2018年1月30日火曜日

今週の今昔館(96) 四天王寺 20180130

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(5)

 今回は、「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の5回目、四天王寺をご紹介します。

■四天王寺(芳雪画)
 聖徳太子ゆかりの四天王寺は仏教受容の象徴として、古来、平安貴族から庶民に至るまで、太子信仰や法華信仰、浄土信仰をあわせ崇敬を集めた最古の官寺です。
西門の石造大鳥居(重要文化財)は永仁2年(1294)時の別当忍性の建立で、わが国最古とされます。扁額には「釈迦如来 転法輪処 当極楽土 東門中心」とあります。

 当時は西門前まで大阪湾が入り込み、四天王寺西門はその西方の海の彼方にあると信じられた極楽浄土の東門であると信仰され、ここから海に沈む夕陽に向かって念仏を唱え、彼方の西方極楽浄土を観ずる「日想観」の修行が広く行われました。

浪花百景「四天王寺」(大阪市立図書館蔵)

■四天王寺伽藍(国員画)
 四天王寺は、蘇我氏対物部氏の崇仏戦争を蘇我方の勝利に導いた四天王像を安置すべく聖徳太子が推古元年(593)に創建したと伝えられます。寺院建築の最も早い時期に属する四天王寺は、南大門・中門・五重塔・金堂・講堂が一直線上に並び、中門と講堂を結ぶ回廊が周囲を囲む伽藍配置は四天王寺様式と称されます。

 度々災禍を被るたびに同じ場所に再建され、創建当時の様式を今に伝えています。文化9年(1812)再興の堂塔は昭和9年の室戸台風で倒壊・大破し、その後修理・再建されましたが、昭和20年米軍の空襲により焼失しました。現在の伽藍は昭和38年に復興されたものです。

 五重塔の上階からは境内、市中が一望できます。太子信仰は庶民に至るまで広がり、聖霊院の巡拝、法会、舞楽が行われ、今日も太子の霊験を求める人々で寺運盛んです。

浪花百景「四天王寺伽藍」(大阪市立図書館蔵)
空中写真(国土地理院)
中門と五重塔

■四天王寺合法辻(芳雪画)
 四天王寺西門から西に下る逢坂と、逢坂から南に天下茶屋方面に向かう街道との交差点が合法辻。合法とは、聖徳太子が物部守屋と仏法の論争をしたことに因みます。もとは大伽藍でしたが、兵火を受け辻堂のみとなって閻魔像を安置、辻の守りとして町内により守られてきました。石造の威容と相まって、頭痛などに霊験があるとして信仰されました。

 辻の東南角にあった閻魔堂は、陰謀から継子俊徳丸の身を守るため、わざと偽りの恋を仕掛け、父合邦に刺されて死んでいく娘お辻が自分の生き血を俊徳丸に飲ませて業病を平癒させる物語、浄瑠璃「摂州合邦辻」の舞台ともなりました。閻魔堂は明治10年(1877)の明治天皇住吉行幸の際、道路拡張工事のため西方寺境内に移されました。

浪花百景「四天王寺合法辻」(大阪市立図書館蔵)

 天保年間発行の「浪華名所獨案内」の四天王寺付近を見てみましょう。四天王寺の周辺には、庚申堂、茶臼山、一心寺、安井天神、キヨミズ、アイゼン、ウカムセ、壽法寺などの名所が描かれています。一心寺の西には、合ホウガ辻、エンマドウも描かれています。「日本橋通長町ト云」は現在の堺筋、その南に「スミヨシカイドウ」と書かれている道は紀州街道です。

浪華名所獨案内の四天王寺付近(「津の清」蔵)

 「天保新改攝州大阪全圖」の四天王寺付近です。四天王寺の回廊伽藍の東に太子堂があります。四天王寺の北西は寺町で、びっしりとお寺が並んでいます。毘沙門池、茶臼山、一心寺、合邦辻も描かれています。

天保新改攝州大阪全圖の四天王寺付近(日文研蔵)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」の四天王寺付近です。大きく描かれている五重塔は、文化9年(1812)再興の塔で、この後、昭和9年の室戸台風で倒壊・大破することとなります。上町筋を南下してきた市電は、四天王寺を迂回して「天王寺西門」「茶臼山」停留所を経て、天王寺に通じています。

大阪市パノラマ地図の四天王寺付近
(大阪くらしの今昔館蔵)

 次に、今昔マップ3を利用して、明治42年から最近までの地形図で、四天王寺周辺の変遷を見てみましょう。
 左上は明治41年、四天王寺の東側には農地など空地が目立ちます。南西の茶臼山周辺には第五回内国博覧会の跡地が軍用地となっています。右上は昭和7年、環状線内側は市街地化が進み、市電が通っています。軍用地には、新世界と天王寺公園が整備されています。左下は昭和22年、白い部分は戦災によって焼失した地域で、四天王寺の伽藍も焼失しました。右下は平成7年で、四天王寺の伽藍が復興され、谷町筋が開通して地下鉄が通っています。

明治41年、昭和7年、昭和22年、平成7年地形図の
四天王寺付近(今昔マップ3より)

 明治以後の四天王寺は、まず、明治維新の神仏分離令により、それまで四天王寺に所属していた神社が離され、厳しい状況に置かれましたが、人々からは依然として庶民信仰の寺・お太子さまの寺として深い信仰を受け、諸行事は従来どおり行われました。

 昭和9年(1934年)9月21日、近畿一円を襲った室戸台風によって五重塔が倒壊、金堂は傾斜破損、仁王門(中門)も壊滅するなど、境内全域が相当な被害を被りました。昭和15年(1940年)、努力のすえに五重塔が再建されましたが、それも束の間、昭和20年(1945年)の大阪大空襲により、六時堂や五智光院、本坊方丈など伽藍の北の一部の建物を残し、境内のほぼ全域が灰燼に帰してしまいました。

 しかしこの時も、各方面の人々の協力を得て復興への努力がなされ、昭和38年(1963年)には伽藍が、昭和54年(1979)には聖霊院奥殿・絵堂・経堂が再建、その他の建物も次々に再興され現在ではほぼ旧観に復しています。さらに、戦後間もなく太子創建の寺であることから天台宗から独立し、和宗を創立。四天王寺はその総本山として、仏法興隆と太子精神の高揚を本願とする寺として再生いたしました。

 聖徳太子が四天王寺を建てられるにあたって、「四箇院の制」をとられたことが『四天王寺縁起』に示されています。四箇院とは、敬田院(きょうでんいん)、施薬院(せやくいん)、療病院(りょうびょういん)、悲田院(ひでんいん)の4つのことで、敬田院は寺院そのものであり、施薬院と療病院は薬局・病院にあたり、悲田院は病者や身寄りのない老人などのための社会福祉施設にあたります。

 たび重なる戦火や災害に見舞われ、多くが焼失しましたが、現在の建物は創建当時(飛鳥時代)の様式を忠実に再現しており、古代の建築様式が今に残るのは貴重といえます。

 総面積3万3千坪(約11万平方メートル)。甲子園球場の三倍の広さを有する境内には四天王寺式伽藍のほか、聖徳太子の御霊を崇る聖霊院(太子殿)があり、創建当時の品々など500点あまりの国宝・重要文化財を所蔵する宝物館もあります。日本庭園の「極楽浄土の庭」にたたずむと、都会にありながら喧騒とは無縁の世界が広がります。新西国三十三観音霊場第一番など多くの札所にもなっています。

 お太子さまをしのんで毎年4月22日に催される聖霊会舞楽大法要では、重要無形民俗文化財の天王寺舞楽が披露されます。毎月21日の大師会と22日の太子会は四天王寺の縁日で、露店も多く並び庶民の太子信仰の寺としての姿勢を貫いています。(以上、四天王寺ホームページ より)


 今回は、「浪花百景」の四天王寺と合法辻をご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。



〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」2月10日まで開催中

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)




〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」(終了しました)

講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール

② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土・終了しました)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。


〇次回の企画展「浪花の大ひな祭り」

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)

 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/korekara.html


〇今週のイベント・ワークショップ

1月31日(水)~2月3日(土)、5日(月)、7日(水)~10日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

2月4日(日)、11日(日)、12日(月・祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

2月4日(日)
企画展イベント ワークショップ 『障子に親しもう』

日本家屋にはおなじみの障子。
破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
14:00~、先着10名、無料(高校生以上の方は常設展の入場料が必要)、8階ロトンダにて開催

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

2月10日(土)
ワークショップ 『版木はがき』

13時30分~15時
参加費:200円

2月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

2月12日(月)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!
大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南鷹、旭堂南舟、旭堂さくら
14時~15時


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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