2021年4月28日水曜日

今週の今昔館(264) 上牧、本澄寺 20210428

〇淀川両岸一覧にみる江戸時代の大坂(43)

 「淀川両岸一覧」は、江戸時代の大坂から京都までの淀川沿いの名所旧跡を挿絵を添えて紹介しています。このシリーズでは、淀川両岸一覧(下り船之巻)に沿って、京都から大坂までの淀川右岸(川の流れから見て右側)沿いの風景を訪ねていきます。今回は「上牧、本澄寺」をご紹介します。上牧とは「上の御牧」で、「中の御牧」の柱本、これに鳥飼の御牧をあわせて、摂津三牧と呼ばれていました。


■上牧、本澄寺
 天王山から水無瀬の里を過ぎると、摂津国島上郡上牧村の浜にさしかかります。この川筋から右奥に見える堂宇が法華山本澄寺で、日蓮宗の寺院です。文明三年(1471)に創建されたと伝わり、俗に上牧の高祖と呼ばれますが、その由来は、本堂に安置された高祖日蓮像で、日蓮の自作と伝えられています。江戸時代初めに東福門院が祈願されて以降、多くの信者が参拝したと言われます。

淀川両岸一覧下船之巻「上牧、本澄寺」
(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

 本澄寺は「厄除けの高祖」として知られ、宗門の人々の信仰を集めました。
 本文の解説にもあるように、例祭は春と秋に行われ、秘仏の高祖像が開帳されます。春の例祭(3月12日)には京都から、秋の例祭(9月12日)には大坂から群居して参詣者が訪れました。挿絵にはその様子は描かれていませんが、参詣の人々は船を仕立てて、船中で題目を唱えながら太鼓を打ちならしてやって来ました。彼らはこの御開帳に高祖像を一目見ようと、先を争って押しかけ、また、檀家の村人も例祭の日には農作業よりも法要が優先と、寺に集まって参詣者をもてなすのが慣わしでした。
 上牧とは「上の御牧」で、「中の御牧」の柱本、これに鳥飼の御牧をあわせて、摂津三牧と呼ばれていたと言います。

 絵の賛は、次の二作です。

 蒟蒻に 箔の付きたる 御影講 許六
 袖も柿も 拝れにけり 御影講 沾圃


 本文の解説は次のとおりです。
■上牧
 高浜村の下にあり。いにしへ御牧のありし旧跡にしてすなはち上の御牧なり。中の御牧は柱本にして、ともに「延喜式」に出づ。広瀬よりこれまで水上およそ十四町半余
■上牧神祠(かみまきのやしろ)
 上牧村にあり。当村および鵜殿・井尻両村の生土神(うぶすな)とす
■本澄寺
 右同村にあり。日蓮宗、洛陽本満寺に属す。俗に上牧の高祖と称す。これより北街道筋梶原村に一乗寺とて同宗の大地あり。
 当寺本堂に安置する所は、高祖四十二歳御自作の木像にして、世に厄除けの高祖と称し、宗門の男女帰依して、例祭三月十二日は京師より群参おびただし。上鳥羽法花浜より乗船し、船中にて題目を唱へ、太鼓を打ちならし、淀の大河も狭しと漕ぎ下せり。また九月十二日は浪花よりも同じく前夜より乗合の船に異体同心の男女押し合ひて各々祖像の開扉を争ひ拝す。平日は容易(たやすく)開く事を許さず。さてまた当村はことごとく経宗にして、右春秋両度の法会には農業を休み寺へ打ちこぞり、詣人を饗(もてな)す事宛(あたか)も生土神の祭礼のごとし。


 次に、大阪くらしの今昔館が所蔵する「よと川の図」の上牧付近を見てみましょう。この絵は北から見た風景を描いていますので、左手が伏見、右手が大坂になります。絵の左上が八幡、中央上部に橋本の町が描かれています。絵の手前側が淀川の右岸で、「みなせ川」「広瀬」「高浜村」「上牧」「中村」「うとの」「大つか」の文字が見えます。淀川には曳き船をしている三十石船が描かれています。

「よと川の図」の上牧付近(大阪くらしの今昔館蔵)


 上牧付近の様子を地形図で見てみましょう。今昔マップを利用して昔と今の様子を見比べてみます。左は明治41年陸地測量部地図、右は最新の地理院地図に色別標高図を重ねたものです。
 1枚目は、男山から樟葉にかけての広域を表示しています。淀川右岸には山すそを西国街道が通っています。街道に沿う形で東海道本線が走っています。淀川との間には農地が拡がっています。左岸には京街道が通り、樟葉には道路沿いに町が形成されています(町樟葉)。樟葉の対岸には湿地帯が広がり、その奥に上牧の集落が見えます。


今昔マップより上牧付近広域(男山~樟葉)

 2枚目は、上牧付近を拡大して表示しています。
 淀川の西側に湿地帯が広がり、その西側に上牧の集落があります。集落の北寄りに寺院の記号が見えているのが本澄寺です。最新の地理院地図では、湿地帯が埋め立てられて東上牧2丁目と3丁目になっています。上牧町2丁目の左手に寺院が本澄寺です。

今昔マップより上牧付近

 3枚目と4枚目は、国土地理院地図の自分で作る色別標高図です。5mから5m刻みで色を変えています。図の「+」のところが上牧です。山裾を東海道本線が通り、その東側を新幹線と阪急京都線が並行して走っています。
 拡大した図を見ると、上牧付近の標高は、淀川の河川敷よりも低い地盤となっていることがわかります。


自分で作る色別標高図の上牧付近広域
自分で作る色別標高図の上牧付近

 今回は、「淀川両岸一覧下り船の巻」の「上牧、本澄寺」をご紹介しました。



〇住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」とは?

 住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」は2001年4月26日に開館しました。今年で開館20周年を迎えました。
 ここは「住まいの歴史と文化」をテーマにした、日本で初めての專門ミュージアムです。
 住まい情報センターのビルの9階「なにわ町家の歳時記」は、江戸時代のフロア。天保初年(1830年代前半)の大坂の町並みを実物大で復元しています。
 8階「モダン大阪パノラマ遊覧」は、明治・大正・昭和のフロアで近代大阪の住まいと暮らしを模型や資料で展示。
 さらに企画展示室では特別展や企画展を開催しています。


〇大阪くらしの今昔館は、臨時休館しています
 【令和3年 4月25日(日)~5月11日(火)】


 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令に伴い、4月25日(日)~5月11日(火)までの間、臨時休館しています。



〇企画展「重岡良子 花鳥画展 刻を紡ぐ 写生から装飾 そして琳派を生きる」も臨時休館しています

 会期は、令和3年4月17日(土)~6月13日(日)
 4月25日(日)~5月11日(火)まで臨時休館

 大阪くらしの今昔館では現代日本画家の個展「重岡良子 花鳥画展 刻を紡ぐ」を開催します。
 日本の絵画は住まいの中で、座敷における「しつらい」として親しまれてきました。中でも四季の彩りを表す花鳥画は古くから愛好され、現代においても人気のある画題のひとつです。
 重岡良子氏は自然の中に身を置いて花や鳥などの動植物を写生し、その心を50年にわたって描き表してきました。また、京都で培われた「琳派」に着想を得て「IMA琳派」として装飾性を持たせた作品も発表されています。今回は屏風を中心に代表的な作品を披露します。
 春から初夏にかけて草木が青々とするこの時期に、日本画のもつ繊細かつ優美な色彩の織り成す世界をご堪能ください。

【インタビュー動画】重岡良子 花鳥画展 刻を紡ぐ
 こちらからどうぞ⇒https://www.youtube.com/watch?v=KJRYeH5yqWk


喜雨滴る
あお麦風々
桜東風
朝露涼夏
ランプシェード


〇落語家 桂米團治と歩く江戸時代の大坂
 大阪くらしの今昔館の9階常設展示室にある江戸時代(天保年間)の大坂の町並みをご紹介する新しい動画ができました。案内人は上方の落語家、桂米團治師匠です。
〈①表通り編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=n1moBJy5uB4
〈②町家の暮らし編〉
 こちらからどうぞ。
 https://www.youtube.com/watch?v=dDb2VBmyKnw





〇大阪くらしの今昔館の紹介動画
 今昔館の江戸時代のフロアをご紹介する動画は4編あります。全4編の目次はこちらからどうぞ。
 こちらから、見たい部分だけを見ることができます。英語の字幕入りの動画を見ることもできます。
http://konjyakukan.com/link_pdf/what's%20this%20.pdf



 このほかに「天神祭となにわの町」をご紹介する動画があります。
https://www.youtube.com/watch?v=3or8fq4U8zE&feature=youtu.be



 また、今昔館の近代のフロアをご紹介する動画が2編あります。
https://www.youtube.com/watch?v=SbqzmybwKss&feature=youtu.be


https://www.youtube.com/watch?v=EohP-xqrOi4




〇【動画】重文茶室「蓑庵」ー構造模型で見る茶室建築の世界
 重要文化財 大徳寺玉林院茶室「蓑庵(さあん)」の実物大構造模型(竹中大工道具館所蔵)を京都工芸繊維大学名誉教授 日向進先生が分かりやすく解説してくださいます。
 こちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=tqJEnPZckbc&feature=youtu.be



〇「今昔館のオンライン まなびプログラム」が公開されています
 大阪のまちと住まいや くらしのことを おうちで学んでみませんか?
 こちらからどうぞ。
 ⇒konjyakukan.com/link_pdf/今昔館のオンラインまなびプログラム.pdf




 大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/index.html


 「今週の今昔館」の第1回から第52回までは、「古地図で愉しむ大阪まち物語」に掲載しています。
 「今週の今昔館」の第1回はこちらからご覧ください。
http://osakakochizu.blogspot.com/2016/08/blog-post_5.html


 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。

「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。
http://www.sumai-machi-net.com/howtouse


0 件のコメント:

コメントを投稿