今回は、大阪くらしの今昔館の8階近代展示室に入って正面のスクリーンの裏側にある「心斎橋筋商店街」をご紹介します。
心斎橋筋は近世から続く商いのまちです。近代にはショーウィンドーをしつらえ、とりどりの看板を掲げた華やかな店構えの商店が軒を並べ、消費文化・情報発信の中心地として賑わいました。心斎橋筋をウィンドーショッピングしながら歩く「心ぶら」は、都市生活の楽しみの一つとなっていました。
「心斎橋筋案内」は昭和2年(1927)に描かれた町並みのイラストで、各店舗の店構えが表情豊かに描かれています。模型では、心斎橋筋の東側、周防町から三津寺筋、宗右衛門町に至る町の賑わいを「心斎橋筋案内」をもとに再現しています。
模型は、通りに沿って並ぶ街並みと、通りを歩く人々が動く仕組みになっています。「廻る寿司」と同じ仕掛けを利用しています。
「心斎橋筋案内」(大阪くらしの今昔館蔵) |
昭和4年の心斎橋(「大大阪の時代を歩く」より) |
現在でも、心斎橋の周辺は、心斎橋筋商店街を中心に、百貨店、専門店、高級ブランド店などが集積する大阪市を代表する日本有数の繁華街です。
心斎橋筋の名前は、船場と島之内を分ける長堀川(現在は埋立。長堀通)に架かっていた心斎橋(橋梁)に由来し、単に船場と島之内を繋ぐにとどまらず、道頓堀川にも戎橋が架けられ、なおかつ、西横堀川(現在は埋立。阪神高速1号環状線北行き)寄りの道であったことから、道頓堀の芝居小屋と下船場の新町遊廓を結ぶ道として賑わいを見せるようになり、今日に至っています。
このように心斎橋筋は土佐堀川から道頓堀川まで南北に伸びる道ですが、船場においては心斎橋という認識は薄いです。これは、明治5年(1872)に心斎橋筋(1・2丁目)の町名が島之内においてのみ実施されたことに拠ります。
もともと心斎橋筋は、新町遊廓へ至る順慶町通と交差する船場側が栄えていました。順慶町通は夜市で知られ、煌々と照らされる街路は江戸から来た人々も驚くほどでした。しかし、松島遊廓の誕生や大火によって新町遊廓は衰退・焼失してしまい、南海難波駅や湊町駅(現・JR難波駅)の開業(道頓堀以南は「戎橋筋」と名称を変えますが難波駅前まで通じている)、大丸や十合(そごう)といった呉服店による百貨店経営の開始などにより、明治以降は島之内側が栄えるようになりました。なお、現在も船場側には、順慶町通を境に、せんば心斎橋筋商店街と心斎橋筋北商店街があります。
平成元年(1989)に島之内のうち堺筋~畳屋町筋間が東心斎橋、御堂筋以西が西心斎橋という町名になりました。しかし、現在も鰻谷(中之町・西之町)、大宝寺町(中之丁・西之丁)、東清水町、西清水町、千年町、玉屋町、笠屋町、畳屋町、周防町、八幡町、三津寺町、久左衛門町といった旧町名およびそれに基く筋や通の名称は健在で、御堂筋の交差点名にも使用されています。
東心斎橋(とりわけ周防町筋以南)および南接する宗右衛門町は、歓楽街として「ミナミ」と呼ばれることが多いですが、このエリアでは店舗や居場所の特定に旧町名が頻繁に用いられています。また、西心斎橋の周防町筋周辺はアメリカ村と通称されています。
心斎橋筋2丁目、三津寺筋付近を「大阪市パノラマ地図」で見たものです。「三ツ寺」が描かれ、心斎橋筋の一つ東の筋には、「タタミヤ丁」の文字があり、南北に町が形成されていることが分かります。
大阪市パノラマ地図の心斎橋筋(大阪くらしの今昔館蔵) |
範囲を広げて見ました。島之内の北半分は東西の通りに「鰻谷」「大宝寺町」などの名前が入っていますが、南半分は南北の筋に沿って「笠屋町」「畳屋町」など、町の名前が入っています。御堂筋が拡幅される前ですから、大丸、十合(そごう)も心斎橋筋に顔を向けています。
大阪市パノラマ地図の心斎橋筋付近 (大阪くらしの今昔館蔵) |
江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」の心斎橋筋付近です。心斎橋と戎橋の間に「大丸呉服店」「ヲグラヤ」があり、「三津寺」も描かれています。
浪華名所獨案内の心斎橋筋 (「ちずぶらり」より:上が東) |
範囲を広げて見てみると、大丸の前から心斎橋筋を南へ進み、戎橋を渡ると千日前に至り、道頓堀五座(芝居小屋)があります。逆に、北へ進み心斎橋を渡り、順慶町通を西に曲がると新町廓に至ります。お勧めのモデル観光ルートにもなっていて、当時から栄えていたことが分かります。
浪華名所獨案内の心斎橋筋 (「ちずぶらり」より:上が東) |
天保8年(1837)発行の「天保新改攝州大阪全圖」を見ると、通りと筋が細かく描かれていて、町の名前も書かれています。島之内の北半分では通りに沿って町が形成され、南半分では南北の筋に沿って町が形成されています。現在でも東西の道が「八幡筋」「三津寺筋」と呼ばれているのは、このためです。
天保8年(1837)発行の「天保新改攝州大阪全圖」(日文研蔵) |
1920年代の心斎橋(「大大阪の時代を歩く」より) |
今回は、大阪くらしの今昔館8階の「心斎橋筋商店街」をご紹介しました。近代展示室に入って正面のスクリーンの裏側にありますので、見落とさないようにしてください。
〇大阪くらしの今昔館の「谷 直樹」館長が、第52回 大阪市市民表彰を受賞されました!
谷直樹館長が、第52回 大阪市市民表彰(文化功労)を受賞されました。
この大阪市市民表彰は、公益の増進、産業の振興、学術、文化の向上などに貢献し、顕著な功績のあった方、又は市民の模範となるすぐれた善行のあった方を広く市民に顕彰することを目的に実施されています。
谷館長は、多年にわたり、町家を中心とする建築史研究の第一人者として、大阪都市住宅史に関する優れた著書を記すとともに、大阪くらしの今昔館館長として、これからの都市空間のありようを発信するなど、学術文化の振興と発展に貢献した実績により、文化功労部門において表彰されました。
〇次回の企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」
わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。
本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。
さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。
会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)
〈関連イベント〉
① 特別講演会「道具が化ける?絵巻で読む付(つく)喪神(もがみ)」
講師:田中貴子氏(甲南大学文学部 教授)
日時:2018年1月27日(土)14:00~15:30(受付開始13:30)
会場:住まい情報センター 3階ホール
参加費:無料
定員:100名(要事前申込、先着順)
申込み方法:インターネット、又はハガキ・FAXにて。氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号、参加人数(4名まで、お連れ様の名前も記載)を記入。
インターネットからのお申込みはこちらから
≫ https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/33011(住まい・まちづくり・ネット)
② ワークショップ「障子に親しもう」
日本家屋にはおなじみの障子。破れた障子を修理したり、影絵で遊んだりしながら、障子について学ぼう。
日時:2018年1月20日(土)、2月4日(日)14:00~
場所:9階木戸門横スペース
参加費:無料
小中学生以下は入場無料、高校生以上の方は常設展の入場料が必要です。
参加人数:先着10名 *事前申し込み不要。直接会場にお越しください。
〇今週のイベント・ワークショップ
12月6日(水)~9日(土)、11日(月)、13日(水)~16日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30
12月10日(日)、17日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
12月09日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『はたき作り』
①13時30分~ ②14時30分~
当日各回先着10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
12月10日(日)
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00
イベント 町家寄席-落語“らくてん会”
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
14時~15時30分頃
出演:らくてん会
町家衆イベント おじゃみ(有料)
古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00
12月16日(土)
イベント 町家寄席-落語
江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 他
14時~15時
町家衆イベント 折り紙(有料)
季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30~15:00
12月17日(日)
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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