2018年12月25日火曜日

今週の今昔館(143) 二軒茶や風景 20181225

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(48)

 今回は、「二軒茶や風景」をご紹介します。

■二軒茶や風景(国員画)
 この地は東へまっすぐ伸びる大坂から奈良に通じる奈良街道の起点にあたるため、伊勢神宮や大和巡りに向かう旅人や見送りの人々でいつも賑わっていました。黒門橋(石橋)西詰めに、街道の両側にあった「つる屋」「庄屋(のち、ます屋)」という二軒の茶屋は旅人の休憩所として、また、別れの酒宴の会場として多くの人に利用され、名所となるほどに繁盛しました。また道中用に深江名物の菅笠も販売していました。
 近世を通じてほぼ60年ごとに流行した伊勢神宮のお陰参りの時には、街道沿いは大いに賑わいました。ます屋は明治初年に廃業、つる屋は牛肉屋に転業して大正年間まで存続。現在長堀通(国道308号)南側に石碑が建っています。

浪花百景「二軒茶や風景(国員画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「玉造町家」の右下(南東)に「二ケン茶ヤ」の挿絵と文字があります。安堂寺町の通りには「ナライセ道」の文字が見えます。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、「宰相山 真田山イナリ」の右手に「△平ノ口丁」の文字が見えます。その右手に川幅が拡がったところに橋が架かり、東へと道が続いています。このあたりが二軒茶屋、石橋でしょうか。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、現在の大阪環状線に当たる城東線(省線)の「玉造駅」から東は、当時の大阪市の市域に入っていなかったため、雲で隠されたような表示となっています。駅の近くには郵便局、交番、私設市場、劇場、玉造税務署があったことがわかります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、長堀通が城東線を越えて拡幅され東へ伸びています。猫間川に架かっていた橋が石橋だったのでしょうか。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、市街地は城東線の西側までで、東側では、街道に沿って町並みがありますが、周りには農地が残っています。
 右上の昭和4年では、長堀通と玉造筋が拡幅され市電が走っています。長堀通は城東線の東へも延びています。

明治41年から昭和42年の地形図(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。長堀通の市電が今里方面へ延びています。
 右下の昭和42年では、全域が市街地化し、市電はすべて廃止されています。

 JR大阪環状線玉造駅から長堀通を東へ進むと1枚目の写真の二軒茶屋跡の石碑があります。玉造名所石橋旧跡の碑も並んでいます。
二軒茶屋跡の碑

 暗峠奈良街道を東へ進み今里筋との交差点角に、暗峠奈良街道(ならみち)の碑があり、ビルの壁面に街道の解説板が並んでいます。 
暗峠奈良街道(ならみち)の碑
暗峠奈良街道
高井田菱江
追分尼ヶ辻
三絛通春日大宮


 街道をさらに東へ進み千日前通りに出るところに文化3年(1806)に建てられた「なら・いせ道」の古い道標があります。

ならいせ道の道標
移設され向きが変わったことを示す説明板



 今回は、「浪花百景」の「二軒茶や風景」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」開催中。
2019年2月22日(金)までです。

休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)


 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。


新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円


〇今週のイベント・ワークショップ

12月26日(水)~28日(金)、1月3日(木)~5日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

1月6日(日)、13日(日)、14日(祝)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


12月27日(木)
イベント 町家のもちつき

当日先着各回20名:※中学生以下対象、参加費無料
12時よりインフォメーションにて整理券を配布します。
①13時45分~ ②14時30分~

1月5日(土)
イベント 今昔庵茶会

町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時

1月6日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時

1月6日(日)
町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう

13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
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初めての方はこちらからどうぞ。
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