2018年2月6日火曜日

今週の今昔館(97) 上町台地の名所 20180206

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(6)

 今回は「浪花百景に見る江戸時代の大坂」の6回目、今回から上町台地の名所をご紹介していきます。沢山ありますので、何回かに分けて。まず初めは、四天王寺関連で「勝曼院愛染堂」から始めましょう。

■勝曼院愛染堂(芳雪画)
 聖徳太子が四天王寺を建立する際、ともに造営した四ヶ院の一つ施薬院の後身といわれます。太子がここで勝曼経を講じたことからの寺名。本尊の愛染明王は愛の仏として、芸能・縁結びに信仰を集め「愛染堂」あるいは「愛染さん」と親しまれます。大坂の夏祭りの先駆け、毎年6月30日から7月2日にかけて行われる愛染祭りは、宝恵駕籠(ほえかご)行列が出て、いつの時代も艶やかさを添えます。
 堂々たる偉容の多宝塔は、慶長2年(1597)の再建で、有数の規模を誇る市内唯一の桃山期の遺構。豪華精巧な様式を伝えており、現在国の重要文化財に指定されています。

浪花百景「勝曼院愛染堂」(大阪市立図書館蔵)

■増井浮瀬夜の雪(芳瀧画)
 浮瀬(うかむせ)は新清水北坂下にあり、門前の松林に囲まれた二階建てを二棟もつ代表的な料亭。秘蔵する貝杯「浮瀬」に因み店の名としました。大きな鮑で作られた浮瀬は鮑の11の穴を塞いだ奇杯で、長曽我部元親の陣羽織で作った服紗に包み込まれ、七合半の酒を盛ることができ、これを飲み干せば名簿に名を留める名誉を得たといわれます。他にも鳴門、幾瀬の銘を付けた貝の名杯があり、浮瀬の大杯は歌舞伎・浄瑠璃のも登場、かの芭蕉翁も死の直前の元禄7年(1694)9月に句会を開いた名店。雪見の酒は風趣の極みであったでしょう。明治20年(1887)頃売却され、まもなく姿を消しました。

浪花百景「増井浮瀬夜の雪」(大阪市立図書館蔵)

■西照庵月見景(芳雪画)
 生玉寺町を南に突き当たったところの尼寺・月江寺の裏門の西に、浮瀬と同様に有名な料亭、西照庵がありました。上町台地の豊かな木々に囲まれ、京都・円山を模したといわれる庭には泉が湧き、桜や萩、菊など季節の花見が楽しめ、紅葉の名所にも数えられていました。座敷からは市中はもとより海までも見渡せ絶景でした。西照庵の名前にふさわしく、紅葉の頃には沈む夕陽に照らされて、美しさは格別であったといわれます。明治初期には姿を消しました。

浪花百景「西照庵月見景」(大阪市立図書館蔵)

■浪華名所獨案内
 浪華名所獨案内の四天王寺・上町台地付近を見ると、アイゼン、ウカムセ、西照庵ともに、掲載されています。当時から、観光の名所としてモデルルートにも入っています。この地図は、上が東になっていますので、ご注意ください。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵・上が東です)

 大正13年発行の「大阪市パノラマ地図」では、愛染坂と大江神社、神社へ昇る石段は描かれていますが、愛染堂は明確には描かれていません。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

■台地を探して -浪花百景で物見遊山-
 「オープン台地in大阪」さんが作成された「台地を探して -浪花百景で物見遊山-」の地図です。高低差を色分けし、浪花百景の舞台となっている地点をプロットしています。赤が高いところ、青が低いところです。上町台地は東側に比べて西側の斜面が急勾配になっていて、とりわけ南半分には天王寺七坂と呼ばれる坂があり、眺望のいい場所や土地の起伏による景観が多く、百景の舞台となっている箇所が多くあることがよくわかります。

台地を探して -浪花百景で物見遊山-
(オープン台地in大阪)

 今回は、「浪花百景」の勝曼院愛染堂、増井浮瀬夜の雪、西照庵月見景をご紹介しました。
 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇企画展「道具のむかしばなし展―ものから学ぶ昔のくらし―」2月10日まで開催中です

 わたしたちのくらしは、この数十年で大きな変化をとげました。古くから使われてきた道具にかわり、それまでになかった電化製品が登場し、料理や掃除、洗濯にいたるまで、より便利で快適な生活を実現してきました。

 本展では小学校の学習内容に合わせ、さまざまな生活道具を展示し、くらしのうつりかわりを紹介します。また、昭和期の茶の間を再現した展示や、蚊帳や黒電話など道具に触れる体験コーナーもあります。

 さあ、道具たちのむかしばなしに耳をすませ、楽しく昔のくらしを学んでみましょう。

 展示内容は、こちらからどうぞ。
http://konjyakukan.com/temp-topic.html#2017/12/28




会期:平成29年12月16日(土)~平成30年2月10日(土)
開館時間:午前10時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
会期中の休館日:毎週火曜日、年末年始(12月29日~1月2日)



〇次回の企画展「浪花の大ひな祭り」2月18日からです。

会期:平成30年2月18日(日)~4月2日(月) 
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
閉館日:毎週火曜日


 ひな祭りは女の子の成長を願う節句として、江戸時代には大坂の町人にも親しまれていました。上方の雛飾の特徴として内裏雛(女雛・男雛)が御殿に入る雛飾が、かつては多く作られました。また、台所道具を模した「勝手道具」は女の子に家事を教えるという意図を込めて雛に添えて飾り、手にとって遊ばれていました。
 本展では、上方の雛の特徴を持った大阪の商家の雛飾などを展示します。特に昨年寄贈された大坂の豪商「加島屋」(廣岡家)の豪華な享保雛と多種多様な雛道具の数々は必見です。また、全国から摂南大学に寄せられた雛人形の中から600体を飾る「大ひな壇」の迫力もお楽しみください。

http://konjyakukan.com/korekara.html

享保雛 加島屋伝来(大阪くらしの今昔館蔵)
ひな600体の大雛飾(摂南大学蔵)


〇今週のイベント・ワークショップ

2月7日(水)~10日(土)、14日(水)~17日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

2月11日(日)、12日(月・祝)、18日(土)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

2月10日(土)
ワークショップ 『版木はがき』

13時30分~15時
参加費:200円

2月11日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

2月12日(月)
イベント 町家寄席-講談

江戸時代にタイムスリップ!
大坂の町家で、講談をきいてみませんか
出演:旭堂南鷹、旭堂南舟、旭堂さくら
14時~15時

2月17日(土)
町家衆イベント 折り紙(有料)

季節に合わせてさまざまな折り紙をお教えします。
作品は持ち帰っていただきます。
開催日:偶数月の第3土曜
時 間:13:30~15:00

2月18日(日)
町家衆イベント 今昔語り

大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

イベント 町家でお茶会
町家の座敷でお抹茶とお菓子をお召し上がり頂けます。     
協力:大阪市役所茶道部
先着順50名、茶菓代300円    
※当日12時より受付でお茶券を販売します
13時~15時

ワークショップ ハンカチを染めよう
①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、1人300円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse

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