2022年12月14日水曜日

今週の今昔館(349)江戸時代のフロアの見どころ(4) 20221214

〇江戸時代のフロアの見どころ(4)

 10月29日から全面開館している「大阪市立住まいのミュージアム(愛称:大阪くらしの今昔館、以下「今昔館」という)」の江戸時代のフロアの見どころをシリーズで紹介しています。今回は、薬屋の西隣の「町会所」をご紹介します。

 町会所は、町内に住む家持・家守が定期的に寄り合い、町の運営について話し合うための町の共有施設です。屋根の上にそびえる火の見櫓が特徴で、外観は『守貞謾稿』に描かれた会所屋敷をもとにして再現されています。

町会所の外観
町会所の外観
『守貞謾稿』に描かれている会所屋敷
町会所の外観(入口脇には町内用水)
梯子には「町役人の外上るべからず」
町会所の外観(地蔵さんの祠)

 町会所の入り口は「引き込み大戸」。引き込み式の大戸で、表側に板戸、内側に格子戸がたてられ、ともに潜り戸が設けられています。
 板戸の裏には「枢(くろろ)」が装置されています。戸締りのための仕掛けで、現代のドアチェーンの役割を果たしていました。
引き込み大戸の手前に格子戸
引き込み大戸(左)と格子戸(右)

 内部には、寄り合いの場となる座敷には置き床を備え、玄関には舞良戸(まいらど)をたて、式台が設けられていました。

座敷の置き床
玄関の式台と舞良戸
玄関脇の表の間

 町会所には町奉行所・惣会所から様々な触れや通達がもたらされます。町代は町会所でこれらの処理を行いました。
 町会所には、町運営に関わる文書が保管されます。町式目、家持借家人人別帳、水帳(土地台帳)とその付図をはじめとして、勘定仕法・触書など多岐に及びます。


 大坂町三丁目全体における町の規模と人口構成は、宅地は26筆、家持は18戸、150人(家族数67人、奉公人83人)、借家人は103戸、423人(家族数345人、奉公人78人)、合計121戸、573人としています。
 このうち、展示場で実物大に再現した西側部分は、宅地は7筆、家持は5戸(家族数26人、奉公人18人)、借家人は7戸(家族数19人、奉公人6人、裏長屋の1戸は空き家)、町中会所屋敷1戸(町代1人、下役2人)となっています。

大坂町三丁目全体と展示場での再現部分

 町会所の敷地は「町中持」すなわち町の共有財産であり、町役が詰めて町の事務を取り扱い、土地台帳や町の文書を管理し、さらに住人が寄合を持つというコミュニティ施設でした。
 町会所の敷地には、会所屋敷のほかに、表借家(2戸:本屋と人形屋)や裏長屋(4戸)も建てられており、町内が借家経営を行っていました。また、路地の奥には町内の住人から篤い信仰を集めている祠(安住大明神)があります。そのほか、表側の道路(通りと筋)や背割り下水、木戸門や路上の施設も町が維持管理しました。

路地の奥には祠
玄関脇には町内用水

 町会所には町代が1人で住んで、建物の管理をしていました。昼間は会所の表の間に下役2人が詰め、町年寄りも定期的に訪れました。毎月二日には、「二日寄合」と称して町内の家持による会議が開かれますが、このときには奥の座敷が使用されました。


 今回は、大坂町三丁目の木戸門を入って表通り(町通り)の右側、奥から2軒目の町会所をご紹介しました。




〇今昔館は10月29日から全面開館しています

 天井改修工事にともない閉鎖していた9階常設展室及び10階展望フロアが令和4年10月29日(土)から再開されています。

●入場料変更のお知らせ

令和4年10月29日(土)から通常料金になります

【一 般】600円(団体500円)
【高校生・大学生】300円(団体200円)

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)


〇企画展「なにわを語る 明治・大正・昭和の絵葉書」開催中です

 12月18日(日)まで。残りわずかです。

 日本の郵便制度は明治4年(1871)に始まり、明治6年(1873)には国内初となる官製葉書が発行されました。その後、明治33年(1900)に私製絵葉書の使用が認められると、風景や美人を題材にした絵葉書が人気を博し、各地で絵葉書専門店が登場するなど、人々の間に新たな大衆文化の1つとして浸透してゆきました。

 国内における絵葉書文化が花開くのと時を同じくして、大阪では明治36年(1903)の第五回内国勧業博覧会をはじめ、都市の近代化や大大阪時代の到来を象徴する絵葉書が次々に発行されたほか、作家たちによる「なにわ」の風俗を扱った芸術性の高い絵葉書なども登場し、大流行しました。

 本展では明治から大正、昭和にかけて発行された大阪ゆかりの絵葉書にスポットをあて、時代とともに移り変わる街の風景や建築、人々の暮らしや文化の醸成、趣味人たちの交流などを幅広く紹介します。絵葉書ならではの多様なジャンル、ユニークなデザイン、巧みな技法によって表現された魅力あふれる大阪の姿をお楽しみください。

 なお、本展は今年で創立20周年を迎える日本絵葉書会との共同開催展です。





〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。昨年、開館20周年を迎えました。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画はこちらからどうぞ。
 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/@user-hm7hq2uu4o/videos
 https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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