2018年12月20日木曜日

今週の今昔館(142) 佐奈田山三光宮 20181220

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(47)

 今回は、「佐奈田山三光宮」をご紹介します。

■佐奈田山三光宮(芳瀧画)
 上町台地東端の真田山は宰相山(旧姫山)とも称し、山麓の反正天皇創始を伝える三光宮は、姫山神社(真田山稲荷、宰相山稲荷とも)の境内末社で、陸奥国宮城郡青麻(あおそ)の三光社の分霊を勧進したものです。中風封じの霊効が庶民に信仰されて、生駒・金剛の連山の眺望とともに参詣者を集めました。明治41年(1908)姫山神社と三光宮が合祀され、現社号の三光神社に改めました。
 その境内地は、地名にあるようにかつて大坂冬の陣に際して、豊臣方の智将真田幸村が築いた真田出丸の故地と伝えられ、ここと城とを繋ぐ「真田の抜穴」と称される横穴が遺っています。豊臣家ゆかりの故地として、浪花の人の心寄せる場所であり、横穴の前には、昭和62年鹿角の兜をかぶり采配をふるう真田幸村の銅像が建てられました。

浪花百景「佐奈田山三光宮(芳瀧画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、「玉造町家」から南へ藍色の線をたどると「イナリ」と「真田山」があります。「アジワラ池」「玉ノ井シミズ」につながる観光ルートとなっています。この地図は、東が上に書かれており、北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、山の絵が描かれた「真田山」と、その右側(東)に「宰相山 真田山イナリ」が並んで表示されています。現在の位置関係と合致しています。真田山は大坂冬の陣の後、徹底的に取り壊されたといわれていますが、江戸時代には山の面影が残っていたのでしょうか?

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、現在の大阪環状線に当たる城東線(省線)の「玉造駅」の西側に南北に市電が走っています。現在の玉造筋に当たります。「舟橋町」「水野町」に停留所があり、「玉造」で西に左折して「東雲町」を経て、長堀方面に向かいます。
 〇で囲まれた「玉」「造」の「造」の文字の傍に「三光社」の文字があり、鳥居が2つ描かれています。その西側には「真田山墓地」と「騎兵第四聯隊」があり、さらに西に「明星商業学校」があります。真田丸があったと推定されている場所です。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、長堀通と玉造筋を走る市電に囲まれた位置に、「宰相山町」があり、「三光神社」の文字も見えます。その南には「陸軍墓地」の字とお墓の印が多数あり、赤い文字で「真田山」と表示されています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、長堀通、玉造筋ともに拡幅前です。城東線の「たまつくり」駅の西側に「騎兵営」の文字と墓地の印があり、その右上に鳥居の印が見えるところが三光神社です。
 右上の昭和4年では、長堀通と玉造筋に市電が走り、拡幅されています。「騎兵営」は「騎四」の表示に替わっています。「騎兵第四聯隊」の略です。北側には陸軍墓地があり、右上に見にくいですが鳥居の印が見えます。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 左下の昭和22年を見ると、白くなっている部分が戦災によって焼失した地域で、この地域は大きな被害を受けています。鳥居の印が確認できます。
 右下の昭和42年では、市電はすべて廃止されています。天王寺区の「区」の文字の下に鳥居の印が見えます。西側には墓地の印、周辺には学校と寺の印が多く見えます。

 現在の三光神社を見てみましょう。1枚目の写真は北側から三光神社に向かう参道で、鳥居が見えます。鳥居は2枚目の写真にあるように戦災で倒壊し、脚の一部が保存され、傍に新しい鳥居が建てられています。

三光神社参道
戦災で倒壊した鳥居

 本殿への石段と三光神社の本殿です。

本殿への石段
三光神社本殿

 「真田の抜穴」と呼ばれている横穴と真田幸村公之像です。

「真田の抜穴」
真田幸村公之像

 三光神社の東側の石段です。浪花百景に描かれている石段は、この石段でしょうか?

浪花百景に描かれている石段?

 JR大阪環状線玉造駅前のガード下には、「真田幸村めぐルート」の案内板が設置されています。

真田幸村めぐルート(JR環状線ガード下)



 今回は、「浪花百景」の「佐奈田山三光宮」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「見て、さわって、調べよう。昔のくらし」が始まりました

2018年12月17日(月)~2019年2月22日(金)
休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)

 現代の家庭では掃除機や炊飯器を使ったり、スイッチひとつで洗たくをすることは一般的になりました。しかし、少し昔にさかのぼってみると、かまどでご飯を炊いたり、タライで洗たくをしたり、ハタキや雑巾がけなど、手間と時間と使って暮らしていました。その中には暮らしの知恵がいくつもありました。
 電気やガスを使うようになり、便利で豊かな生活を送るために多様な道具が次々と作られました。道具の変化は暮らしぶりの変化でもあり、昔の道具を見ることで当時の様子を想像することができます。

 今回の展覧会では昔のくらしを学ぶ児童の学習を想定し、生活道具の種類ごとの変化や、節供の人形や掛軸など季節の行事に関連するものを展示します。
 道具の体験コーナーでは、昨年よりも触れる道具を増やしました。道具の手触りや重さも体感してください。


新板勝手道具之図 重宣画
絞り器付き電気洗濯機
商業中心地区(船場)
「大阪市大観(大正14年)」より


〇今昔館に初もうで
「大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び」

2019年1月3日(木)~7日(月)
大人も子どもも楽しめる懐かしいお正月遊び
~福笑い・双六・百人一首など

【 1月3日(木)だけのお楽しみ 】
*折り紙・・100円
*あてもの・・先着200名(中学生以下)

【 1月3日(木)4日(金)のお楽しみ 】
*おみくじ・・無料
*絵馬・・100円

【 1月4日(金)5日(土)のお楽しみ 】
*書き初め、13:30~16:00、100円

1月5日(土)イベント 今昔庵茶会
町家の座敷で煎茶を召し上がっていただきます
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より受付でお茶券を販売します
協力:玉川遠州流 松崎大嶺家元社中
13時~15時

1月6日(日)イベント 筑前琵琶
和楽器の奏でる音色をお楽しみください
出演:竹本旭将 他
14時~15時

1月6日(日)町家衆イベント ワークショップ 万華鏡を作ろう
13時30分~15時
当日先着 各回15名 材料費300円


〇今週のイベント・ワークショップ

12月19日(水)~22日(土)、26日(水)~28日(金)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

12月23日(日)、24日(振替休日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


12月22日(土)
町家衆イベント ワークショップ『正月祝箸袋』

①13時30分~ ②14時30分~
当日先着各回10名、1人200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します

12月23日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。
じっくりとお聞きください。
開催日: 第4日曜
時 間:14:30-15:00

12月24日(月・祝)
イベント ヘルマンハープ コンサート

バリアフリー楽器ヘルマンハープと共に・・・
演奏と歌と、ワークショップで演奏体験を!
14時~15時
出演:シュトラーセ

12月27日(木)
イベント 町家のもちつき

当日先着各回20名:※中学生以下対象、参加費無料
12時よりインフォメーションにて整理券を配布します。
①13時45分~ ②14時30分~


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。  「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

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