2018年9月18日火曜日

今週の今昔館(129) 福しま逆櫓松 20180918

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(34)

 今回は、もう一度福島区へ戻り、「福しま逆櫓松」をご紹介します。

■福しま逆櫓松(芳瀧画)
 文治元年(1185)源平合戦の折り、源頼朝の命を受けた義経は、屋島に布陣する平氏を急襲するべく福島にて準備を進めます。この時、頼朝がつけた参謀格の梶原景時が船の前後進を可能にするため船首にも櫓(逆櫓)をつけることを進言、戦う前から退却の準備をすることを嫌い受け入れない義経はこの意見を退けましたが、納得しない景時は義経に「猪のしし武者」と罵声を浴びせました。2人の間の激論がこの松の下で行われたといわれます。
 蛇の鱗にも似た表皮はいかにも樹齢千年を超える老松。その由緒とともに信仰の対象にもなっていたそうです。逆櫓松は明治42年(1909)に焼失。元の位置は不詳ですが、現在石碑が建てられ、松も植えなおされています。

浪花百景「福しま逆櫓松」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、地図の北の端に「上福島」「中福島」「下福島」の文字があります。堂島川には「玉江バシ」が、蜆川には「堂嶋小バシ」が架かっています。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、堂島川に「玉江橋」が架かり、蜆川にも名前は表示されていませんが橋が架かっています。この橋のたもと辺りが「逆櫓乃松址碑」が残っている所です。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、堂島に「たまえばし」が、蜆川に「じゃうしょうばし」が架かっています。「上福島中二」の停留所との間に「上の天神」や芝居小屋が見えます。「じゃうしょうばし」のたもとに公設市場の印が見えますが、このあたりが現在「逆櫓乃松址碑」が残っている所です。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、堂島には「中央電信局」と「大学病院」の絵が大きく描かれています。「逆櫓乃松址碑」のある場所は、これらの建物の北側に当たります。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、地形図の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、堂島川から北側一帯が白くなっており、北の大火によって焼失した地域であったことが分かります。錦絵の解説に「逆櫓松は明治42年(1909)に焼失。」とありましたが、この北の大火の際に延焼したのかもしれません。
 右上の昭和7年を見ると、地域一帯は復興が進み市街地が広がっています。堂島の北側にあった蜆川(曽根崎川)は埋め立てられ、川の跡地は堂島の敷地に取り込まれています。
 左下の昭和42年を見ると、堂島の大学病院の西側に広い幹線道路ができています。道路の西側の敷地には、地図には表示はありませんが、関電病院が建っています。
 右下の平成8年では、病院の印が見えますが、ここが関電病院で、「逆櫓乃松址碑」があるのは、この敷地の北側のマンションの一角です。

明治42年から平成8年の地形図
(今昔マップ3より)
現在の逆櫓の松
逆櫓乃松址の碑

 今回は、「浪花百景」の「福しま逆櫓松」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇常設展示は展示替えにより「商家の賑わい」の展示へ

 大阪くらしの今昔館は、9月12日(水)から、「商家の賑わい」の展示となりました。江戸時代の大坂の店先を再現し、当時の賑やかな商家の様子を楽しめます。



 9月18日以降は通常通り、毎週火曜日が休館日となります。
 9月のカレンダーは、こちらでご確認ください。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201809



〇今週のイベント・ワークショップ

9月19日(水)~22日(土)、26日(水)~29日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

9月23日(日)、24日(月・祝)、30日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


9月22日(土)~23日(日)
イベント 彼岸の屋台

「のぞきからくり」や「宝引き」など・・
昔ながらの遊びは、大人も子どもも楽しめます
13時~16時


9月28日(金)
イベント インターナショナル町家寄席-RAKUGO

英語・中国語・韓国語の落語会です。
日本の方にもお楽しみ頂ける内容になっています。
出演:桂あさ吉、桂雀喜、笑福亭銀瓶 ご案内役:桂出丸
13時~14時


10月7日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

イベント 子ども落語大会 於:天満天神繁昌亭
8/26(日)に開催の、第13回子ども落語大会の入賞者が天満天神繁昌亭の舞台に立ちます
10時~11時30分 観覧無料
場所 天満天神繁昌亭
(大阪市営地下鉄 谷町線・堺筋線南森町駅、JR東西線大阪天満宮駅④B出口から徒歩3分)



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


〇企画展示室のギャラリー利用

 企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

 貸出期間:平成30年9月15日(土) ~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  9月18日・25日、
  10月2日・9日・16日・23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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