御迎船」も加わり、豪華絢爛な賑わいであった。幕末の動乱の時代や戦中には祭りの中止や、地盤沈下による航行ルートの変更などもありつつ、現在も大阪を代表する大祭として続いている。先頭に飾った「御迎え人形」のうち17体は大阪天満宮に保管され、現在は当館に寄託されている。
(大阪くらしの今昔館研究紀要17号掲載の、学芸員服部麻衣さんの論文『資料紹介 二代長谷川貞信 「浪花風景十二月」』より)


浪花風景十二月 水無月 名物天神まつり
(大阪くらしの今昔館蔵)


〇企画展「漆造形の旗手 栗本夏樹の世界」開催中です

 2022年4月16日(土)〜2022年7月3日(日)
 会期は残り僅かとなりました。

 天然の塗料である漆は、古くから日用品や調度、建築装飾などに多用され、その独特な美観でもって、日本の伝統的な住まいやくらしの中に彩りを添えてきました。大阪出身の造形作家である栗本夏樹は、日本人の生活文化と密接に関わってきた漆という素材を、新たな生命を吹き込む神聖な存在と捉え、現代の生活空間を飾る様々な作品へと昇華してきました。栗本が漆を塗る対象は流木や樹皮、石などの自然物をはじめ、使用されなくなった紙管や自動車のボンネットなどの人工物にも及びます。1994年には大阪南港にあるアジア太平洋トレードセンターで行われたモニュメント制作の指名コンペティションに参加。この時に選出された“アジアの中の私”は、1996年のおおさかパブリックアート賞を受賞し、これを機にその活躍の場は公的な空間に置かれる造形物にまで広がりました。

 本展では立体、平面、器物を中心とした栗本の過去から現在に至るまでの代表的な作品を一堂に集め、栗本が取り入れてきた表現の移り変わりを概観することができます。長い歴史の中で育まれてきた伝統的な美を継承しつつも、新たな発見に満ちた漆造形の世界をご覧ください。

◇ギャラリートーク◇
 4/23(土)・5/28(土)・ 6/25(土)
 /8階企画展示室にて14時から約1時間(申込不要)
 ※入館チケットが必要です
 ※状況により人数制限をする場合があります




〇イベントのご案内
・七夕の笹飾り
7月 2日 (土曜日)⋅10:00~17:00
7月 3日 (日曜日)⋅10:00~17:00
7月 7日 (木曜日)⋅10:00~17:00
ショップスペースで笹飾りを展示し、来館者に短冊を書いていただくイベントを実施します。


〇「2022年度 建築設計展 第63回全国大学・高専卒業設計展示会」(7/7~7/10開催)のお知らせ
全国の大学及び高等専門学校の卒業設計優秀作を展示する「2022年度 建築設計展 第63回全国大学・高専卒業設計展示会」を7月7日(木)~10日(日)の4日間、当館企画展示室にて開催します。
本展開催期間中の入館料は以下のとおり変更になります。
●常設展:一般、高大生 200円
●企画展:一般、高大生 無料
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/topic/260000401
※開催準備のため、7月4日(月)~6日(水)は、臨時休館となります。



〇「明治後期~昭和初期にかけてのレトロな”パッケージデザイン”ミニ展示」を開催!(~7月末迄)
明治後期から大正、昭和初期にかけて、国内で販売されていた化粧品や石鹸類、お菓子などパッケージのミニ展示を開催します。これらパッケージデザインは、アール・ヌーヴォーやアール・デコなど、当時の西洋様式の影響を受けたものが多く、舶来品の模倣に近いものや、西洋様式をベースにうまく日本風にアレンジした和洋折衷の優美な意匠が多く残されています。この期間限りの展示ですので、この機会にどうぞご覧ください。
●とき:令和4年6月15日(水)~7月末迄 10時~17時(入館は16時30分まで)
●ところ:8階常設展示室内
●展示:佐野宏明氏所蔵品展示
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/topic/260000416


〇天井改修工事の実施に伴う一部展示室等の閉鎖のお知らせ

 大阪くらしの今昔館から重要なお知らせです。
 天井改修工事の実施に伴い、令和4年秋頃(予定)までの約1年間、9階常設展示室および10階展望フロアが閉鎖されますので、ご注意ください。


・9階、10階の閉鎖期間中は8階企画展示室に町家座敷を実物大で再現し展示します。
・8階の吹抜け部分に大型映像コーナーを新設し、江戸時代の大坂の町なみと天保年間の人々の暮らしを描いた動画をご覧いただけます。


・天井改修工事期間中の入館料
8階常設展と企画展をご覧いただけます。
 一般   400円  団体(20名以上)300円
 高・大生 300円  団体(20名以上)200円 *要学生証提示

【年間パスポート】
現在年間パスポートは販売を休止しております。

【年間パスポートをお持ちの方へ】
天井改修工事期間を含む年間パスポートをお持ちの方は有効期限を延長いたします。インフォメーションにて手続きをいたしますので、次回ご来館の際にご提示ください。



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo

 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画(全4編)の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be




〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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