2025年11月21日金曜日

今週の今昔館(484) 大大阪時代のまちづくり(8) 御堂筋の淀屋橋付近 20251121

〇大阪くらしの今昔館を応援する一個人による非公式ブログです。

〇大大阪時代のまちづくり(8)
 今年2025年は、大阪市の第二次市域拡張から100周年に当たります。
 第二次市域拡張直前である1924年(大正13年)発行の大阪市パノラマ地図と、その12年後1936年(昭和11年)発行の大大阪観光地図などの古地図を見比べながら、大大阪時代の大阪のまちづくりを振り返ります。今回は御堂筋の淀屋橋付近です。

 御堂筋は元々は、北御堂と南御堂の前を結ぶ全長1.3km幅6mほどの狭く短い道で、数ある裏通りの一つにすぎませんでした。これは、大阪の町が大阪城を中心に東西方向に発展を続け、交通に関しても東西軸である「通り」が重視されてきたためです。
 その御堂筋に転機が訪れたのが、1921年(大正10年)のこと。梅田(旧国鉄大阪駅)と難波(南海鉄道難波駅)に駅ができたことによって、「南北軸」の必要性が高まったことから、第7代大阪市長關一(せき はじめ)により「都市大改造計画」が打ち出されました。
 そのメイン事業が「御堂筋の拡幅工事」でした。工事費用の捻出、軟弱な地盤などの大きな課題がありましたが、1926年(大正15年)に始まった御堂筋拡張工事は、北から南へと進められ、11年後の1937年(昭和12年)5月11日に全長4km幅44mのメインストリートが完成しました。
 中央部を高速車道、その両側を緩速車道、外側を歩道として整備し、その間には4列の並木が植えられました。当初は、大阪駅前~大江橋まではプラタナス、大江橋以南はイチョウでしたが、現在では、すべてがイチョウに植え替えられ、「御堂筋のイチョウ並木」として知られています。
 現在、御堂筋の緩速車道を廃止し歩道化する事業が南側から進められています。
 今回はまず、御堂筋の淀屋橋周辺を取り上げます。

 大阪市パノラマ地図には、拡幅前の状況が描かれています。黄色の線が地下鉄の計画線で淀屋橋南詰に駅が作られる計画です。
 梅田から走ってきた市電は、淀屋橋南詰で東に折れて北浜へと向かっていました。
大阪市パノラマ地図の淀屋橋付近(国際日本文化研究センター蔵)

 大大阪観光地図には、完成した地下鉄と御堂筋が描かれています。
大大阪観光地図の淀屋橋付近(国際日本文化研究センター蔵)

 御堂筋の完成前後の淀屋橋南詰の風景です。見比べると、大きく拡幅されたことがよくわかります。
御堂筋の開通前と開通後(写真で見る大阪市100年より)

 御堂筋の拡幅に合わせて、中之島の南北、堂島川と土佐堀川に架かる大江橋と淀屋橋が架け替えられました。橋の設計にあたっては、当時この分野では前例のない意匠設計の懸賞募集(デザイン・コンペ)が大正13年に行なわれました。
 設計条件として、周囲の建物や背景と調和するデザインとすることが求められていて、橋を都市の美観要素として捉え、「水都大阪」の都市景観を強く意識していたことが注目されます。1等に当選した大谷龍雄案は、選評によれば「南欧中世紀の気分ある近代式を用い、その根底においては東洋趣味の横溢せる…(中略)…全体の形極めて端正剛健、その形状の比例最も洗練を経たり。その主要材料たるコンクリートを様式の上に表現せんとする作者苦心の跡、最も注意すべし」とあります。この計画案に手が加えられ、実施計画が作成されました。
 2つの橋は1935年(昭和10年)に完成し、2008年には国の重要文化財に指定されています。

工事中の淀屋橋(写真で見る大阪市100年より)
工事中の大江橋(写真で見る大阪市100年より)
現在の淀屋橋
現在の大江橋

 御堂筋の拡幅にあたっては、淀屋橋筋を東西に同じ幅で拡げるのではなく、東側に大きく拡幅されました。その結果、御堂筋の東側の街区は西側に比べて奥行きの浅い平べったい形になっています。淀屋橋南詰で御堂筋の東西で進められている2つの再開発ビルや、その南側の日本生命ビルと淀屋橋odonaを見比べると、敷地の奥行きのちがいがよくわかります。
現在の淀屋橋付近(地図マピオンより)
大阪堂島浜タワーから見た御堂筋

 以下に、関西時層地図に収録されている地形図を時系列に並べてみました。御堂筋沿道の変遷をご覧ください。

明治中期の陸地測量部仮製地図の淀屋橋付近(明治20年頃・約135年前)
(関西時層地図より)
明治後期の陸地測量部地図の淀屋橋付近(明治40年頃・約115年前)
(関西時層地図より)
昭和初期の1万分の1地形図の淀屋橋付近(約95年前)
(関西時層地図より)
昭和中期の1万分の1地形図の淀屋橋付近(約70年前)
(関西時層地図より)
昭和後期の1万分の1地形図の淀屋橋付近(約40年前)
(関西時層地図より)
地理院地図の淀屋橋付近(関西時層地図より)



〇企画展「大阪の商人が支えた芸術文化-浅野家伝来資料より-」開催中です

 2026年1月18日(日)まで

 江戸時代の大阪では多くの商家が季節や行事にあわせた掛軸を床の間に飾り、住まいの空間を様々に演出していました。当時の大阪では特に文人書画や四条派の作品が好まれ、名品を鑑賞しあう茶会が盛んに開かれていました。茶会には船場の旦那衆や摂河泉の富裕層が参加し、彼らの交流を通じて大阪を中心とした一大文化圏が形成されていました。また、船場や摂河泉の富裕層は絵師などのパトロンとして大阪の文化を支える存在でもありました。

 そうした商家の一つであった浅野家は江戸時代の天保9年(1838)に古市村大屋久兵衛より絞油道具と納屋を買い取り、油屋として開業しました。天保の改革から明治時代の初頭にかけて有力な商家として業績を伸ばす一方、将来的な綿作や菜種作の減少と米作の拡大を見越し、明治16年(1883)には大阪府より酒造営業の鑑札を受け、以降は蔵元としても活躍しました。

 本展で紹介する浅野家伝来の掛軸は、江戸時代の後期に京阪で活躍した絵師や書家の手によるもので、揃いの大きさと表具で仕立てられていることから、その多くが当時の浅野家当主の依頼により制作されたとみられます。またこれらの掛軸は単に同時代の作家による作品群ではなく、師弟の繋がりや文化人たちの幅広い交流の中で形成されたことが読み取れます。江戸時代が終わりへと向かう動乱期に大阪の芸術文化を支え続けた商家秘蔵のコレクションをご覧ください。書道にご興味のある方にもおすすめします。

会期:2025年11月8日(土)~2026年1月18日(日)
休館日:毎週火曜日、年末年始【12月29日(月)~1月3日(土)】
入館料:500円(企画展のみ)
常設展+企画展 一般1000円(団体900円)
高・大生700円(団体600円)※要学生証原本提示
※中学生以下、障がい者手帳・ミライロID等持参者(介護者1名含む)、大阪市内在住65歳以上は無料(要証明書原本提示)
会場:大阪くらしの今昔館企画展示室


〇ワークショップ・イベントのご案内
 和文化体験のワークショップやパフォーマンスです。どうぞお楽しみください。
 春夏秋冬の季節にちなんだ年中行事、町家の屋敷で行われる乙女文楽、狂言や上方舞、つまみ細工や折り紙のワークショップ、そして表通りでは町家の案内人に出会うこともあります。これらの催し物にはボランティア「町家衆」が大勢参加しています。
 ※参加には入館料(常設展)が必要です。開催日時は予告なく変更することがあります。事前にお確かめください。
 *スケジュール表はこちら≫https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/event
 定員がある当日先着イベントは8階受付で12時から参加券を発行しています。


〇入場料のお知らせ
【常設展】一般 600円(団体500円)
     高校生・大学生 300円(団体200円)
【企画展】展覧会ごとに料金が異なります。
     今回の企画展は500円です。
     詳しくはホームページをご覧ください。
     ※常設展と企画展のお得なセット券も販売しております。

(注)団体は20名以上
(注)高校生・大学生は学生証原本要提示
(注)中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、大阪市内の在住の65歳以上の方は無料(証明書原本(運転免許証、健康保険証、敬老優待乗車証、障がい者手帳等、またはミライロID)要提示)

今昔館は、毎週火曜日が休館日となっています。
 https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/guide


〇日本初!大阪の歴史とエンターテイメントが融合! 「大阪くらしの今昔館」に、新感覚の歴史目撃型XR体験コンテンツ「大阪百世(おおさかももよ)」が新登場!

2025年7月18日(金)からスタートしました
XR(クロスリアリティ)を活用し大阪400年の歴史を楽しみながら学べる!
夏休みのお出かけにピッタリな新体験!

名称:大阪百世(おおさかももよ) Osaka Momoyo
利用料金:一般料金
      大人(13歳以上)1,500円(税込) 子供(13歳未満) 600円(税込)
     大阪市在住者料金
      大人(13歳以上)1,000円(税込) 子供(13歳未満) 400円(税込)
体験時間:毎時0分、20分、40分(初回10:20~、最終回16:40~)
所要時間:約10分
人数:1回あたり16人まで

※大阪市在住者料金でご購入の際は、入場時に大阪市内在住であることを証明するもの(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)をご提示ください。
※7歳未満のお子様はご体験できません。
※詳しくはこちらからどうぞ。
 https://osakametro-adera.jp/news/20250623



〇反物着装パフォーマンス
約13メートルの長さの反物を2個のクリップと帯紐だけで、あたかも着物を着たかのように着装します。まるで手品のようです。
場 所:9階呉服屋
日 時:不定期(イベントスケジュールをご覧ください)
※町家衆のパフォーマンスをご覧ください。着装の体験はできません。



〇着物体験サービス

着物(夏季は浴衣)に着替えて江戸時代の町並みを散策することができます。洋服の上からはおる簡単な着付けなので気軽にご利用いただけます。

●受付時間 10:00〜
●受付場所:9階着物コーナー(人形屋)
●料金:お1人につき1回1000円
●体験時間:30分(着替え時間を含まない)
●定員:先着100名様/日

※身長制限 110cm以上
※国内外に関わらず、小学校・中学校団体様の着物体験利用の受付は行っておりません。

【ご提供するサービスの内容】
・着物・草履のレンタル
・着付け ※服の上から着物を着ていただきます。
・上着、厚手の衣類(セーター、トレーナー等)は脱いでください。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムである「大阪くらしの今昔館」は、2001年4月26日に開館しました。2023年4月26日に開館22周年を迎えました。これからも、大阪くらしの今昔館をどうぞよろしくお願いいたします。

 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。

 前館長の谷直樹先生と新館長の増井正哉先生がこれまでの道のりを振り返り、これからの課題について語り合う動画が公開されています。
 こちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=kFW0qbelLNo



〇「今昔館 まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/manabi_program/今昔館 まなびプログラム




〇おうちにいながらミュージアムを楽しもう!
 今昔館の展示関連の動画を集めました。
https://www.youtube.com/@user-zy5nw1vs2o


 英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
https://www.youtube.com/watch?v=lOgkk5mfaT0
 https://www.youtube.com/watch?v=1ZFcAzP08Ys



 今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編公開されています。動画を見てから見学すると、見どころがよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4



〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw



〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇天満天神繁昌亭コラボレーション企画【チケ得】が始まりました

「天満天神繁昌亭」×「大阪くらしの今昔館」

コラボレーション企画【チケ得】が始まりました!
窓口でチケット半券を提示していただくとお得に入場、入館していただけます。
詳細は以下に記載しておりますのでご利用の前にご確認ください。
(実施期間2023年8月1日(火)~2024年3月31日(日))

■天満天神繁昌亭にお得に入場■
「大阪くらしの今昔館」のチケット半券を提示すると
「天満天神繁昌亭」の入館料が300円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※昼席一般当日入場料から300円引きいたします(例)当日料金2,800円が2,500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※満席の場合はご利用いただけません
※その他割引との併用はできません
※ご利用いただけない日程がございます。詳しくは天満天神繁昌亭にお問い合わせください

■大阪くらしの今昔館にお得に入館■
「天満天神繁昌亭」のチケット半券を提示すると
「大阪くらしの今昔館」の入館料が100円OFF!!

※対象チケットは公演日より30日間有効
※窓口でお買い求めの際にのみ適用されます
※入館料から100円引きいたします(例)常設展大人600円が500円に!!
※半券1枚につき1名様1回限り利用可
※企画展のみの場合は割引できません
※その他割引との併用はできません
※ お支払い方法は現金のみとなります



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html



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