2020年2月11日火曜日

今週の今昔館(202) 瑞龍寺 20200211

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(33)

 今回は「浪華の賑ひ」の「瑞龍寺」をご紹介します。

■瑞龍寺
  当寺は難波村の北にあり。慈雲山と号す。鉄眼和尚の開基なるがゆゑに、俗になんばの鉄眼といふ。諸堂の造立すべて唐山のごとくにして、菟道(うぢ)の黄檗山(おうばくさん)に彷彿たり。最も境内広く殊勝なる禅刹(ぜんでら)なり。諸堂に雪の積もりたる風景はまさしく吾朝(わがくに)にあらざる思ひせらるとて、儒家・文人・画師なんど、雪中に競ひてこれを賞す。蓮池の西の傍に俳師淡々翁(たんたんおう)の墓あり。塚に一石一樹を植ゑたり。
 例年四月六日より十五日まで三千仏名普度会(ふどえ)修行ありて詣人群をなす。
 すずしさや塵ひとつなき敷瓦 柳亭翠鶯

浪華の賑ひ「瑞龍寺」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)


 浪花百景には、「鉄眼寺夕景」があります。

■鉄眼寺夕景(芳雪画)
 もと薬師寺と号する村民支配の寺でしたが、寛文10年(1670)に鉄眼和尚を住持として招き、延宝4年(1676)に瑞龍寺と改号しました。鉄眼和尚は、明の高僧隠元に入門、黄檗宗の布教に努めた傑僧で、その功績から鉄眼寺と通称され、現在に至っています。
 鉄眼和尚は一切経全六七七一巻の完全な翻刻を志し、全国を行脚して喜捨を集めました。集めた浄財を二度までも洪水や飢饉による難民の救済にほどこし、苦難の果てに三度目に集めた浄財によってようやく版木約六万枚に及ぶ一切経(万福寺蔵)を完成させたといわれます。学深く能弁で多くの民衆を教化した名僧でした。
 寺は広大な寺地に諸堂、蓮池を設け、藍畑、綿畑が広がるのどかな風景とともに文人墨客に愛されました。

 鉄眼寺夕景の色紙の図柄は、布袋さんの持つ巾着を図案化したものになっています。黄檗宗では 布袋さんは弥勒菩薩の化身と考えられているとのことです。


 大阪市浪速区役所のホームページによると、≪瑞龍寺は黄檗宗萬福寺末寺で薬師三尊を本尊としています。鉄眼和尚は、わが国に一切経の版木がないのを嘆き、全国行脚募財の末、一切経の木版6956巻32万頁を完成しました。その間洪水と飢饉に苦しむ人々を救うため、一切経の募財を救済に投じ、三度目に目的を遂げ「鉄眼は一生に三度一切経を刊行せり」といわれ、その徳の高さから一般に鉄眼寺といわれています。境内には「鉄眼禅師茶毘処地」の碑があります。≫ とあります。


浪花百景「鉄眼寺夕景」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 天保年間発行の浪華名所獨案内を見ると、今宮村のすぐ北側(左)に「戎社」があり、さらに北に「廣田」とあるのが廣田神社、その北に「御蔵」とあるのが難波御蔵で、道頓堀川から入堀が通じています。入堀の西側(南)に瑞龍寺が描かれています。

浪華名所獨案内の難波付近(上が東)(「津の清」蔵)

 天保8年発行天保新改攝州大阪全圖を見ると、道頓堀川から難波入堀が引かれ、その先に難波御蔵と新御蔵があります。入堀の西側に瑞龍寺が描かれています。

天保8年発行天保新改攝州大阪全圖の瑞龍寺付近
(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、難波御蔵のあったところには、煙草専売局があります。難波入堀の西側、南海難波駅と国鉄湊町駅の中間に鉄眼寺があります。

大阪市パノラマ地図(国際日本文化研究センター蔵)

 大阪市パノラマ地図の難波駅西側を見ると、市電元町二の停留所の横に「鐵眼寺」が描かれています。右下(南)には八坂神社もあります。

大阪市パノラマ地図の鉄眼寺付近


 瑞龍寺の現状を写真で見てみましょう。

瑞龍寺山門、「慈雲山」の額
山門の扉には桃の絵が
瑞龍寺本堂
本堂への階段の真ん中に布袋さん
本堂と布袋さん
鉄眼禅師荼毘処地の顕彰碑
境内には開運お勝稲荷

 今回は、「浪華の賑ひ」の「瑞龍寺」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 大阪市パノラマ地図についてはこちらをどうぞ。
http://sumai-osaka.blogspot.jp/2015/08/blog-post_29.html
http://konkon2001.blogspot.jp/2017/10/blog-post_10.html

 今回で「浪華の賑ひ」二編が終了しました。二編のあとがきには、次のような記載があります。

 これは初篇につづきて浪花の巽より南の方にいたり、坤(こん:ひつじさる)の辺の名所を次第に著せり。しかれども初篇にひとしく行く程、許多(そこばく)にして一日には行く事かたし。されば、まづ道頓堀をはじめ、寺町・新清水・一心寺を歴て四天王寺にいたるを一日として見物多(さは)なり。かくて復の日、安部野街道を住吉に詣で、木津川の千本松にいたり、木津・難波を遊歴し、今宮に廻り、しかうして市中に帰宿す。しかれども婦女子の徒(ともがら)はなほ歩み難かるべければ、木津川口は別に舟行して、一日の遊観とせば楽しみ深し。




〇特別展「世界遺産をつくった大工棟梁―中井大和守の建築絵図細見」関連イベント
 講演会「大修理‼建築絵図ビフォーアフター 文化財をよみがえらせる日本の修理技術」


講師:坂田雅之氏・坂田さとこ氏(坂田墨珠堂)
谷直樹(大阪くらしの今昔館館長)
日時:令和2年3月7日(土)13:00~15:00(12:30開場)
定員:150名(定員に達し次第締め切ります)
申込期間:令和2年1月25(土)~3月3日(火)
場所:大阪市立住まい情報センター 3階ホール
参加費:300円
申し込みはこちらからどうぞ。
https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33694


〇企画展「ちょっといい 昔の暮らし」開催中です
2020年2月14日(金)まで、残りわずかとなりました。

みどころ
・大坂の屋敷の台所を模して特注で制作された特大のミニチュア台所
・当時の家庭雑誌「暮しの手帖」を生活道具とともに紹介
・ダイヤル式電話機など、触って昔の道具を体験できるコーナー

 調理と食事、衣類の手入れ、住まいを整えるなど、家事は今も昔も家庭内で日々行われています。生活に使われる道具は、高度経済成長期に電化製品が普及し、より便利に効率的な生活となるように改良されていきました。現代においてはあえて自動化せずに、鍋でご飯を炊くなど手間ひまをかけて生活を楽しむ「ていねいな暮らし」という言葉も生まれ、それぞれの家庭の暮らし方は多様になりました。

 昔の暮らしは、どのようなものだったのでしょうか。電気・ガス・水道の整備や生活道具の変化だけでなく、家族の形態や家庭の機能も大きく変化しています。例えば、職住が一致していた時代には、従業員も住み込みで家族とともに暮らすため、大きな台所にたくさんの食器が必要でした。また、来客に備えて住まいには座敷や客間を設けており、膳や座布団なども多数そろえておくことが当たり前でした。しかし、そういったふだんの暮らしというのは記録に残りにくいものです。その一端を、大阪くらしの今昔館が所蔵する生活道具を展示することを通して紹介します。商業都市として栄えた大阪で育まれた豊かな生活文化までをのぞいてみませんか。

旧八代敏所蔵雛飾り台所ミニチュア(部分)
吸物椀
暮しの手帖
電話(さわってみよう)


〇今週のイベント・ワークショップ

 今昔館は毎週火曜日が休館日ですが、本日2月11日(火・祝)は開館しています。
 カレンダーは、こちらです。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=202002



2月12日(水)~15日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~


※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。

2月11日(祝)、16日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00



2月15日(土)
町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30-15:00


2月16日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00


町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00


町家衆イベント 紙芝居
昔ながらの紙しばいを町家衆が上演します。
子どもから大人まで楽しんでいただけます。
開催日:日曜適時
時 間:11時~12時


イベント 町家でお茶会
町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます
協力:大阪市役所茶道部
当日先着50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
13時~15時



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse


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