2019年7月9日火曜日

今週の今昔館(171) 京橋 20190709

〇浪華の賑ひに見る江戸時代の大坂(9)

 今回は「浪華の賑ひ」の「京橋」をご紹介します。京橋といっても「京橋はええとこだっせ~」の「京橋」とは違います。

■京橋
 この橋の北詰において朝毎に川魚の市あり。鯉・鮒・鰻・鯰・泥鯲(どじょう)・鼈(すっぽん)をはじめ、河湖のあらゆる魚を持ちより交易(うりかふ)ありさまいとにぎはし。
 なかんづく鼈を以て市の終となす。遅く来りて市におくるる者を団魚(すっぽん)の間にも合わぬといひしより、世の常言(ことわざ)に事に遅れて間に合はざるにたとへて言ひならはせりとぞ。

 金城の春に輝け市の魚 八千房其山

浪華の賑ひ「京橋」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 「浪華の賑ひ」の本文には「京橋」として以下のように記載されています。
 天満ばしの南詰を東に至る川端を松の下といふ。すなはち御城辺なり。これより北、川岸片原町に架せり。
 故大和川・猫間川会流して橋下より大川に入り、南は金城にして登城の御橋なり。
 欄檻葱宝珠の銘に云く、元和九年造立と鐫(せん)す。北詰より東は片原町・相生町とて京師往還の街道なり。


 浪花百景にも「京橋」がありますので、見てみましょう。


■京橋(芳雪画)
 大坂城の北側、寝屋川に架けられた橋、京街道がこの橋を起点としています。東海道五十七次の終点でもあり、大坂の玄関口として賑わいました。高欄擬宝珠の立派な公儀橋。京橋の北詰には川魚市場がありました。
 大坂城の北の玄関口、京橋は京街道・大和街道の重要幹線の起点。京橋の名前の由来となった京街道は、秀吉の頃に淀川左岸に文禄堤が構築されたことによって成立した京都と大坂を結ぶ幹線で、京橋は京街道とともに架橋された「天下橋」です。
 夏の陣で焼失しましたが、徳川幕府は重要視して元和9年(1623)に再建、家光の頃に制定された公儀橋十二橋のうち、幕末には京橋だけに欄干に擬宝珠が付けられていました。
 今とは違い、最長時には100メートルを超える長さを誇っていました。以前は橋の南詰に青物市が立っていましたが天満に移動、新たに鯉・鮒・鮎・鰻などの川魚市場が橋の北詰に開かれました。
 現在、京橋の上には自転車・歩行者専用の大坂橋が架かっています。

浪花百景「京橋(芳雪画)」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 江戸時代天保年間発行の「浪華名所獨案内」を見ると、天満橋の東側に「京バシ」があります。橋の南詰には、東御奉行所、御代官ヤシキがあり、大坂城の京バシ口につながっています。この地図は、東が上に書かれています。北を上にしましたので文字は右を向いています。

浪華名所獨案内(「津の清」蔵)

 次に、天保8年(1837)発行の天保新改攝州大坂全圖を見ると、天満橋の東側に「京橋」が描かれ、北には「備前島橋」があります。京橋を渡り東へ進むと、「片町ト云」の文字があり、その先に「野田バシ」があります。京街道はこの橋を渡り、北東へ進みます。
 京橋の南詰には石垣の絵が描かれ、城の京橋口との間が広場になっています。広場の西側に「東町奉行所」、その西に「御代官所」があります。

天保新改攝州大坂全圖(国際日本文化研究センター蔵)

 大正13年発行の大阪市パノラマ地図を見ると、「きやうばし(京橋)」の南詰には「職業紹介所」があり、その南に「偕行社」が描かれています。片町には市電が野田橋の手前まで伸びています。備前島橋には京阪電車が走っています。
 京橋口を入ると「兵器支廠」があり、大阪城内は陸軍が使用していました。東町奉行所のあったところは「衛戍病院」になっています。


大阪市パノラマ地図(大阪くらしの今昔館蔵)

 昭和12年発行の大大阪観光地図を見ると、土佐堀通に市電が走り、天満橋、偕行社前、京橋、相生町、片町に停留所があります。京橋の南詰には「京橋前ノ町」の文字があり、天満職業紹介所があります。偕行社の南西には、国防婦人会軍人会館の文字も見えます。昭和6年に完成した大阪城天守閣が大きく描かれています。衛戍病院は陸軍病院の表示に変わっています。

大大阪観光地図(国際日本文化研究センター蔵)

 今昔マップ3を利用して、周辺地域の変遷を見てみます。
 左上の明治41年では、京橋の南詰は広場となっており、その西側に学校と病院が描かれています。病院には「M」の表示もあり、陸軍病院であることが分かります。京阪電車は幅の狭い備前島を通り、駅の手前で寝屋川を跨いでいます。城の中には兵器支廠の文字が見えます。
 右上の昭和4年を見ると、学校と病院の間を抜けた市電が寝屋川を跨ぎ、片町へと延びています。並行して京阪電車が通っています。寝屋川が付け替えられて、備前島が陸続きになりました。
 左下の昭和22年を見ると、天満橋から東へ土佐堀通りが拡幅され、片町へと続いています。白くなっている所は戦災によって焼失した地域です。
 右下の昭和42年では、天満橋の東側で京阪電車が地下に入っており、市電が天満橋までつながっています。病院の北側に「大阪歯大」の文字が見えます。

明治41年から昭和42年の地形図
(今昔マップ3より)

 現在の京橋は北詰で土佐堀通りと交差していますが、交差点の名前は「京橋北詰」ではなく「寝屋川橋東詰」となっています。
 土佐堀通りは、大川と合流する直前の寝屋川を跨ぎますが、そこに架かる「寝屋川橋」の「東詰め」の交差点という表示がされています。
 これは、一般に京橋と呼ばれているJRや京阪電車の京橋駅周辺から、西へ約1キロ離れていることもあって、混乱を避けるために「京橋」の表示を避けているようにも思えますが、「本家」の「京橋」が軽く扱われていることは残念なことです。


 京橋北詰には、「京橋川魚市場跡」の石碑が立っています。京橋の上空には、自転車・歩行者専用橋の大坂橋が架かり、大阪城と桜之宮公園を結んでいます。

現在の京橋
京橋北詰ですが交差点の名前は寝屋川橋東詰
京橋川魚市場跡の碑
京橋の上には歩行者専用橋が架かっています
「大坂橋」は大坂城と桜之宮公園を結びます

 今回は、「浪華の賑ひ」の「京橋」をご紹介しました。今昔館8階展示室の床面には大きく拡大した「大阪市パノラマ地図」がありますので、大正時代の京橋付近の様子を確かめてください。

〇企画展「住まいをデザインする顔-関西若手の仕事-」残りわずかとなりました。7月15日(月・祝)までです。

 関西には数寄屋、町家、長屋など伝統的な住空間と環境が育まれ、それらを土壌として、現代住宅の分野においても多くの先端的な建築家を輩出してきました。近年はAIやIOTなど通信を利用した機器の家庭への進出もめざましく、社会がグローバル化する中で住まいに求められるニーズも多様化しています。若手建築家はこれに応じて新たなツールや技術を利用しながら設計し、多様で可能性あふれるデザインを展開し、新たな活動領域へとネットワークを広げています。
 本展は2013年に行った企画展「住まいをデザインする顔」に続く展覧会で、今回は関西の代表的な住宅建築家である竹原義二氏・岸和郎氏の企画で、40歳以下のクリエーター30名の多様化する仕事をマッピングして活動領域を可視化し、模型、図面や写真パネル等で紹介します。リアルで先進的な住まいをデザインする人々の仕事の今に触れ、未来の住まいづくりへの予感を提示します。



1.会  期:2019年6月15日(土)~2019年7月15日(月・祝)
  入 館 料: 企画展のみ300円
        常設展+企画展   一般800円(団体700円)
        高・大生500円(団体400円)(要学生証提示)
  *団体は20名以上
    *年間パスポート、大阪周遊パスで入場可。
  *中学生以下、障がい者手帳等持参者(介護者1名を含む)、
   大阪市内在住の65歳以上の方は無料(要証明書提示)。
  交  通:Osaka Metro堺筋線・谷町線、阪急線「天神橋筋六丁目駅」
       3番出口から直結
       JR大阪環状線「天満」駅から北へ650m

2.出展者(50音順、敬称略)
  石倉康平(石倉建築設計事務所)
  今村謙人(カモメ・ラボ)
  大庭徹(大庭徹建築計画)
  奥田晃輔・堀井達也(OHArchitecture)
  加藤正基
  川上聡(SATOSHI KAWAKAMI ARCHITECTS)
  川口裕人+湯川晃平(1110建築設計事務所+ユカワデザインラボ)
  貴志泰正(貴志環境企画室)
  北川 浩明+今津修平(COCCA)
  京智健(京智健建築設計事務所)
  小松一平( 小松一平建築設計事務所)
  近藤陽子(nLDK一級建築士事務所)
  佐藤伸也(佐藤伸也建築設計事務所)
  瀧尻賢
  田中郁恵(田中郁恵設計室)
  殿井環 芦田奈緒(TAO)
  中西ひろむ(中西ひろむ建築設計事務所)
  中村重陽・中村紀章(中村×建築設計事務所)
  西山広志・奥平桂子(NO ARCHITECTS)
  半田俊哉・平田智子(エイチ・アンド一級建築士事務所)
  藤田慶(フジタケイ建築設計事務所)
  古川晋也・門間香奈子(モカアーキテクツ)
  堀賢太(堀賢太建築設計事務所)
  前田裕紀 奥井希 野崎将太+飯坂拓也(前田文化+MICROCOSMOS)
  松本光索(KOSAKU MATSUMOTO)
  安川雄基・冨吉美穂(アトリエカフエ)
  山口晶・白石雄大・山口みどり・大島亮(TEAMクラプトン)
  山口陽登(YAP)
  吉田甫(HAJIME YOSHIDA ARCHITECTURE)
  吉永規夫・吉永京子(Office for Environment Architecture)

3.企画委員
竹原義二 氏(無有建築工房)
岸和郎 氏(K.ASSOCIATES/Architects)

4.関連事業
1.トークセッション 【1】【終了しました】
  出展者が住まいのデザインの今について語ります。
   日   時:2019年6月16日(日)13:30~16:00(13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 5階研修室(当館ビル5階)
   出演者:出展者、特別ゲスト 芦澤 竜一氏(芦澤竜一建築設計事務所)、香川 貴範氏(SPACESPACE一級建築士事務所)
   参 加 費:無料
   定   員:50名(要事前申込 先着順)

2.トークセッション 【2】【終了しました】
   日   時:2019年6月29日(土)13:30~16:00(13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 5階研修室(当館ビル5階)
   出演者:出展者、特別ゲスト 遠藤克彦氏(遠藤克彦建築研究所)
   参 加 費:無料
   定   員:50名(要事前申込 先着順)

3.シンポジウム「住まいをデザインする顔」【終了しました】
  今回の展覧会の企画委員をつとめた建築家竹原義二氏による講演会。後半には出展者を交えて意見交換を行います。
   日   時:2019年6月22日(土)13:30~16:00 (13:00開場・受付開始)
   場   所:大阪市立住まい情報センター 3階ホール(当館ビル3階)
   講   師:竹原義二 氏(無有建築工房)  パネリスト:竹原義二 氏、出展者
   参 加 費:無料
   定   員:200名(要事前申込 先着順)

4.ギャラリートーク
  出展者が展示品を解説します。
  申込み不要、企画展の入場料が必要です。



〇今週のイベント・ワークショップ

7月10日(水)~13日(土)、17日(水)~20日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。
当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:①11:30~、②14:30~
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)

7月14日(日)、15日(月・祝)、21日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


7月10日(水)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町家で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 他
14時~15時

7月13日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『ミニすだれ』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費200円
*当日12時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

7月14日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00-16:00

7月21日(日)
町家衆イベント 紙芝居

昔ながらの紙しばいを町家衆が上演します。
子どもから大人まで楽しんでいただけます。
開催日:日曜適時
11時~12時



町家衆イベント 連鶴(有料)
折鶴がいくつもつながった連鶴。
一枚の紙から折るところに特色があります。
作り方を詳しくお教えします。
開催日:奇数月の第3日曜
時 間:13:30~初心者向け
    14:30~中級者以上向け



町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00-16:00



町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30-15:00


イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日12時より8階インフォメーションにてお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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