今回は、淀川区の「十三中道」をご紹介します。
■十三中道(芳雪画)
江戸時代後期、中津川にあった十三渡しは複数の街道が交錯する交通の要でした。大坂を起点とする中国街道は西に進み、さらに西国街道に合流します。能勢街道(山田街道・池田街道とも云う)は渡しの北岸で分岐して北へ延びていました。渡し場や分岐点付近は往来の人々で賑わい、宿屋や焼き餅屋などの茶店も開かれました。
周辺は早くに農地開発された地域で、街道筋は旅愁を誘うのどかな田園風景が広がっていました。手軽な野遊びの場として行楽に訪れる人も多くありました。
明治43年(1910)竣工の淀川改良工事により中津川は新淀川となって付近は川床となり、渡し場辺りには現在十三大橋が架かっています。ただし、街道の分岐点の三叉路は現在も十三駅の西側に姿を変えて残っています。
浪花百景「十三中道」 (大阪市立図書館デジタルアーカイブ) |
江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、地図の北の端は「北野」までで、中津川とその北側の地域は描かれていません。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。
浪華名所獨案内(「津の清」蔵) |
次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。地図の北の端は、「野里村」「野里新家」「塚本村」までで、そこから東は描かれていません。
「野里村」と「塚本村」の間に描かれている川は、中津川です。新淀川が開削されるまでは、塚本と浦江・海老江は陸続きであったことが分かります。
天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵) |
大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、地図の左上の端は、北野・中津までです。地図の左上の隅に描かれている川は明治42年に開削された新淀川で、その対岸が十三付近になります。十三は当時の大阪市域には含まれず、パノラマ地図のエリアの外になります。
地図の左下から「北野」を経て右下に抜ける鉄道は阪急電鉄の前身の箕面有馬電気軌道で、右手が梅田方面。また、左下から右上に抜ける鉄道は阪神北大阪線で、右手が天神橋筋六丁目方面です。
大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵) |
昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、新淀川が大きく描かれ、十三橋が架かっています。道路と並行して阪急電鉄が走り、新淀川北岸に「十三駅」があります。駅の西側の三叉路が旧街道の分岐点であった「十三中道」にあたります。
大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵) |
今昔マップ3を利用して、地形図の変遷を見てみます。
左上の明治42年では、開削されたばかりの「新淀川」と開削によって切り取られた「中津川」の一部がはっきりと描かれています。新淀川の開削以前は十三と塚本の間は中津川によって分断されていました。十三橋の北側で街道が左右に分かれています。左は中国街道で西国街道につながります。右は能勢街道につながります。周辺はほとんどが農地であったことが分かります。十三橋と並行して鉄道が走っています。阪急宝塚線の前身である箕面有馬電気軌道で、明治43年(1910)に開業しています。
右上の昭和7年を見ると、駅の周辺は市街地化が進みますが、その周りには農地も散在しています。市街地に飲み込まれながらも、旧街道を読み取ることができます。豊中方面への道路は拡幅されましたが、神戸方面へは旧街道の線形が残っています。
阪急電車は当時は阪神急行電鉄で、十三で宝塚線と神戸線に分岐していました。現在の京都線は新京阪電車として京阪電鉄が運営していました。昭和18年に統合され、京阪神急行電鉄となります。
左下の昭和30年を見ると、白い部分は戦災によって焼失した地域です。神戸方面への道路も直線化され拡幅されています。十三駅前が現在と同様の交差点になっています。
右下の昭和42年では、戦災からの復興が進み全域が市街地化しています。十三駅と新淀川の間に川と並行して幹線道路ができています。十三大橋と並んで新十三大橋(十三バイパス)ができています。
明治42年から昭和42年の地形図 (今昔マップ3より) |
現在の十三大橋
橋の左奥にグランフロント、右奥に梅田スカイビル
左に並行する鉄橋は阪急電車、右は水道橋
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十三大橋の碑 |
現在の十三駅西口前の交差点
突き当り左手は中国街道、右手は能勢街道へ
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突き当りから南を振り返る 正面に小さくグランフロント |
酒饅頭で有名な老舗「喜八洲(きやす)」 |
能勢街道の碑と案内板 |
案内板の地図 |
錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。
〇常設展示は展示替えにより「商家の賑わい」の展示へ
大阪くらしの今昔館は、展示替えのため9月3日(月)から11日(火)まで休館します。
9月12日(水)からは、「商家の賑わい」の展示となります。江戸時代の大坂の店先を再現し、当時の賑やかな商家の様子を楽しめます。
なお、9月18日以降は通常通り、毎週火曜日が休館日となります。
9月のカレンダーは、こちらでご確認ください。
≫ http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201809
〇今週のイベント・ワークショップ
9月12日(水)~15日(土)、19日(水)~22日(土)
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
9月16日(日)、17日(月・祝)、23日(日)、24日(月・祝)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
9月15日(土)
イベント 上方の華と粋 座敷舞
上方の地で生まれ育った「上方舞」
山村流の立方が町家の座敷で華やかな舞を披露します
舞い方:山村若女 他
14時~15時
9月16日(日)
イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00
町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け、14:30~中級者以上向け
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00
9月17日(月・祝)
ワークショップ『ひき臼・すり鉢を体験してみよう』
定員なし、参加費無料
13時30分~15時
9月22日(土)~23日(日)
イベント 彼岸の屋台
「のぞきからくり」や「宝引き」など・・
昔ながらの遊びは、大人も子どもも楽しめます
13時~16時
9月28日(金)
イベント インターナショナル町家寄席-RAKUGO
英語・中国語・韓国語の落語会です。
日本の方にもお楽しみ頂ける内容になっています。
出演:桂あさ吉、桂雀喜、笑福亭銀瓶 ご案内役:桂出丸
13時~14時
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
〇企画展示室のギャラリー利用
企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。
大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。
貸出期間:平成30年9月15日(土) ~12月9日(日)
ただし、次にあげる日は休館日となります。
9月18日・25日、
10月2日・9日・16日・23日・30日、
11月6日・13日・20日・27日 、
12月4日
週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/kashidashi.html
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
≫ http://konjyakukan.com/index.html
「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
≫ http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html
「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse
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