2018年9月4日火曜日

今週の今昔館(127) うらえ杜若 20180904

〇浪花百景に見る江戸時代の大坂(32)

 前回は福島区の「野田藤」をご紹介しました。福島区には「浪花百景」に描かれている名所がもう1か所あります。今回は「うらえ杜若」をご紹介します。

■うらえ杜若(芳雪画)
 往古、海岸であった浦江の了徳院は創建は不詳、元文元年(1736)高野山宥意上人が再興した寺院と伝え、海から引き揚げられたという歓喜天を秘仏として祀っています。子宝、縁結びを願う人の厚い信仰に支えられ、浦江聖天、福島聖天と呼ばれ親しまれました。
 当地は淀川の下流、いくつかの水路が流れ込む湿地帯で、境内の水辺には杜若が群生し、花の折にはさらに参詣の人であふれました。芭蕉も門弟と訪れ、「杜若語るも旅のひとりかな」の句を残したと伝えられ、境内には句碑が建っていますが、芭蕉の紀行文『笈の小文』には「大坂にてある人のもとにて」として「杜若語るも旅のひとつ哉」の句を載せており、浦江で詠まれた確証はなく、字句にも違いがあります。

浪花百景「うらえ杜若」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)
現在の了徳院
了徳院境内案内図
芭蕉杜若句碑
了徳院境内の「野田ふじの碑」
聖天保育所和光園
(右手に藤色の住居表示板があります)


 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」の福島付近を見ると、「上福島」「中福島」「下福島」の地名が見えますが、浦江聖天は記載されていません。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見てみましょう。上福島田地の西に「大仁(だいに)村」と「浦江村」があり、その間に鳥居の印が見えますが、鳥居の右下に「了徳院」の文字が見えます。寺院の印はなく、文字がつぶれて見にくいですが、確認できました。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図では、「福島駅」の左手(北西方向)に「聖天」の文字と神社の絵が描かれています。福島駅北口から浦江本通りを進んだところです。東海道線を挟んで北側には「関西大学」と「金蘭女学」があります。
 地図の欄外に鉄道の路線がありますが、路面電車の阪神電鉄北大阪線です。「浦江」「南浦江」の停留所があったことが分かります。

大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、福島駅北口から西へ伸びる浦江本通の北側に「聖天」の文字と寺院の印が見えます。駅の近くと浦江本通に沿って赤い▲印があります。寄席や劇場を示しています。赤い波線、商店街を示しています。「大阪商学」「金蘭女学」「福島商業」もあります。 

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、地形図の変遷を見てみます。
 左上の明治42年では、大きな文字で「鷺洲村」があり、「浦江」「海老江」「大仁(だいに)」の文字も見えます。
浦江の文字の右に「聖天」の文字が見えます。浦江と海老江の間には農地が拡がっています。阪神本線はすでにできています。
 右上の昭和7年を見ると、ほぼ全域が市街地化し、阪神北大阪線と国道線が通じています。いずれも路面電車で、地図の表記も市電と同じ路面電車の記号になっています。浦江の右手の省線(現在のJR神戸線)の南に「聖天」の文字が見えます。
 左下の昭和30年を見ると、白い部分は戦災によって焼失した地域です。浦江周辺は大きな被害がありました。
 右下の昭和42年では、戦災からの復興が進み全域が市街地化しています。「聖天」の文字はありませんが、寺院の記号があります。戦災復興区画整理によって東西に幹線道路が通じ、区画も整理されています。阪神北大阪線と国道線は運行しています。昭和50年(1975)に廃止となります。

明治42年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 今回は、「浪花百景」の「うらえ杜若」をご紹介し、周辺地域の変遷を見てきました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、昔の地図、現代の地図と見比べながらお楽しみください。

 錦絵の解説は、関西学院大学博物館「浪花百景ー大坂名所案内ー」、大阪城天守閣「特別展浪花百景ーいま・むかしー」を参考にさせていただきました。


〇特別展「大大阪モダニズム ― 片岡安の仕事と都市の文化―」は終了しました。
 多くの皆様のご来場ありがとうございました。


 次の企画展は何?いつから?とお客様から尋ねられることがありますが、企画展示室は、9月15日(土)~12月9日(日)までの間、貸ギャラリーとして広く一般の方々のご使用を受け付けています。

 大阪くらしの今昔館ギャラリーは、当館主催の企画展を開催するほか、住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々のご使用を受け付けています。平成30年度の貸出期間が決まりました。下記により、お申し込みください。
 平成24年度から使用料金の割引制度を導入しています。使用日数が1週間を超える場合、超えた日の使用料金が1割引きとなります。

貸出期間:平成30年9月15日(土)~12月9日(日)
 ただし、次にあげる日は休館日となります。
  9月18日・25日、
  10月2日・9日・16日・23日・30日、
  11月6日・13日・20日・27日 、
  12月4日

 週末はほとんどお申し込みが入っていますが、平日は若干の空きがあります。申し込み方法など詳しくはこちらをご覧ください。
http://konjyakukan.com/kashidashi.html


〇展示替えに伴う休館について
 大阪くらしの今昔館は、9月3日(月)から11日(火)まで、展示替えのため休館します。
 9月12日(水)からは、「商家の賑わい」の展示となります。
 江戸時代の大坂の店先を再現し、当時の賑やかな商家の様子を楽しめます。


 なお、9月18日以降は通常通り、毎週火曜日が休館日となります。
 9月のカレンダーは、こちらでご確認ください。
http://konjyakukan.com/kaikanjikan.php?nextm=201809



〇今週のイベント・ワークショップ

9月12日(水)~15日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

9月16日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

9月15日(土)
イベント 上方の華と粋 座敷舞

上方の地で生まれ育った「上方舞」
山村流の立方が町家の座敷で華やかな舞を披露します
舞い方:山村若女 他
14時~15時


9月16日(日)
イベント 町家でお茶会

町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時


町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00

町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け、14:30~中級者以上向け

町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00

9月17日(月・祝)
ワークショップ『ひき臼・すり鉢を体験してみよう』

定員なし、参加費無料
13時30分~15時

9月22日(土)~23日(日)
イベント 彼岸の屋台

「のぞきからくり」や「宝引き」など・・
昔ながらの遊びは、大人も子どもも楽しめます
13時~16時


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。



 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」は第1回から第52回までは「古地図で愉しむ大阪のまちづくり」に掲載しています。 「今週の今昔館」第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



0 件のコメント:

コメントを投稿