2017年9月26日火曜日

今週の今昔館(78) 近代都市住宅年表 岸の里試験住宅 20170926

〇今昔館の近代展示室を愉しむ(12) 近代都市住宅年表 

 今回も引き続き、近代展示室の外周にある「近代都市住宅年表」について、ご紹介することとします。

 明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。今回は、その中から終戦後の部分をご紹介します。

城北バス住宅と岸の里試験住宅(近代都市住宅年表)

 「城北バス住宅」については、住まいの六景の「城北バス住宅-転用住宅と戦災復興-」のところでご説明しましたので、今回は「岸の里試験住宅」についてご紹介します。

 膨大な住宅不足の解消に向けて、公営住宅の建設システムの整備が行われつつあるとき、木造量産住宅を直営で行うという企画が立てられていました。その試みとして岸の里試験住宅が昭和23年12月に50戸が建設されました。家族のだんらん空間の重視、家事労働の合理化、床座から椅子座への移行など、住生活の近代化に対応した新しい間取りが採用されました。
岸の里試験住宅外観(まちに住まうー大阪都市住宅史)
岸の里試験住宅平面図(まちに住まうー大阪都市住宅史)


 プレハブ住宅は現代の都市住宅の一典型になっています。多数の消費者に対し短い施工期間で低価格・高品質の住宅を提供することを目的に、部材・仕様が規格化され、部材が大量生産されることによって建設の仕方が合理化・工業化されました。大阪にはプレハブ住宅メーカーが多数集まり、わが国の住宅産業の先進地域となっていました。
ミゼットハウスとセキスイA型(近代都市住宅年表)

 昭和34(1959)年10月に「ミゼットハウス」が発表されました。プレハブ住宅の原点と呼ばれ、3時間で建つ勉強部屋として、売り方も営業セールスだけでなく、全国27か所のデパートで展示即売されました。建築が「請負」ではなく「商品」になりました。その後、トイレや台所もつけてというような要望に応えて、「スーパーミゼットハウス」、「ダイワハウスA型」と、本格的なプレハブ住宅へと進化していきました。

 「セキスイハウスA型」は、昭和35(1960)年に発表されました。今年(2016年)3月には、1963年に建築された「山崎家及び臼井家別荘(セキスイハウスA型)」が、プレハブ住宅として初めて国(文化庁)の有形文化財(建造物)に登録されることが決定しました。


寝屋川市の文化住宅(近代都市住宅年表)


 都市への人口集中、宅地価格の上昇などが顕著となる昭和30年代になり、借家需要が高まり、木賃アパートと呼ばれる民間の共同住宅形式の貸家が一般化しました。木造賃貸アパートの略称で、出入り口や便所・洗面所が共通のアパートと、それらが各戸にある文化住宅に区別されます。文化住宅には2階の住戸も入り口だけは1階に設けられ、すべての住戸が直接道路に面している重ね建て形式と、2階の住戸の入り口が2階の外部廊下に面しており、外部階段からアプローチする片廊下形式があります。

 木賃アパートの立地は、利便性が高いにもかかわらず開発の遅れていた大阪市周辺の私鉄沿線に特に集中し、阪急沿線の庄内、京阪沿線の門真・寝屋川などでは、大規模な木賃密集地帯が非常な勢いで形成されました。

東淀川区の建売住宅(近代都市住宅年表)


 昭和50年代前半には、従来は借家需要者であった中・低所得者や若年者をも対象とした分譲住宅の飛躍的増大がありました。この頃の分譲住宅の典型の一つは、ミニ開発と呼ばれる建売一戸建て住宅です。

 ミニ開発は住宅地の環境水準や住宅の物的水準が低いなど多くの課題を抱える一方で、従来の公共住宅や分譲マンションでは満たすことのできなかった住宅需要を巧みにとらえ、庶民生活のいきいきとした側面を引き出してきたことも見逃すことができません。


ドムール北畠(近代都市住宅年表)

 ミニ開発が隆盛を極めていたころ、公共住宅においても従来の中高層住宅にとらわれない、低層住宅を含む多様な住宅形式の模索が始められていました。なかでも、オイルショック以降の低層住宅ブームを背景として、タウンハウスと呼ばれる低層集合住宅の開発が盛んに行われ、民間住宅にも波及していきました。

 数少ない大阪市内のタウンハウスの中で、質の高い住環境形成に成功した事例として、昭和57(1982)年に分譲された阿倍野区のドムール北畠をあげることができます。旧藤田男爵ゆかりの地に建設された23戸の高級住宅で、建物の形態や色彩上の配慮、樹木や土地の形質の保存、既存の敷石や石柱の利用、建築協定の締結など、環境保全に意欲的な取り組みがみられます。


都住創内淡路町(近代都市住宅年表)

 昭和50年代に入っていわゆる需要者参加型集合住宅の建設が活発化してきます。住宅需要者が集まって組合を作り、協同して住宅建設を行うコーポラティブ方式による住宅はその典型です。原則として自由設計であることや実費主義をとっていることに加えて、協同して住宅を取得するというプロセスを通じて入居者相互のコミュニケーションが深まり、入居後の近隣関係や住宅管理を円滑に行いうることなどがこの方式の特色です。

 昭和50(1975)年に松屋町に生まれた都住創(都市住宅を自分たちの手で造る会)は、コーポラティブ住宅づくりを継続的に手がけるとともに、様々な居住関連活動を繰り広げています。


 今回は、「近代都市住宅年表」の終戦後の部分をご紹介しました。各時代の典型的な住宅の立面図が、年表の下に描かれていることがお分かりいただけたかと思います。解説は、「まちに住まう-大阪都市住宅史」を参考にしました。


〇企画展示室が貸しギャラリーに(12月10日まで)
 企画展示室は、9月9日(土)~12月10日(日)までの間、貸ギャラリーとして住まいと暮らしに関わる展覧会の会場として、広く一般の方々にご利用していただいています。
 展覧会のスケジュールは、こちらからご覧ください。
http://konjyakukan.com/tenji.html



〇今週のイベント・ワークショップ

9月27日(水)~30日(土)、10月2日(月)、4日(水)~7日(土)
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
(※日曜日・祝日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

9月31日(日)、10月8日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00

9月30日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸、他
14時~15時

10月1日(日)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

10月8日(日)
町家衆イベント おじゃみ(有料)

古布を四角く切って縫い合わせて作るおじゃみ(お手玉)。
作り方をていねいにお教えします。
開催日:第2日曜
時 間:14:00~16:00

イベント 子ども落語大会 於:天満天神繁昌亭
9/10(日)に開催の、第12回子ども落語大会の入賞者が天満天神繁昌亭の舞台に立ちます
10時~11時30分 観覧無料
場所 天満天神繁昌亭
(大阪市営地下鉄 谷町線・堺筋線南森町駅、JR東西線大阪天満宮駅⓸B出口から徒歩3分)


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
「住まい・まちづくり・ネット」はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/
初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse



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