2023年1月6日金曜日

今週の今昔館(352) 江戸時代のフロアの見どころ(5) 20230106

新年あけましておめでとうございます。本年も大阪くらしの今昔館をよろしくお願いいたします。今昔館は、新年1月3日から開館しています。


〇江戸時代のフロアの見どころ(5)

 昨年10月29日から全面開館している「大阪市立住まいのミュージアム(愛称:大阪くらしの今昔館、以下「今昔館」という)」の江戸時代のフロアの見どころをシリーズで紹介しています。今回は、町会所の西隣の「本屋と人形屋」をご紹介します。

 「本屋と人形屋」は、町会所の敷地に建つ2戸建ての表長屋で、町が経営している借家です。

 表長屋の外観。江戸時代の大坂の商家は京都と比べると長屋建てが多かったとされますが、借家の比率が高かった大坂では、表通りに面しても長屋建ての町家が建てられました。表長屋が連なる町並みは大坂らしい都市景観でした。
 建物の内部は、借家人が業種に合わせて造作しました。「裸貸し(はだかがし)」と呼ばれ、スケルトン賃貸の原形とも言えます。

手前から、人形屋、本屋、町会所、合薬屋
手前から、本屋、人形屋、風呂屋

 大坂の平均的な町家は、間口が二間半以上で通り庭と呼ばれる土間が表から裏まで通っていました。通り庭はさらに中戸によって表の店庭と奥の台所庭に二分され、台所庭にはへっつい(竃)・走り(流し)・井戸などが置かれました。通り庭に沿って、表から店の間・中の間・座敷などの居室が並びます。

表長屋の平面図と断面図

 町家の規模が大きくなると、表と奥の二つの棟に分けて建てられるようになり、表屋造と呼ばれます。店の表部分(表棟)と奥寄りの台所・座敷部分(奥棟)に分かれ、両者は玄関で接続されます。また、通風や採光を配慮して、玄関の前後には中庭が配置されます。以前にご紹介した合薬屋がこの形式です。

表屋造の町家

 本屋の表構え。書肆(ほんや)では、新刊案内の広告を張り出す傍らで、古本の販売も行われました。大坂では芝居人気に支えられた役者絵も書肆で売り出されました。ばったり床几の上には、看板も兼ねた出し箱が置かれました。
 江戸時代の大坂には新刊本や古本を商う一方で、版元として活躍する書肆も多く、大坂は情報の発信地でした。

本屋

 町会所の西隣の二戸一の表長屋の住人は、向かって左側の本屋は「文海堂」の看板を掛け、主人は吉文字屋歌助で家族は四人、奉公人は二人です。


 人形屋の表構え。店先だけでなく、表の雨戸仕舞にも売り物の「お面」が飾られています。
 人形屋の店の奥は、今昔館オープン時はミュージアムショップでした。その後、コロナ禍になるまでは、着物体験の着付けスペースとして使用していました。現在は、展示コーナーとなっています。

人形屋

 向かって右側に店を出している人形屋の主は鯛屋作右衛門で、家族は二人、奉公人は一人です。



 今回は、町会所の西隣に建つ表長屋である本屋と人形屋をご紹介しました。




〇今昔館は昨年10月29日から全面開館しています

 天井改修工事にともない閉鎖していた9階常設展室及び10階展望フロアが令和4年10月29日(土)から再開されています。

●入場料変更のお知らせ

令和4年10月29日(土)から通常料金になります

【一 般】600円(団体500円)
【高校生・大学生】300円(団体200円)

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)


〇企画展「ユニーク家電大行進!! 昭和レトロ家電®-マスダコレクション展-」開催中です

2022年12月24日(土)〜2023年2月19日(日)

昭和30年代のレトロ家電に魅せられ、20年以上にわたって収集した増田健一氏の貴重なコレクションを3年ぶりに大公開します。7回目となる今回はマスダコレクションの中からとっておきのユニーク家電約150点をずらーっと展示。なんでも電化してみようという時代ならではの驚きのアイデア家電や、宇宙ブームなど時代を反映した家電、デザインが特徴的な家電などなど、たっぷりとお楽しみください。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2021年に開館20周年を迎えました。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画はこちらからどうぞ。
 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/@user-hm7hq2uu4o/videos
 https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館のオンラインまなびプログラム




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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